俺たちのカルデアは最強なんだ!   作:アマシロ

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第一異聞帯/ 汎人類史の英霊たち

 

 

 

 

「久しぶりだね、マシュ・キリエライト。――――そして、我々が退場した後に残された、ただひとりのマスター、藤丸立香」

 

 

 

「君の、君たちの健闘には心から敬意を表する。そして、その素晴らしい戦術眼にもね。だからこそ、こうして姿を現した」

 

 

 

「私は、キリシュタリア・ヴォーダイム。クリプターのリーダーにして、この大西洋異聞帯を任されたマスターだ」

 

 

 空中に浮かぶのは、己のサーヴァントの危機を察して駆けつけたマスター。神霊にさえ勝利したとされる、規格外の魔術師。

 

 キリシュタリア・ヴォーダイム。

 

 

 

 

「キリシュタリア!? キリシュタリアだとぉ!? ぬぅぅ、まさか直接攻め込んでくるとは! ムニエル、反応はどうなっている!? ヤツはサーヴァントを連れているか!?」

 

「あったり前でしょう、マスターなんだから! 二騎……いえ、なんだこれ、反応は一騎扱い……? ええい、とにかく二騎、後ろに控えています! カイニス同様、いえ、それ以上の神霊サーヴァントです!」

 

 

 

「な、ならもう一度あの光の槍を! 迎撃だ、迎撃!」

 

「……ふむ。どうしますか、我が夫」

 

 

 

 

 まあ、攻撃するのが正しいのかもしれないが。

 一応、魔力放出(光)で移動できるという反則級のサーヴァントであるディオスクロイを連れている以上、攻撃しても回避されるのが関の山だろう。ならば。

 

 

 

 

「―――行こう、マシュ。向こうが挨拶に来たのなら応じるまでだ」

「はい、マスター」

 

「ちょっ、死ぬ気かね!?」

 

 

「では、送りましょう」

 

 

 

 

 モルガンが杖を軽く動かすと、現れるのは転移の魔術。

 キャメロットの門前にて、ゆっくりと地上付近まで降りてきたキリシュタリアと向き合う。

 

 そして、キリシュタリアはおもむろに背後に控えるサーヴァントに声をかけた。

 

 

 

「―――ディオスクロイ、カイニスを連れて離脱してくれ。私の護衛は不要だからね」

「キリシュタリア様。我々に、あの無能な女を助けろというのですか」

「我が兄同様、私も賛同しかねます。カイニスがここで消えるのは自業自得、私たちが汚らわしい血で汚れる必要は――――」

 

 

 

「だからこそ、君たちに任せるんだ。……この意味が分かるね」

「―――御意。わが契約者の名であれば、そのように」

「ふふ。仕方がないから助けてあげましょう。命拾いしたわね、カイニス」

 

 

 

 

 そして本当にディオスクロイが離脱し――――キリシュタリアのサーヴァントはいなくなった。だが、ヒリつく空気が、かつての敗北の記憶が、彼の底知れぬ雰囲気が、全てが容易ならざることを示している。

 

 

 

『自分からサーヴァントを離すだと…!? ええぃ、どうなっとるんだ一体!』

 

「―――――さて、余計な時間を取ってしまったな。君たちと意見を交える気はない。ここで決着をつけるのみだが――――」

 

 

 

「いや、その前にひとつだけ」

 

 

 

 

 

「――――いいだろう、元Aチームの一員としてとして君たちの質問に一つだけ答えよう」

 

「キリシュタリア、貴方は人類が間違っているから叛逆すると――――あの日に宣言したな」

 

 

 

 

「そうだな。人類は間違いを重ねすぎた。どのような時代、どのような文明、どのような英雄、どのような国家であれ、我々は、『正解』を選んだことは一つもない。結論として、人間には、正解を選ぶ器官(きのう)が存在しない。私はその過ちをただすものだ」

 

 

 

 一見すると、それは正しい。

 人間が間違っている、間違えていると、言われて否定することができるのは多くないだろう。けれど。

 

 

 

「俺は、そうは思わない。確かに『正解』なんてどこにもなかったかもしれない。旅をする前の俺なら、その言葉に反論はできなかったと思う」

 

 

 

 

「泥臭くとも、諦めずにあがき続ける。正解なんて無くとも、欲望(きぼう)を抱いて前に進む。それが人の良いところだと、俺は思う」

 

「……そうか。確かに、君の意見も尊いものだと私も思う。だが――――それでは救えない。たとえそれが明日につながる希望であったとしても、救えぬものがあまりにも多すぎる」

 

 

 

 

 意見は、交わらない。

 

 主義が違う。経験してきたものが違う。見ている立場が違う。

 互いに、悪いことを言っているわけではないとわかっている。それでも、己の意見こそが正しいとするのであれば。

 

 

 

 

「――――なら、押し通す!」

「まことにすまないが、押し通されるのは君たちの方だ。カルデアの諸君」

 

 

 

 

 

 

 展開されるのは、虚空を―――宇宙を覆いつくすような巨大な魔術回路。

 まさしく天体級の魔術、魔法にも思えるそれらがもたらすのは

 

 

 

 

 

「虚空の神よ、今人智の敗北を宣言する。眼は古く、手足は脆く、知識は淀んだ。最後の人間として、数多の決断、幾多の挫折、全ての繁栄をここに無と断じよう。この一撃をもって、神は撃ち落とされる。変革の鐘を鳴らせ!『冠位指定(グランドオーダー)/人理保障天球(アニマアニムスフィア)』!!」

 

 

 

 

 

 

 人の身には過ぎたる魔術。

 ほとんどのサーヴァントであっても、この惑星轟の前には膝を屈するであろうと思われる圧倒的な破壊。

 

 隕石という、魔術的にも物理的にも圧倒的な破壊力を誇るそれ。直撃すれば、世界そのものといえるアキレウスの盾すらも破壊するだろう。隕石一つあれば、ちょっとした“世界”を壊すのに十分すぎる。

 

 

 

 

 異聞帯の王、ゼウスさえも敗北した圧倒的な魔術に――――1人の男が、静かに前に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ならば、僕がそれに応えよう」

 

 

 

 

 白衣を翻して、褐色の男がアトランティスの潮風をその身に受ける。

 これまで動じる姿を見せなかったキリシュタリアが、確かな驚きをその表情に刻んだ。

 

 その指に輝くのは、“十の指輪”。

 

 英知を望んだ王、魔術王の秘宝。人類が行うあらゆる魔術を制御下に置く――――その力でキリシュタリアの魔術を無効化しなかったのは、既に彼が人智の及ばない領域にいるからか――――あるいは。

 

 

「人類の偉業、理想、誕生の真理を此処に示そう。この星が生まれ、あらゆる生命は未来へと歩む。その積み重ねこそがこの光だ。讃えるがいい――――<誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)>」

 

 

 

 人類がこれまでに行ってきた魔術、その歴史。

 研鑽されてきた技術、偶発的に生まれた俊英、奇跡、運命。

 

 神秘はより古い神秘によって打ち消され。神秘の象徴たるあらゆる魔術はソロモン王に源流を発する。故に、ソロモン王は全ての魔術を修めた王である。

 

 

 故にこそ、彼の王は。

 彼の黄金の英雄王が人類すべての財をその蔵に収めているのと同様に。人類が到達しうる全ての魔術を扱うことができる。

 

 故に、魔術王。

 魔術師である限り叶わぬと言わしめた、紛れもない冠位魔術師(グランドキャスター)である。

 

 

 

 

 あらゆる英雄、魔女、魔術師。

 積み重ねられた人智が無数の輝きとなって降り注ぐ隕石に殺到する。

 

 

 かつてゲーティアが見せた、人類史全てを燃料とする光帯に決して劣らないとさえ思えるそれは――――。

 

 

 

 

「まあ、そうだね。せっかくだしゲーティアの魔術も再現していたりするから」

「割と無慈悲だドクター!?」

 

 

「え、そう? よく空気読まないとか言われるんだけど……まあ正直それよりは君たちの安全の方が僕には大事だ―――――僕も死にたくないしね!」

 

 

 

 

「―――――くっ」

 

 

 

 人類の多様性を示すように、無駄に色とりどりの光を放つ光帯。

 魔術的には圧倒的な神秘を持つ隕石。

 

 

 

 その激突は互いに一歩も譲ることはなく――――かつてない、惑星轟を維持し続けるという異常事態にキリシュタリアの頬を汗が伝う。

 

 

 

 

「ふ、藤丸君。だいぶ辛くなってきたんだけど……何か楽になる手とかない!?」

「ええっ!? モルガン陛下、なんかない!?」

 

『では、ロンゴミニアド斉射』

 

 

 

 

 ここで、“かつて”は死に体だったとはいえ惑星轟で辛うじて防いだロンゴミニアドが加わり、押し合っていた力が宇宙の方に押し戻される。

 

 

 

 

『これで暫くは魔力切れです。我が夫、いざとなれば私も出ますが油断なきように』

 

「―――――まさか、ドクターがこれほどのものを隠していたとはね」

 

 

 

 

 

 すわ世界の滅びかと思わせる隕石と光帯、そして光の槍の激突はソロモン王に軍配が上がった。

 

 わずかに息を切らして天を見上げるキリシュタリアに、ソロモンはどこか悲し気に答えた。

 

 

 

 

「そうだね。僕も君がそれほどのものを隠していたとは思わなかった。全く、医療部門のトップが聞いて呆れる」

 

「………」

 

 

 

 

「――――さて。異星の神、その正体は知らないが、僕にも一つ分かったことがある」

「ふむ。それはなんだろうか、できれば一人の魔術師としてぜひご教授願いたいものだが……」

 

 

「何を以て“異星”としたのか、それは分からないけれど。どうやらその“契約”は『魔術』に類するものらしい――――藤丸君!」

 

 

 

 

「令呪二画を以て命ずる――――ソロモン、メディア! 宝具の解放を!」

 

 

 

「第二宝具<戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)>!」

「<破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)>!」

 

 

 

 

 

 

 空間転移により背後に現れたメディアが、歪な短剣をキリシュタリアに突き刺す。

 それと全く同時に、展開された時間神殿がキリシュタリアと外界との―――異星の神との繋がりを絶ち。その契約を、すべての魔術、契約の主たるソロモンが支配する。

 

 

 

 そして―――――。

 

 

 

 

 

 

 

…………

……

 

 

 

 

『畏れよ』

 

 

『讃えよ』

 

 

『お前たちが目にするは 至高なるオリュンポス』

 

 

『余が座す異聞帯の真なる名にして ソラの海さえ渡らんとする巨いなる方舟』

 

 

『地に伏せよ 噎び泣け』

 

 

『是なるは 我ら神の座であれば――――』

 

 

『小さきものの目にすべきモノでは ないぞ』

 

 

 

「何だ、この、声はッ……声が、声が重い……!!」

 

 

 

 

「ハッ、笑わせるな! 真に天に仰ぎ見るべきは、王の中の王たるこの我唯一人――――星の海を渡る船に、この星の創世の地獄を示してやろう!」

 

 

 

『我が名はゼウス』

 

 

『大神ゼウスである』

 

 

『神代より続く大洋』

 

 

『巨いなる星間都市』

 

 

『それら全てを統べる』

 

 

『大西洋異聞帯の王』

 

 

 

 

「起きよ、エア! 今こそ、人類最古の英雄王の名を此処に示そう。――――死に物狂いで足掻くがいい! 天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)!」

 

 

 

 

 

『堕ちよ』

 

 

 

『小さきもの』

 

 

 

 

 宇宙を焼くとさえ言われた大雷霆が放たれ、ギルガメッシュの乖離剣が放つ空間断層と衝突する。

 

 空間が断裂している以上、雷霆は届かない。

 相性としてはこの上なく有利であるのだが、圧倒的な出力によりキャメロットの表層が灼かれ、ギルガメッシュの手が火傷のように変色する。

 

 

 

「―――ハッ、腐っても神というわけか。やるではないか――――だが我も出費は惜しまぬ! あらゆる財(人類史)を背負う我がそう易々と落ちると思うな――――!」

 

 

 

 視界を埋め尽くさんばかりの雷はしかし、深紅の断層に阻まれて届かない。ギルガメッシュの体を黄金の輝きが包み、その蔵の財が魔力を、体力を、筋力を、あらゆるステータスをバックアップする。

 

 

 

 

『とんでもない魔力量だ! 一つ一つが極大、アルテミス主砲と同等の威力!?』

『ええい、なんだそれはふざけおって、インフレにもほどがある!』

 

 

 

 計器を見てムニエルが悲鳴を上げ、ゴルドルフ新所長が真っ青になりながら叫んだ。

 

 

 

 

「狼狽えるな、雑種ども! せいぜいが威嚇だ、たわけめ! だが―――チィ! 力押しでは勝ちきれんとはな!」

 

「それ普通に押し負けるって言うんじゃ……」

 

 

 

 微妙に空気を読まずにツッコむドクターに、青筋立てながらギルガメッシュが振り返り、雷霆がキャメロットを掠める。

 

 

 

「たわけ! 医師……魔術師……この際どちらでも良い! この我が押し負けるなど、あり得ぬ! が――――むざむざと付き合う道理もないというだけだ! 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!」

 

 

 

「あらゆる避雷針、雷を切った剣、絶縁体の原典を見るがいい!」

 

 

 

 

 どんなに強力だろうと雷は雷。

 人類史最強といえる避雷針の原典を装備したキャメロットは、対雷の宝具に囲まれながら空を往く。

 

 

 

 そして、雷霆が途切れ――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

『哀しきかな、哀しきかな。哀しきは死。哀しきは終わり。けれど我が権能ある限り、死は遠く、オリュンポスに命の華が散ることはなし』

 

 

 

『大陸級破砕機構起動、神核接続、神核励起。』

 

 

 

 

 雷霆に紛れて接近・降下してくるのは、足の生えた球体。

 豊穣神デメテル。全てを耕し、無に帰す女神。

 

 大地の権能により、ほとんどの攻撃を無効化し、問答無用のその叫びで全てを物理的にも精神的にも破壊する。

 

 

 

 

 

「――――来るぞ、藤丸よ! 今こそ人類最後のマスターの意地を見せる時だ!」

 

 

 

 

 

 

『我が叫び……我が嘆き……あああ!汝、星を鋤く豊穣(スクリーム・エレウシス)!!』

 

 

 

 

 大地を割る。

 それは創世にも等しい偉業であり、地母神そのものであるデメテルを打ち砕くには乖離剣であっても即座にとはいかない。その前にキャメロットは崩壊するだろう。

 

 

 故に必殺。

 すでに対処は遅れ、雷霆で目が眩んでいる間に必殺の領域に入られた。

 

 

 

 だが。

 人類史には例外が存在する。

 

 

 

 

 

「――――頼む、アーラシュ!」

 

 

 

 

「陽のいと聖なる主よ。あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ。我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ!」

 

「さあ、月と星を創りしものよ。我が行い、我が最期、我が成しうる “聖なる献身(スプンタ・アールマティ)”を見よ! この渾身の一射を放ちし後に 我が強靭の五体、即座に砕け散るであろう!」

 

 

 

 

 

 

 大地を割る。

 それを、伝説に残した者がいた。

 

 栄光のためではなく、平和のために。

 故にこそ、彼こそが最も偉大な弓兵であると彼に救われた者たちの伝説は語る。

 

 

 

 

「―――――流星一条(ステラ)ァッ!」

 

 

 

 

 

 

 その一矢は流星の如く。

 確かに大地を穿ち、コアを撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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