「ったくよぉ〜、クソ雑魚のくせにちまちまウゼェんだよ。マジでイラつくぜ…………………」
「下を見ようとせぬから貴様のよう雑魚に足元を掬われる。その事をあの世でじっくりと学べ」
「イラつくイラつくイラつくぜぇぇぇぇ‼︎テメェだけじゃねぇ‼︎テメェら死神は1人残らずオレが殺してやる‼︎俺は第0十刃ヤミー様だぞ‼︎」
白哉の奥義を使用してまでの猛攻を耐えきり、その怒りによって再生するヤミー。その大きさはすでに文字通り山のような体躯であった。
今のヤミーからしたら白哉を殺す事など蟻を潰すように簡単にこなすだろう。スピードで優っていた白哉だがこれほどの体格差となればスピードどうこうの話ではない。
「全く、兄は遅すぎる」
これ以上1人での時間稼ぎは無理があるかと腹を括ろうとした白哉だったが、この場に迫ってくる霊圧を感知し思わず笑みが溢れた。
一方、白哉とヤミーの戦いを離れていたマユリは辟易とした顔をしていた。
「あぁ⁉︎何が言いてぇんだ‼︎」
「白哉、マユリさん‼︎縛道‼︎」
双護が小脇に勇音を抱え上空から現れた。双護が叫ぶのと同時にヤミーに巻き付くようにして黒い帯と鋲が展開される。
「くっ………うぅ………‼︎これじゃ抑えきれません‼︎」
勇音が縛道の九十九、禁によってヤミーを縛り付けたのだ。勇音は副隊長の中でも下から数えた方が早いくらいに戦闘力が低いが、その才能は他の副隊長に全く見劣りしていない。
少なくとも烈が見込んで副隊長に任命したのだ。鬼道に関してはまさしく天才であった。詠唱さえすれば九十番代後半の鬼道すら発動させられる程の才能があった。
「大丈夫、2人が詠唱する時間さえ稼げればいいから。ヨミちゃん、勇音ちゃんを安全圏まで退避させて」
『了解だよ、ご主人』
大きな烏の姿となったヨミが勇音を掴みヤミーから距離を取り始めた。元々勇音の鬼道の拘束力では帰刃し、怒りで力を増しているヤミーを抑え続ける事は出来ない。
それに加えて術者である勇音がヤミーと距離をとった事で縛道が解除された。時間にして僅か数秒の事だが、白哉達にとってその数秒で充分だった。
「全く、ワタシを使うんだ。見返りはちゃんと求めるヨ〈縛道の六十三 鎖条鎖縛〉」
「-----光もて、此を六に別つ〈縛道の六十一 六杖光牢〉」
勇音が放った九十九番の縛道に比べたら六十番代前半と低いように見えるが、白哉とマユリ、2人の隊長による完全詠唱の縛道の威力は生半可なものでは抜け出す事は出来ない。
「ウォォォォォォォォォォ‼︎‼︎」
しかし、そんな隊長二人の完全詠唱による縛道では縛り続ける事は出来ない。ヤミーが唸り声を上げ体に力を入れるとヤミーを縛る六枚の光の弁と鎖がギチギチと音を立てながら少しずつ崩れていく。
マユリも白哉も完全にヤミーを止める事は目的としていない。あくまで時間を稼ぐのが目的だからだ。
「開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、驚門、死門、八門潜て迎えるは五度の入滅。六道廻りて至るは五度の入滅、逆鱗に触れ、至るは五度の入滅。天を翔け、地を這い迎えるは五度の入滅。五度洛陽を迎え至るは五度の入滅〈破道の九十九 五龍転滅〉」
双護が狙いを定めるようにヤミーへ掌を向けると大地を割って巨大な龍が五匹現れる。
これこそが鬼道における最強の技、〈破道の九十九 五龍転滅〉である。地脈から霊力を無理矢理汲み上げ、自身の霊力を上乗せしその巨大な霊力の塊で相手を飲み込む時間停止や空間転移などの禁術に限りなく近いとされている鬼道である。
そのような強力な鬼道を隊長の中でも上位の霊圧を保有する双護が放てばどうなるか。
五頭の巨大な龍は空間が歪む程の咆哮をあげながらヤミーを飲み込もうとする。
「クソがぁぁぁぁァァァァァァァァァァァ‼︎」
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️‼︎』
苦し紛れのつもりなのか、虚閃を放つヤミー。ヤミーの放った虚閃によって五頭のうち、三頭が相殺される。
しかし、逃れた二頭の龍がヤミーの半身を喰い潰した。
「痛ぇ、痛ぇえええええ‼︎もう油断もしねぇ、全力でテメェらを殺すぅ‼︎」
「マユリさん‼︎」
「はぁ………………試作品だが効果に関しては保証してやるヨ。だが、副作用に関しては知らんがネ」
双護が仕事を終え見学モードに入っているマユリに呼びかけるとマユリはめんどくさそうに謎の液体が入った注射器を双護へと投げ渡す。
双護はその注射器を受け取ると迷い無く自身へと注射する。
「ボーッとしてる暇はないよ、白哉。長引けば長引く程の僕らの勝率は減っていく。ここで使い切るつもりで振り絞れ」
双護が月詠神楽を引き抜きながら白哉の隣に立つ。双護と白哉の視線の先には既に再生を始めているヤミーの姿があり、その再生速度はこれまでの比では無かった。
「兄に言われるまでもない。卍解、千本桜景厳」
ヤミーの再生に制限や限界があるのか分からない現状、デカくタフなヤミーを相手に長時間戦っても既に消耗している双護や白哉は不利になるばかりである。かといって最強の破道ですら倒し切る事は出来なかったのだ。
短期決戦のつもりで戦わなければ殺される。それを分かっている白哉は本日3回目の卍解を発動する。
卍解の発動と同時に数億にも及ぶ千本桜の刃が美しく舞う。その様子を見て双護は白哉に問いかけた。
「どれくらいいける?」
「保って数分が限界だ」
卍解というものは莫大な霊力を消耗する。一部の例外を除いて隊長格の霊圧ですら卍解を長時間発動し続ける事は出来ない。
その消耗の激しい卍解を三度も発動している白哉は既に限界が近かった。
「おっけー、薬の効果がどれだけ続くか分からないからある程度節約したかったけど、全開で行くしかないか……………瞬閧明王戦形黒焔炎生三昧」
展開された黒い炎を纏い、背後には不動明王を思わせる火炎が立ち込める。
「僕が隙を作るから止めは任せるよ」
「しくじるなよ」
「大丈夫、任せて。でもあんまりモタつくなら僕が倒しちゃうからね」
それは白哉なりの激励なのか聞くものが聞けば重圧にしかならない一言に双護は笑って答え、ヤミーへと向かっていった。
「良いところだけ兄に渡す訳には行かん」
走っていって双護の背中を見つめながら1人呟く白哉。白哉がまだ霊術院に通う前のこと、双護は夜一と共にそれまで白哉が築いてきた自信の全てを打ち砕いた。
それ以来、目の敵にしつつも越える背中として追いかけてきた白哉。卍解の習得も修練も双護の尽力が大きかった。何度も挑み、何度も負ける中で白哉は悟った。数億も数千も駄目ならば全てを纏めた究極の一で勝負すれば良いのではないかと。
白哉が掌を広げると千本桜の刃が一枚、白哉の掌にひらひらと落ちる。そしてそれを強く握り込むと数億に展開されていた刃が白哉の全身を包み込む。
白哉を包む桜の花弁を蹴散らすように白く美しい一対の翼と濃密に圧縮された白い霊剣。
「終景・白帝剣」
殲景・千本桜景厳の奥義、一咬千刃花が数億の千本桜を千に押し留め攻撃力に全振りした姿であるならこの白帝剣はその究極。
千本桜景厳の全てを一撃に込めて放つ正真正銘白哉の必殺技なのだ。
「僕も負けてられないね、行くよヨミちゃん」
白帝剣の姿を見た双護は嬉しくなるのと同時に少し寂しさも感じた。
白哉が霊術院に通う前から剣の訓練などをつけており、入隊し始解や卍解の入手した時も訓練に付き合った。白哉は双護にとって初めて出来た弟子のような存在だった。
彼にとって最愛の人だった緋真と死別し、死神の矜持と貴族の誇りや誓いに苦しんできた姿をを見ながらも何もしてやれない事を双護は歯痒く思っていた。
それが一護との戦いできっかけを掴みかけ、双護なりに激励の一言を送ったつもりだったがその一言が効いたのか双護には分からないが、白哉の顔にもう迷いは無くなっていた。
双護が感じている一抹の寂しさは初めての弟子である白哉が立派になり、弟子などではなく1人の剣士として一人立ちした寂しさだ。
可愛い弟子というだけではなく、決して負けられない好敵手としての一歩を踏み出したのだ。
「黒曜倶利伽羅剣‼︎」
向かってくる双護との白哉を握り潰そうと掴み掛かってくるが、双護がその腕を斬り落とした。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️‼︎」
咆哮をあげながら腕を再生させようとするが、切り口に残った黒い炎がその再生を阻む。
痛みの咆哮をあげるヤミーの隙を突くようにして白哉の最終奥義、終景・白帝剣がヤミーを貫いた。
そのまま倒れたヤミーは咆哮をあげることもなく、糸の切れた操り人形のように倒れた。
そして何度にも渡る再生の余波なのか、ヤミーの身体は少しずつ灰になり始めた。
折角良い実験材料を仕入れられると思い観戦をしていたマユリは消えゆくヤミーの体を見ながら残念そうにため息を吐くのだった。
五龍点滅のオリジナル詠唱回でした。
とりあえずこれでヤミー戦は終わりです。
次回どうすっかなぁ……………………………
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
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涅ネム (マユリ印ヒロイン)
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虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
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砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
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雛森桃 (正統派美少女)
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四楓院夜一 (褐色お姉さん)
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その為 (活動報告にお願いします)