俺たちのカルデアは最強なんだ!   作:アマシロ

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ビーストⅠ/ゲーティア
保有スキル

ネガ・サモン:サーヴァントによる攻撃の一切を否定・破却する。無論、宝具による攻撃も一切シャットアウトされる。例外は唯一つのみ。


終局特異点 / Destination Dream Disconnection

―――――夢を見たんだ。

 

 

 

 

 ドクターが、いつもの気の抜けた顔で手を振って去っていく夢。

 消滅間際のダ・ヴィンチちゃんに背中を押され、カルデアから逃げ出す夢。

 

 全ての人が神になることを夢見た、ある男の最期の夢。

 

 

 見知らぬ世界、あり得たかもしれない可能性を摘み取る旅。

 

 獣人の友人がいた。幼い少年少女がいた。平和に暮らす民がいた。家族思いの少女がいた。新しい明日を願った双子がいた。

 

 

 

 

 全て、もう失ってしまったけれど。

 その果ての結末が―――――――だなんて。

 

 

 

 

『―――――ねぇ、とても辛そうなお顔をされているわ。私で良かったら、お話してくださらない? お話すると気分が晴れるからって、ティテュバが良く言っていたの!』

 

 

 

 

 

 

―――――………大切な、仲間がいたんだ。

 

 

 

 

 

 いつもどこか遠くを見ていて。巫山戯ているようで、本当は誰よりも真剣だった。

 ただ人理を救うために駆け抜けていた。

 

 支えてもらっていた。助けてもらっていた。

 そういうと彼は、「一番大変なのは君じゃないか」なんておどけるのが目に見えるようだけれど。彼がいなくなった後のカルデアは、どこか閑散としていた。

 

 

 

 

『そうなの…。素敵な人だったのね』

 

 

 

 

 学んで、働いて、考えて。

 ドクターは俺よりもずっと大人で、でもネットアイドルが好きで、甘いものが好きで。ダ・ヴィンチちゃんと楽しそうに話していて。

 

 俺も、ゲームの話で休憩時間中ずっと盛り上がったこともある。

 

 

 

 

 自由な人だと、思っていた。

 けれど本当は、自由にとても憧れている人で。人理のために、全てを投げ出してくれた人だった。普通の人なのに、どこまでも英雄(サーヴァント)だった。

 

 

 

 

 

『座長さんも、あまり人のことは言えないと思うのだけれど…。もしかして座長さんに似ている人だったのかしら』

 

 

 

 

―――――ドクターと、俺が?

 

 

 

 うーん、あのゆるい感じに似てると思われるのは嬉しいような、微妙な気持ちのような…。いや光栄ではあるんだけれど、それはそれというか。

 

 

 

 

『――――いいなぁ』

 

 

 

 

―――――…アビー?

 

 

 

 

『ねぇ、座長さん。やっぱりわたしは悪い子だわ。貴方にもっと、わたしのことを見て欲しいと思ってしまうの――――その人が無事だったらマスターも嬉しくて。そして、遠くを見ることも無くなるのかしらって』

 

『だから。来て、マスター。貴方ならきっと―――――耐えられるわ』

 

『どんな夢路でも、マスターと一緒なら。でも、この惑星(ほし)が本当の夜明けを迎える時には、ちゃんとお目覚めになると誓ってね?』

 

 

 

 

――――――なんで、アビーが二人――――いや、三人!?

 

 

 

 

 いつのまにか、小さな――――しかしどこにこれほどの力があるのかというほどの手で両側から掴まれ。目の前には巨大な鍵を持ったアビーと、門が――――これは―――。

 

 

 意識が――――遠く。

 

 

 

 

 

『――――どうか、お願い。この結末を知っても挫けないで』

『私たちは、付いてはいけないけれど――――』

『みなさん、マスターのためならきっともう一度戦って下さるわ!』

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、入ってまー――――って、うぇえええええ!? 誰だ君は!?」

 

 

 

 

 

 どんな奇跡でも。もし本当は夢だったとしても。

 いつか醒めるかもしれなくても、今は。ドクターと話せるのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

―――――長く、辛い旅路だった。

 

 

 

 でも、同時に。

 ドクターが、ダ・ヴィンチちゃんが。皆がいてくれたその旅路は、決して忘れられない、輝かしいものだった。

 

 誰を犠牲にするわけでもなく。

 ただ、人類の明日を取り戻すために。

 

 

 

 貴方に、新しい未来(あした)を掴んでもらうために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――なぁ、フォウ君」

「フォウ?」

 

 

 

「……色々好き放題やっちゃったけど。今回の……俺達の旅は、ちゃんと、良いものになったかな」

 

 

 

 マシュの延命には、ウルクの大杯を使えばなんとかなる………はず。

 けれど、もし万が一のことがあれば――――と、フォウくんに頼りたくなってしまう自分が嫌で。けれど、マシュのことは大切で。もちろんフォウ君も大事な仲間で。

 

 

 

「フォウ、フォウフォ(てしてし)」

「痛い!? なに馬鹿なこと言ってるんだって感じの視線と爪が普通に痛い!」

 

 

 

「フォウ。フォウフォウ」

「……うん。一緒に旅をする人が変われば、旅の内容は全く違うけれど。それはきっと、比べるものじゃないよな。最後まで楽しめるように、頑張るよ」

 

 

 

 

 

 

――――今度こそ、完膚なきまでに完璧な勝利を。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「藤丸君、マシュ! 目を覚ますんだ、体に異常はないか!?」

「っつ……はい、ドクター! レイシフト、成功しました! 先輩も無事です!」

 

『ああ、こちらもモニターしている。そこが時間神殿なのは間違いない。そして――――この反応は、メソポタミアで嫌というほど計測した反応だ。クラス・ビーストの反応が、その空間を占拠している!』

 

 

 

 ああ、懐かしい感覚だ。

 そう思った。あの時は凄まじい緊張感と絶望を感じたけれど。今ではまだそれほどでもないと思えてしまう。異星の神と比べれば、と。

 

 

 

 

 

「その通りだとも。少しは鼻が利くようになったなカルデア。七つの特異点を越えてきたその強運、素直に称賛させてもらうよ――――だが。吐き気を催す生き汚さだ。どうしてこう、行儀良く死ぬ、なんて、誰にでも出来る簡単なことができないんだい?」

 

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声に応えるように、聞き覚えのある声とともに姿を現すのはレフ・ライノール。

 それに応じるように、前に出たのは――――。

 

 

 

「――――ハ! 飼い主を失った狂犬風情が。吠えるではないか」

「………やれやれ。人間の生き汚さについては同感だけれど――――どうにも癪に障る」

 

 

 

 

 片や、魔杖を手にした賢王。片や、天の鎖に宿った新たな生命。

 

 

 

「此処は我らに任せよ――――と、言いたいところではあるが。我の(ウルク)に手を出した不敬は万死に値する!」

「串刺しだね―――わかるとも!」

 

 

 

 

 黄金の波紋―――宝物庫への扉が開き、それに応えるようにレフがその姿を変える。無数の眼を備えた異形の柱、魔神柱へ。

 

 

 

 

「さあ、死にものぐるいで足掻くがいい!」

「手間を取らせないでほしいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 魔杖が、最上級の武具が、一斉に放たれレフの姿を粉微塵に粉砕し――――次の瞬間には、再び全く同じ姿の魔神柱が“誕生”する。

 

 

 

 

「――――私を殺したな? だがそれが何だという。我らは常に七十二柱の魔神なり。この大地が、玉座がある限り我らは決して減りはしない! 私を殺したければ七十二の同胞、全てを殺し尽くすことだ!」

 

「チッ。ティアマト神ほど理不尽でもないようだが――――」

「ほぼ無限の物量というわけか。僕とギルで20程度はいけると思うけど」

 

 

 

「だがそんな火力が、そんな軍勢がどこにある? もはや地上の何処にも、そんなものは存在しない! ハハハ、飛んで火に入るなんとやらだ! 意気揚々と乗り込んできてご苦労さま!」

 

 

 

 不意に、通信越しでもはっきりと分かる衝撃音とドクターの焦る声が聞こえた。

 

 

 

『――――っああ、何があった!? 今の衝撃はなんだ!?』

 

『外部からの衝撃です! 第二攻性理論、損傷率60パーセントを超えています!』

『北部観測室、ロストしました! 天文台ドームに過度の圧力を確認! ――――魔神柱が取り付いています! 数は8!』

『崩壊まであと5分! ドームが破壊されれば管制室の不在証明が保てません!』

 

 

 

「ドクター!? マスター、カルデアが攻撃を受けています!」

 

 

 

『疑似霊子演算精度、クオリア域を離脱! 攻性理論の強度、低下していきます!』

『館内の電気供給を中央以外カットしろ! 炉心からの電力はすべて攻性理論とカルデアスに使え! 管制室はなんとしても―――――』

 

 

 

 

 途切れる通信に、レフは――――フラウロスは嗤う。

 最古の英雄王と、その唯一人の友の後継の攻撃を受けてなお。その程度では何の障害にもなりはしないと。

 

 

 

――――――だが、それはこちらも同じだ。

 

 

 

 信じている。

 人任せかもしれない。

 

 でも、自分一人で世界を救えるなんて自惚れてはいない。

 

 

 

 そう、いつだって――――。

 仲間がいた。先達が、誇るべき人類史の英雄たちがいた。

 

 

 

 

「お見それした! まだ敵を睨むだけの強がりができるとは! だが最古の英雄王がいようと所詮は英雄の延長線上に過ぎない! 最後のマスター、最後の人類、藤丸立香よ。私たちは心底から君に感謝を示す! なにしろ最高に面白かった!」

 

 

「第一特異点での……いや、あれは愉快ではなかった。第二……第三……第四………ええいっ…――――ともかく、おまえの戦いは実に愉快だった! なにより無意味なのがいい! ここまで戦ってきた徒労を! あそこまで戦って、なお無為に終わる惨めさを! 私たちは素晴らしいと評価したとも!」

 

 

 

「ありがとう、そしてさようなら! カルデアもろとも、その旅もここで終わりでッす! ハハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――本当に、そう思うか?

 

 

 

 

 無駄な旅だったと?

 何も得るものの無い徒労だと?

 

 だとしたらやはり、だからおまえは間違えた。

 もしも特異点Fの後にすぐ此処に来ていれば、まず勝ち目はなかったのに。人の歴史には、おまえが憎んだ“困難”や“醜さ”だけでなくそうした“旅”や“笑顔”が溢れているのに。

 

 

 

 

 

「―――――いえ。無意味だなんて。それこそ笑い話です」

 

 

 

 

 救国の――――救世の旗を掲げ、魔神柱の放つ光線を払うのは聖女・ジャンヌ・ダルク。

 それに呼応するように、一騎、また一騎とサーヴァントが出現する。かつての終局特異点と同様に――――否。それ以上の勢いを以て無数のサーヴァントたちが集う。

 

 

 

 

「準備はよろしいですか、マスター」

「魔力を回せ、決めに行くぞ」

「呪いの朱槍をご所望かい?」

 

 

 

 

「――――そう、貴方には無数の出会いが待っていた。さあ、戦いを始めましょう」

 

 

 

 

 

「ぐああああ――――!? なんだ、何が起こっている!? なぜ藤丸が消えていない!? なぜカルデアが残っている!? なぜ――――なぜ我々の体が崩れているのだ!?」

 

 

 

 

『……これは夢か? 計器の故障か? 特異点各地に次々と召喚術式が起動している! 触媒も召喚者もなしで自発的に! ――――いや、これは藤丸君との縁をたぐって…?』

 

『霊基反応、十、五十、百――――まだ増える!』

 

 

 

 

「聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英霊たちよ! 本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても今は互いに背中を預けよ! 人理焼却を防ぐためではなく―――――我らが契約者の道を開くため!」

 

 

 

 

「我が真名はジャンヌ・ダルク! 主の御名の下に、貴公らの盾となろう!」

 

 

 

 

 

 

 

「おや、出番でちか。それでは料理を始めるでち」

「どうか、誰も傷つけられぬ世界でありますように……が、がんばりますっ!」

「……魔神柱(くろねこ)でパンケーキつくる♪ みゅん。パンケーキに魔神柱(くろねこ)のせる。みゅん、みゅん♪」

 

 

 

「面倒やさかい、まとめてとろかしたろか」

「わしが第六天魔王、織田信長じゃ!」

「天幕よ、落ちよ! 万雷の喝采を聞け!」

 

 

 

「始めましょう。切り捨て、ごめんなさい」

「すぐに終わるから。花束の用意をしておいて」

「おまえの命、マルスへ捧げる」

 

 

 

「一人で10体ぐらい倒せればいけるか…?」

「美しさでは私の勝ちだ。では――――武勇ならばどうか」

「さぁーて。蹂躙してやろうか、お兄様?」

「……一気呵成に滅ぼしてくれよう」

 

 

 

「カモが来たカモが来た……っと、いいわ。金星まで連れて行ってあげる!」

「いいのだわ。冥界まで連れて行ってあげる!」

「ごごごごごご……」

 

 

 

「出雲に神あり。是自在にして禊の証――――神宝宇迦之鏡也」

「我は、抑止の守護者。魔を裂き、神を穿つ。人の祈りを束ねし者」

「勝つも負けるも、派手に使い切ろうじゃないか!」

 

 

 

「いざ、全てを白日の下に―――――」

「立ちふさがるのならば容赦はしない。いくぞ」

「私は、我が忠義を貫くのみ!」

 

 

 

「わたくしの邪魔をするのですか。なら、仕方ありません……焦がします」

「全て。全て。主の御心のままに」

「影の風紀委員長の力……お見せいたしましょう!」

 

 

 

「ヤコブ様、モーセ様。お許し下さい――――マルタ、拳を解禁します!」

「サンタとのマッチアップは初めて? サンタは宙を舞うものデース!」

「ラウンド開始だ。拳は既に温まっている」

 

 

 

「行くよ、シロウ」

「―――っああもう仕方ねぇ! 七度ばかりぶった斬るか!」

「凍てつく冬への覚悟はできた?」

 

 

 

「一切の邪悪、滅ぶべし!」

「ジャッジメントの時間DA☆ZE!」

「捧げよその血、その命を」

 

 

 

「私はもう――――何もあきらめない!」

「とっておき、見せてあげるわ!」

「それが、貴方の望みなら――――」

 

 

「敵影発見だ。総員、持ち場につけ!」

「愛そうか。殺そうか」

「出陣します、総員、構えて下さい」

 

 

「はぁーい! BBチャンネル、出張版!」

「まとめてゼリーにしてあげる」

「飛んで火に入る……いえ、なんでもないです!」

「力の差も分からないなんて―――――」

 

 

 

「エヘヘ……ご指名いただき、恐悦至極で……」

「仕事だよ、とと様」

『違法ビースト反応、確認。お前たちに、弁護士を呼ぶ権利はない』

 

 

 

「っふ、またこれは。随分と荒々しい―――――わたくし、昂ぶってしまいます」

「どうしてもというなら、仕方ありません。……溺れたいみたいですね」

「フォウ、フォウ! フォーウ!」

 

 

 

 

 

 

 瞬間、無数の爆発により時間神殿が激震する。

 無数の宝具で消し飛ばされたフラウロスが再び誕生し、即座に消滅する。

 

 

 

「――――なにが――――ぐおおお―――――!? ふざけ―――――あああああああああ!?」

 

 

 

「「「約束された(エクス)――――――勝利の剣(カリバー)!」」」

勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!」

無銘勝利剣(ひみつかりばー)!」

黒竜双剋勝利剣(クロス・カリバー)!」

不撓燃え立つ勝利の剣(セクエンス・モルガーン)!」

 

 

 

 

「――――さあ。行って下さい、マスター!」

「貴方に勝利を!」

「マシュ、マスターを頼むぞ」

 

 

 

 

「―――――っ、はい! マスター、進路上の魔神柱は一掃されています! このまま突破しましょう!」

 

 

 

 

 

 

―――――そう。そしてここからが、本当の戦いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「――――多くの悲しみを見た。多くの裏切りを見た。多くの略奪を見た。多くの結末を見た。もう十分だ。もう見るべきものはない。この惑星では、神ですら消滅以外の結末を持ち得ない。」

 

 

 

「我々はもう、人類にも未来にも関心はない。私が求めるものは、健やかな知性体を育む健全な環境だ」

 

 

 

「この惑星は間違えた。『終わりのある命』を前提にした狂気だった。私は極点に至る。“自らを新しい天体とし、この惑星を創り直す。創世記をやり直し、“死”の概念の無い惑星を作り上げる―――――我々は憎しみから人類を滅ぼしたのではない。我々にとって、人類とは始まりのソラに至るための噴射装置に過ぎない」

 

 

 

 

 

――――大層なことだ。勝手に燃料にされる人間からすればたまったものじゃない。

 

 

 

 だが。

 その言葉が真実であり、ゲーティアが本気であることは眼前の光帯、その熱量からはっきりと伝わってくる。

 

 目をそむけたくなるような、禍々しい眩さ。

 斧を構えた賢王と、キングゥ、そしてマシュがいてもなお立っていることが難しくなるほどの。

 

 

 

 

 

「我が光帯は無限に重ねた人類史そのもの。これを前にして、人に属するものに勝算はない」

 

「ハ! 人間とは確かに犠牲が無ければ生を謳歌できぬ獣に過ぎぬ。――――だが、見る必要がないだと? 耄碌したのは目だけだけでなく頭蓋もであったようだな!」

「世界が生まれ直すとすれば、それはティアマト神(母さん)の仕事だ。あまり勝手をしないでもらおう」

 

 

 

 

 言葉とともに、黄金の波紋から引き抜かれるのは―――――剣。

 英霊ならざる、第七特異点から聖杯の力で抜け出してきた賢王ギルガメッシュ。英霊としての宝具を、至るべき王の財宝を持たない彼が、サーヴァントの攻撃を意に介さないゲーティアに対して唯一有効打たりえる最強の宝具。

 そして、それに応えるようにキングゥも己が全霊をかけてゲーティアに向かって飛翔する。

 

 

 

 

「――――起きよ、エア! 原始を語る――――原子は混ざり、固まり、万象を織りなす星を生む! 天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!」

「母さんがお怒りだ――――滅びの潮騒を聞け! 母よ、始まりの叫をあげよ(ナンム・ドゥルアンキ)!」

 

 

 

「無駄なことだ。英霊としてのギルガメッシュであれば古今東西、未来の宝具すら扱えるやもしれんが――――ただの英雄、ただの王としての英雄王には“それ”が限界だろう。創世の臼――――それを超える熱量こそが光帯だと、既に言った」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ではお見せしよう。貴様らの旅の終わり。この惑星のやり直し。人類史の終焉。我が大業成就の瞬間を! 第三宝具、展開―――――誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 光だ。押し寄せる光の洪水こそはゲーティアの宝具。

 

 止めようもない熱量が、守ろうとした人類史そのものが牙を剥こうとしている。

 あるいは、乖離剣の力を限界まで引き出せば道連れにすることくらいは叶うのかもしれないが。

 

 

 

 

「――――先輩。ここは、私が」

 

 

 

「チィッ! 今の筋力では持たぬか! ファイトだ、友よ! 死にものぐるいで我を支えよ!」

「ギル、君はいつも――――っ、ああ、わかるとも!」

 

 

 

 

 空間を斬り裂いて荒れ狂う乖離剣に、王としてのギルガメッシュでは筋力が不足しているらしい。天の鎖が支えるように巻き付いて、なお徐々に押し込まれるその光景に、耐えきれなくなったようにマシュが前に出る。決して不安そうにも、恐怖に震えるわけでもなく。

 

 

 ただ、どこか寂しげな顔で。

 

 

 

 

「先輩。もう一度、手を握ってくださいますか?」

 

 

 

「――――――まだだ! マシュ、頼む。まだ、やれる! アルトリア―――ッ!」

 

 

 

 

 

「ええ。私の力が必要ならば。黄昏の時よ、再び――――異邦の国、時の終わり。なれど最後の剣は彼の手に。城壁は固く、勝鬨は万里を駆ける――――冷厳なる勝利を刻め!

 

 

 

 

真円集う約束の星(ラウンド・オブ・アヴァロン)!』

 

 

 

 

 

「――――如何なる滅びにも、我らは屈せぬ!」

 

 

 

 

 対粛正防御――――滅びに抗う宝具が、人類史そのものの熱量を受けて大きく震える。未だかつて、人類が受けたことのない規模の滅びに対して。それでもなお、輝けるものがあるのだと示すように。

 

 

 

 

 

 

 その永遠にも思える均衡の中、声を張り上げる。

 馬鹿になった気がする耳でもしっかりと聞き取れるように。

 

 

 

 

 

 

 

「一気に畳み掛けるぞ――――アンデルセン!」

 

 

 

「ははは! この俺にあの男の話を書けだと? まあ、依頼はとうの昔に受けていたとはいえ、どう書こうが駄作扱いしてくる依頼主なんぞ死んでも御免被るところだが――――チッ、物好きな読者まで燃やされるのは―――なんだ。作家としては見過ごせんか」

 

 

 

 

 

 

「しかも締切三秒前と見た! ではお前達の旅路を書き上げよう。タイトルは、そう――――貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)

 

 

 

 

「―――――女の話をしよう。愛のままに月を呑み込み、恋によって敗れた女。そしてその女を倒す、月の王と黄金の王の話。その原初の姿を!」

 

 

 

 

 

 それは、書き上げた物語、その主人公の能力を現実のものにするという宝具。

 本来、とても長い時間が必要になるものだが、今回においてはその心配はない。なぜなら、それは実話に基づく物語なのだから。

 

 もちろん、予め頼んでおいたというのもあるが。

 

 

 

 

 

 瞬間、黄金の輝きが全てを覆い尽くす。

 吹き荒れるのは魔力の暴風。英雄でも、英霊でもなく。

 

 唯、君臨するのは黄金の王。

 

 

 

 

 

 

 

「醜悪、ここに極まったな雑種。死体に巣食った狂犬風情が正しさを語るとは、万死絶刑に値する!」

 

 

 

 

 

 

 変わる。賢王の姿が黄金の王に――――その全盛、あるいは原初の姿に。

 黄金の鎧を半身のみ身にまとい、その友たる鎖を腕に巻きつけただけの簡素な姿であり――――あの英雄王ギルガメッシュが、王としての威厳にも見栄えにも拘らずただ全力で戦うことを姿から示していた。

 

 神話礼装。それはサーヴァントであっても一度の戦闘で崩壊してしまうほどのもの。

 

 

 だが、その王は。

 英雄の中の王は、ただ高らかに謳う。

 

 

 

 

 

 

「―――――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!」

 

 

 

 

 

 瞬間、ギルガメッシュ王が黄金の波紋から取り出すのは一つの粘土板。

 かつてバビロニアでも見た、その巨大な碑文こそは――――。

 

 光帯が揺らぎ、震える。

 初めてはっきりとゲーティアの持つ最強の武器が脅かされていた。

 

 

 

 

「馬鹿な。対粛正宝具はともかくとして――――なんだ。なんだというのだ、その貴様の宝具は!?」

 

 

 

 

「馬鹿め、我が宝物に対粛正宝具が無いとでも? 第一、人理を燃やし尽くす術があるのならば、それに相当する術があるは人の理! 地上全ての、人類全ての原型を納めてこその英雄王よ」

 

 

 

「加えて、此度は宝物庫の鍵は外してある。我が契約者の魂を賭けた一戦。あらゆる支援、出資は惜しまぬと知れ!」

 

 

 

 

「是なるはあらゆる人類史を記録した碑文の原型――――天命の粘土板! 人の死、人の歴史、人の選択は貴様などの手に委ねるものではない! さあ、裁定の時だ!」

 

 

 

 

 

 全ての神々と人の寿命が記されたというその粘土板が、ゲーティアの使用した人類史を熱量とする概念を破却する。神秘は、より強い神秘によって打ち消される。ほぼ最古の神秘によって保証される人の生命が、魔術王、獣の宝具に抗い始めたのだ。

 既に取り込まれたものであり、ビーストの特異性もあって即座にとまではいかなかったものの、このまま時間が過ぎれば全ての人理はもとあるべきカタチに還るだろう。

 

 

 

 

 

 

「―――――だがッ! それも無意味だ! 対粛正宝具だと? それは何時まで展開できる。何度展開できる。我々は、人類史の熱量が尽きぬ限り永遠に放ち続けることができるのだ。人類史を開放される前に、貴様らの命は燃え尽きる!」

 

 

「第三宝具、再展開―――――誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニウス)!」

 

 

 

 

 

 

 瞬間、発射される光帯の太さが倍になる。

 まさかこれまで無計画にブッパしているようで、一応節約していたのか―――!?

 

 

 

 

「ええい、童話作家よ! 我の宝具(エア)はこの程度ではないぞ!」

「――――チィッ! 認めたくはないが想像力の限界だ! 残念だが現状では貴様は真性悪魔を打倒できる程度の力しか無い!」

 

 

「たわけ! リテイクして再出版せよ!」

「無論、不可だ! 人生なんぞ、常にリテイク不可の一発勝負だろうに! 当然、筆が間に合わんという意味でな!」

 

 

 

 

 押し込まれそうになる乖離剣を力づくで押し止めるギルガメッシュだが、高すぎる互いの攻撃の威力によって周囲に撒き散らされる衝撃波だけでも特異点が崩壊しそうな勢いがある。当然、それを防いでいる対粛正宝具にも相応の負担があるわけで。

 

 

 

 

「なら、私が―――――」

 

 

 

 

 

 前に出、今にも崩壊しそうなキャスター・アルトリアの護りを引き継ごうとしたマシュに、声をかける男がいた。

 

 

 

 

「いいや、少しだけ待って欲しい。僕にも、勝機が見えたからね」

 

 

 

 

 それは、どこかゆるふわで気の抜けた顔をした男だった。

 誰よりも、人理を守護するために奔走し――――その旅の果てに、己の意義を見定めた男だった。

 

 

 

 

「遅いわ、たわけ!」

「いや、これでも一大決心だったんだし許して欲しいんだけど……。でも、君たちのお陰で、僕は間に合った。――――マシュ、君の命が残り僅かであり、それが君の望みであったとしても――――やっぱり、それを見届けるのは酷く悲しいからね」

 

 

 

 

「ドクター……? それは、一体」

 

 

 

 マシュの疑問に応えるように。

 ドクター・ロマンの姿が変わる。髪の毛や、肌の色すらも。

 

 

 

 

「僕は――――魔術王、ソロモン。ゲーティア、君に引導を渡すものだ」

 

 

 

 

 

「ハ! この終局に、無能の王のお出ましか! 死ね! 死ね、死ね、死ね! そのまま守りたかった人類史によって灰と化すがいい!」

 

「いいや。その前に一つだけ。やっておく事があるんだ。――――ゲーティア、お前に最後の魔術を教えよう

 

 

 

 

 ソロモン王が――――ロマニ・アーキマンが、その手に嵌めたたった一つの指輪を掲げる。

 

 

 その胸を過るのは、安堵か。あるいは恐怖か。

 けれど彼は、己の存在全てを擲つと、そう決めてしまったとは思えない穏やかな顔をしていて。

 

 確かに、彼を犠牲にすれば勝てる。

 勝つことはできる。

 

 

 けれど、それは望んだ勝利じゃなくて。

 

 

 

 

 

「――――――駄目だ、ドクター!」

 

 

 

 

「藤丸君………君には、本当に驚かされた。まさか、ソロモン相手に――――ゲーティアを相手に、あと一歩のところまで追い詰めるとは思っても見なかった」

 

 

 

 

「―――――カルデアの司令官として指示を出すよ。僕のことは気にせず、完膚なきまでに完璧な勝利を」

 

 

 

 

 だが、あと一手。あと一手だけ足りなかった。

 ゲーティアは、ソロモン王さえいなければ無欠の存在と言っても良かった。マシュを犠牲にし、一か八かで耐久戦をすればギルガメッシュと天命の粘土板で勝利できるかもしれない。

 

 けれどもっと確実な方法があればソロモン王はそれを実行する。それが、彼にできることであるのなら。

 自分を犠牲にしてマシュがわずかでも生き延びられるのなら、悪くはないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――不意に場違いなエンジン音が響いた。

 

 

 

 

 地面を抉るタイヤの音。

 無駄に光らせるライトに、高らかに響かせるクラクション。

 

 

 

 

 

『どんな嵐であろうとも! どんな未来が待とうとも! 駆け抜けるは前人未到、未完の馬よ、輝ける轍を残せ! ――――――私たちは、あらゆる困難を乗り越える! その証左を今示そう! ―――――『境界を超えるもの(ビューティフル・ジャーニー)!』

 

 

 

 

 それは、一つの対界宝具。世界の境界を踏み越えるシャドウボーダー。

 その轍を覆うように咲き誇るのは、なんてことはない小さな花。

 

 

 

 

 

 

「いよぅし、間に合った――――!」

 

「げぇぇぇぇ、マ――――リン!? なんでキミが!? まさか再召喚!? いやいやいや!」

 

 

 

「そして発想が貧困だなアーキマン! サーヴァントの攻撃が無効で人材が足りないなら“死んでいない”英雄を連れてくればいい! 第七では出番が無かったからね! 徒歩で来る予定だったがヒッチハイクしてきてみた! そして―――――車のボンネットを見上げるがいい憐憫の獣よ! そこに、貴様の死神が立っているぞ!」

 

 

「………死なくして命はなく、死あってこそ生きるに能う。そなたの言う永劫とは、歩みではなく眠りそのもの」

 

 

 

 

 

「災害の獣、人類より生じた悪よ。再創造を望んだその憐憫こそ、汝が人の歩みを理解できぬ根底なり」

 

「馬鹿な。貴様――――まさか、冠位の」

 

 

 

 

 

「冠位など我には不要なれど、今この一刀に最強の証を宿さん。獣に堕ちたといえど、魔術王の使い魔であれば名乗らねばなるまい―――――幽谷の淵より、暗き死を馳走しに参った。山の翁、ハサン・サッバーハである」

 

 

 

 

 

「――――晩鐘は汝の名を指し示した。その指輪、天命のもとに剥奪せん――――!」

「そしてゲーティア君には残念だが、これは幻術だ!」

 

 

 

 瞬間、宝具をすり抜けるようにしてゲーティアの眼前に立った山の翁の一撃が、ゲーティアの片手の指輪――――それを4つ纏めて切り裂く。

 

 

 

「ぐおおお――――ふ、ざけるなぁあああ!」

『ビーストⅠの霊基パターン、変化! 死の概念が付与されている! これは通常の、サーヴァントの霊基パターンだ! 魔神柱からの逆説的復元はもうない!  これなら完全に消滅させられる!』

 

 

 

 

 四方に光線を撒き散らすゲーティアに、余裕をもって回避し距離を取る山の翁。気配遮断を使って姿を消すアサシンに、ゲーティアは苛立ったように注意を散らし――――。

 

 

 

 

 

「さあ、マスター君これを!」

 

 

 

 シャドウボーダーから顔を出すダ・ヴィンチちゃんから投げ渡されるのは、一つのトランク。かつて、カルデアから逃げ出す時にも手放さなかったそれこそは絆の証。霊基グラフ。

 

 

 

「―――――マシュ!」

「はい、先輩!」

 

 

 

 言葉だけで察してくれる後輩が、召喚サークルを設置する。

 決して多くはない魔力を回す。幾度も繰り返したその作業をまた、もう一度繰り返す。

 

 

 

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」

「―――――マスター。わたしが貴方の鍵となるわ」

 

 

 

 

 

 

「令呪を、三画重ねて願う――――霊基復元!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――もうひとりだけ、ゲーティアに対抗できる、サーヴァントではない生きた人間の心当たりがあった。

 

 

 

 

 サーヴァントとして召喚されるアビゲイルに重ねるように、彼女に託した5つの聖杯の力で今、この瞬間に呼ぶ。応えてくれる保証はない。確証もない。

 

 

 

 

 ただ、そう―――――月並な言葉でしかないけれど、信じている。

 

 

 

 俺のカルデアは。

 俺達のカルデアは最強なんだと。

 

 

 

 この、紡いできた絆なら―――――どんな願いだって叶えられると。

 絆礼装を、“彼女”から渡された銀の鍵を、強く握った。

 

 

 

 

 

 

「オーダーチェンジ! 来てくれ、アビー!」

 

 

 

 

 

「我は門を知れり。汝、見ること能わず―――――さあ、座長さん。呪いの唄を謳いましょう」

 

 

 

 

 そこに、扉があった。

 扉の先には虚空があり、およそ人間には耐えられないだろうその空間から降り立つのは、銀の鍵を持つ一人の少女。

 

 サーヴァントではなく、セイレムから旅立ち、いつか再会を誓った。

 

 

 

 

 

「我が手に銀の鍵あり――――虚無より顕れ、その指先で触れ給う。我が父なる神よ、薔薇の眠りを越え、いざ窮極の門へと至らん! 『光殻の虚樹(クリフォー・ライゾォム)!』」

 

 

 

「さあ、貴方に“門”の先を見せてあげるわ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 虚空(ソラ)の果て。

 神がいた。生命がいた。得体のしれない物体がいた。

 

 終わりのない、寿命を持たない生命もそこには存在した。

 

 

 

 深き、深淵に住まうものども。

 

 

 

 嘲る者、奪う者、あるいは異星の神にすべてを捧げる者。

 

 

 

 

 

 なんだ、これは。

 

 

 

 この惑星だけでない。

 この虚空の果てに、こんなにも多くの失敗作が溢れているというのか!?

 

 なぜ、限りある命でもないのに争う。

 なぜ、己の持つものに不足がないのに奪う。

 なぜ、意味もなく裏切る。

 

 

 

 限りある命でなければ、救われたものになるはずだった。

 満たされていれば、人類はもっと見るべきものになると思っていた。

 

 だが、だがこれでは――――何も変わってはいない!

 

 

 どうしろというのか。

 もはや、人類に救いはないとでもいうのか。

 

 

 

 

『悲しい人……。救いは、神様に与えていただくだけのものかしら? 清貧が、祈りが、善い行いに応えて下さるものではないの?』

 

 

 

 

 そんな人類がどこにいる。

 そんな救いがどこにあった。

 

 神は惑星は人を救わない。だから我々が惑星になろうとしたというのに。

 

 

 

 

 

 

『―――――よくぞ聞いてくださいました! 貴方には座長さんスペシャルセレクションを視聴してもらうわ!』

 

 

 

 

――――は!?

 

 

 

 

『まずは……私の選んだ、『銀の鍵との冒険セレクション』から!』

 

 

 

 

 

 待て。一体何を言っている―――――。

 

 

 

 

 

『大丈夫、これから分かっていただけるまでひたすら座長さんのお話をさせていただくだけよ?』

 

 

 

 

 

 くっ、こんなところにいられるか。我々は―――――。

 む、人類に似た種族だと………ほぼ永遠の命……ほう。我々の理想にも近い――――。

 

 

 

 

『座長さんは悪い人だわ。……どんな人とでも仲良くできるのはとっても素敵なのに、いつの間にか“お仲間”を増やされているのですもの!』

 

 

 

 

 まあ、我々にとっては障害物でしかないが――――マシュ・キリエライトの旅路を彩ったという点においては悪いものではなかったと言う柱もいる。

 

 

 

 

 いや待て、今明らかに話が飛んだぞ。

 

 

 

『セレクションですもの。最終的に、座長さんと仲良くなった子は殺されてしまうけれど、色々あって座に登録されたわ』

 

 

 

 待て、ネタバレはやめろ――――!?

 

 

 

『先は永いですもの! さあ、次はBBさんの『ムーンセル・セレクション』よ!』

『そしてその次は清姫さんの『ますたぁと清姫日記帳』』

『次は紅閻魔さんの『カルデア閻魔帳』』

『ダ・ヴィンチさんの『カルデアセレクション』』

『水着の私が選んだ『マスターと夏の思い出』』

『ムニエルさんの『極秘記録』は……あ、小さい座長さん! 座長さんが若返りの薬を飲まれてしまった時のものね!』

 

 

 

 待て、なんだというのだ。

 こんな記録に何の意味がある。

 

 

 

 こんなものは無意味だ。

 我々が燃料にする、人類史の過去の遺物に過ぎない。

 

 

 

 

『貴方は、何を見たかったの?』

 

 

 

『善いものを、善い結末を見たかったのではないの?』

 

 

 

『それは、人類史にも確かにあったわ。とても、とても多くの悲しみに押しつぶされてしまいそうだけれど。精一杯、善いことをしようと頑張っている人がいるの』

 

 

 

『それを無視して燃やしてしまうなんて、ひどい誤解だわ! 貴方は、マシュさんが楽しそうに過ごされているのを見て何かを感じたのではないの? そうでなければ、貴方の望む幸せな結末は、きっとこの宇宙のどこにも無いわ』

 

 

 

 

 

 違う。我々は。

 無いからこそ、作ろうと――――。

 

 

 

 

『では次は座長さんの選んだ『マシュの名場面セレクション』にするわ』

 

 

 

 

 

――――――――――理想郷はここにあったか。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ぐ、あああああああああ―――――――!?」

 

「ゲーティア、苦しんでいます!? これは、一体――――」

 

 

 

「ごふっ………尊……ハッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光帯が乱れ、山の翁の斬撃がゲーティアの指輪を奪い―――――それを手にとったのは、魔術王ソロモン。

 

 

 

 

「―――――今、此処に十の指輪が揃った」

 

 

「藤丸君の―――いや、あえてこう言わせてもらおう。僕たち、カルデアの勝利だ」

 

 

 

 

 

 

 

 全ての魔術が、魔術王ソロモンの支配下に置かれる。

 それは、本来であればソロモンの使い魔であったゲーティアも例外ではなく。開放される光帯の人類史に、力を失うゲーティア。

 

 

 

 

 

 

「王律剣バヴ=イルを使う! 宝物庫の扉を開けよ――!」

 

 

「原初を語る―――――天地は分かれ、無は開闢を言祝ぎ。世界を裂くは我が乖離剣! ――――死して拝せよ、天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、最後の一撃が。

 その身体を容赦なく呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後書き


ここまでの短いようで長い旅路にお付きい下さった皆様に最大の感謝を。
多くの感想を頂きながら、返信と続きの話を考える日々はとても楽しいものでした。あれほど感想をいただけなかったら多分4章くらいで力尽きていたと思います。

至らぬ点は多くあったと思いますが、これにて本編完結とさせていただきます。
本当にありがとうございました。









ちょっとだけエピローグ書きたいです

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