卯ノ花さんの光源氏計画   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

46 / 70
刳屋敷、戦闘する。

「よう、坊主。部下が世話になったな。俺とも遊んでくれよ」

 

 

「誰だ………………あんた?」

 

 

「こいつは失礼したな。十一番隊隊長刳屋敷剣八ってもんだ。よろしくな、坊主」

 

 

 いつのまにか斬魄刀を引き抜き一護に斬りかかる刳屋敷。反応は遅れてしまったが反射的に刳屋敷の一撃を受けた。

 

 咄嗟に刳屋敷から距離を取る一護。

 

 

「反応は悪くねぇ、距離とって様子見ようと考える頭もあるか」

 

 

「何ぐだぐだ喋ってんだよ」

 

 

「いやいや、双護がお前の事お気に入りっぽいだからよ。どんなもんか試してみたんだよ。思ってたより楽しめそうで安心したよ」

 

 

「そいつは、何よりだ」

 

 

 ある程度の霊圧感知を覚えた一護は目の前にいる刳屋敷が自分よりもはるか高みにいる存在である事を察知していた。

 

 例え、霊圧感知をしなくとも本能が刳屋敷には勝てないと告げていただろう。

 

 現世にて、格上との戦闘をこれでもかとこなしてきた一護。

『自分より強い者と戦う時、重要になってくるのはどう倒すかでは無くどう一撃を入れるかを考えるべし』一護が双護から教えてもらった事の一つだ。実力だけでは刳屋敷に勝つ事はまず不可能、であればそれ以外の要因を手繰り寄せるしかない。

 

 一護は双護を唯一、瞠目させた技を放つ準備をする。連続で放てるものではないが、幸いな事に刳屋敷は一護の出方を伺っている。

 

 

「怪我しても………………知らねぇからな」

 

 

「ほぉ……………………」

 

 

 刳屋敷は思わず感心した。濃密に練り上げられていく一護の霊圧。そしてその霊圧が斬魄刀に収束していく。

 

 そして納得もした。これ程の霊圧であれば一角と恋次を倒す事も可能だろう。場合によっては隊長にすら届くかもしれないものだと。

 

 

「月牙……………………天衝ぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 

 振り下ろされた刃から放たれる濃縮された隊長格にすら届こうとしている霊圧の塊。

 

 防御しないで受けたら刳屋敷とて危ないだろう。

 

 

「良いじゃねぇか。最高だぜ坊主‼︎」

 

 

 多少の遊び相手程度になればそれで良いと思っていた刳屋敷。しかし、一護が見せた一撃は自分に届く可能性を持った刃だった。今はただの遊び相手でも自分を越えうる好敵手になるかもしれない。強さ故に抱いていた退屈が裏返る予感がした。

 

 月牙天衝が刳屋敷に着弾し、大きな土煙をあげる。土煙で見えないが刳屋敷の霊圧は依然として揺らいでいない。

 

 しかし、動揺もショックも無かった。一護自身この一撃で倒せていない事は分かっている。相手は自分よりも格上、そして護廷隊の中でも指折りの化け物。そんな相手がこの程度で倒せる訳が無い。

 

 煙が晴れると、隊服が所々焼け焦げた刳屋敷がこれ以上ない程楽しそうに笑っていた。

 

 それは決して愉快な笑みなどでは無く、極上の餌を前にした獣が浮かべる笑みだ。一瞬で火照っていた体が冷え切ってしまうほどの汗をかくのを感じた一護。

 

 

「おい、坊主………………名前はなんて言うんだ?」

 

 

「黒崎一護だ‼︎」

 

 

 自分を鼓舞するように名前を叫ぶ。この状況では逃げる事も隠れる事も出来ない。立って戦うしかない。『ルキアを助ける』『みんな揃って現世へ帰る』といった考えを持っていては殺されてしまう。生き残る為に一護は自分の名前を吠えるように叫んだ。

 

 

「そうか、良い名前じゃねぇか一護。一つお前に謝らなきゃいけねぇ事がある。ただのガキと思って遊ぶような真似して悪かったな。ほんのちょびっとだけ………………本気で相手してやる。だから死ぬんじゃねぇぞ」

 

 

 そういうと刳屋敷は初めて斬魄刀を構えた。刳屋敷から押さえ込んでいた霊圧を解放したからなのか、空間自体が揺れた。

 

 刳屋敷から放たれる重圧に今にも押しつぶされそうになるが必死に抵抗する一護。そんな一護の姿を見てまた笑みを浮かべる刳屋敷。

 

 尸魂界において刳屋敷と戦う奴は少ない。そして戦おうとしても少しの霊圧の解放で気絶するか戦意を失っていた。

 

 それでも戦う意思を捨てない一護は刳屋敷にとって稀有な存在となる。

 

 

「瑞祥屠て生まれ出で、暗翳尊び老いさらばえよ『餓樂廻廊』」

 

 

 瞬間、刳屋敷の背後から巨大な牙を生やす『口』を備えたヒグマほどの大きさの白い球形の化け物が三十体近く現れる。

 

 双護や平子達との修行で幾つかの始解を見た一護だったが、刳屋敷のソレは今まで見たものとは違っていた。

 

 対峙する者を容赦なく喰らい尽くすであろう化け物の蠢く様はそれだけで一護に恐怖感と絶望感を与える。

 

 しかし、一護は斬月を構える。戦いとは結局のところ勝つか負けるかしかなく、死神の戦いは勝てば生き、負ければ死ぬ。そんな戦いだという事を双護から教わった。

 

 退けば老い、臆せば死ぬ。始解を会得した時、斬月から教わった言葉が一護の頭の中を駆け巡る。

 

 

「どうした一護、ビビったか?」

 

 

「ビビってねぇよ…………今からその化け物諸共ぶった斬れるって思うと嬉しくて震えてくるんだよ」

 

 

「そいつは重畳。是非ともぶった斬ってくれ。俺もこいつも解放すんのは久しぶりでな‼︎」

 

 

 刳屋敷が斬魄刀を振るうと餓樂廻廊の一体が一護目掛け襲う。一護は迫り来る化け物攻撃を避け、そのまま斬り捨てようとするが餓樂廻廊に刃は通らず、ただ弾くのみとなった。

 

 

(斬れなくても弾く事は出来る………………全部弾いてアイツを直接…………いや、弾く前に食い殺される。ならもう一回月牙撃つしかねぇか)

 

 

「考えは纏まったか? 何時迄も遊んでやりたいんだがな、こっちもめんどくせぇ書類仕事があるんだ。あんまり待ってやれねぇぞ」

 

 

「うっせぇ‼︎その書類仕事も病院のベッドの上でゆっくりやらせてやるから覚悟しとけ‼︎」

 

 

「面白ぇ‼︎やってみろ‼︎」

 

 

 刳屋敷としては双護の事だからある程度始解した斬魄刀との戦闘経験は積ませていると嶄を括っている。その理由として、生物型の斬魄刀を操るものは尸魂界を探してもそうはいない。それを現世で瀞霊廷に干渉されないように用意するのは無理だからだ。

 

 よって一護にとって未知である可能性が高いとして、一護は飛び込んでくるような真似はしない。そうなると一護にとっての攻撃手段は鬼道か先程放った月牙天衝となる。

 

 

(鬼道撃てるならもう撃ってるだろうしな。さっきの斬撃だろうな)

 

 

「力を貸せオッサン‼︎舐められっぱなしじゃお前も悔しいだろ⁉︎俺とお前でアイツに目に物見せるんだよ‼︎」

 

 

 一護は再び斬月を構え、霊圧を練り上げながら斬月に問い掛ける。その声に呼応するようにいちごの霊圧が膨れ上がる。

 

 ハッキリと視認できる程に強力な霊圧を斬月に喰らわせる。刳屋敷によって震えていた空間に静寂が取り戻される。

 

 霊圧の強さで言えば刳屋敷の方が断然上である。しかし、その差を補う何かが今の一護にはあった。

 

 

「は、ははは、ははははははは‼︎最高だぜ、最高だぜ黒崎一護‼︎よし来い‼︎お前の全霊、俺が見定めてやる‼︎」

 

 

「あぁ………………これが、俺達の………………月牙天衝だぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 

 一護から放たれた月牙天衝は一度目のそれとは比べ物にならない程圧縮されて威力と大きさだった。刳屋敷は餓樂廻廊で防御するが、防御に回った餓樂廻廊の三分の一が斬り飛ばされた。

 

 

「これは……………………たまげたなぁ」

 

 

 これだけでも十分驚くべき事なのだが、刳屋敷は更に驚かされる事になる。

 

 月牙天衝を放った一護がいつの間にか目の前に移動してきており、斬月を振り上げていた。

 

 

「あぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 

 振り下ろされた刃は刳屋敷を捉えるがその一撃にもう力は無く、斬月も刳屋敷の肌に傷一つつけていない。

 

 刳屋敷の目の前に来た時に一護は己の霊圧を使い果たし、気を失っていた。

 

 自身に触れている斬月をどけ、一護を担ぎ上げる刳屋敷。

 

 

「お前すげぇよ黒崎。今回は俺の負けだ」

 

 

 一護を担ぎながら、賞賛を送る刳屋敷に声をかける者がいた。

 

 

「一護をどうするつもり?」

 

 

「こんなおもしれぇ奴、そうそう他のやつに渡すのも癪に触るしな。適当に四番隊にでも放り込んで来るさ。姐さんなら治してくれんだろ。それなら文句ないだろ、双護」

 

 

「霊圧遮断のやつ使ってるのによく分かったね」

 

 

「こんな状況で声かけてくる奴なんてお前くらいなもんだぞ。で、黒崎は姐さん所で良いんだよな?」

 

 

「それよりも………………いつもの店に放り投げてもらっていいかな? 大将には話してあるから」

 

 

「あそこの店か、分かった。それにしても、わざわざこいつをここまで育てて送り込んだんだ。何か面白い事でもするんだろ? 俺も乗せてくれよ」

 

 

 先程までの獣のような笑みとは違い、悪戯好きの子供のような笑みを浮かべる刳屋敷。双護もそれに釣られて笑みを浮かべる。

 

 

「うん、やってほしい事は色々あるけど…………近い内に今回の旅禍侵入の比じゃない位の大事件が起こるから、その時は旅禍の子達を守ってほしいかな」

 

 

「よく分かんねぇけど分かった、俺に出来る範囲でやってやるよ。代わりにまた遊びに付き合えよ?」

 

 

「うん、僕もちゃんとした運動したいと思ってたし良いよ。ただ、今は立て込んでるから一通り終わった後でね」

 

 

 瀞霊廷では強くなればなるほど戦闘から遠ざかる傾向に有り、刳屋敷も双護も強い者との戦いを欲していた。

 

 そんな2人が瀞霊廷内で一度戦えば、一帯は更地となる為日取りを決め、被害の出ない場所で戦わなければいけないのだ。

 

 

「あぁ、それで良いよ。約束守れよな」

 

 

「うん、分かってるよ。それじゃ、僕はこれで」

 

 

 そう言うと双護はその場から姿を消した。刳屋敷は双護に何か思うところがあるのか双護がいなくなった場所を暫く見つめ、ため息を吐く。

 

 そして一護を回復させる為双護達の行きつけの居酒屋へと向かうのだった。

 




多分刳屋敷さん、一護の事めっちゃ気にいると思うんよ。

双護君達行きつけの居酒屋は浦原、姫乃と共同で結界を仕込んでいるのでマユリ様の監視も誤魔化せます。この作品において姫乃ちゃんは如月ってだけなので特に浦原さんとは関係ありません。←はちみつ梅さんの作品を読んでください。

次回は…………………どうしよっかな。ちょっと迷い所。とりあえず次の更新はR18の方にする予定なのでよろしくお願いします。

双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。

  • 涅ネム (マユリ印ヒロイン)
  • 虎徹勇音  (長身系真面目臆病風妹)
  • 砕蜂    (一途な真面目ちゃん)
  • 雛森桃  (正統派美少女)
  • 四楓院夜一  (褐色お姉さん)
  • その為 (活動報告にお願いします)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。