時乃が双葉と話すようになってから陰口自体は減っていた。露骨に目線を外されたり、ヒソヒソ話していたりはするがいじめの被害としては減っている。
教室の雰囲気は未だに歪なものではあるが、多少元に戻ったからなのか担任は双葉への陰口を気にする素振りすら見せなくなった。
そして流魂街遠征実習の日を迎えた。
「そう固くならなくていいよ双葉。虚は捕獲された雑魚だし護衛代わりに護廷隊から席官クラスが来てるみたいだし死ぬような事はないって」
以前は虚の撒き餌を使って虚を呼び寄せていたが、滅却師との決戦以降虚園側とある種の和平条約が締結され捕獲された虚を指定ポイントに用意するというシステムになっている。
弱目の個体を捕獲している事と、虚の位置を決めている事で監督役の隊士が直ぐに救助出来るようにしている。
「うん、でも私の頑張りに時乃さん達の成績がかかってる訳だから」
「私達は私達でちゃんと仕事するから、安心しな」
そう言いながら双葉の頭を撫でる時乃。
「うん。でも、さっきから先行してる2人の霊圧がはっきり捉えられないのが不安。捉えられないわけじゃないけどなんか所々ボヤけてる感じがする」
「調子が悪い日だってあるでしょ。私は2人の霊圧追えてるから。ま、無理しない事だね。ヤバくなったら監督役の隊士呼べばいいし」
双葉の霊圧知覚は現役隊士のソレを遥かに凌駕している。双葉がその気で探れば瀞霊廷内で探せない人物はいない。
そんな双葉がはっきりと知覚出来ないのは異常な事だった。それ故に双葉の中で警戒心が高まっていた。
霊圧知覚とは言ってしまえば霊力操作の一環である。双葉の霊力操作能力は、多少調子の良し悪しはあっても違和感を感じる程の誤差が起こることはあり得なかった。それ故に警戒せざるをえなくなっている。
「時乃さん、もう合流ポイントだし気を引き締め………………時乃さん‼︎退却‼︎監督役を呼んで‼︎」
合流ポイントに到着するというのに、口笛すら吹く余裕のある時乃に警戒を促そうとした瞬間、双葉の目にあり得ない光景が広がっていた。
先行していた二人、それぞれ身体の半分を貪っている虚がいた。幾ら調子が悪いとはいえこの距離になるまで察知する事も出来ない程の虚がいるのだ。
(こんな近くにくるまで全く霊圧を捉えられなかった………………私1人じゃ勝てない。せめて監督役の隊士と合流しなきゃ)
「大丈夫だって双葉、別にビビるような事じゃないって」
「時乃さん⁉︎何やってんの‼︎」
鼻歌交じりに2人を貪る虚へと近づく時乃。斬魄刀も抜かず、鬼道の詠唱をするでも無く無警戒に近づくその様はまるで自殺行為のようである。
「大丈夫、大丈夫。だってさ、この虚…………」
止めようとする双葉に軽い調子で答えながら虚に触れる時乃。
その瞬間、双葉の視界はガラスに割れるかのように崩れた。
「幻覚だもん。鏡花水月の噂なんて私でも知ってる位だし、アンタなら分かるでしょ?」
虚に触れていた手には刃の無い斬魄刀が握られていた。時乃が握っている斬魄刀を双葉は知らないが鏡花水月の事は知っていた。
「何を………………そっか。やっぱり時乃さんだったんだね」
鏡花水月による完全催眠が解除された事で双葉の催眠状態が解けて、霊圧知覚が普段の調子を取り戻した。
そしてそれ同時に確信した。
「何?何のこと?心当たりが多過ぎて検討つかないんだけど」
「落書きの事だよ。黒板の文字から若干だけど霊圧は感じ取ってたの。誰の霊圧かまでは分からなかったけどね。でも時乃さんがその斬魄刀を使った事で確信したよ」
「仲良い友達がいじめの主犯でショックだった?」
「ううん、正直何とも思わない」
「チッ、少しくらい堪えてくれてたら可愛げもあるのにさぁ。だからアンタはムカつくのよ」
芝居がかった大袈裟な話し方で双葉を煽ろうとする時乃。時乃としてはいじめを助けてくれた友人が主犯だと分かれば絶望するなり何かしらの反応が見られると思っていたのだ。
しかし、双葉の表情は無だった。道端に転がる石でも見るかのように無だった。
「もう良いわ。遊んでやろうかと思ったけど死ね。弾け『飛梅』」
刃の無かった部分は七枝刀のような見た目へと変化する。そして、切先から大きな火球が出現した。
時乃はそのまま斬魄刀を振り下ろし火球を放つ。
(桃さんの飛梅…………能力は模倣とかなのかな?注意しないと)
双葉は八十番代以下の鬼道を完全に防ぐ縛道、断空を発動し飛梅の攻撃を防ぐ。
「この斬魄刀さ、魂魄を削る代わりに他の斬魄刀の能力コピれるんだって。うちの本家に伝わる斬魄刀なの」
「斬魄刀を継承って結構大きな貴族なんだね。その話嘘だと思ってたよ。時乃さん品が無いもん」
「……………アンタも名前くらいは聞いた事あるんじゃない?綱彌代っていうクソみたいな貴族」
双葉を煽るつもりが逆に煽られ面白くないのか、一瞬苦虫を噛み潰したような顔をする時乃。
「なるほど、それが艶羅鏡典なんだ。でも効いた話だと威力は使用者の霊圧に依存するらしいのになんでこんな威力あるの?」
「浦原喜助とか涅マユリをよく思ってない技術者って結構いるの。だからあの2人の魂魄を使ってノーリスクでコレを使えるようにして貰ったの。いざ殺すってなったら日和る奴はいらないし。てか、リサイクルしてあげる私優しいじゃん」
「そっか、聞きたいこと聞けたしもう喋らなくていいよ。続きは裁判でするのをお勧めする」
「なに?監督役の人に私を捕まえてもらうの?無制限に色んな始解が使える私には勝てないもんね。でもざぁんねぇん…………その人私の下僕なの」
監督役までがグルと知らされ若干表情を崩してしまう双葉。双葉はその監督役を頼っていたからだ。
鉄面皮を貫いていた双葉の表情が崩れたのが嬉しかったのかケタケタと笑い始める時乃。
鬼道や白打といった手段があるが死神の戦闘方法の基本は斬術だ。霊術院生とはいえ死神の卵、そこは現役の隊士と変わらない。
鬼道と瞬歩なら双葉が時乃に負ける道理は無いが始解された斬魄刀があるならば話は変わる。
斬術では双葉と時乃の実力はかなり近いところにある。始解どころかただの浅打しか持っていない双葉では幾ら鬼道が使えても不利な事には変わらない。
艶羅鏡典の事を噂程度にしか聞いていない双葉は艶羅鏡典の詳細を知らない。どれだけの斬魄刀をどれだけの威力で扱えるか分からない以上下手に攻められない。
「瞬歩で逃げようとしても無駄だから。雇った用心棒で辺りを囲んでるからね。アンタは今ここで殺す」
酷く冷たい声でそう告げると時乃は艶羅鏡典を構える。それを見た双葉は両頬を叩き、自身に気合をいれる。
勝てる見込みは薄く、逃げる事も難しい。それならばどうにかして時乃を倒すしかないと腹を決めたのだ。
腰に差していた浅打を鞘ごと抜き、その場に投げ捨てる。斬術で戦えない双葉にとって浅打は邪魔にしかならない。
深く深呼吸し、自身の霊力を練り上げ霊圧を解放する。そして重心を低く落とし構えをとる。
「いいよやってみなよ時乃さん。私を殺すのは無理だって教えてあげる」
「私戦闘狂とかじゃないけど、アンタの自身に満ちた面を絶望に染められるって思うとワクワクしてきたよ」
「寝言にしてはハッキリしてるね」
「殺す‼︎」
両者が同時に駆け出し、戦いの幕が開けた。
時が経つのは早いものでこの作品を投稿して一年経ちます。
皆様の温かいコメントなどに支えて貰ったおかげであります。という訳で自分なりに双葉ちゃんを書いたのでみてください。
【挿絵表示】
隊長羽織を着ていますがデザインは白哉です。普通の隊長羽織の3倍くらいの値段はします。髪型は砕蜂リスペクト。
双葉は砕蜂を姉さんと呼んで慕ってます。余談ですが砕蜂は双葉が絡むと張相になります。
それはそれとして、現在とある企画に参加させてもらっていてこちらの更新頻度は落ちます。まぁワートリ杯なんですが。
ワールドトリガー好きな人もそうで無い人も参加してみてください。楽しいですよ。読む専門でもいいですし作品を出すのも楽しいです。
双護くんヒロインダービー!!!!※双護くんと絡ませるのが明らかに難しいキャラはヒロインとしての採用が難しくなりますのでそこはご了承ください。
-
涅ネム (マユリ印ヒロイン)
-
虎徹勇音 (長身系真面目臆病風妹)
-
砕蜂 (一途な真面目ちゃん)
-
雛森桃 (正統派美少女)
-
四楓院夜一 (褐色お姉さん)
-
その為 (活動報告にお願いします)