IS〈インフィニット・ストラトス〉 紅蓮の錬金術師   作:焼酎ご飯

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…遊んでいました…ブラッドボーン楽しいです…ごめんなさい…
別の新作との同時投稿ということもあり…とてつもなく遅くなってしまって本当に申し訳ありません。


それはさておき、皆様お待たせいたしました。
今回ようやく本来のお話に戻れました(実に五話ぶり


会遇

「死ねやオラァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

黒煙を切り裂き、鋼鉄の蹴りが私の腹部に突き刺さる。

 

 

「ッ!!ガ…グァッ…」

 

 

予想だにしない鋭い攻撃に、私は為すすべなく壁に衝突する。

砲弾のような速度でぶつかった衝撃が全身を覆うが、幸いにも保護機能のおかげで気絶するようなことはなく、壁にめり込んだ体を起こすべくすぐさま体勢を立て直す。

 

 

「まだdーーーーー「遅ぇんだよボケがァァァァァァァァァァ!!」

「ぐっぉ!!??」

 

 

体勢を立て直した直後、視界いっぱいに広がる鉄の拳。

 

次の瞬間、私は頭を軸に回転しながら吹き飛ばされ、地面を数十メートル転げ回った挙句に壁に上半身が突き刺さる形で停止した。

 

 

『ビーーーーーーーーーー!!』

『あーハイ。ストップストップ~。とりあえず大佐のエネルギーがゼロになったからテスト終了っつーことで~。お疲れさんしたー』

 

 

戦闘終了を知らせるブザー音が鳴り響き、先程までの雰囲気とはえらく場違いな態度の声が聞こえる。

だがエネルギーの切れた動かないISを身にまとい、尚且つ体半分が壁に埋まった私はどうすることもできずにもがくことすら叶わないでいた。

 

 

『とりあえずダリ夫は大佐殿引き抜いて戻ってきてくれ』

「つーわけで大佐。容赦なくやらせてもらいましたが、まぁ軽い仕返しとでも思っておいてください」

「…あなたも上司に罵詈雑言を浴びせた上に、ここまで完膚なきまでに叩き飲めせたのなら満足でしょう。このような滑稽な姿を晒し続けるのも悲しいのでさっさと引き抜いていただけますか?」

「もう少し眺めて写真でも撮りたい気もしますが分かりました。あなたの言うとおりそれなりに満足できましたしね…よっと」

 

 

足を掴まれ乱雑に引き抜かれる私。

エネルギー切れによって動かぬ体を小脇に抱えられながら、最早私という個を完全に破壊する程の羞恥の数々に震え、されるがままに運ばれていく。

 

 

 

 

 

 

 

「はいお疲れ様。そんでもって測定結果を一言で言うならヤバイ。すこぶるヤバイ」

「だめだぁ~主任。大佐のデータはともかくとして、こっちの人間もどきの方は調べることが多すぎる」

「と、このように木原君でさえお手上げ状態な訳だ。だがまぁヤバイつっても悪い意味じゃあない」

「それは良かった。私も部下にコテンパンにされた甲斐がありました」

 

 

エンピオ大尉を紹介したことによる阿鼻叫喚は収まり、上の穴から下の穴まで隅々調べ上げられた大尉は、可動データを取るために私と模擬戦を行っていた。

模擬戦を終了させ実験場から戻り、再び白いスーツに身を包んだ私は出されたコーヒーを片手に先程の測定内容を報告される。

ダリ夫という素敵なあだ名を貰った件の部下はというと、秘書のキャロル・ドーリーと木原数多に何やらコードのようなものを大量に接続されている。

 

 

「まず大佐の搭乗データに関してだが、一見した程度では特にこれと言った情報は得られなかった。それこそキャロりんが乗っている時と殆ど違いがないぐらいにだ」

「では男性操縦者に関するデータは得られなかったと?」

「いや、特に違いがないということがわかっただけでも行幸だ。それより問題はあんたの部下の方だ」

 

 

それはそうだろう。

錬金術が関与したことによって、彼はイレギュラーの塊のような存在へと昇華したのだ。

無論彼らには錬金術の存在を明かしており、存外すんなりと受け入れられた。

 

主任いわく、「オカルト?いいねぇ!!ISの無人機の研究そのものがオカルトの域みたいなもんだからむしろ納得だわ!」とのことで、その他二人も驚きはしていたものの受け入れるのにさして時間はかからなかったようだ。

 

 

「俺たちが観測できるシステム内部の情報に関しては特に目新しいことは無かった。だがこいつは無人機という扱いなのにも関わらず、搭乗者レコードがバッチリ記録されてんだこれが」

「では彼本人が搭乗しているようにシステムに誤認させているということですか?」

「まぁそう考えるのが普通だよね~大佐の話じゃあいつはシステムに介入できるそうだから不思議でもなんでもないわけだが、もう一つ面白いことがわかった。大佐、あいつと戦ってみた感じどうだった?」

「どうもこうも…ISでの戦闘経験自体少ないので強くは言えませんが、とても人間ができる動きとは思えませんでしたね。強さがどうとかいうレベルではありません」

 

 

事実彼との戦闘において、私は一度たりとも攻撃を浴びせることができなかった。

それどころか視界収めることがやっとで、ついぞ訪れた攻撃の機会もありえない角度で躱された。

私の攻撃が当たらないどころか、彼は武装を一切使用せずに恨みのこもった殴る蹴るの攻撃によって私を打ちのめした。

まさにワンサイドゲーム、手も足も出ないとはこのことだった。

 

 

「まさにその通り、レコードから算出したあいつのIS適正判定は最高値を超えて測定不能だ」

「…Sランクより上のパイロットということになると?」

「まぁあくまで適正値だ。まぁそりゃぁそうだよなぁ?あいつがISそのものなら適正値も糞もない訳だ。適正判定は伝達速度やら感覚同調を元にしている。ダリ夫はそこに誤差が入り込む余地がない……まぁなんにせよ?今分かることはこれぐらいだ」

 

 

そう言い切ると、社長は頭にバケツを被ったままコーヒーを一気に呷る。

ホログラム故に普通に飲めているわけだが、傍から見れば最早不気味である。

 

 

「ダリ夫の詳しい解析はすぐにでも始めるつもりだが、とりあえず大佐のデータはこんなもんでいいわ。近々また来てもらうことになるかもしれんが」

「分かりました、では私はそろそろお暇させていただきますかね。今日中に色々と用事を済ませてしまわなくてはいけませんので」

「あ~ちょっと待った大佐!帰るんなら俺から素敵なプレゼントをね…キャーロり~ん、あれ持ってきて!」

 

 

私が立ち上がろうとすると、大げさに手を突き出して引き止められる。

プレゼント?ISに関係する何かだろうか?

すると数秒と待たずに、机の上にアタッシュケースが置かれる。

 

 

「これは一体?」

「ま!とりあえず開けてみてよ」

 

 

ホログラムの奥でニヤついていることが手に取るようにわかるほど上機嫌なこの男。

訝しみながらもアタッシュケースのロックを外すと、中で何らかの機械が作動し自動でケースが開かれる。

ゆっくりと開かれたその中には、つい最近見かけた奇妙な物体が鎮座していた。

 

 

『やぁ!こんにちわ!』

「そいつはさっきロールアウトした10機目の掃除ロボット『ユリウス』だ。色々役に立ってくれると思うから、可愛がってくださいねー」

『よろしくね!大佐!』

 

 

現れたのは、この部屋を大量に徘徊している円盤型の掃除ロボットと同じ型をしたものだった。

可愛らしい声で話すそれは、意気揚々と私に挨拶し、身動きの取れない箱の中でぐるぐると回転している。

 

 

「よろしくお願いします。…しかしコレは思わぬプレゼントですね。掃除好きとしてとても嬉しい限りです」

「お!気に入ってもらえて良かったな!」

『やったぁ!ここから出る個体は僕が初めてだからいっぱい経験値貯めちゃうぞ~!』

『うわぁ~いいな~』『ずるいぞー』『ここに戻ってきたら記憶同期させてよね!』

「あーそうだ、大佐には色々説明しておくべきことがあるな。こいつは自己学習能力を持ったAIだ。経験したことを分析、学習するから色々と喋ってやると面白いかもな。あと注意すべきことはーーーーーーーーーー

 

 

ユリウスを気に入った私を見て、さらに上機嫌になった彼はその後延々と機能説明を続けた。

本来解析すべき大尉を放置し、つらつらと自慢話のように彼を説明する様は親ばかの様相を呈していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、はい。この先ですね…ありがとうございます」

 

 

既に日が暮れたIS学園最寄りターミナル。

魔改造が施された制服と、ツインテールの影が地面に伸びる。

重いボストンバッグを背負い、係の人に向かうべき方向を聞いてやっとの思いで到着した目的地のIS学園なわけだが、私の心は穏やかではなかった。

 

 

「……どんだけ…どんだけ広いのよ!!この学園!!!!!」

 

 

そう、私"凰 鈴音"は、転入という扱いでIS学園の地に遠路遥々やってきたはいいのだが、この広大な敷地に嫌気がさしていた。

教員棟の受付まできてくださいとかなんとかいう事なのだが、さっきの係の人の説明じゃどの建物か全くわからないほどに奇抜な建物が密集している。

 

 

「そもそも建物までの道が長すぎるわ!しかも何あの意味不明な形した物体!あれ建てたやつセンスぶっ壊れてるわね…というかやっぱでかいわよこの学園!もう5坪ぐらいでいいよ!縮んでよ!」

 

 

私の叫びは静かに波を立てる海の帳に散り、虚しさだけが押し寄せてきた。

しかしこのままここにいても埒があかない…というか軽く泣いてしまいそうなので、私は仕方なく建物の方へと足を進める。

 

 

「そもそも私代表候補生なのになんで迎えとか来ないのよ…ブツブツ…大体何なの?"キンブリー大佐"には絶対に失礼の無いように?二人目だかなんだか知らないけど何で私がそんなこと言われなきゃならないのよ…ブツブツ…」

「おや?こんばんわ。こんな時間にどうしましたか?」

「へ?」

 

 

私が恨み節を唱えることに夢中になっていると、すぐ横から声をかけられる。

今のを聞かれていたのではと思い慌てて振り向くと、すぐ横に無駄にごつい車が止まっており、左側の運転席の窓からこちらに声を掛ける謎男の姿があった。

IS学園に学生以外の男?

 

 

「えっと…そのー」

「学園内とはいえ一応夜道です。それにここから寮まで歩けばそれなりに時間がかかりますし、荷物も重いでしょう?…よかったらお送りいたしましょうか?」

 

 

私が戸惑っていると、男は凄まじくありがたい提案をしてきた。

改めて観察してみると、白いスーツを着ている落ち着いた雰囲気の男の人で、学園敷地内にいる以上部外者ではないだろうという結論に至る。

 

 

「あ、えっと…じゃあお願いしてもいいですか?」

「えぇ構いません。では後部座席へどうぞ」

 

 

多分普通科目を教えてる先生とか、機材メンテナンスとかの人というなんともふわっとした当たりをつけ、彼の言葉に甘えることにした。

最悪怪しい奴だったとしても、こっちにはISがあるのだ。

言われた通りに後部座席の扉を開け、ボストンバッグを置こうとするーーーーーーが、そこには先客が乗っていた。

 

 

『こんばんわ、僕ユリウス!キミはだぁれ?』

 

 

そう、そこにはすごくカワイイ声で挨拶をするルンバが乗っていた。

というかアタッシュケースの中でグルグルと回っていた。

 

 

「え?えっと…ふ、凰鈴音よ」

『よろしくね鈴ちゃん!』

 

 

ドアを閉めながら、恐る恐る挨拶を返す。

するとどうだろうか?しっかりと挨拶を返し、更にはいきなりあだ名で呼んでくるあたりとても可愛らしい。

その反応に頬を緩めていると、車は走り出し、私はこのユリウスと名乗るルンバと並んで揺られ始める。

 

 

「では寮近くでまでお送りしますね」

「あの、手間でなければ教員棟の近くで下ろしてもらいたいんですが…」

「分かりました。私もそちらに用事がありますのでちょうど良かった」

「あ、ありがとうございます」

『ねーねー、鈴ちゃんはこの学園の生徒なの?』

「ん?そうよ。今日付でIS学園に転入してきたの……それより、あなたは何なの?見たところルンバっぽいけど…最近のルンバってしゃべるのかしら?」

 

 

もしそうなのなら一台欲しいところだ。

こんなに積極的に話しかけてくる上に可愛いく、おまけに掃除までしてくれるのならそれは欲しくもなるだろう。

しかし…この人は何故車にルンバを乗せているのだろうか?

 

 

『違うよ。僕はローゼンタール社製のヴィスハイトっていう掃除ロボットだからルンバじゃないよ!僕は社長に作られた10機目の個体で、僕が今こうやって鈴ちゃんと会話できているのは社長が作ってくれたAIのおかげなんだ!』

「へ~、じゃああなたはお店では売られていないのね。…っていうかローゼンタールって言ったらISの企業だったような…ISパーツ以外にもこんなの作ってるのね」

「いえ、それは完全に社長の趣味だそうです。それにしても転入生でしたか…このような時期とは珍しいですね。普通なら送迎がありそうなものですが、何かありましたか?」

「そうなんです…聞いてくれますか?!ここについてからもそうだったけど、日本に来るまで一切手引きなしですよ?!これでも代表候補なのになんなのよこの扱いは…」

 

 

ユリウスとの会話により煮えくり返っていた心は和んでいたのだが、運転席に座る彼の言葉で再び怒りがふつふつと沸き上がってくる。

 

 

「代表候補生の方でしたか。確かにそれは随分な扱いですね」

「そうなんですよ…そのくせ私には一々鬱陶しい指示ばっかりしてくるんですよ?!あーもう…これから一夏に会えるっていうのに…」

『鈴ちゃん元気出して!』

「ユリウスは優しいわね…私の甲龍もあなたみたいに喋れたらいいのに」

 

 

やはりこの子は癒しだ。お持ち帰りしたい程に…

しかしいつまでも怒っているわけにはいかない。

これからずっと会うことを楽しみにしていた一夏と再会できるのだ。

きっとあいつはあの頃よりもカッコ良くなってて…あの性格も少しはマシになってたら嬉しいわね。

そんなことを考えニヤニヤとふやけた顔が、窓ガラスに写っていた事に気がつき顔を引き締める。

 

だがその時、私は窓の向こうにあるものを見つけてしまった。

一夏だ。私がたった今まで妄想していたとおり、あの頃よりも逞しく映る一夏の姿が少し遠くの場所に見えた。

 

それだけならば良かった。だがそこには…一夏のとなりには無視できない人物がいた。

 

一夏と親しそうに接する女性…胸の部分が大きく出ているところを見るに、いわゆる"巨乳"というやつだ。

私がこんな目にあっていたのに、こいつは私の知らない女…しかも巨乳といちゃついていたのか…

 

内心お門違いなのは分かっていたのだが、ドス黒い感情が沸き上がってくる。

 

 

「もうそろそろ到着しますよ」

「……すみません。ここで下ろしてください」

「む?…ふむ、分かりました」

 

 

彼は何かを察したのか、車を路肩に寄せ停車させる。

私はボストンバッグを背中に担ぎ直し車を降りる。

 

 

『鈴ちゃんばいばーい!』

「うん…さよなら…」

 

 

バタムッ と後ろ手にドアを閉める。

 

 

「教員棟はここを真っ直ぐ行った所になります。それではお気をつけて」

「…ありがとうございます」

 

 

そして車が発進し、ある程度遠くまで進むと建物の影に消える。

それを見届けた私は片足を曲げるようにしゃがみ、もう片足を後ろに伸ばす。両手をそっと地面につき、クラウチングスタートのような構えをとる。

 

 

そして大きく息を吸い込み、全ての感情とエネルギーを爆発させ走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

「一夏の、一夏のアホーーーーー!!あんたなんて電車で腹痛に襲われた挙句に運転見合わせにあって悶え苦しめばいいのよ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

完全に八つ当たりな叫びを夜空に響かせ、風邪を切り裂きながら全力疾走で教員棟へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

その後思ったより近かったので半泣きのまま受付を済ませたところ、先ほどの叫びを聞かれていたのか受付の人によくわからない励ましを受け、冷静になった私は赤っ恥を晒す羽目になったのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「IDの確認が完了しました。どうぞお入りください」

「どうも」

 

 

生徒証を提示し、学園敷地内へと車を走らせる。

オーギルを受け取りローゼンタールを後にした私は、多々ある用事と手続きを済ませ、IS学園にまで戻ってきていた。

貴重とされるコアのはずなのだが、大尉のボディが希少性を遥かに上回っているとのことで、二つ返事で了承された。

だが不服なことに、私の都合で動かせる部下はそのコアと交換してしまった為に、私自身が日が暮れた道で車を走らせている。

 

 

『ねぇねぇ大佐?大佐はなんで車の運転ができるの?国際免許って18歳以下は取れないって書いてあるよ?』

 

 

後部座席から合成音声で作り出された愛嬌のある声が聞こえる。

その正体は社長に託された掃除ロボットのユリウスであり、充電や整備装置を兼ねた開かれたアタッシュケースの中でグルグルと行き場なく回転している。

このように彼が適度に話しかけてくるため運転中に退屈するということはなかった。

 

 

「確かに私の年齢では取得できませんが、立場を利用して少しお願いすれば取れないことはありません。…自分で運転する日が訪れるとは思っていませんでしたが」

『へぇ~、大佐は大佐だからそういうことができるんだー』

「それと男性操縦者というところが手伝っていますが、概ね正解です。あまり褒められた事ではありませんがね……そもそも年齢のことを指摘するのであれば私の年齢で大佐というのもおかしな話です」

『大佐は肉体年齢より精神年齢が一回り以上高いんだよね?それに従軍者だったのなら人材としては申し分ないと思うな~。でもでも肉体年齢の問題もISが軍の主体移り変わるに連れて、上位階級の平均年齢は随分と下降しているから大した問題じゃないと思うよ?』

「そのようですね。先日お会いした黒兎隊の少佐も随分と若い方でしたし、顔見知りの中には15才で少佐権限を振りかざしていた子供もいます。そう考えるとあなたの言うとおり私の肉体年齢も大した問題ではないのかもしれませんね……おや?」

 

 

赤い小さな錬金術師のことを微かに懐かしんでいると、街頭が照らす薄暗い道の端に"見覚えのない"人物が何やら頭を抱えて暴れていた。

とうに外出時間は過ぎているであろうにその人物は制服姿で表に出ており、尚且つ"見覚えのない顔"という所に引っかかる。

確認の意も含め、車をすぐ横に止めて話しかける。

 

 

「こんばんわ。こんな時間にどうしましたか?」

「へ?」

 

 

再度顔を確認するが、やはり見覚えの無い顔だ。

他学年を全てとまではいかないものの、学園内の人間の顔は大概記憶しているだけに気になったが…おそらく私が目にしたことがない人物だろう。

そもそもこのような奇抜なデザインの制服や特徴的な髪型を忘れるはずがない。

そして大きなボストンバックを担いでいるところを見るに、途中入学者か何かだろうか?

 

 

彼女は私の声に気が付くと、すこぶる驚いたように目を見開き挙動不審になっている。

 

 

「えっと…そのー」

 

 

何やら口ごもり目を泳がせているのだが…先ほどの一人で暴れまわっていたアレのせいだろうか?

 

 

「学園内とはいえ一応夜道です。それにここから寮まで歩けばそれなりに時間がかかりますし、荷物も重いでしょう?…よかったらお送りいたしましょうか?」

 

 

まぁ正直そんなことはどうでも良いのだが、話しかけてしまった手前このままここに放置するのも気が引けるのでそれらしい提案をする。

 

 

「あ、えっと…じゃあお願いしてもいいですか?」

「えぇ構いません。では後部座席へどうぞ」

『こんばんわ、僕ユリウス!キミはだぁれ?』

「え?えっと…ふ、凰鈴音よ」

『よろしくね鈴ちゃん!』

 

 

ドアが閉まったのを確認して車を走らせる。

早速ユリウスの声が発せられ彼女の名前が凰鈴音ということがわかったが、やはり知らない名前だ。

その後ユリウスと彼女の会話によって、私が気にかけていた情報は全て引き出されることとなった。

予想通り彼女は転入生であり、更には専用機持ちの代表候補生とのことだ。

そして彼女の母国はおそらく清…もとい中国らしく、その母国のあまりにもお粗末な対応により立ち往生していたところを私が声を掛け、今に至る。

 

 

「そのくせ私には一々鬱陶しい指示ばっかりしてくるんですよ?!あーもう…これから”一夏”に会えるっていうのに…」

『鈴ちゃん元気出して!』

「ユリウスは優しいわね…私の甲龍もあなたみたいに喋れたらいいのに」

 

 

 

ユリウスの仕事により愚痴は回避されたのだが、面白い言葉が聞き取れた。

また彼の知り合いかと考えながら運転を進めていると、目的の教員棟の近くまでやってくる。

 

 

「もうそろそろ到着しますよ」

「……すみません。ここで下ろしてください」

「む?」

 

 

先程までの明るい声色は失われ、随分とくらい声が後ろから囁かれる。

突然のローテンションに、ルームミラーで後ろを確認してみる。

すると彼女の顔は影に覆われており、何やら瘴気のようなものまで見えてきそうな負のオーラを放っていた。

 

 

「…ふむ、分かりました」

『鈴ちゃんばいばーい!』

「うん…さよなら…」

「教員棟はここを真っ直ぐ行った所になります。それではお気をつけて」

「…ありがとうございます」

 

 

あまり深く関わっても良いことはなさそうなので、その場で停車し彼女を下ろす。

目的地の場所を伝え、駐車場へと車を走らせる。

 

 

「…何があったのかわかりませんが、随分と不機嫌になっていましたね」

『そうなの?僕なにかしちゃったのかな?』

「突然のことですし、我々が原因とは思えませんが…まぁ済んだことは構いません。ユリウス、彼女についての情報で何かわかりますか?」

『凰鈴音 15歳。中国の代表候補生で、専用機は第三世代機『甲龍』。IS適正は『A』ランクで、代表候補生として専用機が与えられたのは割と最近みたいだよ。数年前まで日本にいたみたいで、織斑一夏とは交流があったみtーーーーー「一夏のアホーーーーー!!あんたなんて電車で腹痛に襲われた挙句に運転見合わせにあって悶え苦しめばいいのよ!!!!!!!」

 

 

完全に締め切った車内にいても聞こえてくる地味に恐ろしい内容の怒声。

つい最近聞いたその声は、先程までこの車に乗っていた彼女の声で間違いないだろう。

そして彼の知り合いという時点で大体のことを察する。

 

 

『ねぇねぇ大佐?電車でお腹が痛くなることはそんなに大変なの?』

「そうらしいですよ。エンピオ大尉のお話では死を覚悟するほどのものらしいです」

『へぇ~僕も体験してみたいな~』

「何はともあれご愁傷様です。さて、到着しましたよ」

『わーい大佐の部屋たのしみー!』

 

 

車から降り、背筋を伸ばす。

紆余曲折ありとてつもなく濃密だった三日間の旅がついに終わり、明日から学生生活へと戻ることになる。

そう考えると少しばかり面倒に思える。

だがやるべき事が山積している今の状況に満足感も感じる。

 

 

「さて、まずは石の実験を再度解析する必要がありますね…」

 

 

早速明日からのスケジュールを考えながら、後部座席を開けアタッシュケースを手に取る。

 

 

「ともあれ、これからよろしくお願いしますね」

『よろしくー!』

 

 

部屋の新たな住人となる彼を片手に引き下げ、私はくたびれた足でようやく自室へ戻るのであった。

 

 

 

 




さて、今回”鈴”の登場ということになりましたが…キャラ崩壊がすごいですね(白目

彼女は原作では不遇ということもあってか、割と優遇させたく思ってしまうお気に入りのキャラです。

そして彼女と仲良くしていたお掃除ロボットの名前についてですが、元ネタはNATOフォネティックコードが元ネタとなっております。


キャラ崩壊ということで、改めてこの作品のキンブリーさんを振り返ってみると……なんだこれは…
別の新作では、キャラ崩壊させないよう頑張ろうと思います(;´Д`)



今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^

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