魔王と女勇者の共闘戦線   作:藤咲晃

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 意気揚々と砂浜から食糧を求めて森に入り、緑が茂り人手が手付かずの道なき道を歩くこと一時間弱。

 

「はあ……はあ……あ、ありえぬ」

 

「ふう……ふう……ほ、本当に有り得ないわっ!」

 

 二人は疲労困憊で大木にもたれ掛かっていた。

 全身から流れる汗と疲労、レオとリアは息を荒げている。

 魔王と勇者の現状を知ったら人々と魔族はどう思うのか。失望か、あるいは嘲笑うか、それとも哀れみの眼を向けるのか。

 少なくとも今の二人にはそんな事を気にする余裕など無かった。

 

「い、一時間歩いただけでこの体たらく……っ」

 

「私の体力お婆ちゃん以下よ……っ」

 

 これでは戦闘もままならないと、二人が息を吐く。

 

「ふう。時にお前は鎧を外さないのか? それでは重くて体力も浪費するだろう」

 

「それはそうだけど、魔王だってマントを外したらどうなの? 地面に着くぐらい長いじゃない、それに結構暑いからダークコートなんて余計に暑いわよ」

 

 互いの身なりを指摘し合い。レオは暑く邪魔なマントを投げ捨てたが、リアは防具を頑なに外そうとはしなかった。

 

「ふむ、少しは楽になったか? ……お前は防具に拘りでもあるのか」

 

「無いけど……武器も錆びてるから身を守る防具ってなんだか安心するじゃない。それにこの防具は四魔将軍の一人、ザガーンの一撃も防げるのよ……!」

 

 嬉々として語るリアの言葉に、レオは配下の邪竜族ザガーンの言葉を思い出していた。

 

『あの者の鎧は、身軽ではあるが異常に頑丈であった。騎士どもの防具を遥かに凌ぐ鉄壁さよ……!』

 

 と、普段は無表情な彼が嬉々として語る姿がレオの脳裏に浮かぶ。

 しかしリアはルシファーに腹部を貫かれた。

 

「……頑丈ではあるが腹部はガラ空きなのだな。そこもしっかりと守っていればルシファーに遅れを取ることはなかったのではないのか」

 

 レオは彼女の防具の問題点を指差し指摘した。

 

「うっ、だって皆は防具にもオシャレとかしてたからソレが普通なんだと思ってたんだもん……! お腹周りを鎧で固めないのもスカートなのも流行のファンションなの!」

 

「人間の年頃の娘が身なりに気を使うのは調査でも重々理解してるがな……。いや、しかし配下の女魔族どももお前達人間の防具には興味を示していたな」

 

「へえ? どんな興味を示してたの? 魔族のオシャレとかちょっと気になるんだけど」

 

 レオは配下の女魔族達が女騎士達の防具について話し合っていたことを思い出しながら語った。

 

「あれは確か。そう、『人間族の女騎士の防具みたかい?』『あのひらひらなスカートにお腹周りを守らない防具だろ?』『防具は兎も角さ、腰当てとスカートなんて、よくあんなひらひらした格好で戦えるよね……!』『男連中は皆チラリと見えるパンツに眼を血眼になって見てるって言うのにねえ……!』、という話をしていたな」

 

 女魔族達の声真似をしながら語る彼に、リアはたじろぐ。

 

「ねえどうして無駄に上手い声真似しながら言ったの!? ……や、それは兎も角、えっ? 女魔族達には不評だったの……!」

 

「不評というよりは疑問だな。まあ確かに配下達も妙に女騎士ばかりに目が行っているとは思っていたが、なるほど女騎士達は自ら恥ずかしい事をしてまで魔族の注意を向ける姿勢だったのか……!」

 

 自身の解釈に一人勝手に納得するレオに、リアはキョトンとした。

 そんな目的があったのか、と。

 

「それじゃあ、私のこの格好も単純なファッションじゃないってこと?」

 

「俺の解釈は概ねその通りだ」

 

 二人は妙にスッキリした表情を浮かべ、休憩もそこそこに食糧を探しに歩き出す。

 

 程なくして木に実った丸く青い果実を見つけ。

 

「どうやって取るべきか。お前は木登りとやらはできるか? さっきに言っておくが魔族に木登りなどという文化は無い、高所にある物は大抵飛んで取るからな」

 

「できるわよ。田舎出身にとって木登りは数少ない遊びの一つなんだから! まあ、見てなさいって!」

 

 そう言ってリアは意気揚々と木を登り始める。

 小柄な体格で瞬く間に木を登って行くリアの姿に、弱体化しても防具を装備したまま軽々と木を登れるものなのか、とレオは感嘆しながら頭上を見上げ気が付く。

 彼女の青いスカートの中から見える純白のぱんつに。

 レオは慌てて真正面を向き、鼓動が速まる胸を押さえた。

 

(ば、バカな!? アルティミアの色仕掛けや裸体を見たところで何も感じなかった、こ、ここ、この魔王たる俺が小娘ごときのぱんつで動じるだ、と!?)

 

「魔王ー! 木の実を落とすからしっかりと受け取りなさいよー!」

 

 その声に思わず頭上を見上げたレオは、反応が遅れ落下する二つの果実を顔面で受け止めることに。

 

「や、受け止めなさいとは言ったけど、誰が顔で受け止めなさいって言った!?」

 

 慌てながら木から地面に着地し、駆け寄るリアにレオは僅かに距離を取る。

 

「ど、どうしたの?」

 

「何でもない、ああ、何でもないさ……!」

 

 果実の落下により、赤くなったカ所を押さえながらレオは平素を装う。 

 

「変な魔王? ……お腹空いたから早速食べよ!」

 

 言われてレオは一つの果実をリアに差し出す。

 リアはそのまま果実に齧り付く、すると。

 

「うーん! 甘くて美味しい! これ何の果実なのかな?」

 

「分からない物を無警戒に口にするとは。しかし腹も減っている現状、さして気にもなりはしないか」

 

 レオはリアにならない果実を齧ると、程よく熟された果汁と甘味が口内に広がる。

 

「ほう、これは中々。以前食したバナナという果実も美味ではあったが、これも負けず劣らず……」

 

レオとリアは一心不乱に果実を齧り、あっという間に食べ終えた。

 僅かに空腹を満たした二人は、次の食糧を求めて周囲の探索を始める。

 可能なら動物の肉と魔核を摂取したい。

 魔力の回復させる方法の一つとして生物の魔核から魔力を奪う取る方法がある。

 しかしそれは一時的な効果に過ぎず、完璧とは言い難い。

 それから二人が、しばらく辺りを調べて発見した事は、この周辺の木には食べれる果実と猛毒が含んだ果実の二種が存在すること。

 そしてもう一つ重要な痕跡を発見した。

 

「むう……前人未踏なのでは? と疑っていたが、人の手による建築物を発見したな」

 

「うん、この辺の木材で建てられたログハウスと放置されたテントが数点ね」

 

 誰が何の目的で建てたのか謎のログハウス、その周辺に幾つものテントが並んでいた。

 古びた様子からそれなりの年季が入っているという事が分かる。

 

「……しばらくここを拠点に雨風を凌ぐか? それとも食糧を確保しつつ北上するか」

 

「いまの私達は迷子同然だから、無闇に歩き続けるのは危険よ。だから、ここを拠点にして明日からゆっくり探索するべきよ」

 

 旅に慣れたリアの意見にレオは賛同し、二人はログハウスに足を踏み込む。

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