「これが地獄の業火というやうなのかな?大した炎だ。元柳斎にすら追い付くかもしれないね」
「そう、本音なら嬉しいな」
「本音だよ、嘘偽りの無い」
黒い焔を纏いながらの斬撃。十刃であっても今の双護と戦えるのは最上大虚級の者だけだろうと分析した。
接敵するもの全てを焼き尽くす元柳斎の炎にも似たその焔に覚醒前であれば元柳斎と同様の対策が必要であったと藍染に思わせる程の焔。
しかし、今の藍染は崩玉により死神と虚の境界を取り去り別次元の存在になりつつある。これまで双護が戦ってきた相手の中で間違い無く最強、普通ならいくら足掻こうと勝負にすらならない筈なのだ。
「それなのに…………何故貴方はこうして私と剣を交えていられる」
藍染にはそれだけが不可解だった。瞬閧も卍解を使わない双護の切り札で今の火力も薬によるブーストと考えればなるほどと理解出来るものだった。
しかし、並の存在であれば自身の霊圧すら感知出来なくなる程異次元の霊圧を手にし超越した存在となったのに双護は自分に対等では無いにしろ追いつこうとしている。
「多少霊圧が増えた位で驕りが過ぎるよ、惣右介。どれだけ君が強い霊圧を手にしても君の太刀筋までは変わらない。というか覚醒して慢心してるからかな?前よりも分かりやすい太刀筋になってるから読みやすいよ」
「なっ…………」
確かに藍染としても多少の驕りが合ったというのは否定出来ない。元から他と隔絶した実力を持っていた藍染だが覚醒した事で文字通り次元を超えた存在となったのだ。
刀を振るえば相手は受け止めることも出来ずに消し飛ぶ。理から外れた存在となった藍染にとって剣術というものは不要なものとなっていた。
「剣士としてって考えれば前の方が強かったかもね」
「それだけの力を持ちながら何故貴方は死神という存在でいる⁉︎何故尸魂界なんぞを守ろうとする⁉︎」
これまで少しも表情を動かす事なかった藍染が初めて感情を吐露する。
「それは僕が護廷十三隊の隊長だからだよ」
「それは偽善でしかない‼︎元柳斎や卯ノ花烈のように守ってくれるものに対して瀞霊廷は何をした⁉︎守られる者たちは何をした⁉︎ 奴等は守られる事を享受する癖に強大過ぎる力には恐怖する。貴方だって本当は感じている筈だ‼︎」
藍染は生まれながらにして周囲のものと比べ圧倒的な霊圧を保有していた。競える好敵手も、分かち合える友もおらず、愛してくれる両親も化け物じみた彼を愛そうとしなかった。
そこで彼は周囲を欺き、迎合したふりをする事で今日まで生きてきた。
「それを言われると少し弱いな。好ましい連中ばかりじゃ無いのは否定出来ない…………というか、死ねば良いのにとか思う事もあるよ」
「それなら何故戦う⁉︎何故剣を取る⁉︎」
「君にとってどうかは分からないけど………この世界に僕の大事な物や人が多い。特に僕の大事な人達には笑顔でいてほしいからね。そして何より僕は僕自身が誇れる死神でありたいから。それが僕の剣を握る理由だ」
双護も周囲の者と比べればずば抜けた霊圧を保有しており、なおかつ両親は瀞霊廷の歴史に残る大事件を引き起こした中心人物である。普通ならば迫害に遭うのだが、藍染と違う点は彼の周りには常に人がいた。
こうした人々に恵まれ双護は真っ直ぐに育つ事が出来た。
「下らない、実に下らない。そんな取るに足らない者の為に命を擲つなど………………」
「そうでもないよ。惣右介も一度くらい自分じゃ無い誰かの為に剣を取ると良い。案外悪くないよ?」
「誰かに剣を預けるなど御免だ。それに、今の徐々に弱っていく霊圧では説得力というものも無いだろう」
激しい撃ち合いをしながらも藍染は気付いていた。双護の攻撃が少しずつ弱まっていくのを感じていた。
霊圧も瞬閧を発動した時に比べれば明らかに下がっている。最初は防げていた攻撃も受け切れずダメージとなる場面も増えてきている。
「そうだね、今の僕じゃ何を言っても君には意味ないだろうね。これから先、ゆっくり考えるといいよ。いつか理解出来る時がくるからさ」
「あぁ、貴方を殺し黒崎一護を屠った後にゆっくり考えさせてもらおう」
そう言って藍染は斬魄刀をゆっくりと振り上げ、そのまま振り下ろす。双護は受け止めようとするが今の双護にそれだけの力は残されていなかった。
薬の効果時間が来たのか、過剰な摂取による副作用なのか不明だが、霊圧は急激に下がり始める。
振り下ろされた刃を受け止められず、月詠神楽ごと双護は袈裟斬りされてしまった。鮮血が飛び散り、そのまま地面に倒れ伏す双護。
双護が纏っていた黒い爆炎は見る影も無く、双護の周囲でチロチロと蝋燭の火のように小さく燃えるだけだった。
「なるほど、真っ二つにしたつもりだが致命傷を避ける技術を活用したか…………………しぶといな」
「そ、そりゃそうだよ……………子供の時からいつも死にそうな目に合ってきたからね。そういう術は身につくよ」
息も絶え絶えになり、足元は流した血が溜まり小さな池のようになってもなお双護は立ち上がる。
折れた月詠神楽を構えるが、肩で大きく呼吸をしており、剣先は震え普段の隙の無い構えは少しも残っていない。
しかし、藍染は迂闊に踏めこめなかった。おおよそ構えの体をしていなくとも、歯牙にかける必要の無い霊圧であってもその瞳に宿る意思の強さはより一層輝いていた。
「来なよ、惣右介。もし僕を殺したいなら一撃で決めろよ。撃ち漏らしたらその瞬間にお前の首を刎ねる」
今の双護であればどんな攻撃であれ致命傷となりうる。藍染でなくとも殺す事が容易だ。
しかし、藍染はここにきて自分の勘が正しかった事を確信した。覚醒前に対峙していたならば、双極の丘において対峙していたならば負けていたのは自分であると理解出来た。
(やはり、剣八というものは油断ならない。ならば、私が取るべき手は一つ)
現剣八は刳屋敷に譲っているが、実力でいえば伯仲しており一部の死神の中では双護も剣八である事を名乗るべきという者もいる。双護は今の自分は相応しく無いと頑なに否定しているが、藍染にとって目の前の双護はまさしく剣八であった。
「開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、驚門、死門、八門潜て迎えるは五度の入滅。六道廻りて至るは五度の入滅、逆鱗に触れ、至るは五度の入滅。天を翔け、地を這い迎えるは五度の入滅。五度洛陽を迎え至るは五度の入滅〈破道の九十九 五龍点滅〉崩玉と融合し、覚醒した私の完全詠唱の五龍点滅だ‼︎灰すら残さず消え去れ‼︎」
大地を裂き、現れた五匹の龍。その巨大な龍達はまさにこの世の終わりを形容するに相応しいかった。
「ヨミちゃん、今出せるありったけを」
『うん、分かった。ヨミは最後まで一緒だから』
「最後の一踏ん張りだ」
度重なる戦闘と負傷、薬による副作用で双護の霊圧はまともに残っていなかった。ヨミは内心双護をこの場から連れ出せるなら連れ出したいという気持ちがあった。
しかし、それは双護が許さない。双護を生かしたいという想いもあるが、それ以上に双護の意思に沿いたいというのがヨミにはあった。
ヨミは双護に残った霊圧を全て刀身へと集めた。藍染の鬼道を相殺する事は愚か、技として成立もしていない。
五匹の理由が双護の視界を覆い尽くそうとした時、黒い彗星が双護の横を通り過ぎた。
「悪ぃ、双護さん。遅れちまった」
現れたのはオレンジ色の髪の少年、黒崎一護だった。いつのまにか成長していたかのように身長と髪が伸びていた。一護の斬魄刀、その卍解である天鎖斬月の鎖は右腕に巻きつくなど普段の様子と明らかに違うのだが、それ以上に違うのは一護の表情だった。
双護が知る一護は大人びた風貌ながらも少年らしい顔立ちが残っており、性格も戦闘において致命的な甘さを出すことが良くあった。
しかし、今の一護からは普段の甘さを感じさせるような雰囲気は無く、歴戦の戦士のソレに近い。
「後は任せてくれ」
そう言うと一護は天鎖斬月を横凪に振るう。すると、藍染が放った五龍点滅を掻き消したのだった。
弟子の成長を喜びつつも一護の変化について思い当たる節があるのか双護は納得したように小さく頷いた。
「何故だ、何故貴様がここにいる黒崎一護‼︎」
「決着をつけに来たぜ、藍染」
藍染を見据える一護。自身の放った最強の鬼道を完全に防がれ、焦りからなのか恐怖からなのか怒りが湧き上がる藍染。
(駄目だ…………この戦い、見届けなきゃいけないの………に……力がはいらない……………あとは頼んだ、よ………黒崎君)
一護の師匠として、護廷の隊長として、藍染と戦いを見届けなければと身体に力を入れようとするが無茶に無茶を重ねた事が原因か意識が途切れようとしていた。
薄れゆく意識の中でこの戦いの結末を一護に預け双護の意識は完全に途切れてしまうのだった。
VS藍染、これにて終了でございます。
マジでクライマックスというか最終回まで秒読みなのであと少しですけどお付き合いください
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
-
涅ネム (マユリ印ヒロイン)
-
虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
-
砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
-
雛森桃 (正統派美少女)
-
四楓院夜一 (褐色お姉さん)
-
その為 (活動報告にお願いします)