「オラオラ、その程度じゃ俺を殺せねぇぞ‼︎」
「そっちこそさっきから隙だらけだよ」
巨大な三日月状の鎌が上下対称についている特殊な武器による連撃を回避しながらノイトラの身体を袈裟斬りにする。
回避する素振りも防御する姿勢も全く見せないノイトラに疑問を抱いていた双護だったがその答えは次の瞬間に知る事となった。
(なるほど、これは…………)
「オレの鋼皮は歴代十刃最硬なんだよ」
本気ではなかったが、普通の敵であれば簡単に真っ二つになる一撃だった。しかし、双護の一振りは傷をつけるには至らなかった。
攻撃を真っ向から受け止める形となったノイトラは反撃とばかりに大きく口を開け、舌を突き出し黄色の虚閃を放った。
「今のを避けやがったか」
「お喋りなんかするからだよ。避けて欲しくないなら相手を動けなくさせないと」
「何上から目線で話してんだよぉ‼︎」
瞬歩でノイトラの背後に回った双護は解放していない月詠神楽を肩に担ぎ若手隊士の訓練をする時のような優しい口調でノイトラに話しかける。
ノイトラとてただの虚閃一発で隊長が殺せるとは思っていない。しかし、あの間合いで、あのタイミングで掠りもさせずに避けられるとは思わなかったのだ。
ノイトラは双護と戦い始めてから謎の苛立ちを感じていた。
「うん、細身の割に良い膂力してる。まともに食らったら僕もやばいかもね」
命のやり取りをしているというのに相対している敵は自分を全く見ていない。十刃であるノイトラ自身を敵として見ていないかのようであった。
「ふざんけじゃねぇ………………ふざけんじゃねぇ‼︎オレを見ろぉ‼︎」
謎の苛立ちは次第に既視感をノイトラに感じさせていた。敵として戦っているのに相手にされず、あしらわれ、戦士として認められてない感覚。
かつて、第3十刃であったネリエルのそれと似ていたのだ。自分よりも上に立ち、歯牙にも掛けないような振る舞いが何よりも腹立たしかった。
最強を自負しているノイトラにとって舐められたままではいけない。雪辱は晴らさねば気が済まない。ネリエルには正攻法ではない方法を用いた。
「良いぜ、やってやるよ。祈れ…………『聖哭蟷螂』ァ‼︎」
破面も死神と同様に斬魄刀を持っているがその在り方は死神とは大きく違っている。斬魄刀に自身の力を封じ込め刀の形としているのだ。故に破面の斬魄刀の解放は帰刃といって虚の姿に回帰するような形となる。
ノイトラの帰刃、聖哭蟷螂はノイトラの頭に左右非対称な角を三日月のように生やし、4本に増えた腕は節足動物のような外骨格に覆われ、腹部を囲むようにして角のようなものがいくつも形成される。
また解放した事で仮面が剥がれ、その名残なのか、歯が牙のようになり顔に黄色い紋様が浮かび上がる。
「へぇ、これが帰刃ってやつね。でも……………ちょっと足りないな」
「そうかよ、これなら足りるかよ⁉︎」
4本だった腕が6本に増え、巨大な鎌を6本を持つ異様な姿となるノイトラ。
彼の信条として、敵としてあったのなら戦いは始まっておりあらゆる手段を用いて殺す事こそが正義であるとしている。故にノイトラは敵を罠に嵌める事や騙す、不意打ちを決めるといった事に躊躇いが無い。
しかし、ノイトラは短い攻防で本能的に悟っていた。目の前の男は手札を隠した状態で勝てる敵では無いと。
解放する素振りすら見せていない双護に違和感を感じるノイトラであったが、その違和感を振り払うように鎌を振るった。
ノイトラにとって双護がどのような斬魄刀を解放しようとも間合いにさえ入れてしまえばどうとでもなるからだ。
「助かったよ、ヨミちゃん」
『ご主人、こいつ強いよ』
6本の鎌が双護を襲ったが、ノイトラが間合いに入った瞬間に月詠神楽を解放し、ヨミが展開した影で防いだのだ。
「〈破道の八十八 飛竜撃賊震天雷砲〉」
攻撃に全ての鎌を使っていた事でガラ空きとなったノイトラに向け、無詠唱ではあるが鬼道を叩き込む。
バックステップで距離を取る双護。解放していなかったとはいえ自分の斬撃を受けて傷すらつかなかった相手が八十代後半の破道とはいえ詠唱破棄した鬼道で倒せる筈が無い。
煙が晴れ、ノイトラの姿が再び現れるがほぼゼロ距離で当たったというのに傷にすらなっていなかった。
「どうした、隊長ってのはその程度か?」
「姫乃姉さんなら今ので片腕飛ばすくらいはしたのかな?僕もまだまだだな」
「無視すんじゃねぇ‼︎こっちを見ろ、余裕ぶってんじゃねぇぞ‼︎」
ノイトラに見向きもせず、自身が放った鬼道について反省する双護。勝つ為にはどんな卑怯な手でも使うノイトラだが、これほどコケにされたのは初めてだった。
ネリエルも同様にノイトラを戦士と認めず見向きもしていなかったが、戦っている時はノイトラを意識していた。しかし、目の前の双護は相対しているが意識がノイトラに向いていない。
ノイトラの嵐のような連撃も斬魄刀で捌き、影で何事もなかったかのように受ける。防戦一方である筈なのに、ノイトラを道端の羽虫のようにしか見ていないかのような振る舞いに苛立ちが募る。
「まともに攻めてこれねぇのに何で余裕ぶってんだよクソが‼︎俺を見ろ、俺と戦え‼︎」
「確かに君の攻撃は厄介だよ。これだけの質量をこんなに振り回されたら攻めるに攻めれない」
「あ?何が言いてぇんだ」
「失礼な態度を取った事は謝る。十刃には君よりも強いやつが4人もいるんだろ?君程度に手こずっていたらいつまで経っても僕は刳屋敷さんを越えられない」
当代の剣八、刳屋敷。彼は最上大虚を斬り、その実力から正式では無いとはいえ零番隊からの勧誘を受けている。
剣八の息子として、尸魂界史上指折りの実力者達に鍛えられてきた者として怪物のような強さを持つ刳屋敷に負けているとは思っていない双護。
実際に戦えば双護の方が勝つ確率は高いとされているが、それは卍解抜きの斬術のみの勝負であった場合である。
本気の殺し合いとなれば負けるつもりはないが勝てる気がしないというのが双護の本音だった。
「僕は僕の目指すものの為に君程度に躓いていられないんだ。ここからは少しだけ本気でいかせてもらうよ…………………………瞬閧」
双護がそう呟くと月詠神楽から黒い炎が吹き出し、双護から漏れ出していた霊圧も月詠神楽に呼応するようにして黒炎のように変化する。
ノイトラは自身に冷や汗が流れるのを感じた。先程までは怒りだけが自分の中に渦巻いていたが、双護の霊圧を受け生まれて初めて恐怖や焦りといった感情が自分の中に芽生えているのを本能で感じたのだ。
「まずは一本」
双護がそういうといつの間にかノイトラとの距離を詰めており黒い爆炎に覆われた月詠神楽を振るっていた。
何が起こったのか分からなかったノイトラだが次の瞬間左腕が宙を舞っていた。すぐに再生させようとするが、切り口こびりつくようにチロチロと燃えている黒い炎によって再生が阻害されていた。
(ヤベェ、ヤベェヤベェヤベェヤベェヤベェ‼︎)
「そんな苦し紛れの攻撃、意味無いよ」
一本、また一本と宙を舞って灰となっていくノイトラの腕。
「たしかに君の6本の腕からくる攻撃は厄介だったよ。でも、一本の武器をまともに扱えない奴がどれだけ武器を持っても意味は無いんだよ」
(巫山戯るんじゃねぇ…………巫山戯るんじゃねよ‼︎)
芽生えていた恐怖や焦りといった感情が再び別の感情に変わろうとしていた。
それは断じて怒りでは無い。怒りであった感情に薪をくべるかの如く恐怖や焦りなどの感情が怒りを大きくし、別の感情へと変えていた。
「もし、来世があるなら基礎からやり直すと良いよ」
「巫山戯るんじゃねえええええええええ‼︎」
唯一残った右腕を全力で振り抜くのと同時に自身の中の何かが爆発した。
突如響く轟音。危険を感じた双護は瞬間を維持したままノイトラと距離を取った。
ノイトラが巨大な鎌を振り抜いた事で砂塵が起きる。そして砂塵が晴れるとノイトラの姿は大きく変化していた。
「ここまで誰かを殺してぇと思ったのはお前が初めてだ……………………」
ノイトラの抱いた感情とは殺意だった。純粋に高まった殺意がノイトラの中の何かを変えたのだ。
切り捨てたはずの腕が再生し、両腕とも肘の辺りから巨大な鎌のような刃が生えている。またノイトラの周囲を黒く禍々しい鎌が旋回していた。
変化はそれだけではなく、身体が黒く刺々しい見た目となり、尻尾が生えている。また、角が纏っている黄色い霊圧が異様な見た目を更に禍々しくさせていた。
「殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「これは…………ちょっとやばいかもしれないね」
先程はノイトラが冷や汗をかいていたが、今度は双護がノイトラから感じる霊圧に思わず冷や汗をかくこととなった。
ブレソルの十刃達のオリジナル形態のイラストを見たらあれ使わないの勿体ないなって思いました。
この作品においてノイトラの刀剣解放第二階層は感情の爆発による限定的なものです。他の十刃はこうはならないかもです。
という訳でノイトラ戦はもう少し続きます。
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
-
涅ネム (マユリ印ヒロイン)
-
虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
-
砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
-
雛森桃 (正統派美少女)
-
四楓院夜一 (褐色お姉さん)
-
その為 (活動報告にお願いします)