魔王と女勇者の共闘戦線   作:藤咲晃

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  聖剣を構えるリアに飛び掛かる五体のR(リア)

 それに対してリアは臆せず、聖剣に光を纏わせ、

 

「《光よ我が敵を滅せよ》」

 

 リアは勢いよくRに向けて、右薙から魔法技──【洸斬】を繰り出す。

 鋭い刃と化した光が一体のRの体を斬り裂くが、残り四体のRは剣を盾に【洸斬】で【洸斬】を受け止める。

 だが、リアの勢いは止まらない。彼女は光と火花が散る中、更に足を踏み込みそのまま勢いで左薙からRを斬り裂いた。

 硬く冷たい床に転がるRの残骸。人形とはいえ自分そっくりの相手を切り捨てたことに吐き気が込み上がる。

 

「……っ」

 

 まだ人じゃないだけマシ。そう言い聞かせながらリアは込み上げる吐き気を呑み込む。

 

「ああぁあああっ!? ぼ、ぼくの、ぼくのリアたんがああああーー!」

 

 一人の研究者が絶叫をあげ、Rの破壊に精神が耐えられなかったのか泡吹いて倒れた。

 

「たんってなによ」

 

 人を模倣した人形で着せ替え人形の如く、様々な衣装に着飾ったR達に眼を向ける。

 ここの研究者の暴走した欲望のせいなのか、彼女達の衣装は少々マニアックな物まで含まれていた。

 

(ネコ耳メイドって……や、ネコ耳はかわいいけど……恥ずかしいじゃない!!)

 

 ふとリアは気がつく。人形は関節部の繋ぎ目と胸の違いさえ無ければ本人と変わらない。自分もあんな衣装は似合うのか。年頃の少女として気にはなる。

 リアが葛藤する中、レオがRを相手に【ファイアボール】を放つ。

 今は戦闘中、集中しなければならない。左右からRがリアを挟み込む。

 リアは左右から同時に繰り出された斬撃を寸前のところで避けた。

 僅かに前髪を掠め、数本の金髪が宙を舞うと、

 

「リア様の髪の毛はサンプルとしても貴重だ……! いや、毛髪から遺伝子情報を読み取り、今度は複製人間の製造に……!」

 

 グルド博士が狂気的に言葉を並べ、研究者達が彼の言葉に賛同し、雄叫びをあげていく。

 そんな中、リアは今すぐ彼らを斬り伏せたい衝動に駆られながらも、二体のRの剣を聖剣で受け止める。

 そして三体目のRが背後から、丁度リアの死角から刺突の構えに入った瞬間、Rが鎖に絡め取られ自由を封じられた。

 背後に目線を向ければ、拘束魔法──【チェーンバインド】を放つフィオナの姿。

 

「ありがとうフィオナ!」

「うん、でもやっぱりボクにはRを攻撃できないや」

 

 フィオナの優しさを理解したうえでリアは微笑む。

 それにしても、と思う。なぜ人形であるRが魔核も無しに魔法技を扱えるのか。

 その答えはすぐに辿り着く。魔法陣による魔力供給だ。過去にレオはアルデバランの森全域を魔力結界によって包み込んだ。四方に建造された砦に魔力供給用の魔法陣で砦同士を結ぶようにして。

 前例が有る以上、何処からかR達は魔力供給を受けている。正確な位置はリアには掴め無いが、魔力の扱いに長けたものなら。

 

「無理はしなくていいから。それにこういうのは私とレオ達に任せて……!」

 

 リアは二本の剣を押し返し、二体のRの体勢が崩れると、

 

「『吸魔ノ一刀』」

 

 二体のRを斬り伏せ、魔力を奪い取りながら駆け寄るRの頭部を左手で鷲掴みにしたレオはそのまま、

 

「そら、爆ぜろ『ファイアボール』」

 

 爆発で頭部を吹き飛ばす。

 床に崩れる首無しRにまた一人、研究者が絶叫しては気を失う。

 Rを倒す度に彼らは気を失うのか。それほどRが大切なのか。それともただ単に趣味の集大成のような人形を壊されたからか。

 混沌結晶の影響とはいえ、同情できない彼らに重いため息が零れる。

 リアは彼らの考えが理解できず顔を顰めた。

 

「リア様、あまり考えない方がいいですよ。我々研究者の思考は常識外れですから」

「それを自分で言っちゃう辺り、さすがファウスト博士ね」

 

 元から思考回路がイカれていると認めているファウスト博士には、少しだけ好感が持てる。

 ただ彼も研究者だ。自分達を使って影でどんな研究を行なっているのか分かったものではない。

 しかしその点レオは、何かに気が付いている様子で何も告げようとはしない。

 また彼はそうやって隠し事をする。あの時も、ミディアの時もそうだ。大切な事を最後まで隠そうとした。

 なんだか無性に苛つく。リアは力強く聖剣を握り締め、【縮地】を駆使ながら槍を構えるRの懐に入り込む。

 聖剣を自身の身体ごと斬り上げた勢いから、聖剣に光を纏わせる。

 

「《光よ刃となり走れ》!」

 

 飛ぶ斬撃を放ち、前方に控えるメイド服のRに光の斬撃が走る。

 魔法技──【洸波斬】がメイド服のRを一刀両断し、魔法器具まで斬撃が届く。

 だが、流石に重要施設の魔法器具だけあって備えも万全だ。斬撃が魔力結界に阻まれ、リアは着地と同時に舌打ちする。

 

「……相当機嫌が悪いようだな」

「あそこまで不機嫌なリアは見たことないよ」

「……勇者は怒らせるとヤバいな。……って、魔法器具の破壊も大変そうだ、なっ!」

 

 ククルは首元を狙う刃を避け、Rの腹部に拳を叩き込む。拳がRの腹部を貫き、そのままRを投げ飛ばし両掌を向けた。

 

「ああもう吹き飛べ! 『ストーム』ーー!!」

 

 嵐魔法──【ストーム】が後方からぞろぞろと迫るR達を呑み込んでいく。

 嵐に呑み込まれたR達は、無数の風の刃に体を斬り刻まれ、次々と破片が床へと落ちていく。

 その様子を尻目に見ていたリアは僅かに体を震わせた。

 自分そっくりの人形が無惨に壊されていく。もしも彼女達の立場が自分だったら──肉片になっていたのは自分だと、恐怖に顔が引き攣る。

 

「安心しろ、共闘の間は惨い死に方はせんだろう。第一お前なら【ストーム】に呑み込まれたところで容易く脱出するだろう」

「そ、そりゃあ、内側から魔法技を思いっ切り放つけどさ……でもね、やっぱり──何でもないわ」

 

 此処まで着いて来ると決めたのは自分だ。彼らは何度も止めようとしていたのにも拘らず。

 だから今更になって怖くなった、なんて弱音は吐けない。特にレオにだけは弱い自分の姿を見せたくない。

 見せてしまったら好敵手として失望されてしまう。

 そう考えただけで、何故か胸が苦しくなる。魔王の敵として情け無い姿を晒したくない、リアはそう考えることで一つの疑問から思考を逸らす。

 

「まだだ! まだR計画は終わらんよ!」

 

 そう言った一人の研究者がまた一つスイッチを押す。

 すると今度は両サイドの壁からガラスケースが現れ、次なるRが目醒める。

 

「ちょとおお!! なんで幼い頃の姿なのよ! 何をさせる気!」

 

 

 幼いR達の姿にリアが声を張り上げる。

 するとフィオナが幼い姿のRに、

 

「昔のリアもかわいい……一体お持ち帰りしていいかな」

「えっ、ちょっとフィオナ? フィオナの方がかわいいからね」

 

 フィオナの場違いな言葉にリアは困惑を浮かべながら、自分の幼い頃よりも今のフィオナの方が充分にかわいい。

 

「まあ、確かにちんちくりんの方がかわいいかもしれないね」

 

 意外にもククルは幼いRとフィオナを見比べて、そんな事を言った。

 彼の言葉にフィオナは満更でもなさそうにはにかんだ。

 

「おやおや、緊迫した状況で色気付くとは……良いぞお! もっとやれ!」

「喧しい! あんたも妙な事言って無いで魔法で援護しろよ!」

「なっ!? 私にあのかわいい容姿のリア様を攻撃しろと! 鬼かっ!!」

「鬼だよ!?」

 

 騒ぎ出すククルとファウスト博士のやり取りにレオは、肩で笑い出し魔剣を構え直す。

 更なる増援に窮地に立たされてなお、魔王レオの闘争心は衰えない。


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