その日の晩、リアとアルティミアは同室で一晩過ごす事になったのだが。
「レオ様と眠りたいわあ」
隣のベットで呟きが聴こえる。どうしてそうまでしてレオの側に居たいのか。折角の機会だ、思い切って聴いてもいい。そう考えたリアは自然と口にしていた。
「どうしてアルティミアはそうまでレオと……」
口にした言葉に胸が苦しくなる。
「決まってるでしょ、レオ様のことが好きだからよ」
鈴のような声で真っ直ぐと返された言葉。それでいてアルティミアは愛する者を想う表情を浮かべていた。
それはフィオナの母アンナが帰らない夫を想う時と同じ表情だ。
「そうなんだ。どうして好きになったの? きっかけがあるんでしょ」
「当然在るわよ。……レオ様に完膚なきまで負け、手を差し伸ばされた時ね。【雪羅の姫】と呼ばれて、魔界の貴族でも有る私を、私として見てくれてる彼の真っ直ぐで力強い瞳に惹かれたのよ」
確かにレオなら色眼鏡で誰かを見ず、その者の本質で接する。アルティミアはそういったレオの心にも惹かれたのだという。
身も心も全てレオのためになら。そう言って彼女はレオの配下に加わったと。
つまり彼女はレオに惚れたから四魔将軍になり、今でも彼のために力を振るっている。誰かのために力を振るえる彼女の姿は羨ましいとさえ思える。
恋は女性の魅力を引き出すと言うが、正にその通りだろう。
「アルティミアが羨ましいわあ」
「……この話を他の魔族にすると苦虫を噛み潰したような顔で、『恋? へえ、何というか……変わってるね』って言われるのよ」
魔族の恋愛事情は冷え切っていると聞くが、そこまでとは思い寄らず、ついつい微妙な表情を浮かべてしまう。
「魔族の心は冷えてて力が全ての脳筋……でもアルティミアを見てるとやっぱり感情は人間と変わらないわね」
「魔族の脳筋振りは頭の痛い話だけど……我々も多くの事を人間から学んでるのよ」
百年も魔族は人間に理解を示し続けていた。それなのに自分たち人間は、魔族を理解するどころか拒絶して戦争なんかはじめてしまった。
戦争に正しさは無いが、こちらのしてる事はただ気に喰わない相手が居る。だから排除しよう、そんなちっぽけな理由だ。
「……レオ様はね人間界に向かう前にこう言っていたのよ、『いずれ人間と魔族は争うだろう。だがそれで良い、争いの果てに互いに理解し和解できるだろう』ってね」
「そんな事を……本当に器が大きいわね」
「少し喋り過ぎたかしら? まあでも、月が綺麗だから口も軽くなるのね」
アルティミアは小さく笑みを浮かべ、空に浮かぶ月を視線を向けていた。
レオもそうだが、彼らは空に浮かぶ夜空を愛しそうに見つめる。
もう少し彼女と話したいが、これ以上は明日に支障をきたす。それにアルティミアは魔族の雪羅だ、共闘が終わればまた敵になる。先の事を考えるだけで心が痛いほどに辛い。
リアはこの共闘が永劫に続き、魔族と人間の争いが無くなれば良いと切に願い瞳を閉じた。