十番隊隊長である日番谷冬獅郎は今回起きている一連の騒動に疑問を感じていた。旅禍の侵入は兎も角、四十六室の決定が通常よりも早く、横暴であったからだ。
それに加えて五番隊隊長藍染惣右介の殺害、そして副官雛森桃の錯乱。事件の背景には三番隊隊長の市丸ギンが関わっている事は分かっており、何か決定的な証拠が無いか探っていた冬獅郎。
そんな時、牢へ入れられていた雛森が脱走したと通報を受けた。行動を制限されたといえど雛森は護廷隊の中でも鬼道の達人として有名であり、看守程度なら白伏をかける事など造作も無い。
副官の松本乱菊と共に雛森の霊圧を追いかけると中央四十六室にたどり着いた。
「門番もいねぇし………………妙だな」
通常であれば席官相当の実力を持つ門番が警備をしているのだが、居らず四十六室から妙な雰囲気が出ていた。
「松本、下がってろ」
「ちょ、隊長⁉︎何やってんですか⁉︎」
試しに門を破壊する冬獅郎。普段であれば門を破壊すれば警報が鳴り、瞬時に囲まれてしまうのだがその様子が一切ない。
乱菊が冬獅郎の後ろであたふたしているがお構い無しに奥へと進んでいく。乱菊も諦めたのか、冬獅郎について四十六室へと入っていく。
「隊長………………これって…………」
「あぁ。俺たちが思ってる以上に大変な事になってるみてぇだな」
四十六室の中は凄惨な事になっていた。四十六室の面々は惨殺されており、辺りは流れ落ちた血が池のようになっていた。
いつでも抜刀出来るようにしておき警戒しながら奥へと進もうとした時、冬獅郎は視線を感じた。
振り返ると三番隊副隊長の吉良イヅルが冬獅郎と乱菊を見ていた。気づかれたからなのか、その場を後にするイヅル。
「隊長‼︎」
「松本、逃すなよ。何か手がかりを持ってるかもしれねぇ」
冬獅郎の指示を聞くと乱菊は逃げていったイヅルを追って四十六室を出て行った。一方、冬獅郎はというと斬魄刀を握りながら奥の方を見ていた。
「出てこいよ…………藍染‼︎」
「ふむ、私の霊圧を捕捉出来る程度には冷静なのか…………これは想定外だ」
奥から出てきたのは死んでいたとされている筈の五番隊隊長藍染惣右介だった。
「雛森が脱獄してまで会いに行こうとする奴なんざテメェ以外いねぇしな。むしろ、隊長がほぼ無抵抗で殺されるなんて話信用ならなかったしな。スッキリしたぜ」
冬獅郎を始め、事情を知らない隊長達は藍染の死に対して懐疑的ではあった。尸魂界において誰よりも死と向き合っている烈と事件の捜査を担当した双護が殺されたと結論付けている事から渋々納得したという事になっていた。
「大袈裟にやり過ぎたとは思っているんだ。だけど、双護隊長は僕を疑っていたようだからね。双護隊長が暴走してくれたらって思ってたけど思ってた以上に冷徹になれる男で安心したよ」
「そんな事より………………雛森を何処にやった?」
「君のように話しを聞かない子供は嫌いだよ」
冬獅郎から放たれている霊圧は殺意に満ちており、その強大な霊圧から周囲の空間は震えていた。霊圧の小さい者が近づけばそれだけで押し潰されてしまう程の重圧の中でも藍染は爽やかな笑みを浮かべていた。
「いいから答えろ、藍染‼︎」
藍染を脅す為か、冬獅郎が怒号と同時に斬魄刀を引き抜くと藍染の真横に氷の壁が走った。
笑みを絶やさず、藍染は自身の斬魄刀を引き抜くとボソリと何かを呟いた。しかし何と呟いたか冬獅郎には聞き取れ無かったが、抜刀した状態で行うことと言えば始解ぐらいである為警戒心は強く保っていた。
「ほら、お探しの雛森君はここだよ」
「な⁉︎」
藍染の持つ斬魄刀が砕けそこには血だらけとなった雛森がいた。
何が起きたのか、冬獅郎には理解出来なかった。理解は出来なかったが目の前にいる雛森が人形や幻などでは無く本物である事は理解できた。
「彼女はよく働いてくれたからね。これ以上重荷になる前に捨てさせてもらったよ」
「どうしてだ………………どうしてこんな事をした⁉︎どうして裏切った⁉︎雛森はテメェに憧れて「やはり君は何も分かっていないね日番谷君」何だと?」
藍染に吠える冬獅郎だが、何の起伏も無い冷淡な声で冬獅郎の話しを遮る藍染。
「僕は誰も、誰の事も裏切っては居ない。ただ誰も僕の事を理解していなかっただけだ。そして良い事を教えてあげよう。憧れは………………理解から最も遠い感情だよ」
「霜天に坐せ『氷り…………「雛森君を気にせず卍解しなかったのは失策というやつだよ。日番谷くん。最も、卍解したとしても君は僕を斬れない」あい…………ぜん…………」
冬獅郎の斬魄刀は氷雪系最強の氷輪丸。その卍解を使えば藍染の側にいる雛森にも被害が出ると考えた冬獅郎は咄嗟の判断で始解を発動しようとしたが間合いに入った瞬間冬獅郎は斬って落とされた。
何とか抵抗しようと必死の力で氷輪丸を振おうとするが再び藍染に斬られてしまう。
藍染は胸元から懐中時計を取り出し、時間を見ると冬獅郎にトドメをさそうとする。
「季節外れの氷というのも悪くないな」
「それは僕も同感だよ」
藍染の背後から双護が現れ月詠神楽を振るう。しかし、藍染は瞬歩で距離を取り避けていた。
「思ったよりお早い到着だ。双護隊長、卯ノ花隊長」
双護の影から勇音を連れた烈が現れた。双護と烈がここに来るのが予想通りといったリアクションを取る藍染。
勇音は冬獅郎と雛森を確認するとすぐさま回道をかけ治療を始める。烈はそんな勇音に目線を送り、勇音が頷いたのを見ると再び藍染を見据えた。
「なるほど、月詠神楽の力か。中々優秀な斬魄刀だ」
「お褒めの言葉素直に受け取っておくよ」
「双護隊長は兎も角、卯ノ花隊長はよく分かったね」
「あれ程までに精巧な死体人形を用意する程用意周到な者が隠れられる場所は限られています」
どこに目があるか分からず、霊圧知覚を持つ死神から隠れる方法は限られているがそれなりの数ある。
双護のように適当な屋敷や家屋を拠点にする事は出来るがマユリの目を誤魔化しながら用意するのはほぼ不可能に近い。蛆虫の巣もその一つではあるがそれは二番隊の領域である為利用は出来ない。
「四十六室が不可解な事はいつもの事ですが、判断が早過ぎるのは疑問でした。ですが、貴方が四十六室を騙っていたのなら納得です」
「なるほど、理知的な貴女らしい推論だ。概ね正しいが幾つか間違いがある。私が用意し「射殺せ『神槍』」はぁ………………全く」
藍染が斬魄刀を構え若干身構える烈。しかし、それを遮るように奥から斬魄刀が勇音を狙って伸びてきた。
斬魄刀はヨミが受け止めた事で勇音は事なきを得たが、腰を抜かしそうになってしまった。
「全く手緩いなぁ………………藍染惣右介。そんな雑魚さっさと殺せば良いものを」
「余計な事をしないでくれるかな? 時灘」
奥から出てきたのは綱彌代時灘だった。藍染は突然攻撃をしかけた時灘を諫めるが時灘はヘラヘラと笑い聞き流していた。
「惣右介………………」
「彼はあくまで協力者というだけだよ、双護隊長。僕は必要の無い事はしない主義ですよ」
烈と勇音の前に立つ形で藍染と時灘と相対している双護の表情は薄暗いせいか藍染もよく読み取れなかった。
烈も勇音も双護の表情は分からなかったが、双護から溢れ出ている霊圧が今にも爆発しそうに揺らいでいるのは感じる事が出来た。見た事もない双護の殺意を持った霊圧に声も出せなくなる勇音。
「母さん」
「この場は受け持ちます、貴方も程々になさい」
「ありがとう。ごめんね………………勇音ちゃん。冬獅郎君達のことよろしくね」
「どうした? 卯ノ花双護。この場に相応しくない雑魚を少し脅かし「少し外で話そっか」ガッ⁉︎」
双護の怒りを感じ取ったのか双護を煽ろうとする時灘。しかし、いつの間にか双護は時灘の間合いに入っており、顔を掴みそのまま近くの壁に時灘を叩きつける。
そして、追い討ちとばかりに壁に叩きつけられた時灘へ勢い良く飛び蹴りを入れる双護。その瞬間、壁は耐久の限界を迎えたのか砕け、双護と時灘は2人して四十六室の外へ出て行った。
「久しぶりの再会というのに容赦無いな、卯ノ花ぁ………………」
外へ出た2人がいたのは四十六室からほど近い場所にある空き地だった。
「お前、誰に手を出そうとしたのか理解してるか」
「死神であるなら多少の危険は覚悟の上だろう。ましてや副隊長を名乗るなら死の危険など尚更だ。それで私に怒るというのは筋違いだろう」
「それはそうだね。護廷隊として生き死には日常茶飯事だよ。僕もそれは理解してる………………理解してるけど僕個人の感情とは別の話しだろ」
唐突に時灘は霊術院時代、京楽に言われた言葉を思い出した。
『このまま行けば君は怒らせちゃいけない人を怒らせる事になる』時灘はこの言葉の意味がよく分かっていなかった。高澤を使った実験の際の双護は間違い無く怒っていた。怒った双護を見れたことで満足したのか京楽のこの言葉を忘れていた。
「時灘、お前は高澤さんの事は覚えてる?」
「高澤? そんな奴もいた気がするなぁ。悪いが、私の人生に関係無い奴を気に留める殊勝な趣味は無いものでね」
「僕がお前に対してムカツいてるのは惣右介みたいに明確な意思や目的がある訳でも無いのに愉悦の為だけに周囲に理不尽を振り撒くとこだよ」
双護は元から理不尽な暴力というものを嫌う性分であった。謂れのない誹謗中傷、虐めなどは最たる例で霊術院時代には虐めの主犯を京楽と浮竹が止めに入るまで殴り続けトラウマを植えつけたり、入隊したばかりの新人をいびろうとする隊士には拳を持って対話をした。
暴力を振るわれるだけの理由がある、若しくは助けに入らなくても対処出来るのであれば助けないというスタンスを貫いており、自分から誰かを助けるために泥沼に突っ込んでいった夜一や浦原達の事はある意味自業自得であると割り切っている。
そんな双護からすれば時灘のように自身の愉悦の為だけに暴力を振り撒く男はなによりも許しておけない存在だ。
それに、双護自身の近しい者ほどその被害に遭っている。双護の我慢も限界を迎えていた。
「抜きなよ、斬魄刀。君の持てる手段全部使って僕を殺してみせろ。僕はその全てを踏み潰してお前を殺す」
時灘も自分と双護の差については理解していた。だからこそ双護を倒す為の手段を用意して藍染の計画に乗ったのだ。
「大した自信だな。油断していると私相手でも足元掬われるぞ」
時灘は素早く抜刀し瞬歩で双護との距離を詰め、心臓目掛け突きを放つ。大貴族は他の死神と比べて巨大な霊圧を有する。時灘も例に漏れず霊圧だけで見れば並の隊長よりも頭一つぬけている。
「油断? これは余裕ってやつだよ」
双護は抜刀する事もなく時灘の突きを避けるとカウンターとばかりに時灘の顔に拳を叩き込む。
「手を抜く相手は選んだ方が良い。無抵抗の雑魚を斬るのは趣味じゃないんだ」
他者の絶望に染まった顔や怒り狂った様がなによりも好きな時灘。普通の相手であれば自分よりも弱いと思った相手には手を抜く。
そして本当は手を抜いた自分の方が格下であった事を知った時の絶望感に満ちた顔を見るのが戦闘に於いてはなによりも愉しかった。
「私をその辺の雑魚と同じにするなよ」
「君よりもまだ一般隊士の方が本気でくる分マシだけどね」
「やはり貴様は気に食わない男だよ、卯ノ花。良いだろう、もう少しお前で遊びたかったが仕方ない」
そういうと時灘は斬魄刀を構えた。すると時灘が持っていた斬魄刀の刀身が霧に包まれたように消えていく。
「四海綴りて天涯纏い、万象等しく写し削らん『艶羅鏡典』」
姿を現した時灘の斬魄刀に双護は特に反応する訳でもなく、無言で月詠神楽を展開する。
2人だけの決闘が始まろうとしていた。
藍染くん、双護相手に有効かと思って時灘を引き込むも余計な事をして双護の逆鱗に触れてしまった為難易度が上がる。
うん、BLEACH史上最も有名シーンだっただけに中々難しかった。でもIQ高いキャラは勝手に喋ってくれるから楽です。それはそれとして下衆くんはこんなんでええのかな?って思いはずっとある。
次回は双護くんと時灘のバトルでいきます。
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
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涅ネム (マユリ印ヒロイン)
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虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
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砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
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雛森桃 (正統派美少女)
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四楓院夜一 (褐色お姉さん)
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その為 (活動報告にお願いします)