原作キャラを救いたい。   作:ジャーマンポテトin納豆

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久しぶりの投稿です。
申し訳ない。





今話、アニ推しの方々はお気を付けて。
アニに対する拷問描写があります。







選択

 

 

 

 

 

 

 

 

壁外調査から帰還した後の話だ。

 

結局、一連の出来事をエルヴィンさんはダリス・ザックレー総統らに報告。

実際エレンは武功、と言う面で何らかの活躍をした訳では無いがエレンの身柄を狙う、少なくとも壁中人類に敵対的である存在がある事、そしてエレンには狙うだけの何かしらの価値がある事が分かった。

結果的に言えば価値を認めさせる、と言う目的は達成した事になる。

 

エレンは引き続き調査兵団がその身柄を預かる事になった。

エレンの人類に対する有用性をザックレー総統が認めたからだ。

流石の憲兵団も、明らかに人類に対して敵意のある存在が狙うのだから、エレンが人類に何かしらの益を齎すと認めざるを得ず、渋々認めたのだ。

 

 

女型の中身であるアニ・レオンハートの処遇は、エレンの身柄の一件で何が何でもレオンハートの身柄を得たい憲兵団と調査兵団で揉めに揉めた。

 

が、結局再び巨人化した際に再び捕獲、若しくは殺害可能な実力を有しているのが調査兵団しかいない事を理由に調査兵団が身柄を預かる事になった。

壁外調査の際は壁内残留組の調査兵を主軸に憲兵団及び駐屯兵団が協同して管理監視する事としているが、面目丸潰れだとか憲兵連中が文句を言っているのを聞いた。

それで、また巨人化して抑えられると言うのなら俺は構わないんだが、それが出来ないから調査兵団に委ねられたんだろう。

 

憲兵団に属する人間は、訓練兵団を卒業した時に十番以内で優秀だったものだから、調査兵団みたいに成績が良かろうがなんだろうが死んでいくのを見ていないから、より一層天狗になる傾向がある。

ドーク団長は、憲兵団の中では珍しく天狗にならなかったタイプだからその辺りは信頼出来る。

少しばかり頭が固いが。

 

 

 

他にあるとするならばアニ・レオンハートの処遇を決める際に、中央憲兵からの横槍があったが、総統からの一存でどうにか事無きを得た。

しかし横槍を防がれた彼らがどう出てくるか分かったものではない。

なんなら既に不穏な雰囲気が漂い始めている。

 

エルヴィンさんやミケさん、リヴァイ辺りは勘付いているだろうが、後をつけて来ている奴がいる。

 

恐らく分隊長以上は常につけられているのは間違い無い。

今はまだ監視ぐらいだが、いざとなったら、皆を守る為に一人二人は殺す覚悟を決めておいた方が良い。

エレンにも監視の目があるらしく、リヴァイ達が神経を尖らせている。

それが事実ならば、俺達の目が無い場所で誘拐される危険性がある。リヴァイ班が遅れを取るとは考え辛いが対人と言う観点から見たら向こうが上手だ。

 

一応エレンには常に誰かしらが付いているが心配だ。

エレン達がいる旧本部にはリヴァイ班に加え十四名が追加で配置されたが不安である。

 

気を抜く事は出来ないが、少なくとも一、二週間は大丈夫な筈だ。

最悪、アニ・レオンハートの仲間の炙り出しが終わるまで安全を確保出来ればあとはリヴァイとリヴァイ班が仕事をしてくれるから心配は要らない。

 

と言うのが後日談だ。

 

 

 

そして現在と今後について。

現状の調査兵団は、レオンハートと中央憲兵、厳密に言えばこの世界の真実を知っている者達の二つを同時に警戒し、事が起きたら対処しなければならない状態だ。

だが実際は、調査兵団内部のライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーの対処をも行わなければならず、実質的に三正面作戦を強いられているに等しい。

同時に対処する事は不可能であり、一つずつ潰していくしかない。

 

まず初めに調査兵団は未だ内部にいるであろうアニ・レオンハートの仲間を炙り出し、捕獲ないし殺害する事と決めた。

確か九つの巨人の力は継承されずに保有者が死ぬとユミルの民の誰かにランダムで与えられる。

と言う事は、保有者を殺してしまえば実質的に次代の保有者を見つけるのは不可能に近い。

何らかの要因で保有者が巨人化したりしない場合を除いて見つけ出すのは困難極まりないだろう。

 

エルヴィンさんも、内部に未だ仲間がいるであろうと疑っている為に女型捕獲を知らされていた面々はそれらのことを知らされている。

新兵達はエレンを除き、全員が一箇所に集められる事になる。

 

アニ・レオンハートを捕獲したことは上層部と、直接捕獲に関わった兵士しか知らないから何故集められているのか分かっていないだろう。

ミカサやアルミンですら知らないから向こうにいる。

 

新兵の監視にはミケさん以下三個分隊が担当。

調査兵団の四分の三が新兵達の監視に当たるから原作のような事は起こり辛い、もしくは起きたとしても随分と楽な筈だ。

 

俺、リヴァイ、ハンジ分隊はそれぞれ自身が直接率いる班を率いる。

それ以外はミケさんの指揮下に入り、新兵の監視だ。

 

既に新兵の監視は行われており、もし現在と同じ流れを辿るならば新兵達がいる調査兵団本部が襲撃されるはずだ。

リヴァイ達が生活しているのは旧兵団本部であり、それ以外のエルヴィンさん以下、俺達が生活しているのが調査兵団本部である。

 

調査兵団本部はウォール・ローゼ壁内トロスト区内門より少し離れた場所にあり、巨大樹の森が離れたところに存在している。

そこに新兵含め、ミケさん達監視が詰めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺達はこれから何をするのか。

単純な話である。

 

「これより女型の巨人、アニ・レオンハートの尋問を開始する」

 

そう、女型の巨人の中身であるアニ・レオンハートに対する尋問である。

取調べ、ではなく尋問だ。

 

要は、どんな手を使ってでも情報を引き出せ、と言うことだ。

 

今俺達の目の前には両足を切り落とされた状態のレオンハートがいる。

巨人化させない為に足が生えて少しすると切り落とされているのだ。

とは言え血液などは蒸気となって消えてしまう為に血生臭い匂いなどはしない。

 

壁中人類からすれば、ウォール・マリア陥落やそれ以後の困難な状況を作り出した犯人の一人だ。

しかも調査兵団からすれば、原作よりはその戦死者数が随分と抑えられたとは言え、多くの戦友や仲間、上官、部下を殺した張本人だ。

扱いに慈悲は欠片もない。

 

今までも殴る蹴るの暴行を受けたりなど、相当雑に扱われていたのか随分と汚れて憔悴している。

 

「さて、アニ・レオンハート。今ここで我々が要求する情報の全てを話せば、これ以上の苦痛を受けずに済む。どうする?」

 

「だ…、れが…、しゃべる……、か……」

 

「そうか、ならば仕方が無い。始めよう」

 

エルヴィンさんの問いに、否で返したレオンハートに対し、言葉を選ばずに言うのならば拷問が開始された。

 

 

 

 

 

 

「あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッッッ!!!!!」

 

レオンハートの絶叫が響き渡る。

最初の内は耐えていたのだが、次第に苛烈になっていくにつれ、声を抑えることも出来なくなっているらしい。

 

ただ殺すことを目的にした拷問ならばまだ良かっただろう。その方がこの苦痛から早く解放されるのだから。

しかし殺しては意味がない。

此方が欲しい情報を吐かせなければ意味がない。

生かさず殺さず、情報を吐くまでただひたすら苦痛を与え続けるのだ。

まぁ一つの情報を吐いたところであらゆる情報を吐くまでは続けられるだろうが。

 

 

 

リヴァイは言わずもがな。

と言うか拷問を担当しているのはリヴァイだが、さも当たり前のように実施していく。

爪を剥がし、指を折る。

歯を引っこ抜き、なんなら関節毎に指を切り落としていく。

他にも、単純に殴る蹴るだけでなく様々な器具やらを使って施される拷問は、常人からすれば卒倒モノだろう。

確か、原作で中央第一憲兵が拷問を受けていたがアレの比では無い。

 

平然としているしエルヴィンさんも真顔で様子を見ている。

ハンジはと言うと流石に堪えたのか少し前に部屋を出て行った。

 

俺は、思いの外なんとも思っていないらしい。

始まるまでは、幾ら父や部下、仲間達の仇とは言え良心の呵責があるのではないかと思っていたのだが、レオンハートが拷問され叫ぶ様を、平然と見ていられる。

それどころか、それすらも演技なのではないかと冷たい目で見ている。

 

自分でも驚きだ。

しかしなるほど、それほど俺の中でコイツらは憎悪の対象だったか。

 

 

 

 

 

 

「あ、がっ……」

 

「早く吐いたほうが楽だと思うが」

 

「良いだろ、このまま暫く続けてやれ。仲間達は殺されたんだ、殺されないだけマシってもんだ」

 

殺された方が良いのか、それとも生かされていた方が良いのか。

 

二時間ほど経った頃、少し休憩だと言わんばかりに思いっ切り蹴りを入れて離れるリヴァイ。

巨人の力による修復速度でも間に合わないのか、それとも体力の消耗が激しすぎて治癒出来ないのか。

傷口からはあまり蒸気が出ていない。

 

「あ…」

 

「なんだ?」

 

「あ“……、く“ま“、め“……!」

 

それでも尚、抵抗する意思はあるらしい。

 

「ほう、休憩にしようと思ったが止めだ。そんだけ口が聞けるならまだまだやっても問題無いだろ」

 

リヴァイは再び拷問を開始した。

 

 

 

 

 

 

更に二時間ほど続けていると、幾ら水をぶっかけても何をしてもピクリとも反応を示さず、動かず起きなくなった。

息はあるらしく、死んではいない。

 

「今日はこれで終いだな。寝てる奴に何しても意味が無ェ」

 

「仕方が無い、また明日だな」

 

「思いの外、強情だな」

 

「普通ならとっくの昔に吐いてるもんだが……、中々どうして良い根性してやがる」

 

リヴァイの言葉に答え、部屋を出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの部屋に戻り、休んでいる時だった。

慌ただしい足音が二、三走ってくる。

 

何事かと身構えた時、勢い良く部屋の扉が開け放たれる。

そこには調査兵団のマントを羽織り新兵の見張り任務に就いていたはずの部下が額に幾つもの汗を流し、息を荒らげながら立っていた。

 

「緊急事態ですッ!」

 

「そんなに慌ててどうした?」

 

俺の問いに、大きな声で言った。

 

「ウォール・ローゼがっ!破られました!!」

 

 

 

 

 

 

 

「知らせを聞いていると思うが、ウォール・ローゼが破られた」

 

「穴の位置は?」

 

「分からない。駐屯兵団が探しているようだが、該当区域を全て探し終えるのに夜までは掛かる」

 

「新兵達はどうした?」

 

「待機場所に巨人が向かってきたのでミケ分隊長を含めた六名で足止めを行い、その間に装備を身に付ける時間がありませんでしたので、各村々への伝令を監視任務を装備を付けている者とペアで任せております」

 

なるほど、原作のようにミケさんが一人で戦っている訳では無いらしい。

それならば十分に生きて帰って来られるだろう。

 

問題は獣の巨人の存在だ。

ミケさんでは、言い方は悪いが獣の巨人の相手にならない。

あいつは原作の中でも文字通り別格であった。

 

リヴァイをして、煙弾の視界妨害がなければどうなっていただろうか、と言うところだ。

 

「とすると、ミケ達が上手いこと足止めをしていればかなりの時間が稼げたと言うことになるな」

 

「巨人の数はそこまで多く無かったので、ミケ分隊長達ならば狩り尽くしていてもおかしくはありません」

 

「巨人の数が少なかった?」

 

「はい、待機場所に向かってきた巨人の数は10体ほどであったと記憶しておりますが……」

 

「ふむ……。それはおかしいな」

 

エルヴィンさんが巨人の数を聞いておかしいと考え込む。

そう、おかしいのだ。

 

「え?何がおかしいんだい?」

 

ハンジが聞く。

 

「ハンジ、ウォール・マリア、ウォール・ローゼが破られた時のことを考えてみろ」

 

「……あぁっ!?巨人の数が少な過ぎる!」

 

「そうだ。俺は直接あの場で二回も戦ったが、数百は流れ込んできていたんだぞ、それが今回はたったの十数体だけの訳がない」

 

突出した区ほど巨人が集まらないにせよ、壁が破られたにしては余りにも流れ込んでくる巨人の数が少ないのだ。

それこそ10、20ではきかない数が流れ込んでくるはずなのだが、話を聞くに30〜40体ほどしか居ないのではないか、と推測が立つ程度の数だ。

 

「って事は、壁に穴が空いていない……?」

 

「情報が少ないからなんとも言えないが、ともかく、本当に穴が空いているとしたら早急に塞がねばならない。今すぐに出発の準備を進めなければならない」

 

「伝令に出た者達の安否が気になります。もし装備無しで巨人に出会したのなら最悪だ。俺かリヴァイを回収に向かわせてください」

 

「良いだろう。班を率いて新兵達を回収し、そのまま穴を探索してくれ」

 

「ありがとうございます」

 

エルヴィンさんに許可を取ってすぐに出発の準備をする。

原作とは違って、ここにミカサやアルミンはいない。

何故なら女型捕獲作戦に直接参加していないからだ。

 

二人の安全が気になる。

 

「兄さん」

 

「エレン?どうした」

 

「その、ミカサ達を頼むよ」

 

「あぁ、任せろ。絶対に無事に連れ戻すさ」

 

心配そうな、不安そうな顔で言うエレンを、何時もの様に少し乱暴に頭を撫でてやる。

 

「分隊長、準備完了しました」

 

ネスに言われ、馬に跨る。

 

「よし、行くぞ!」

 

馬の腹を蹴って駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、太陽が壁の向こうに沈みつつある中、班を率いて急いで馬に跨り駆ける。

 

「分隊長、もうすぐでダウパー村です!」

 

「ネスッ」

 

「はっ!」

 

「ゲルガーとケイジ、ミーネを連れて村の外周を捜索、逃げ遅れた者が居ないか確認して来い!ナナバとケニングは俺と共に村の中へ向かう!付いて来い!」

 

班を分けて村の中へ進む。

既に巨人が到達しているのか、足跡が三つある。

巨人は足の大きさと体長が比例しない事がある。凡その推定は出来るがかなり幅が広くなってしまうのだ。

 

一応の推定としては、2〜6m級と言ったところか。

この大きさだと木や建物に隠れるといきなり出会したりするから要注意だ。

 

「誰か居ないかぁッ!?」

 

足跡を見るに、村人は逃げたらしい。

確かこの村は兵団に馬を提供する役割を担っていたはず。

厩舎を見た限りどうやら馬を連れて逃げたのか一頭も居なかった。

 

となれば、他に逃げ遅れた者はいなさそうではあるが、確かブラウスが来ていたはず。

 

「分隊長、もうこの村に逃げ遅れは居ないのでは?」

 

「……もう一回りしたら別の場所に行こう」

 

「はっ」

 

声を張り上げながら駆けていると、

 

ピィィィィィッ………

 

少し離れた場所で、指笛が鳴った。

この音は指笛で間違いない。

 

壁外などで立体機動に移った時に馬を呼ぶためのものだから、良く耳にする。

間違えるはずもない。

 

「ナナバ、馬を任せる!」

 

ナナバの返事を聞く前に立体機動に移り、着剣、抜刀して指笛の鳴った方へ急いで向かう。

すると、そこには弓を構えているブラウスの姿が。

巨人の片目には既に矢が突き刺さっている。

 

「分隊長ッ!」

 

「そのまま下がれ!」

 

サシャを下がらせ、巨人の頸へ刃を振り下ろす。

狙い通り、頸を削ぎ落とした。

 

着地の衝撃を和らげる為に近くの木にアンカーを撃ち込んで、少し巻き取ってから外して着地する。

 

「ぶ"ん"だ"い"ぢ"ょ"ぉ"ぉ"!!あ"り"が"ど"う"ご"ざ"い"ま"ず"ぅ"ぅ"!!」

 

「うぉっ」

 

弓を構えて巨人に立ち向かっていた勇ましい姿は何処へ行ったのか。

号泣しながら縋り付いてくる。

 

ブラウスも性格が中々にアレなだけで外見は普通に美人だ。

その美人が鼻水や涙、涎を撒き散らしながら縋り付いてくるのは、中々に迫力があると言うか、前世のホラー映画を思い出さなくもない。

 

取り敢えずブラウスを落ち着かせ、ナナバに任せた後に村の中に侵入した巨人の残りを討伐。

 

 

 

 

「ブラウス、怪我はないか?」

 

「大丈夫です。助けて頂いて本当にありがとうございます」

 

「気にするな」

 

「それと、アレは忘れて頂けると……」

 

「泣き喚きながら縋り付いて来た事か」

 

「うぐっ、そうであります……」

 

「何、あれぐらいマシなものだ。口外したりはしない」

 

やはり装備一式は身に付けていないらしく着の身着のまま、休日の装いと言った感じだ。

状況を聞いてみると、どうやら装備を整えている暇は、やはり無かったらしい。

立体機動装置を着けずに兎に角人手がいるから原作同様、新兵もそのまま駆け回っているんだとか。

 

 

 

「ブラウス、他にこの村に人間はいるか?」

 

「いえ、我々だけです。ですが、近辺に逃げ遅れた子供がいる筈です。それと先輩が一人別の村へ向かいました」

 

「分かった。ミーネ、後ろにブラウスを乗せてやれ。ゲルガー、お前は二人を護衛しつつ兵団本隊へ一度合流、現状を団長に伝えろ」

 

「了解」

 

「他はそのまま残りの連中を回収しに行くぞ」

 

「「「「了解」」」」

 

途中、ダウパー村の馬を配って走っていた村民やブラウスと近辺まで来ていた兵士数名を回収。

ゲルガー、ミーネ、兵士達にブラウスと村民達を任せて、再び馬を走らせる。

 

まずは殿を務めたミケさん達と合流するべく、待機場所の方へ急いだ。

幾らミケさんがいて、他に複数人が行動を共にしているとは言え、獣の巨人と直接戦闘となれば勝ち目はほぼ無い。

 

待機場所に到着すると、ミケさん達はまだ戦っていた。

どうやら思っていたよりもかなり早めに着いたらしい。

 

しかし、闘う様子を伺うように300mほど離れた場所をぐるぐると回りながら歩く獣の巨人の姿も見える。

なるほど、しかしどうやらここで戦う気は無いらしい。

 

ぶつからないよう、ぐるっと大回りをしてから馬を近くに繋ぎミケさんの元へ。

 

「ミケさん」

 

「ヴォルフ、来てくれたのか」

 

「当たり前です。ネス、皆を率いて対巨人戦闘開始。出来うる限りこの建物近辺で戦え。俺はアレを見張る」

 

「了解」

 

ネスに皆を頼み、俺はミケさんと共に獣の巨人を見据える。

 

「ヴォルフ、アレをどう思う?」

 

「……戦っていないので、余り言えませんが……、女型と同じ様に感じます」

 

「……中に人が入っている、と」

 

「はい。どの程度の戦闘能力があるかは分かりませんが最低限、なんらかの奇行種である、とは認識すべきです。もし俺が言った事が当たっているなら、今ここで戦うのは得策では無いかと」

 

「多少、戦って情報を持ち帰るべきでもないか」

 

「中身ありだとして、女型があれほど強かったんです。アレも同等かそれ以上と考えて然るべきかと。なら、新たな知性ある巨人が現れた可能性あり、と伝えるだけでも十分以上の戦果では?」

 

「……分かった。ヴォルフ、お前の言葉を信じよう」

 

ミケさんと話を終わり、獣を警戒しているとそこへ丁度ネス達が戻ってくる。

 

「分隊長、掃討終わりました」

 

「ありがとう、良くやってくれた」

 

「しかし、アレは……」

 

「あくまでも俺の勘だが、女型と同じだ」

 

「中身が入っている、ですか」

 

「あぁ。だから今すぐにここを立ち去る。そして情報を団長に伝えるんだ。」

 

出来うる限り、早く。

まだ他の新兵達、ミカサやアルミンも回収出来ていない。

駐屯兵団は防衛線の構築で忙しく余り人員をこちらに回せないし、憲兵団は数百万人の治安維持があるからアテにできない。

となると調査兵団と若干の駐屯兵団だけで穴を見つけなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

合流後、新兵達やその監視に就いていた兵士達と二手に分かれて壁の穴を探し回ったがやはり見当たらない。

ミカサ、アルミンとも無事に合流出来た。 

 

日が暮れても穴の捜索は続けられ松明を持って、警戒しながら進む。

俺が率いる班はクロルバ区側から捜索し、ミケさん達はトロスト区側からと分かれて捜索しているがまだ見つからない。

 

巨人は少なくとも今確認されている情報では日光が無ければ活動出来ない。

しかし日が暮れた後の行動時間がかなり個体差がある。

一時間で動かなくなるのもいれば、四時間は動き回るのもいる。

 

だからまだ辺りが暗くなってから一時間とは言え、十分に警戒する必要がある。

しかも暗闇では立体機動が困難だ。

と言うより出来ないと言っていい。

どこにアンカーを刺せる構造物や巨人の身体があるか分からないからだ。

重力があるからある程度の上下左右の並行は分かるが、殆ど分からないに等しい。

例えるなら、レシプロ機で真っ暗闇の中で格闘戦をするようなものか。

 

松明の灯りはせいぜい周囲1、2mの、足元を照らす程度しか効果は無い。

あとは遠目に見て目標にするぐらいだ。

だから、夜に巨人と遭遇したくない。

そうなったら今は月明かりも何もないから俺やミケさんでも逃げるしか出来ないのだ。

リヴァイはどうか分からないが、あいつも全力で逃げを選択する筈だ。

 

 

 

「あっ!分隊長、松明の灯りです!」

 

「ミケさん達と鉢合わせになったんだな。と言う事はこの辺りがクロルバ区とトロスト区の中間地点になる筈だが……」

 

ミケさん達と合流し、状況報告を互いに行う。

 

「ヴォルフ、そっちに穴はあったか」

 

「ありませんでした。ミケさんの方は、その様子だと……」

 

「あぁ、穴なんて何処にも無かった」

 

やはり穴は見当たらなかったらしい。

穴があったとするならば、絶対に見落とす訳が無いのだ。

目視でもそうだが、風が穴から通るから分かる。

なんせ15m級の巨人が通れるほどの穴だ、逆に見落とせと言う方が難しい。

 

 

「巨人とは遭遇しましたか?」

 

「いや、巨人とも遭遇すら一度もしなかった」

 

「こちらもです。やはり……」

 

「その議論も重要だが、今は休める場所を探そう。新兵達が限界だ」

 

「そうですね」

 

日が暮れてから2時間、辺りは暗く、巨人がいる領域で夜を迎えて、下手をすれば日を跨ぐかもしれない、と言う経験の無い新兵達は皆疲労困憊で馬上でフラフラしている。

ナナバやゲルガーと言った面々も表情に疲れが出ている。

確かに少しでも休ませないと厳しい。

 

どこか良い場所は無いかと探すが、この壁近くには村も無く、記憶している限りであるが一番近い村まで馬で二時間は掛かる。

 

少し探していると、何かに仕組まれているかのように、空が明るくなる。

と言っても太陽が登ったわけでは無い。

空を覆い月を隠していた雲が晴れ、月明かりが照らしたのだ。

 

それによって松明が無くとも問題が無くなり、それと同時にやはりと言うべきか、一際目立つ建築物が見えて来る。

 

「城跡か……」

 

「あそこなら、休むのに丁度良い」

 

本当の事を言えば、行きたくは無いが野っ原で巨人に出会すよりはマシか……。

それに、完全武装の兵士は俺を入れて10人。

もう二人いたが、エルヴィンさんにいち早く情報を伝えるべく、危険ではあるが伝令として走らせた。

 

中にはミケさんもいるから、獣と直接対決にならない限りは問題無い。

 

新兵がミカサ、アルミン、ジャン、コニー、クリスタ、ユミル、ライナー、ベルトルト以上8名。

合計18名がウトガルド城跡にいる事になる。

 

馬を繋ぎ、ミケさんと相談して見張りや薪を拾って来る人間を決めていく。

 

「ナナバ、ケニング、新兵二人を連れて薪を拾ってきてくれ。他は交代で見張りだ」

 

塔の上と中に焚き火を起こし、新兵を加えて四人ずつが交代で見張を行う。

他は休息をとるように言ったが、極度の緊張故か寝付けないらしい。

 

「少ないが、皆で分けて食べておけ。明日からは休む間も無いだろうからな」

 

積まれていた木箱を漁ったら食い物から酒まで出てきた。

水は幸いにも井戸が使えたから問題無いが、そうではない。

 

井戸と言うのは長年使わないでいると、使えなくなる。

しかしどう言う訳かこの遺棄されてから相当な年数が経っているであろうウトガルド城跡の井戸は全く問題無く使えている。

 

それが示すは、間違いなくつい最近、生活痕から見て数日以内までの間に人間が此処を活動、又は生活拠点としていた可能性がほぼ確実であると言う事だ。

 

皆は盗賊が根城にしていたと言うが、それにしては規模がおかしい。

生活痕からアルミンを連れて推測してみたが、どう考えても20人以上はここに居たことになるのだ。

 

20人の盗賊なんてかなり大規模な部類に入る。

近隣の村や街道で被害が出ている筈だし、そうなると憲兵団が出張って来る筈。

しかしそんなの聞いたことも無ければ憲兵団と盗賊が争った痕跡も無い。

 

更には、漁った木箱や中に入っていた食べ物に書かれている文字が、少なくとも今この場にいる者達が読めない文字で書かれていたのだ。

明らかに壁内で使われている文字、言語ではない。

 

となると、《盗賊でも無く壁内の言語とは違った言語を使う誰か》がここに住んでいたと言う事になる。

 

確か、マーレの人間であった筈で、この騒動に関与していた筈。

とは言えそれを知っていたところでどうにもならない。

寝ている間にライナーとベルトルトを殺そうか考えたが、2人が寝る気配は無い。

多分、こう言った状況に慣れているのだろう。

 

取り敢えず、警戒するだけしておいて、兎に角今は現状の打開を狙うしか無い。

 

 

 

 

 

 

「あの、ビッテンフェルト分隊長」

 

「どうした」

 

「サシャは、無事ですか?」

 

「あぁ、ダウパー村の村民を任せて本隊と合流させた。今頃準備に追われているだろう」

 

暫くすると、コニーにサシャの身を案じた質問を問いかけられた。

道中で巨人に襲われていなければの話だが、そこは別に言わなくとも良いだろう。

 

「全員、今の内にしっかり休んでおけ。明日からどうなるか本当に分からない」

 

「「「「「はい」」」」」

 

すると、段々と寝始める者が出てくる。

初めての壁外調査から今日と立て続けに事が起こってやはり疲れていたのだろう、暫くすると例の巨人になる事が出来る3人以外は寝息を立て始めた。

 

「おい、見ろよ。こんなもんまであったぜ」

 

「まだ漁ってたの?」

 

「良いだろ別に。酒に食い物まであった」

 

「ゲルガー、職務中の飲酒は良くないよ」

 

「へっ、どうせ明日生きてるか分からねぇんだ、最後の晩餐ぐらい……」

 

「まぁ、この状況を打開出来るなら私だって少しなら飲みたいね。飲んだぐらいで出来るとは欠片も思わないけど」

 

ゲルガーとミーネはそんな会話をする程度の余裕があるぐらいには落ち着いたらしい。

大酒飲みで有名なゲルガーだ、余程酒が欲しいらしい。

 

まぁアルコール依存症にはなっていないから大丈夫だとは思うが過去に調査兵に限らず酒と女で身を持ち崩した兵士は多い。

特に調査兵はいつ死ぬか分からない、仲間の死を目の前で見たなどの理由で精神的に不安定になって酒に手を出して抜け出せなくなるなんてこともある。

 

女に手を出して、と言うのも大体同じだ。

精神的な拠り所が酒か女かの違いに過ぎない。

 

「任務に支障が出ない程度の少量なら飲んでも良いぞ」

 

「マジっすか!?」

 

「あぁ、一口二口ぐらいならな」

 

「よっしゃぁ!」

 

そこまで嬉しいか……。

周りも呆れてものが言えないらしく、視線を送っている。

 

まぁ、なんにせよ緊張が解れたのなら幸いか。

 

 

 

 

 

「分隊長、交代の時間です」

 

「分かった。ご苦労、ゆっくりとは行かないがしっかりと休んでおけ」

 

「はい」

 

ネス達が降りてきて、俺達が見張りに就く。

 

「しかし、夜だってのに随分と明るいもんだな」

 

「真っ暗で立体機動が出来ないよりは良いと思うよ」

 

焚き火に当たりながら、四方を警戒する。

時折双眼鏡で辺りを覗きながら、何か異変が起きないか十分に警戒しておく。

 

「分隊長、幾ら何でも警戒し過ぎじゃ……?日が暮れてからかなり時間が経ってますよ?」

 

「あぁ、そうだな。だが何事にも例外はある。この時間まで活動出来る巨人が居ない保証なんてどこにも無いんだ、警戒するに越したことはない」

 

「そりゃぁ、そうっすけど……」

 

「なに、俺が一人で勝手にやってるだけだ、お前達はそのままで構わんさ」

 

ゲルガーは命令を守り2口程度を飲んだだけで酔ってはいない。

酔っていたら今頃ここに立ってすらいない。

 

季節柄、寒くなる事は無いが多少なりとも夜は気温が下がるから身体が冷えて動けなくなるのは不味い。

すぐに動けるように焚き火に当たりつつ、警戒をするが飲酒は本当に少しならば体温を上げてくれるから寒い時などは悪いことでは無い。

 

 

 

 

 

 

二時間して、ミケさん達と見張りを交代する。

下に降りて皆を確認すると新兵達はぐっすりと眠っており、ネス達も寝息を立てている。

あれだけの緊張下に居たのだから疲労して当然だ。

今のところ、特に何も無さそうだがこのままとは行かないだろう。

 

「お前達も休め。出来る事ならしっかりと寝ておけ。何度も言うが、明日からどうなるか分からないからな」

 

「はい、分隊長も休んでください」

 

「あぁ」

 

このまま何事も無く時が過ぎれば良かったのだが、そうは行かなかった。

 

 

 

 

 












漸く書き上げられた……。






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