今作品については次回語るとして、ぜひとも本編をお楽しみください
1-1
人間と魔族、二つの種族は小さなすれ違いからやがて憎み合い。
いつの日か争い大きな戦乱に変わり五十年が経過していた。
アルデバランの森に居城を構える魔王レオは、領土を魔力結界で包み人間の侵攻を拒み続けた。
開戦と同時に張られた結界は、勇者とその仲間達の数多の活躍により解除されるに至る。
人間はついに魔王レオの棲まう城に進軍を開始する。
そして現在魔王城の広間では、魔王レオを討つべく勇者リアと神官ナナが人類の命運をかけた最終決戦を繰り広げていた。
▽ ▽ ▽
右手で漆黒の禍々しい魔剣を振るい、すかさず左掌から魔法を放つ魔王レオ。
彼と相対するは、金髪を靡かせ軽やかに身を屈め、迫る魔法を避け、魔剣を輝く聖剣で受け止める勇者リア。
闇を纏った剣身が光を蝕み、刃の衝突に火花が散る。
同時にレオとリアは刃を弾かせ、レオが弓を引く勢いで刺突を繰り出す。
迫る魔剣の刃をリアが、聖剣を下段から斬り上げ弾く。
弾かれた勢いから
そのまま二人は互いの魔力を高めながら斬り結ぶ。
光と闇の衝撃が城内全体を揺らし、城外で戦闘中の者達にも伝わる。
ある者は魔王の魔力に恐れ。
ある者は此処が正念場と望む者。
そしてまたある者は自滅覚悟で敵軍に突撃を仕掛ける者。
城外では魔王軍と人間軍による苛烈な戦いが繰り広げられている。
そして広間に衝撃が走る最中。
「リアさん! いま援護を……!」
神官ナナが杖を挙げ、魔法の詠唱に入る。
「遅い! 判断が遅すぎるぞ神官ナナよ、『フレア』ッ!」
レオが左掌から放った蒼炎の球体がナナに迫る。
渦巻く業火にナナは、詠唱を中断しその場から大きく大理石の床を横転した。
瞬間、ナナがつい先ほどまで居た場所に、凄まじい爆炎と破壊が襲い、床と天井が溶解し大穴が生じる。
それを間近で見ていたナナの表情が恐怖に染まる。
「……あ、あああ……っ」
死と強大な敵に対する恐怖心から弱々しい悲鳴が広間に響く。
「くっ……! さっきの魔法で簡単に私ごと消し飛ばせたのに……ッ!」
禁断魔法──【フレア】を詠唱無しで速射。一度放たれたら最期、星をも破壊し尽くす。そんな魔法を威力を抑え放った。
恐怖で身震いが起こる。それでもリアは負けられない意地でレオを睨む。
「……人間界に住う人々の戦意を挫くには、精神的支柱の貴様等の心を打ち砕いた方が速いのでな」
リアの頬に一筋の汗が伝う。
想像以上に強いレオに、リアに撤退という選択肢が浮かぶ。
広間に到着するまでの間に、仲間達が今も必死に魔族を抑えている。
撤退は、自分達を信じて送り出した彼女達の決死の覚悟を無駄にしてしまう。
城内に入り込むために活路を開き、散っていた騎士達の無念も、全てが無駄になる。
そう考えたリアは撤退の選択を排除し。
「人間の底力を舐めないでよね……!」
リアは気力を振り絞り、自身の魔力を限界まで解き放つ。
まさに勇者に相応しい膨大な光の魔力に大気が震え、レオの肌に威圧感が迸る。
「それで全部か……! 人間がこれほどの魔力を身に付けるとは……!」
流石は勇者にして好敵手。
レオは心の底から歓喜し。
「こちらも全力を出さなねば失礼か……!」
全霊の魔力を解き放った。
漆黒の禍々しい魔力。
まさに闇と呼べる魔力が溢れ出る様子に、それを目撃していた神官ナナが耐え切れず失神してしまう。
それは無理も無い事だろう。死の恐怖に加え、絶望的なまでの魔力を見せ付けられた常人なら意識を手放してしまうのは。
リアはレオの魔力に冷や汗を流し、震えを抑え聖剣を構え直す。
睨み合いから二人は同時に動き出した。
互いの全身全霊を込めた一撃。
良くも悪くも人間界と魔界の命運が決まる最後の一撃。
聖剣と魔剣が衝突する……その時だった。
「素晴らしい! ああ、実に素晴らしい魔力だ! ……その魔力、我の物として相応しい……!」
突如広間に現れた白鳥の様な六枚羽に金色の瞳の天使が掌から鎖を放ち。
背後からレオとリアの腹部を貫いたのは──