モンスターハンター×日本国召喚   作:BOMBデライオン

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作者は博多弁にわかです…


3話:生態系の大変動

 福岡県 とある住宅地──

 

 

 日本という国家が異世界に転移したと言うが、千葉県で怪獣が現れて多数の一般人を殺害し、自衛隊の討伐隊ですら数人が死亡したという事件以来、特に異世界らしい出来事は起きていない。

 テレビは連日、怪獣の研究結果の報告を始め『海自の護衛艦が南方に新大陸を発見!』や『未知の動植物多数!』などと騒ぎ立てているが、日本国民の生活にこれと言った変化は現れていなかった。

 

 夫はいつも通り早起きして職場に向かい、長男の小学校は通常通り授業が行われ、電車やバスなどの公共交通機関も普段通りの営業を再開した。航空会社は国際線が無くなったものの、その分国内線の本数を増やして運航を再開したらしい。

 SNSも今は落ち着きを取り戻し、ネット上では特に何でもないやり取りが行われている。

 

 強いて言うなら物価が少し高くなったのと、水平線の見える距離が伸びたくらいだが、海から遠いこの場所ではそう言った実感も湧かない。

 

「…あ! ゴミ捨て行かなきゃ!」

 

 やや蒸し暑い快晴の空、異世界であろうと日常風景は全く変わらず、テレビの映像が全てが嘘なのではないかと、つい疑ってしまう。近所の人達とも普段通りの会話を交わし、ゴミ捨て場へと足早に向かう。

 

 ここも全てが普段通り──

 

「ん? ま〜たカラスがゴミ捨て場を漁って…」

 

 否、ゴミ捨て場を漁っているのはカラスではなかった。

 

「な、何よこれ!!?」

 

 いつもゴミ捨て場を漁っているはずの黒いカラスはそこには居なかった。代わりに、蛇に似た頭部と細身の体躯と、そしてその身体には不釣り合いに見えるほど大きな翼を持つ小型の生物──後に『ガブラス(翼蛇竜)』という名前である事が判明──が、ガラガラヘビのように尻尾を小刻みに震わせ、耳障りな音を発生させていたのだった。

 

「け、警察…!!」

 

 即座にあれが異世界の生物であると確信した彼女は、すぐさまスマホに手にし、110番通報をかけた。

 

 生物の名前は『ガブラス(翼蛇竜)』。狡猾な頭脳の持ち主で、主に屍肉や弱った生き物を主食とする小型モンスターだ。ギャアギャアとうるさく喚き立てる姿がいかにもそれらしい小物感を彷彿とさせるが、それでも緊急時でない限り一般人が対峙するような相手ではない。

 

 口から毒液を吐いたり、細長い尻尾から繰り出される一撃は鞭そのもの。翼や足の鉤爪は鋭く、生身の人間では大怪我は必至だろう。

 おまけに身体つきの割に力が強く、抑え込まれると大の大人でもその拘束を振りほどくのは難しい。

 

「ちょ…! 何よこいつら!」

 

 普通は弱った獲物しか襲わないガブラスだが、平和な世の中でブクブクと脂肪をつけた四十路のオバサンは獲物にしか見えなかったようだ。

 

 ガブラスの群れは主婦の周りを飛び回った。逃げる獲物をあらゆる角度から急接近しては離れるを繰り返し、ゴミ袋を振り回す女性に隙が出来るのを待っていた。

 

 ──その時だった!! 

 

「おい! 離れろこん鳥公の!」

 

 女性の窮地に突如現れ、ガブラスの襲撃から女性を守ったのは地元の猟友会……ではなく〝修羅の国〟の異名で有名な博多のヤンキー共である。手榴弾やロケットランチャーが押収される福岡ではヤンキーはさして珍しい存在ではなく、勢いよく振り回された釘バットはガブラスの小さな頭を芯で捉え、脳漿ごと頭蓋骨を打ち砕く。

 予想外の強敵の登場に分が悪いと感じたのか、ガブラスの群れは蜘蛛の子を散らすように大空へと逃げて行った。

 

 今は絶滅危惧種であるヤンキー。たくましい金色のリーゼントが主な特徴であり、その剛腕が生み出す一撃をマトモに食らえば、大抵の小型モンスターなら即座に昏倒するであろう。流石は修羅の国である。

 

「大丈夫か、おばはん!」

 

 ヤンキーのうち1人が女性に手を差し伸べる。しかしその言葉はミスチョイスだ。

 

「うちはまだオバサンじゃなか!!」

 

 そんなやり取りをしている内にも、遠くからパトカーのサイレン音が徐々に近付いてきていた。千葉県で起こった例の事件以来、警察は常に全国規模での厳戒態勢を敷いており、何か異世界生物が関係する通報があった場合、即座に現場に到着できるようにしていたのだ。

 

「やっべ! これ鳥獣保護法どうすると?!」

 

「異世界ん怪鳥にそげな法律の適用さるるわけなかろ!」

 

「とりま逃げるばい!」

 

 風のように登場し、嵐のように害鳥を駆除したヤンキー共も、警察官相手では分が悪いと判断し、蜘蛛の子を散らすように住宅街へと姿を消した。

 ちなみにだが、後に到着した警察官らによって女性は無事保護され、女性を助けた名も無き英雄達はネット上で溢れんばかりの賞賛を浴びたと言う。

 

 


 

 

 千葉県での怪獣襲来、それに続くように起こった福岡県での怪鳥襲撃事件。日本を取り巻く環境が着々と変わっていくのが一般人の肌身に感じられるようになった頃、日本各地では様々な異変が立て続けに発生していた。

 

 例を上げるとキリが無いが、特に世間を大きく騒がせた事例をいくつか紹介しよう。

 

 ・福岡県に出現した害鳥の全国規模での発見(すでに複数の怪我人が出ている)

 

 ・人間の子供並かそれ以上の大きさの虫の大量発生(後に『ブナハブラ(飛甲虫)』と判明)(腐食性のある体液を掛けられた子供1名が死亡)

 

 ・海岸線に出現したスポンジ状の黄色い(たてがみ)が特徴の未知の生物(後に『ロアルドロス(水獣)』と判明)(すでに複数の死傷者が出ているため、海水浴等は全面的に禁止された)

 

 ・北海道の山間部におけるヒグマと巨大昆虫の死闘を撮影した動画(虫は後に『アルセルタス(徹甲虫)』と判明)(戦いはアルセルタスの辛勝で終わった)

 

 これらの他にも未知の昆虫や漂着物が続々と発見されており、報道局は連日連夜入ってくる情報に右往左往し、SNSでの議論は再加熱。日本政府は国家非常事態宣言を発令し、自衛隊や警察機構による全国規模でのパトロールと未知のモンスターを発見しだい即駆除するという方針を決定。

 そして従来の対人間用の武装では怪獣に対して威力不足が目立つため、各種新兵器の開発を急がせた。

 

 他に大きな変化が起こったのは猟友会だ。猟友会はこれからの日本にとっての重要性が高いにも関わらず深刻な人員不足状態であるため、それを解消するために警察と統合、狩猟や基本的な害獣駆除は公務員の仕事となった。

 そして限定的ではあるが、中型怪獣に対しての毒矢(主にトリカブトやフグ毒由来)等の使用が許可されたのだった。

 

 

 現時点での大きな変化はこのくらいである。

 

 余談だが、日本政府は将来確実に起きるであろう食糧や地下資源の枯渇を未然に防ぐべく、新たに発見された新大陸に調査隊を送る予定だそうだ。もちろん数多の怪獣の脅威が予想されるため、フル装備の自衛隊を送るつもりである。

 

 ちなみに現時点で異世界の文明は発見されていない。新大陸は日本国から見て東方を除いた全方面で発見されているが、上空や海岸からサッと捜索した程度では見つからなかったとの事である。

 この世界に文明が存在するのかは一切不明だが、もし存在するのならば彼らと交易を行うことも可能かもしれないと踏んでいた日本政府にとって、この情報はただひたすらに残念であったらしい。

 

 国家備蓄が切れるまで、あと2ヶ月と半分程しか残されていない。政府上層部は飛ぶ鳥を落とす勢いで仕事を終わらせ、1週間という異例の早さで各新大陸へ調査隊が派遣される事となった。

 

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