俺たちのカルデアは最強なんだ!   作:アマシロ

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すみませぬ、若干捏造設定盛りました。


悪性隔絶魔境新宿Ⅲ

 

 

 

――――あらかじめ新宿のアーチャー、その善の部分が倒されることは想定していた。

 

 

 

 必ず無事に辿り着くなど楽観視がすぎる。

 故に彼はバアルに記憶とともに霊基情報の一部を託しており――――この特異点においてのみ、バアルもまた“魔弾の射手”としての能力を持つ。

 

 だがそれも本来は、最後の引き金を引けるようにという程度の保険だった。

 七発目の魔弾、隕石として藤丸立香に落とす復讐の一撃。故に、まだ魔弾を一度も使用してない、その上で彼が脱落したこの状況は想定外。

 

 速やかに魔弾を使い切り、バアルが唯一別れを惜しむに足る共犯者、モリアーティの痕跡が消える前に七発目を放つ。

 

 

 

 そうすれば、他に惜しむもののないバアルの魔弾はバアル自身と同調したモリアーティの残滓に当たる。藤丸立香を逃さなければ、この特異点とともに奴は死に絶える。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――とんでもない早期決着を強いられたバアルの判断は素早かった。

 

 

 新宿のバーサーカーから飛んで逃げようとしていると判断するや否や、“標的に必ず命中する”魔弾を6連射。

 

 

 

 

 本命は七発目なのだから、わずかでも痛手になればいい。あるいは空中からの突破を躊躇すればいい。そうなれば新宿のバーサーカー、あるいはライダーとの戦いで消耗を強いることができる。はたまた藤丸立香を仕留められることがあるかもしれない。

 

 

 

 

 凄まじい速度で飛翔する、正体不明のサーヴァントは厄介だがマスターという荷物を抱えて、その荷物を狙う必中の魔弾を6発も回避することなど不可能だ。

 

 

 

 

 実際、そのサーヴァントは速かった。

 魔弾全てを置き去りにするほどの速度があった。だが、6発の魔弾全てに対処するにはマスターは重荷であり――――。

 

 視界の外。

 決して遠くはないが、ビルに遮られて見えない位置で藤丸立香とサーヴァントは迎撃を試み――――魔弾の射手として、バアルは弾が命中したことを直感した。

 

 

 

 

(――――命中した、か。だがあの生き汚さが取り柄の人間にどれだけ痛手を与えられたか)

 

「ンンンンン、見事。見事! よもやあの速度で逃げる者に命中させるとは! まあ、弓術、銃術というよりも妖術、呪術の類のようではあるが――――そこはそれ! 一端の呪術師としての才もおありのようだ」

 

 

 

 

 

 人類史の中で、“もう見る必要はない”とゲーティアが、魔神柱が決意した人間の悪性、それを煮込んで濃縮還元したかのようなこの男の言葉にバアルは不快感を禁じえない。あるいは、そうして聞き流さなければ何故この男もほぼ同時に命中を確信できたのか、という疑問を抱けたかもしれなかったのだが。

 

 

 

 

「――――まあ、京以外で、と付けばの話ですが」

 

 

 

 

 

 

『アーチャー、アサシン、そしてリンボとやら。カルデアのマスターはバーサーカーとライダーが追っている。逃げ道を塞げ。そしてアサシン、隙があれば殺せ』

 

「おうおうおう、隙があったらそりゃあ殺るさ! もっとも、無くても殺るけどな!」

 

 

 

 

 そう言って飛び出していくアサシン。

 アーチャーである黒い男は、わずかにリンボに目線をやると肩を竦めた。

 

 

 

「オレは此処に居させてもらう。生憎とオレもアーチャーでね、有利な地形を手放す道理はない」

「拙僧もキャスター故、陣地を動く道理はありませぬな。ですが、式神であれば――――ほれ、この通り。既に新宿中にバラ撒いておりまする」

 

 

 

 

 

 リンボが紙を放り投げると、不気味に揺らめく黒い影―――怨霊、あるいは怪異の類らしき式神に変化する。ろくでもない効果があるのは察したバアルはそれについて特に言及することもなく、新宿の街並みに目をやり―――――。

 

 

 

 

 

 

 人形、新宿の人間を作り変え、殺戮機構に変えたコロラトゥーラに銃弾の雨が降り注いでいるのを見た。

 

 

 

 

『――――ジャンジャジャーン! 見て、この躍動! 天を揺るがすエェンジィーン! 地を揺るがす迫力のムゥゥーブッ!』

 

 

 

『……なんだ、アレは』

 

 

 

 

 ドぎついピンクの巨大兵器。

 四脚、巨大砲塔、高速機動。ふざけた見た目に反して人類悪の一人が真面目に(趣味に走って)作り出した対界宝具。最大捕捉:一都市というふざけた範囲を持つその宝具こそは。

 

 

 

『これが玉藻重工の優秀兵器、七十九式、玉藻タァーンク! よくてよ、よくてよよろしくてよ! 派手にやっておしまいなさい!』

 

 

 

 

 マスターの甘さなど知らぬ、愛など知らぬとばかりに容赦なく人形ども(元一般市民)を粉砕していく銃弾の豪雨。バアルですら引くレベルのそれに併せて、なぜかテンション高い女の声が新宿に響き渡る。

 

 

 

 

『皆様、NFFサァービス! NFFサァァービィスを、よろしくお願い申し上げます! 深山幽谷、驚天動地! 人類の皆様を守り(煽て)育て(持ち上げ)諭す(落とす)、信頼と安心のNFFサービスでございまぁーす!』

 

「ンンンンン、なんと! なんと邪悪な……深夜の選挙カーの如き暴挙! バアル殿、あのような暴挙を見過ごして良いのですかな? 必要とあらばご指名をば。拙僧の宝具であればあのような無粋な鉄の塊ごと滅ぼして進ぜましょう」

 

 

 

 

 一切の情け容赦無く蹂躙する巨大兵器だが、巨大故にある程度大きな道を必要とする。故にバアルはこの不快なリンボに頼らずともなんとでもなる、と踏んだ。

 

 人間への憎しみに満ちた、ライダー。

 アレの縄張りである国道に入った時があの不快な物体の最期だと――――。

 

 

 

 

 

『―――――■■■■■ッ!』

 

 

 

 

 

 ライダーが咆哮する。

 人類への憎しみ、殺意に満ちたソレを、そのピンクの社に座す女――――人類悪たるコヤンスカヤ/光は、哀れみすら感じさせる眼で見下ろす。

 

 

 

『あら、“お仲間”でしょうか。敵とみるや即座に噛み付くその本能―――悪くはありませんが。こちとらその親玉(人類悪)だっつーの。……こほん。まあ貴方は我慢せず噛み殺すのでしょうが、私に言わせれば甘いも大甘! 人類はもっと反省させて、搾り取らなくては! ―――さあ! 知恵あるものはひれ伏すがいい! イズトゥーラ・セブンドライブ!』

 

 

 

 

 

 ミサイルの豪雨、圧倒的質量と、そして“人類悪としての特性”から兵器の力を最大限に引き出すコヤンスカヤにかかれば所詮ライダーは国道を蹂躙する“程度”でしかない。

 都市を灰燼に帰す力を集中して向けられ、銃弾の嵐とミサイルの爆音の中にライダーが消えていく。

 

 それでも一矢報いるため、懐に飛び込んだライダー、ヘシアン・ロボを待ち受けていたのは振り下ろされる兵器の脚部、超巨大質量によるストンピング。

 

 

 

 

 “とある迫害された生き物”と、“迫害された概念の集合体”。そのスケールの違いから完全に蹂躙されたライダーに、流石のバアルも言葉を失う。

 

 

 あの、近づくもの全てを蹂躙する兵器にコロラトゥーラやチンピラ程度では歯が立たない。バーサーカーも直接戦闘が強いタイプではなく、最早バアルの戦力は黒いアーチャーと不審者の概念が実体化したサーヴァントであるかのようなリンボのみ。

 

 

 

 あの謎兵器では魔弾、隕石こそ破壊されないと思われるが、あまりに特異点が破壊されるようなことになると隕石が落ちる前に脱出されるという最悪の結末さえも起こり得る。

 

 

 

 

『……アーチャー、何か手は』

「無いな。オレの専門外、というよりアレを倒せる兵器は存在しない。相性が悪すぎる」

 

 

 

 

 

 そして、心底嫌そうにバアルはリンボに顔を向ける。

 ニコニコと優しげに微笑むリンボは、妙に柔らかい猫撫で声で言った。

 

 

 

「お任せなされ、お任せなされ。これでも拙僧、都市を呪う大呪術に打って出たこともある身なれば。ご安心めされよ」

 

『…………任せる』

 

 

 

 

 

 

「ンンンンンンンンンンン~~~~~! 拙僧、昂ぶって参りましたぞ! 顕光殿、お目覚めを! 光の時、これまで! 疑似神格、並列接続! 暗黒太陽、臨界! <狂瀾怒濤、悪霊左府!>」

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝具が展開し、バレルタワーの上空に現れるのは呪いの太陽。

 都市そのものを殺すに等しい大呪術の再現であるそれは――――そもそもが悪に満ちたこの新宿においては格別の威力を発揮する。

 

 だが、その本来の目的は時の権力者であった藤原道長を呪殺すること。

 それ以外の、人々を不幸が襲い餓死者が往来を埋め尽くすというのはこの宝具の“オマケ”に過ぎない。

 

 

 つまるところ、この特異点の権力者。

 バアルを呪殺することこそが、この宝具の真価により近い。

 

 

 

 

 

 

 

「―――ええ、あの無粋な鉄の塊ごと“貴方を”滅ぼして差し上げますとも」

『馬鹿め、その程度見通せぬとでも―――――』

 

 

 

 

 

 暗黒の太陽にしか見えない呪詛の塊、その直撃を防ぎつつもバアルはリンボの胸をその腕で貫いた。が、それをさして気にした様子もなく、リンボは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「甘露! 甘露―ッ! ところで、先程撒いた式神ですが――――」

 

 

 

 

 

 不意に、バアルの肩に優しく手が置かれる。

 妙に寒気のする手付きのそのさきにあるのは、不気味な笑みを浮かべるリンボ。そしてその横にも別のリンボ。

 

 

 

 

 

「全て、全て拙僧にて」

 

 

 

 

 式神を使って無数に、それこそ海藻かなにかのように増えるリンボ。

 上空の暗黒太陽よりある意味邪悪な光景である。

 

 

 

 

「道満が参りまするぞ!」

「ンンッ、多少はそそるか……」

「望むままに、貪りましょうぞ!」

「「「「ンンンンンンン~~~~ッ」」」」」」

 

 

 

 

「「「「「少しばかり、杜撰すぎますなぁ。この程度では京では生き残れませぬぞ? これほど満ちた怨み、呪いを“そのまま”放置とは! フフッ、ハハハハッ、ハハハハハッ! 『顕光殿、お目覚めを!』」」」」」

 

 

『ぐ、おおおおおっ!?』

 

 

 

 

 燃える。

 バアルの霊基そのものが、あまりにも濃密な呪詛によって血液が沸騰したかのように燃えたぎる。あまりにも巨大な暗黒太陽に、たまらずバレルタワーから逃げ出そうとするバアルに、銃弾が浴びせられる。

 

 

 

「隙を見せたな」

『ぐ、貴様! こんな時に―――――!』

 

 

 

 裏切るだろう、と思ってはいた黒いアーチャー。

 最悪のタイミングで裏切ってくれたその男に反撃する余力もなく、塔から飛び降りる。

 

 せめてあの呪詛の太陽から遠ざかりたい――――そんな願いと、あの藤丸立香が負傷しているはずの場所まで行ければ目的を達せられるはずという推測。

 

 

 

 

 

 

(そうだ。奴さえ、奴さえ殺せればそれでいい! それでいいのだ! 魔弾で負傷した奴を仕留める、そうでなくとも七発目で―――――ッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊基を半ばまで呪詛で焼き尽くされつつも、地面に降りたバアルが見たのは。

 カルデアの制服を血に染めて、それでもなお、大地に立つ偉丈夫。筋肉の鎧を纏う、美しき野獣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故か藤丸立香のコスプレをしたリンボに魔弾が六発刺さっているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンンンンンンン、なんと酷い…。ご無事ですかな、マイ・マスターぁ❤」

「………マスター、これ、斬ってもいいかな」

「気持ちは分かるけど後でね」

 

 

 

 そして、その横には無傷で遠い目をしている藤丸立香と、青い鎧のサーヴァント。

 

 

 

「そのような怖い顔をなさらずに。これはれっきとした呪術ですゆえ。―――まあ、呪術の“じゅ”の字も知らぬような? 身代わりとなる式神、護符の類も知らず、とりあえず魔弾が強そうだから契約して撃ってみようかな、などという半人前以下の呪詛しか防げぬお遊びにて! 不要と断じられてもこの道満、全く! 反論できぬのですが!」

 

『―――――貴様ァ!』

 

 

 

「生前呪術を扱ったことなどない未経験者が、とりあえず魔弾を使えるように霊基を調整するなぞ……。ましてやそれで、我らが守るマスターを害することができるなぞ。ンンンンン~~~~~、有り得ませぬが!」

 

『ならば! その身を以て受けてみるがいい――――我が復讐を! 憎悪の塊を! 天を見上げるがいい、そこに貴様らの絶望が降りてきているぞ!』

 

 

 

 

 魔弾。

 所有者の大切なものを奪う七発目のそれは、ただの隕石ではなく概念的に強化されている。それこそ本来の、計画通りの完全な姿ならばセイバーオルタの約束された勝利の剣でも破壊できないほどに。

 

 モリアーティ以外にロクな共犯者がいなかった―――そのことを再確認してしまったバアルに、その彼に残されたモリアーティの残滓に向けて、隕石は降り注ぐ。バレルタワーからズレた以上、世界が滅びることにはならないだろう。が、この特異点を砕き、藤丸立香を殺すのに地球を破壊する必要はまったくない。普通に隕石があたれば人は死ぬ。

 

 

 

 

――――――だが。

 

 

 

 

「――――頼む、メリュジーヌ」

「うん。貴方に、この星で一番の心臓を」

 

 

 

 

 光とともに、メリュジーヌの姿が変わる。

 黒い翼、青い光の竜の妖精の姿へ。

 

 そこに道満たちの呪術による悪属性強化、コヤンスカヤによるバフが降り注ぐ。

 

 

 

 

「「「「拙僧、多才にて!」」」」

「最高品質でお届けしましょう」

 

 

 

 

 

 

「――――――飛びなさい、彼方の空へ。お前は、例え残骸であろうとも―――――!」

 

 

 

 

 

 

 上空の隕石に向けて、地上のマスターを吹き飛ばさないよう徐々に加速する。境界を開く最後の竜、アルビオン。例えるのなら、竜種における冠位。人間どころかゲーティアにも勝るほどに神秘の塊。

 

 

 

 その熱線は、一瞬で隕石を切り裂き。

 リンボとコヤンスカヤの高笑いを聞きながら、バアルは絶望して消滅した。

 

 

 

 

 

ダイジェストの程度はどれくらいが良い?

  • 1部5章までくらい急ぎ足
  • 1部6,7章くらいやや太め
  • 1.5部くらい太め
  • もっと速く(急ぎ足)
  • 重くいくのね!(重厚に)
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