瀞霊廷を抜け出し、更木を目指し走っていると久しく感じていなかった悪寒を感じる烈。
霊圧だけでは無い、強者の匂い。初代剣八としての本能がこの先にいる存在に喜びを感じていた。
「案内ご苦労さ……………逃げ足だけは速いようですね」
烈は元から気付いていた事だが、伝令にきた隊士は護廷の者では無い。貴族お抱えの懐刀だ。
お互いの利権争いを繰り返している一部の貴族は暗殺対策に専門の傭兵を雇う事がある。
烈からしたら取るに足らない雑魚ではあるが、暗殺を生業としている相手に隙を晒す程烈は衰えていない。
本性を現したら即座に首を刎ねようと斬魄刀に手をかけていた。しかし、彼の任務は烈の暗殺では無かった。更木に烈を連れてくる事だった。
霊圧を頼りに暫く歩いていると、たどり着いた。
「なんだァ?てめぇは…………………」
そこには、山のように積み上げられた死体の上に腰を下ろす少年の姿があった。
少年の手には何処で手に入れたのか、刃毀れした斬魄刀が握られていた。
「四番隊隊長卯ノ花烈と申します」
死体の山を見ると身なりの高そうな身なりの死体が複数あり、大半が死覇装を纏っていた。
「そちらの死体の方々に用事があったのですが………………これは貴方がやったのですか?」
「うるせぇから斬った。だけど詰まらねぇ雑魚だった」
貴族が雇う傭兵なだけあってそれなりの実力者だ。しかし、少年の実力は大量の席官クラスを相手取って雑魚と言えるほど。
低く見積もっても隊長クラスなのは理解出来た烈。
「てめぇなら俺の遊び相手になってくれそうだなぁ‼︎」
獣の如き咆哮を上げながら烈へと斬りかかる少年。反応が遅れ、一瞬で間合いを潰された烈。いくら弱っているとはいえ反応し切れない程のスピード。
なんとか攻撃を防ぐが、少年は荒れ狂う嵐のように攻撃を続ける。
(この少年、''強い''ですね…………………)
激しい剣戟の中、烈の思考は驚く程冷静になっていた。自分の中の本能が強者と認めながら暴れず、理性を保っていて少年の強さを分析すらしていた。
単純な戦闘力は烈よりも上だろう。流魂街にいる者にしては破格の霊圧。その強大な霊圧は例えるなら獣、腹を空かせた肉食獣のようだ。
その戦い方は野蛮そのもの、双盾が完成された技術であるなら少年の剣はその真逆だ。理も術も無いただの暴力。
「面白ぇ‼︎全力で斬ってるのに壊れねぇ奴なんて初めてだ‼︎」
「それは、どうも‼︎」
少年は笑っていた、楽しくて楽しくてしょうがないといったように。心から強者との戦いを求めているその姿はかつての自分を見ているようだった。
それを悟った時、烈は自身の口角が上がっていることに気がついた。
「なんだ、てめぇも楽しんでんじゃねえか‼︎そうだよなぁ、こんな斬り合い楽しくねぇ筈がねぇよなぁ‼︎」
ハ千流であった時の自分が求めた自分よりも強い者との戦い。双盾と結ばれてから大人しくなったとはいえ目の前の少年は烈の胸をときめかせるには充分すぎる程だった。
「ええ、楽しいです。楽しくて楽しくてしょうがないです。もっと早く貴方と会っていたかったと思うほどに楽しいです」
しかし、少年の斬撃を烈は捌ききれないでいる。避けきれなかった一撃が少しずつ烈を傷付けていく。
(全快であれば……………いや、無理でしょうね)
烈は七割程度の力しか出せない。双護を産んだ時の消耗が回復しきっていない。
三割の身体的機能の制限は深刻な問題だ。並外れた能力を持つ烈であるからこそ戦えている。
「最高だぜ‼︎楽し過ぎてどうにかなっちまいそうだ‼︎」
「私も楽しいですよ?ですが、節度を持つ事が大事なんですよ」
「説教垂れてんじゃねぇ‼︎お前は俺と同じなんだろ⁉︎なら、この瞬間を楽しめぇ‼︎」
少年は感じていた、烈は自分と同類である。斬り合いに愉悦を感じ、満足のいく戦いを求めて彷徨う者であると。
烈は少年の言葉を無視したが、否定できないでいた。戦闘において満足した事は一度も無く、双盾との戦いでも自身を満足させられなかった。
目の前の少年との戦いは自分に欠けていたものを埋めるだけのものがある。対応出来ているだけで明らかに負けているのに楽しくてしょうがない。
(この剣にも慣れてきましたか………いや、剣速が明らかに落ちている)
斬られたそばから回道をかけ傷口を塞ぎながら戦っていた烈だったが途端に攻撃を捌けるようになり、傷を負うことも無くなっていた。
負けていた戦いが互角のものになったのだ。烈の攻撃は少年に当たっておらず、消耗している様子は無い。それなのに剣速が落ちてきた理由は明白だった。
「手加減とは舐められたものですね‼︎」
「あぁん?何言ってんだ。おら、もっと来いよ‼︎もっと斬り合おうぜ‼︎」
手加減。少年は初めての満足のいく戦いをより長く楽しむ為に無意識で加減をしていた。楽しい戦いだが自分の方が強いと本能的に少年は理解したのだ。
それに対して烈が感じたのは怒りだった。少年に手加減をさせてしまった弱い自分への怒り、剣八であった自分に手加減をする少年への怒りが烈の中で湧き上がっていた。
「〈縛道の六十二 百歩欄干〉」
複数の光の棒が少年に向かって飛んでいく。少年はそれを横へ飛び避けるが烈は更に追い込んでいく。
「〈縛道の六十三 鎖条鎖縛〉」
霊子で構成された鎖が少年を縛り上げ、動きを止める。少年は引きちぎろうとするが、この隙を烈は逃さない。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ〈破道の七十三 双蓮蒼火墜〉」
極大の蒼い炎が少年1人に襲いかかる。剣八であった頃なら使わなかった鬼道。双盾と会っていなかったら手加減させた事を嘆きながらも剣術だけで闘っていただろう。
「何やってんだ‼︎折角の楽しい斬り合いに水を刺してんじゃねぇよ‼︎」
「貴方との戦いは楽しいですが、あまり長い間楽しむ訳にもいきません。子供の世話もありますし」
「俺の知った事かよ‼︎もっと俺を楽しませろ‼︎そんな技使わないでもっと楽しい斬り合いをしようぜ‼︎」
鬼道を使われた事に怒る少年。その怒りに呼応するように霊圧が上がる。
「本気になるのが遅いですよ。〈縛道の六十三 鎖条鎖縛〉〈縛道の六十一 六杖光牢〉」
鎖条鎖縛によって少年を捕縛、そしてその後に六つの帯状の光が胴に突き刺さり捕縛を補強する。
霊圧を上げ鎖条鎖縛を引きちぎろうとするが六杖光牢により動きを封じられ引きちぎれない。
「貴方は強い。ですが、戦いを楽しもうとし過ぎた」
勝負を決めにかかる烈。幾ら六十番代の縛道二種類とはいえ消耗した烈の縛道では少年を縛りきれないのは理解出来ていた。
それに消耗した今の状態では戦闘を長引かせる訳にはいかなかった。短時間での決着………始解はあまり戦闘向きのものでは無く、鬼道では決め手に欠ける。
卍解、死神の戦闘術における切り札。斬魄刀の本来の力を解放する事で戦闘力を10倍以上に引き上げる。卍解を使わなければ勝つ事は出来ない。
それほど強力な卍解も欠点は存在する。強力な卍解だが、隊長格であっても卍解の維持には莫大な霊力を消費する為長時間の発動は出来ない。
(今の状態で使えるのは保って一撃……………発動出来なければ負けて死ぬ。発動出来たなら一撃で決めなければ負け。なんとも分の悪い賭けですね)
ただでさえ消耗している烈にとっては卍解の発動すら危うい。発動出来ても一撃で勝負決めなければ霊力の消耗で瀕死になるか、少年に殺される。
分の悪い賭けだというのに楽しくなっている自分がいた。命を賭けたひり付く勝負、忘れていた感覚。剣八であった者として自分より強い者との命を賭けた勝負を楽しまない理由は無い。
少年を縛っていた縛道が軋み出した。霊圧の上昇で無理矢理縛道を解除しようとしている。
「良いでしょう、これにて座興は終いです」
烈の言葉が鍵となったように少年は無理矢理縛道を解除した。ただ戦いを楽しんでいた先程とは違い、目の前にいる烈を殺す獣となった少年。
「 卍解 皆尽 」
烈が卍解をすると、烈を中心として血のような液体が流れ落ちる。そして流れ落ちた液体は収束し、刃を形成する。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️‼︎」
言葉にすらならない咆哮を上げながら列に突撃する少年、その速度と気配はまさに獣。一つ間違えれば死ぬというのに烈の思考は今までに無い程落ち着いていた。
「さらばです、私を満足させた子よ。せめて安らかに眠りなさい」
少年が振り下ろした刃をギリギリで避け、斬魄刀を振るう。その一閃は少年の首を跳ね飛ばした。
少年を埋葬し、少年が使っていた斬魄刀を墓標代わりに突き刺す。
手を合わせた後烈は急いで走り出した。十一番隊の救援で息子の無事は保証出来ている。
無事に帰ってくる筈の双盾を双護と共に笑顔で迎える。その為にも急いで帰らなければならなかった。しかし、消耗している状態で無理に卍解をした事で七割程であった霊力は四割程まで低下していた。
瞬歩は出来ない事も無いが、長い距離の瞬歩をする程余裕が無い。
双盾は無事であると信じている烈だが、とてつもない不安にかられていた。
やっとの思いで瀞霊廷にたどり着き、四番隊の隊舎の方へ急いで走る。すると視界の先に見覚えのある背中を見つけた。
その背中は針山のように斬魄刀が突き刺さっており、足取りは今にも倒れそうであった。
その背中を見た瞬間、烈は瞬歩を使い側によった。
「双盾‼︎大丈夫ですか、双盾‼︎」
「烈………さん?」
「はい、私です‼︎卯ノ花烈です‼︎もう無事です、今貴方を治してみせます」
今の烈の霊力では気休め程度にしかならないが回道をかけ双盾を担ぐ。
「ただ………いまです。いま、帰りました」
「…………はい、おかえりなさい。双盾」
まず、一言。ごめんなさい。更木剣八は好きなんですけど、双盾や双護がいてやらなければやられるという状況で卯ノ花さんがトドメを刺さないという選択肢は取らないだろうと思いこの展開にしました。
ショタ八と卯ノ花さんの勝負がどんなだったかは分からないけど、卯ノ花さんは多分鬼道とか卍解は使ってなかったと思うんですよ。加減したショタ八をなんとか剣術のみで押し切って撃退したって感じだと思うんです。家族の為に生き残らなければいけない卯ノ花さんは鬼道も卍解も持てる手札は全部使うと思いました。八十番代の鬼道を詠唱破棄するくらいの鬼道の実力はある訳だし、一時的とはいえショタ八を抑え込むくらいの鬼道は使えるとふんでこんなバトル展開にしました。
拙い戦闘描写でしたが、楽しんでもらえたら幸いです。
次回は山じぃの胃がストレスでマッハな回の予定です。因みに、ショタ八が殺してた貴族は兄上と話してた貴族です。本来の予定はショタ八と傭兵という数の力で圧倒する予定でしたが、痺れを切らしたショタ八にあっさりやられました。
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
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涅ネム (マユリ印ヒロイン)
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虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
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砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
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雛森桃 (正統派美少女)
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四楓院夜一 (褐色お姉さん)
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その為 (活動報告にお願いします)