ようこそCクラスの偽善者の居る教室へ   作:モーブラゼロ

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第2話です。主人公の能力がだんだんと明かされていきます。また、主人公の名前はまだ伏せています。では、どうぞ!


第2話「自己紹介と宣言」

 

「僕たちはどうやら今日から三年間、同じクラスで過ごす事になるみたいだ。だから今から自己紹介をして、仲良くとは言わずとも知り合いになれれば良いなと思う。人前で話す事が苦手な人は、名前を言うだけでも構わない。入学式まで時間もあるし、どうかな?」

 

僕は周りを見渡しながらそう続ける。

 

「賛成します。最低限、お互いの名前は知っておくべきでしょう」

 

「だよね〜私達名前知らないのはまずくない〜?」

 

「確かにそうだな!」

 

銀髪の美少女が同意するとギャルっぽい女子も追随し、男子達も肯定的な雰囲気となった。その中で好意的ではなかったのは、青味がかったショートヘアの女子生徒と先程の長髪の男子生徒だけだ。

 

「それじゃあ、初めは言い出しっぺの僕から。僕の名前はーーーー。中学ではあまり明るくは無かったんだけど、イメチェンして今みたいになったんだ。下の名前で呼ばれる事に憧れていたから、気軽にーーって呼んでほしい。趣味は読書だけどスポーツでは卓球が好きで、もしかしたら卓球部に入るかもしれない。よろしく!」

 

女子を中心に大きな拍手が起きる。男子も僕の中学時代に同情したのか、早くも下の名前も呼んでくれる人もいた。周りをもう一度見回した後、私は席に座りながら銀髪の美少女に軽くアイコンタクトを取る。感心。不審。理解。彼女はその意図を汲み取ると、立ち上がって言葉を発した。

 

「私は椎名ひよりといいます。趣味は読書ですね。部活動は茶道に少し興味があります。皆さん、宜しくお願いします」

 

今度は男子を中心にして拍手と歓声が起きた。一方、女子の一部は僕と彼女のアイコンタクトを目にしたのか、少し不満そうだ。

 

「俺の名前は石崎大地。俺は喧嘩がーーー」

 

「あたしは真鍋志保。ファッションならーーー」

 

「私は金田悟です。世界史が好きで、特にーーー」

 

椎名に続いてどんどん自己紹介が進んで行く。その間に私は"僕"の笑顔を顔に貼り付けながら、目でもう一度分析していく。一人一人の読み取れる限りの情報を記憶して、自己紹介が終われば真っ先に拍手する。

 

「わ、わたしは………」

 

「大丈夫、落ち着いて。僕の目を見て話してごらん?」

 

「……わ、私は藪奈々美です。み、皆さん、よ、宜しくお願いします!」

 

「よく言えたね。偉い偉い」

 

「あ、ありがとうございますぅ…」

 

たまに喋るのに詰まる人がいればすぐにフォローする。こうすれば、男子からの人気は取れなかったとしても、女子からは確実な支持を受ける事が出来る。今日の学園生活では女子の権力が強くない方が珍しいのだから。

 

「……龍園翔」

 

「……伊吹澪」

 

自己紹介に好意的でなかった二人は、名前だけ話すと口を噤んでしまった。女子の間からは「感じが悪い」「せっかくーー君が自己紹介をさせてくれているのに」などといった文句が飛び出ていた。僕は女子の方に再び「リーダー格っぽい風格」を出すと、二人に向かって笑顔で言う。

 

「よろしく!龍園君。伊吹さん」

 

…龍園君と呼ぶ際に、彼からはあからさまな殺気が漏れ出ていた。確かにあのような"暴力で治めるタイプ"にとっては、君と呼ばれるのは恥だろう。…まぁこれも、この後の仕込みの一つではあるんだが。

 

龍園への視線を切ると、僕は最後の生徒に向かって目を向ける。彼は真っ直ぐ此方を見つめてきた。そして、言葉を発する。

 

「Hello. My name is Alberto Yamada. Nice to meet you.」

 

「Nice to meet you too, Alberto.」

 

…容姿から想像はしていたが、本当に英語をぶちかましてくるとは…。しかも目には、愉悦、興奮、感心。これは日本語が話せるパターンだな。中々に面白い。部下としてはかなり優秀そうだ。

 

僕が敬意を表して彼に微笑んだ丁度その時、入学式の始まりを告げる放送が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなが式に遅れまいと足早に教室から出る中で、私はとある机に付箋を貼ると、教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー君!私達と一緒にショッピングに行かない?私、ファッションセンスあるし、逆に男子の意見も聞きたいから」

 

「いや、ーー。俺達と一緒にボーリングとか行くべきだろ。元隠キャなんだろ?そういう遊びを覚えておいた方が良いって」

 

入学式終了後、教室に着くと沢山のクラスメイトから一緒にショッピングをしよう、遊びに行こうと誘いを受けた。しかし、この学校には不審な点が多くある。また今日に限り、集団行動をしたくない理由があった為、僕はその全ての誘いを断る。

 

「ごめんね、みんな。今日は日用品を買いに行ったり学校を色々と見て回りたいから、ショッピングや遊びは明日からで良いかな?」

 

「…オッケー。明日絶対だからね!」

「了解!…なら、明後日は遊びに行こうぜ!」

 

その後の誘いも想像以上に平和に断る事が出来た。自分の席に戻り、珍しく私がほっとしていると。

 

 

 

「ーー君は『そして誰もいなくなった』を読んでいるんですか!?」

 

 

 

突然、目を爛々とさせた銀髪美少女こと椎名が話しかけて来た。…どうやら説明が始まる前から尋ねようとしていた事が見て取れる。

 

「うん。推理小説は普段あまり読まないんだけど、高校英語の予習をしていた時にアガサ=クリスティーについての例文が出てきてね。少し興味を持ったから買ってみたんだ」

 

「それはとても良い心掛けです。近頃は推理小説どころか本を読む人すら減って来ています。電子書籍もありますが…やはり…」

 

「紙をめくる楽しさのある紙の本の方が良いよね。漫画とかもそれに含まれるかも」

 

「本当にそうですよ。それにーーー」

 

椎名との会話は目の観察を怠るくらい楽しいものだった。少なくともここ三年間の中では、あの櫛田を超える程楽しい時間だったかもしれない。…周りで顔を背けている貴方達。君達も紙媒体の本を読むべきだ。

 

 

 

 

 

私が椎名との会話を楽しんでいると、いきなり教室の前のドアが開いた。みんなが驚いたり怪訝そうな顔をする中、入ってきたのはあの長髪の厳つい男子生徒、龍園だった。彼は獰猛な笑みを浮かべながら教室を見渡すと、一瞬此方に視線を送ってくる。決意。挑戦。興奮。教卓の前に立つと彼は声高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

「龍園だ。今日からこのクラスでは俺が上に立つ。俺に従え!……文句があるヤツはかかってこい」

 

 

 

 

 

「なんだよおめぇさんはよぉ!」

 

「お前は誰だ?」

 

「石崎大地だ!いきなり上に立つだのなんだの言いやがって!」

 

ほう。石崎が突っかかるか。彼は分析上、誰か強い者に便乗すると考えていたがどうやら違うようだ。

 

「上に立つのに相応しいのはーーさんだろうがっ!」

 

…なるほど、面白い。私を上に立つべき人間だと認識したか。彼は恐らく何かしらの力が強い人間に惹かれやすいようだ。…だが、彼の誤算は龍園が常識的な人間ではない事。そして、私には"リーダーになる資格"がない事だ。

 

「そうかよ…じゃあお前に教えてやるよ。どっちが上に立つか相応しいかな。…お前の体に!」

 

そう言って、龍園はいきなり石崎を蹴り飛ばす。不意打ちされた石崎は机を倒しながら軽く吹っ飛んだ。周りに居た生徒は慌てて避難し、女子の悲鳴が教室に鳴り響く。何人かが私の方を見てくるが、動こうとするフリをして"僕"はまだ動かない。

 

「てめぇ!やってやるよ!」

 

キレた石崎は立ち上がって龍園に殴りかかる。先程分析した通り、喧嘩慣れしていて手慣れたようにパンチを繰り出した。しかし、龍園はボクシングの要領でそれを何度も防ぎ、石崎が怯んだところで顎にカウンターを仕掛けた。石崎はそれを反射的に腕でガードするが、その時には既に腹へともう一本の腕が迫っていた。

 

「ゔぉえ…!」

 

腹にパンチが直撃し、がたいが良いとはいえ運の悪い場所に入ったらしく、濁った声と共に苦渋に満ちた表情を見せる。

 

「がっ……」

 

そこを見逃すはずもなく、龍園は容赦なく石崎の顔面にパンチをする。彼の顔はみるみるうちに腫れあがった。

 

「龍園君!もう止めるんだ!どうしてクラスメイトに暴力なんか…」

 

僕はみんなが望んでいる通りに止めに入る。顔に傷が付くのは喧嘩を仲裁する一つの目安だ。普通の人間であれば少なからず動揺し、感情的な部分を理性によって抑え、事態を収めるきっかけとなる。…普通の人間ではあればな。

 

「あ?コイツが従わねぇから躾けてるだけ、だ!」

 

話している龍園の顔に最後の反撃とばかりにパンチしてきた石崎を、彼は鳩尾を殴って黙らせる。流石に限界だったのか、石崎はその後ピクリとも動かなかった。

 

「どうだ、まだやるか?って、くたばったみてぇだな。…ーーもやんのか?いくらでも相手になってやるぞ!」

 

龍園は石崎との戦いの疲れを1ミリも感じさせずに、ファイティングポーズを取って私を挑発する。

 

「…僕はこんなやり方は絶対に認めない。絶対に、君のやり方は間違っている。仮にそれで従わせたとしても、いつかそれは破綻するはずだ」

 

いかにも「正義のヒーローっぽいオーラ」を出しながら、僕は拳を固く握り、身を震わせて言う。クラスメイトの大多数がそれを固唾を飲んで見守る。

 

「…チッ。やんねぇのかよ、つまんねぇな。だが、いつかお前の事は必ず屈服させてやる。それまでそこら辺のクラスの女を抱いて遊んでな。」

 

「…僕に対しての侮辱は結構だが、彼女達にそんな言い方をするのはやめてくれないか」

 

龍園は下品な言葉への忠告には耳を傾けず、荷物を取るために自分の机へと向かう。そしてその机についている付箋を見て一瞬驚いた後、高笑いをしながら教室を去っていった。

 

 

 

 

 

クラスの大半は突然の暴力闘争に静まり返り、女子は泣いている人もちらほら見える。私は"僕"の顔を貼りつけて女子を慰めたり、石崎を介抱させたりしながら、今後の行動について思考していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな私の姿を

ただ一人、椎名だけが観察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。今のところ、主人公には『私』と『僕』の二つのモードがあり、その基準は大体は分かるかと思います。しかし、未だ名前は伏せられたまま。これが一つのヒントになるでしょう。次回更新は月曜日の予定です。ではまた。

ヒロインアンケート。※椎名と伊吹は同じクラスの為、まとめました。

  • 椎名ひより・伊吹澪
  • 坂柳有栖
  • 一之瀬帆波
  • 櫛田桔梗
  • その他
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