IS〈インフィニット・ストラトス〉 紅蓮の錬金術師   作:焼酎ご飯

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後編です。
初めは説明っぽくなっています。
楽しんでいただけると幸いです。


決闘 【後編】

 

「あぁ、やはり…素晴らしい…」

「っとに、我ながら惚れ惚れするね~。大佐殿ー、武装展開したらちょい待っててくれ」

 

 

オーギルの起動テスト

目の前が爆炎に包まれ、未だに弱い衝撃がアリーナ全体を走る。

耳をやられるかと思うほどの爆音に山田先生は尻餅をついている。

それも無理はない、爆炎は一瞬で晴れたものの未だに振動が続く程の爆発だ…微動だにどころか、恍惚としているこいつらの方がどうかしている。

 

 

「…あれについて話してもらおうか」

 

 

山田先生を引き上げながら変態二人に問う。

規模がおかしいジャミングと爆発…何もかもがわからないことだらけだ。

たとえ客だろうとここで説明ナシなどと言おうものならアイアンクロー決めてやるか…

 

 

「怖いわ~ブリュンヒルデ威圧感まじっべ~わ」

 

 

本当にやってやろうか…というかアイアンクロー・スラムまで繋げてやろうかと思える程に腹が煮えくり返る態度だ。

 

 

「…巫山戯るのは大概にしてもらおう…あの爆発やジャミングについての説明を要求する」

 

 

「そっちで解析するんじゃありませんでしたっけ?お?」

「木原さん!さすがにそろそろ勘弁してください!」

「わったよ…そんで川尻、オーギルのスペック公開しちゃっていいのか?」

「えぇ、一応はそういう手はずになっています。あ、こちらに機体出力などをまとめていますのでどうぞ」

 

 

無駄にごつい真っ白なUSBをを手渡される。

渡される際、手に強い視線を感じたが気のせいだろう。

そもそもそんなデータがあるのなら、始まる前に渡しておけと言いたいところだが、済んだことは仕方がない。

 

 

「さて、機体でデータを見ただけじゃわからん武装面を優しい優しいこの俺が解説してやるとしましょうかね。耳かっぽじって聞き逃さないでくださいよー」

 

 

木原が手に持ったコンソールをいじると、部屋のモニターの一つが切り替わり、オーギルの詳細データと透過cgが表示される。

 

 

ん?

 

 

「ま、待ってください!どうやってモニターの切り替えを?」

 

 

その通りだ。

この環境下でそんなことができるはずない。

…そもそもハッキングなのでは?

 

 

「あ?んなもん、ただモニターの入力に割り込んだだけだよ…あー、ジャミングのことか!つかジャミングのことなら他のモニター見てみろ」

 

 

気に留める様子もなくハッキングの事実を言い放った。

なんだこいつ…やることやって早く帰ってくれないだろうか…

 

 

他のモニターに視線を向ける。

砂嵐が消え、アリーナの様子をしっかりと映し出している。

不愉快なノイズを鳴らしていたスピーカーも今では正常に機能している。

 

 

「あ、あれ?さっきまでの電波障害がなくなってる…?」

「それではIS最高機関に所属している教員であるお二人が、この程度のことを分析できないどころか慌てふためいているという大変面白い事態になっていますので、この俺木原数多が皆さんに愉快素敵に解説していきたいと思います。はい拍手」

 

 

「わ、わ~…」パチパチ…

 

 

律儀に拍手を返しているのが自分だけだと気づいて赤面する山田先生。

なんだこの愛らしい生き物は…歳もほとんど変わらないというのに女としてこれはずるくないだろうか…

それにしても…山田先生が天然をかましてくれていなければ、この腕が奴に伸びていたかもしれん程に腹立たしい言い回しだ。

 

 

「そんじゃまず、オーギルが放出させてる微細なフィルムについて説明しとくか」

「フィルム?…あの光のことか?」

「ご名答、あの光はフィルムの反射によるものだ。オーギルの翼からは肉眼では確認できない程微細なある化合物でできたフィルムが放出されている。そんでこのフィルムがジャミングに直接関わってくるわけだが…さすがにチャフぐらいは分かるわな?」

「えっと、蒸発させたアルミやプラスチックフィルムによる電波妨害や誘導として使われるデコイアイテムですね…なるほど、そのフィルムが電波妨害をしていたということですか?」

「おいおい、IS学園のカメラってのはチャフ程度で通信できなくなるような代物なのか?携帯電話じゃねぇんだからそんなことはねぇだろ。そもそもフィルムが撒かれていたのはアリーナ内だけだろ。シールドの外にあるカメラなら問題ないんじゃねぇのか?」

「え、あ、確かにそうですけど…」

「ま、わかってて聞いたんですけどね~…さて、こいつ単体でもある程度ジャミングはできるがそこまで高い効果は発揮できねぇ。ま、所詮チャフだ…だがこのフィルムは温度変化でフィルム同士が簡単に吸着、結合し、その際に電波障害を引き起こす微弱な電磁波を放出する。これがアリーナ内でこの現象が絶え間なく行われていたわけだ。これでジャミングの原理はわかったか?」

 

 

「ちょっとまて、そのフィルムの効果が絶大なのはわかった。だがこれ程までに強力なジャミングを一瞬で実行するシステムが何故レギュレーションに引っかからない?」

 

 

 

これ程の破格性能が備わっているのなら、どんな戦闘であろうと相手のセンサー系統を全て無効化してしまえばワンサイドゲームになることが決まっている。

そんな機体がなんの制限も設けられていないということ自体がおかしいのだ。

 

 

 

「ところがどっこい忌々しいことにISには微っ妙な効果しか無いんだわこれが…できてハイパーセンサーの機能低下とかコアネットワークの阻害ぐらいじゃね?そもそも今回は大佐殿がしょっぱなから限界出力で放出したから一瞬でジャミングがかかったわけだが、そんな舐めプは対IS戦じゃまずできねぇよ…出力がでかいと移動に支障が出るからな」

「なるほどな…ジャミングについてはある程度わかった。だが一番の問題はあの爆発についてだ…虚空が突然爆発したように見えたが、あれはなんだ」

 

 

あれこそが問題だ。

あの規模の爆発がどうやって引き起こされたのか分からない…

何もない空間が突然爆発するような現象、そんなことが実際に起きてしまえば対処のしようなどない。

 

 

「大体当たりだ。あの爆発は散布されたフィルムが起爆したものだ。肉眼では虚空が爆発したのと何ら変わりはねぇよ」

「は?…フィルムが起爆だと?」

「正確には違う。さっきも説明したが、このフィルムは温度変化で結合する。結合したフィルムは素敵なことに、ニトロ系の化学物質…つまりはc-4みてぇな爆薬に変化するわけだ。フィルム本体にも爆発性はあるんだが、起爆するにはある程度の塊が必要だ。そんでもってこいつは物体同士が吸着し合う…あとは適当にISの武装とかにある程度張り付かせてドカンっことだ」

「あ、あの…そのフィルムって肉眼で捉えられないほど微細なんですよね…吸い込んだりしたら危ないんじゃ…」

「残念なことに毒性も無い。ご飯にかけて食うみてぇに大量摂取しない限り害はねぇよ…多分。それにオーギルの信号がない限り、アリーナでキャンプファイアーしたとしても起爆しねぇよ。あ~でも今のアリーナは酸素ねぇから火自体つかねぇか」

「いくら安全と言っても吸い込んでしまって、もしもということもあるだろう」

「俺から言わせればその場でISに殴り掛かられたりする方が十分に恐ろしいけどな」

「まぁそれもそうかもしれんが…これにしたってあそこまでの威力を出せるというのはどうなんだ?」

 

 

「あれだけでIS仕留められるほどの威力はねぇ。ま、ISに対してはな…」

 

 

 

ISに対しては…そうだな、これは…ISは兵器なのだから先に上がった安全性などより、より強力な暴力性の方が重視されて当然か…

そう、今のISは兵器なのだ…

 

 

「待たせて悪いね大佐殿ー、ロングライフル展開してくれー」

『了解しました。弾はどうしましょうか?』

「全種一発づつ分けて地面に向けて撃ってくれ」

『信管と雷管どちらにします?』

「信管だ」

 

 

キンブリーがライフルを地表に向けて構える。

 

轟音とも呼べる炸裂音が数回鳴り響き、十数メートルの土煙がいくつも作り出される。

先ほどの爆発に比べれば大したことはないが、十分な破壊力と言える。

 

 

「か、かなり大口径の実弾みたいですね…」

「あ~なんだったか…80mm実弾ライフルだったか?」

「えぇ80mm特殊弾頭ロングバレルライフル砲です」

「は、はちじゅうみり!?アンロックユニットならまだしもライフルで80mmって…」

『なかなか気持ちのいい反動ですね…これ』

「これ生身で撃ったら撃つ側がミンチになるけどな。主任の案では本来秒間10発のフルオートになる予定だったんだが、ISは耐えれても中身ぐちゃぐちゃになるからセミだ…あとアンダーレールについてんのが単発フレシェット弾だ」

「この際遠慮しないで言わせてもらう…フィルムのこともそうだが、こんなものを作って喜ぶとは…変態どもが!!」

 

 

ついに言ってしまったが、事実だ…後悔はしていない。

広範囲の無差別攻撃に、80mmフルオートライフルだ…

変態以外の何者でもないではないか!!

"あいつ"も相当変態だったが、この開発チームも大概だな。

 

 

「おいおい俺まで変態扱いされんのは気分わりぃな。こんなきめぇ武装開発すんのは主任で、それを使用可能段までセーブすんのは俺なんだぞ?俺はむしろ真人間なんだよ傷つくわ~」

「すまないな。だがお前も大概な発言をしているんだが?」

「はいはい悪うござんした。ま、主任が頭おかしい事実だから構わねぇけど…んじゃ大佐殿、信管を順番に起爆してくれ」

 

 

起爆?また爆発するのか。

この短時間にここまで爆発に慣れてしまうというのも異常だが、どれだけ爆発好きな機体なんだ…

 

 

『了解です。少々お待ちを…それでは順に起爆していきます』

 

 

キンブリーがバレルの根元あたりを微かに動かすと、アリーナ地面に空いた銃痕の一つが軽い破裂音を鳴らして爆発する。

大した爆発でないことに安堵していると、金属同士が激しくぶつかり合うような甲高い音がアリーナのバリアから響く。

 

 

「右手に見えますのが~ベアリング炸裂弾頭でございます~。あれは見たまんま地雷だ。それじゃあ次は―――――

 

 

「おい!もっと言うことあるんじゃないのか?」

「これ以上筆舌に尽くしがたいほどに完結してんだよ…あー弾頭内に仕込んだ鉄球がたくさん飛んできます以上。それでお次は…」

 

 

信じられないぐらい適当に弾頭の説明を済ませていくこの男…

紹介を一つ済ませる事に、轟音が鳴り響きクレーターが増えていくアリーナ。

キンブリーからは時折マイク越しに笑い声が聞こえ、木原数多は一々起爆させてから弾頭の説明を続け、川尻浩作は愉悦を含んだ表情でアリーナを見下ろしている…こいつらは心底楽しそうだが、我々ふたりは凄まじいストレスにさらされていた。

山田先生とは違ったベクトルで限界に近かった。

 

 

「んじゃ、これで以上か…大佐どのー、戻って来てくれー」

 

 

やっと説明が終了し、改めてアリーナを覗き込む。

複数のクレーターが平地を崩し、所々で炎が揺らめいている…誰が片付けるのだ…

 

そのことを告げようと振り返ると、既に木原数多は姿を消していた。

未だ額から血を流しながら帰り支度をするこいつに言うのも忍びないので、特に言及することもなくそのままアリーナを出させた。

二人が帰ったことによって、どっと疲れがのしかかる。

 

 

「「…はぁ」」

 

「おや、お二人共どうかしましたか?」

「あはは…ちょっと疲r―――――

 

 

「キンブリー、ローゼンタール本社と連絡を取る機会があったら言っておけ…木原数多という研究員を二度と寄越すなとな…いや、お前らもう来るなと言っておけ…いいな?」

「あぁ、なるほど…それは…なんというか、ご愁傷様です」

 

 

 

言葉を選ぶキンブリーに苦笑いを浮かべる山田先生…

一番被害を被っていたのは山田先生なのだ、これは仕方ない。

今夜酒につきあわそうと思っていたが…そっとしておくか。

 

 

 

こうして多くの人にとってとてもとても長い一日が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…きゃぁあああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

セシリア・オルコットが爆炎切り裂きながら、勢いよくアリーナの地面に激突する。

シールド内が爆炎に染め上げられたことにより、観客席は騒然とする。

だがそれとは真逆に、私はアリーナの中央で歓喜に打ちひしがれる。

 

 

 

 

「んん~~~~~……良いっ!!実に素晴らしいっ!!良い音ですよ!セシリア・オルコット!!」

 

 

 

 

良い…やはり絶叫の伴う爆発は何物にも代え難い…

絶叫の質、量は戦場のものと比べるまでもないが、やはり良いものだ。

 

 

 

 

「どうしましたかセシリア・オルコット…この程度で倒れるなんてことはないでしょう?私を打ちのめすのでしょう?まだビットが破壊されただけです。新たな武器を展開してください…それができなくとも、まだ手と足があるでしょう?それとももう声も出せませんか」

 

 

 

 

彼女が落下した土煙の舞う地面にゆっくりと降下する。

これで倒れていては拍子抜けもいいところだ。

試合が終了していないということは、少なくとも相手のシールドエネルギーは0ではない。

センサーに反応もある…

だが気絶しているということも…私はそんな考えを起こしながら地上に足を付け相手を確認すべく、降下を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

カシャンッ

 

 

 

 

 

 

 

私が地に足をつけようとした瞬間、土煙を突き抜け猛スピードの何かが二つこちらに向かってくる。

 

 

「!!っミサイr―――――

 

 

回避行動もままならないまま、今度は私が爆炎に飲み込まれる。

 

 

「くっ…げほっけほっ…か、かかりましたわね!ブルー・ティアーズには6機ございましてよ!宣言通り、あなたを打ち負かせて差し上げましたわ!」

 

 

土煙の中からセシリア・オルコットが飛び出す。

機体は所々にダメージが見受けられ、ライフルの銃身は若干曲がってしまっている。

だが勝利を確信した彼女にとっては、取るに足らないことのようだ。

 

未だに黒炎を上げる機体周囲、半分以上削られているISなら一撃で落ちるかもしれないだろう……だが

 

 

 

 

「…クフフ…フハ、フハハハハハハハハッ!!」

 

「なっ!?何故ダメージを受けていませんの!?」

 

 

 

 

黒炎を払い、赤いカメラアイが相手を見据える。

機体はレーザーによる損傷は見受けられるものの、焦げ付くような傷は見当たらない…それもそのはずだ。

 

 

「何を驚いているんです?先程の私の攻撃を見ていませんでしたか?この機体に爆破耐性があることぐらいお分かりになるでしょう?」

 

「そ、そんな………くっ、い、インターセプター!!」

 

 

 

彼女はそう叫ぶと、ライフルを投げ捨て小型のブレードを展開する。

ブレード以外のすべての武装を破壊されたにも関わらず、彼女のその目には闘志が宿っている。

やはり彼女の過去、プライドが負けを許さないのだろう…

スラスターの出力を上げて私に真っ直ぐ刃を向け加速する。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…そうだ、だからこそ……その時あなたは、美しい…」

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!?」

 

 

急接近する彼女に向かって、軽くライフルを向ける。

近接戦に慣れていないのだろう、彼女は勢いを殺す暇も距離もなく、ライフルが胴体に突き刺さるようにぶつかり前のめりになる。

 

 

 

 

 

 

「よかったですよ、あなたとのワルツは…」

 

 

 

 

 

 

そう告げると…私はそっと引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

ビーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 

 

 

 

 

試合終了を知らせるブザーが鳴り響く。

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者、ゾルフ・J・キンブリー』

 

 

 

 

 

 




やっとこさ決闘が終了いたしました。


初めての戦闘描写ですので何かと拙い部分も多かったかと思います。
あと私はミリタリーについて詳しくないので、取材不足で間違った知識やいい加減な説明になっているかもしれませんが、脳内補完でお願いしますσ(^_^;)
キンブリーのロングバレルライフルですが、GN-xⅣのロングライフルみたいな見た目です。
少しずつですが、書き方もいい方向へ改善できるよう努力してまいりますので、見捨てないでください(;_;)


少し忙しい時期に入りますので、投稿がまた遅れてしまうかもしれませんが、ご了承くださいませ。


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