そんな修羅が今、人になろうとしている。愛する事を覚えて修羅は人になろうとしている。
この寂しさはなんだ、この苛立ちはなんだ。
嗚呼、そうか。この気持ちはきっと…………………
「それで、だ。あの優男は屋敷じゃまともな治療が受けられねぇ。この四番隊隊舎で預かる事にした」
「それを聞いて安心しました」
「しかしだなぁ…………生憎どれだけ期間が必要か分からねぇ奴に割けるほどこの隊舎も広くねぇ」
四番隊隊舎は総合救助詰所。隊士は勿論、時々であるが貴族の利用もある。隊士が負う怪我は命に関わるものである事も少なくはない。
さほど空きがある訳では無いのだ。卯ノ花もそれを理解していたのか、若干の悔しさを顔に滲ませる。自分がもっと回道を極めていれば、もっと薬学の知識があれば彼を助けられたかもしれないと。
「自惚れんなよ、卯ノ花。ちょっとそっと回道習った程度で死にかけの人間治せるほど治療ってのは甘くねぇんだよ。お前はお前がすべき事を充分に成した」
「それでも……………もっと私に実力があれば」
ありとあらゆる剣術流派の流れは我に有りと名乗ってきた卯ノ花ハ千流が力を渇望する。どれほど珍しい変革か。
四十六室の目論みはある意味達成されているのかもしれないと麒麟寺は思い、そして決心した。
「そんなにてめぇを責めたければ罰をくれてやる」
「なんでしょうか」
「お前が四番隊の隊長になれ」
「何を言っているのですか。私には十一番隊がありますし、貴方だって隊長でしょう。そう簡単に自分の責務を投げ出して良い筈がありません」
「零番隊への昇進が決まったんだよ。後任のやつを探してたんだが、丁度良い。お前が隊長やれ」
零番隊、王族特務の特別な部隊。霊王宮にて霊王を守護する最後の砦。
尸魂界の歴史そのものと認められたものだけが資格を持つとされ、その強さは護廷十三隊を凌ぐとも言われる、都市伝説級の噂となっている。
「零番隊ですか、実在していたのですね」
「お前が四番隊の隊長になればあの優男の部屋はキープ出来るし、医学も学べる。俺が回道を教えた中じゃお前に勝る使い手もいないしな」
卯ノ花が四番隊の隊長として移籍した場合、十一番隊の後任を決めねばならない。しかし、卯ノ花自身十一番隊を辞めるという事を考えた事が無かった為、後任については一切考えていなかった。
「ハ千流の名を…………剣八の名を絶やす事は出来ません」
十一番隊は山本元柳斎に任された戦闘専門部隊。護廷隊最強の部隊の長が弱くては務まらない。
ありとあらゆる剣術流派を超え、全ての刃の流れを収める者…………即ち剣八でなければ任せられない。
「俺が零番隊へ行くのは決定事項だし、総隊長には次期四番隊隊長はお前しか居ないと進言した。近い内に正式な内示が出る筈だ。それまでに候補を探しとけ」
そう言われて、卯ノ花は十一番隊隊舎へと帰っていった。
双盾の事を思えば、四番隊の隊長となって医学を学び側で治療をした方が良いだろう。しかし、好き勝手に暴れてきたとはいえ任された隊士達を捨てる事も出来ない。
どれだけ考えようともその答えは出てこない。まるで深い霧の中に迷い込んだかのように思考に靄がかかった。
「私は四番隊の隊長となる事が決定したようです」
「良かったではありませんか、隊長。何故そのような暗い顔をなさるのですか」
十一番隊の隊舎には全ての隊士が集まっていた。重大な発表があると卯ノ花が召集をかけたのだ。
「しかし、どうしたら良いのか分からないのです。一時の気の迷いで貴方達にまで迷惑をかけてしまっても良いのかと…………………」
卯ノ花自身、自分の発言に矛盾のようなものを感じていた。今までは誰の迷惑や使命など考えず、自身の快楽を満たす為だけに暴れてきた。
それを満たしうるかもしれない人物を見つけた瞬間から自分の中の何かが変わっているのは確信していた。今の隊士に迷惑をかけたくないという思いも自身に起こった何かしらの異常として捉えていた。
「何を仰るのですか、隊長。隊長に迷惑をかけられるなんて今更ですよ」
副隊長の言葉に他の隊士達もそうだと頷いていた。十一番隊の隊士は卯ノ花の性格を反映してか、戦闘狂な一面が強いがそれ以上に苦労をしてきた。
卯ノ花が暴れた事後処理に追われ、訓練と称した憂さ晴らしに付き合わされてきた。それでも隊士が卯ノ花についていったのはその圧倒的な強さに惹かれたからだ。
今更どのような無茶振りをされようが隊士達にとって大した問題では無いのだ。
「それに隊長、惚れた相手なんでしょ?だったら一緒になるべきですよ‼︎隊長みたいな人は家庭を持って落ち着くべきです」
「は、ほほほほ惚れ⁉︎何を言うのですか⁉︎私はべべ別に双盾にそういう感情は抱いていません‼︎」
顔を真っ赤にして声を荒げる卯ノ花。隊士達は初めて見る卯ノ花の一面に思わずほっこりしてしまった。
「何をほっこりしているのですか‼︎」
「あっはっは、照れちゃって隊長。可愛いとこあるじゃないですか」
「ぶった斬りますよ貴方⁉︎」
「じゃあ、やります?」
冗談のつもりで副隊長に言ったのだが、副隊長意外にも乗ってきた。副隊長が冗談で無い事は霊圧の揺れを見れば分かる。
「本気で言ってるのですか?」
「流石に真剣じゃ勝ち目無いですし、木刀での試合形式といった感じでやりましょう。俺が勝てば隊長は四番隊の隊長となってもらいます」
「負けたらどうするのですか」
「それはその時考えます」
副隊長とはいえ他の護廷隊の隊長とも互角以上に戦える実力を持った副隊長、決して弱い雑魚では無い。
しかし、卯ノ花と勝負するには実力の差があり過ぎる。
一般隊士から木刀を手渡される。隊士達は2人の邪魔にならないようにと2人から少し距離を取る。
隊長になるには幾つかの方法がある。護廷十三隊が結成された時に定められた規定には定められた試験に合格する事、隊長複数名からの推薦を得ること、二百名以上の立ち会いのもと現隊長と戦い勝利する事。
護廷十三隊が結成されてから暫く経ち、特例で繰り上げ昇進した隊長以外は皆現隊長との勝負で勝って隊長となっている。
より強き護廷十三隊をつくるためにその試験の難易度は高く、他の隊長は基本推薦などしない。
現実的に考えて今の隊士達が隊長になるには隊員立ち会いの元、隊長に勝つしかないのだ。
「本当に私と戦うつもりですか?今なら冗談という事にしてあげても良いのですよ」
「この虎徹天音、隊長にそんな冗談を言うほど不忠ではありませんよ」
十一番隊が旗上げされた当初から副隊長として卯ノ花を支えてきた男、虎徹天音。彼は卯ノ花の戦う事に対する思いというのを理解していた。
戦闘専門部隊として戦闘においてふざける事は絶対にしてはならない。戦いを冗談とするのは今まで築き上げてきたものを愚弄する事に等しい。
虎徹は今培ってきたプライドと実力、そして卯ノ花への忠誠心に従って卯ノ花に勝負を申し込んだのだ。
「これまでの恩、纏めて返させていただきますよ‼︎」
虎徹はこれまでの全てを懸けて卯ノ花に戦いを挑んだのだ。
ランキングに名前が載ったり、沢山の人から評価してもらえたり嬉しくて嬉しくて。
前書きに書いたオサレ風ポエムは虎徹天音さんの心情です。虎徹天音さんはあれです。勇音と清音の血縁です。勇音ちゃんが千年決戦編の時に卯ノ花さんが剣八だった事を知ってる風な感じだったのでこうして親族とかから聞いてたりしてるかな?と思って出して見ました。
かなりガバガバなこの作品を読んでくれて本当にありがとうございます。これからも早いペースでというのは難しいですが、皆さんの期待に応えられるよう更新していきますのでよろしくお願いします。
感想、評価等お待ちしております。
p.s オサレポエムってどうやって書くんや。久保帯人先生の頭の中を覗いてみてぇ。
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
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涅ネム (マユリ印ヒロイン)
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虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
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砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
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雛森桃 (正統派美少女)
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四楓院夜一 (褐色お姉さん)
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その為 (活動報告にお願いします)