特に六章以降の部分に関しましては是非原作を見ていただいてからご覧下さい。
プロローグ/Takeover the karma①
「―――――おお、ジャンヌ…!」
禍々しき邪竜――――ファヴニールを従え、憎きフランスの裏切り者共を火炙りに、あるいは亜竜の餌にしていく己が聖女のその姿にジル・ド・レェは己の中で燃え盛る憎悪の炎が歓喜の声を上げるのを感じ取って、否。幸福の絶頂にあった。むしろ聖杯を手にジャンヌと出会えてからは常に絶頂にあると言っても過言ではないが。
本来であればこのまま終息していく百年戦争―――そのキッカケとなった聖女ジャンヌ・ダルクの死。それを覆し、狂った歴史を決めた汚物どもを蹂躙しつくし、ジャンヌの死を甘んじて受けて入れている世界を消し飛ばす。
そう、そのためならば邪悪なるものどもであろうと利用し尽くすと決めたのだ。
そして実際に、それは叶った。
あの清廉な聖女が魔女とされる、世界が間違っているのだ。奸智が正義を上回るのならば、己も手を染めよう。あの聖女が魔女だというのなら、その真逆であれば聖女だとでも? ああ、ああ! そうでしょうとも! ジャンヌであれば、例え反転しても間違いなく聖女に違いありますまい!
“そちら”の方が好みであるというのなら――――願おう、聖杯に。
“ソレ”を受け入れられぬというのならば。来るだろう、彼女は。そして知ってもらいたい。真の怒りを。このフランスに、救う価値などなかったのだと。
不意に、膨大なエーテルが渦巻く。
如何にファヴニールや眷属たる亜竜により擬似的な神代回帰に近い状態であろうと、ありえないはずの感覚。間違いなく宝具――――人の願い、概念の結晶、編まれた幻想たるノウブル・ファンタズムの開放。
だが、それが何だというのだ。
ファヴニールを殺せる宝具を持つ英雄が、どれだけいる? その周囲を守るように展開された、バーサーク・サーヴァントたちを突破できるか? そして、万が一にでもジャンヌを倒すことがあったとして――――私に、この聖杯にたどり着けるか?
「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る―――――
黄昏の剣が真エーテルを開放し、薙ぎ払うように取り巻きである亜竜を一掃する。が、ファヴニールは減衰した宝具程度で倒れるほどヤワではなく、ファヴニールを殺した宝具、その剣を真っ先に切ったのは悪手でしかないとジルは微笑む。
「汝は竜――――罪ありき!
と、次に飛び込んだ人影にジルは目を細めた。
なるほど、聖ゲオルギウス――――たしかに竜殺しの逸話を持つ、ファヴニールを殺すだけの宝具を持つ英雄だろう。ただし――――それが、普通のファヴニールであればだが。
竜殺しの剣を受け、ファヴニールが怒りの声を上げて―――――反撃する。
エーテルの血を流し、激怒の怒号を炎に変えて荒れ狂う。亜竜の背から竜の魔女としての
不意に、黄金の輝きを眼にした。
「聖剣、開放―――――これは、人理を守る戦いである!
「あれは、―――――もしや」
人の願い、戦場に儚く消える幻想の光――――。
それを従え、束ね、道を示すは常勝の王。騎士の王。国を、民を守ろうとして果たせず散った騎士王。
もはや、遮るものはなく――――至近距離で開放された黄金の聖剣が、アスカロンにより傷ついたファヴニールの胴体を真っ二つに切り裂く。竜殺しの魔剣に眼が眩んだが故の隙。だが、荒れ狂う竜種の至近にまで宝具開放しつつ近づくなど正気の沙汰ではない。
それは、騎士王の持つ未来予知にも近い直感と、騎士としての精神性――――そして、己自身も魔竜を討ち果たした経験によるものであり。あるいは、どこかの世界で英雄王を至近で切り裂いた経験もあったかもしれなかった。
己の求めた聖女――――ジャンヌの面影を見て呆然と立ち尽くすジルだったが、次の瞬間、亜竜に乗るジャンヌに向けて空中を疾走する謎の影を見た。
だが、如何に贋作であろうと―――――否、贋作であるからこそあのジャンヌは強固だ。ジルが望みをかけた聖杯の願いそのもの。ジル・ド・レェの願いが、たかが1サーヴァントの、たった一度の攻撃に敗れるはずもない。
そうすればすぐに聖杯がジャンヌを修復する。
修復されたジャンヌは、憎悪を募らせるだろう。作られた、与えられたものではない。ジャンヌとしての憎悪を。そう、それこそが―――――。
「今、光と闇が交わりセイバーに見える――――!」
青白い、しかし何処か先程の聖剣に酷似した剣がジャンヌの身体を切り裂き、吹き飛ばす。聖杯により極限まで強化されているはずのジャンヌを。
「―――――馬鹿な」
ファヴニールは、悪竜だ。
悪竜を倒す、殺すための宝具があるのは分かる。それはそうだ。英雄譚において、倒されるための存在と言っても良い。
だから、敗れることに不思議はない。
ファヴニールを倒すための宝具を受ければ、敗れることはあるだろう。
だが、何だ。アレは。あれではまるで。
聖女を、“ジャンヌを殺すため”の宝具のようではないか――――!
「カタフラクティ・シフト! 王道の力を知れ!
林檎が地に落ちるように。
竜殺しの剣が竜を殺すように。
セイバーを殺す剣がジャンヌを殺す。セイバー顔を絶対に許さない概念が、何故かジャンヌ・オルタにぶっささり、濡れた障子を破くようにあっさりとジャンヌ・オルタが消し飛ぶ。
「おのれ―――――神よ、そのようなものまで生み出すのかぁぁぁああ!」
そうであるならば、ジルが選ぶべき手はもう少ない。
ジャンヌを殺す宝具があれば、どれだけジャンヌを生み出しても無意味になるだろう。ジャンヌが“育つ”前に、世界は修正される。
やはり世界は間違っている―――――だが親友の用意してくれたこの魔本が、そして、この魔術王が寄こした聖杯があれば、それこそジルにとっての次善の策、ジャンヌを否定した世界への復讐は叶うだろう。
「それならば――――――」
「―――――いけない人ね」
深淵を覗き込もうとしたジルの前に、燃え盛る瞳があった。
輝き、連なる虹色の輝きがあった。
銀の鍵を携えた少女が。己の敵を見据えて/どうでもいい塵芥をみるように佇んでいた。
「ねぇ、そちらの蜂蜜酒みたいに綺麗なカップ。わたしのマスターに下さいな?」
「何故―――――真理を識っておられるのに」
光を見た。世界を見た。
ジルの精神がそのあまりにも冒涜的な真実に砕け散らなかったのは、もともと精神汚染のスキルを備えていたというだけのことであり――――ただ、それは魔術の枠に収まらない、宝具と言っていいのかすらも分からないEXランクの宝具を無効化できたわけなどではなく。
むしろ、壊れたテレビが叩かれて直るように。
本来の精神性を僅かに取り戻してしまったジルは世界と、己自身を呪い。狂ったようにのたうつ魔本から飛び出す触手に飲み込まれて消えた。
「―――――…ふふ。だって、マスターとなら境界を超えて、どこへだって行けるもの! ここから見える真理がどうであれ、“門”の先では関係のないことでしょう?」
――――――――――――――――――――――
真祖ロムルスはネロの
が。未だ己が勝者であると疑わずにいる男、宮廷魔術師を名乗り時代を掻き回した裏切り者がいた。
「ほざけカス共。人間になんぞ初めから期待していない。君もだよ、藤丸君」
「凡百のサーヴァントを掻き集めた程度で、このレフ・ライノールを阻めるとでも?」
「抵抗してもなんの意味もない。結末は確定している。貴様たちは無意味、無能!」
「人理を守るぅ? ――――バカめ。貴様たちでは既に“どうにもならない”。そんな召喚で呼び出される英霊も程度が知れるというものさ!」
そんなレフに、どこか顔が青ざめる藤丸は無言で首を横に振り。
それを怯懦と見て取ったレフはますます絶好調に語りだした。
「哀れにも消えゆく貴様たちに! 今! 私が! 我らが王の寵愛を見せてやろう!」
そうして現れるのは、巨大な肉の柱――――魔神柱。
相対するは――――さっきまでは観戦気分でのんびりと霊体化などしていた、黄金の王。堪忍袋の緒が切れるのではと怯える藤丸を他所に、黄金の王は愉快げに笑う。
「ほう――――言うではないか、雑種。結末は既に定まった、だと? フ、ハハハ、フハハハハ! 愚劣極まるとはこのことよ! 霊体化していたとはいえ、我の
「王とは天上天下に至高の我ただ一人。貴様のような醜い肉塊を下僕として優遇する阿呆がいれば、この我が笑ってやろう! そしてその醜さと愉快さに免じて、手ずから裁定をくれてやる! 往くぞ、人類最後のマスターよ!」
「――――せっかくだし、王様の一番カッコいい宝具がみたいなぁ!(ヤケクソ)」
エーテルが渦巻く。
通常であれば黄金の波紋から放たれる宝具のみで戦う黄金の王が、その戦士としての姿である黄金の鎧を脱ぎ捨てて笑う。
「ほう。この我に慢心を捨てろときたか。懐かしい言葉よな――――良いだろう! ならば至高の王、その玉体を見せてやろう――――A・U・O! キャスト・オフ!」
上半身の鎧をパージし、手にするは剣――――。
まだ天と地が無く、世界の混沌のみがあった刻を識るその剣こそは。
「貴様には、地の理では生温い――――天の理を示してやろう。さあ、死にものぐるいで足掻が良い、不敬!
「ごめん、キャスター。ちょっと世界滅びないように助けて」
「お任せを。夢のように片付けよう」
「はい、マスター。最果ての島、罪の都――――最後の竜は我が胸に! 如何なる滅びにも我らは屈せぬ。集え、円卓の守護者たち!
「ぐわああああああ!? ば、馬鹿なあああああああああ!」
英雄作成付きの対界宝具と対粛清宝具に挟まれた魔神柱の敗因は、呑気に喋りすぎたことか。
――――――――――――――――――――――
オケアノスの海、その中を我が物顔で鸚鵡貝が漂う。
「―――――ソナーに感あり! 取ィ―舵―! 20!」
「取―舵―20! ヨーソロー!」
「敵艦直上! 最終確認、点呼!」
「だいたいあってる!」
「だいたい良いですー」
「だいたい行けるぜ!」
「だいたいバッチリ☆」
「……ノーコメントでーす」
「ああもう、当たって砕けろ! まさか僕が“あの船”に攻撃することになるとはね!
神代の名船アルゴー号。
なるほど間違いなく名船で、英雄たちの象徴にふさわしい。が――――その船に、ソナーはあるか? こっそりと、それこそヒラメのように潜伏する、神秘と科学の異端児たる潜水艦を探知できる手段は? 対抗手段である爆雷は?
―――――至近距離、流石にメディアあたりがどうにかして察知したのか、海に飛び込んできたのは大英雄ヘラクレス。
ソナーがメディアなら、爆雷はヘラクレスでいいとばかりの完全ヘラクレス頼りの――――しかして、どこまでも正しい戦略。
「――――せっかく悪くないステージだと思ったのだけれど。あんなのを相手にさせられるなんて。……後で、分かってるわよね。私のマスター?」
で、あるならば。
当然、その対処は予想されていて然るべきものだ。
アルゴー船の攻略は、ヘラクレスの攻略を抜きには語れない。そして、ヘラクレスの死因は毒。全く同じものでなくとも、伝承に縛られるサーヴァントには大きな効果が見込まれる。
そして、海中に在る水の女神の因子を持つハイ・サーヴァントは、如何な大英雄と言えど狂化で鈍くなっていては捉えられない。
「―――――行くわよ。行くわよ行くわよ行くわよ!
「さあ、甘く融けてしまいなさい――――!」
権能を組み合わせて生み出されたアルターエゴ。その
「ぎゅあああああ―――――!」
下から突き上げられて、アルゴー号が空を飛ぶ。
情けない悲鳴を上げるイアソンだが、意外にも冷静に、というか追い詰められて一周回って冷静になれたのか船が消滅しない、すなわち致命的な損傷はないことを確認して叫ぶ。
「ふ、ははは! 俺様のアルゴー号がこの程度で沈むかぁ! メディア、姿勢をなんとかしろ!」
「はい、イアソン様――――え?」
「――――――がおー! たーべちゃうぞー!」
巨大な、巨大な影が、空を飛んでいるはずのアルゴー号を“見下ろして”いた。
「プロテアー、パーンチ!」
アルゴー号は、そしてイアソンは今度こそ、星になった。
カルデアにおける制限
・同時に現界できる(戦闘できる)のは3騎まで。(現地鯖は含まず)
・更に3騎まで霊体化で連れていける(3+3で6)が、戦闘中に切り替えるのはオーダーチェンジが必要(一度切り替えるとしばらく能動的には切り替えられない)
・カルデアで召喚しないとゲーム時代の記憶は引き継がない
・クラス相性は適応されないので、純粋に英雄の弱点や伝承重視