原作キャラを救いたい。   作:ジャーマンポテトin納豆

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なるべくあと一、二話ぐらい投稿したい所存。
そうしたら他の作品書きに行きます。







守りたいもの

 

撤退後あれから母さんや姉さん、エレン達がいる避難所に訪れる。

調査兵団は緊急事態で臨戦態勢でトロスト区の壁上で待機するよう命令が出ていたが、近隣に家族がいる俺や何人かの部下は安否確認をしてこい、と言う事でこうしてここにくることが許されていた。

 

下手に安否が気になって仕事が出来なくなるよりは、その方が仕事に集中出来る、とエルヴィンさんがキース団長に進言してくれたのだ。

特に俺は、自分で言うのもあれだが調査兵団でも3本指に入るぐらいの実力者で部隊の指揮も執らなければならないからその人間がそんな状況では不味い、と言ってくれたのだ。

本来ならば上官である俺が抜けることは許されないのだが、安否確認に向かう者達の引率という体裁を整えて、そして行ってこいと言ってくれた。

リヴァイはリヴァイで、仏頂面でお前の代わりぐらい務めてやる、って言って送り出してくれた。

 

出発する前の休息時間に軽くではあるが水浴びも済ませてきたから汚れも幾らか落とせているだろう。

そういうのは士気に直結するから、調査兵団では交代で水浴びをしているのだ。

 

俺は、皆にありがとう、すまないと伝えて大急ぎで支度を整え、整えさせ向かった。

 

調査兵団や駐屯兵団の死力を尽くした防衛戦のおかげで避難民の数は原作よりも多くなっている。

避難所は避難民で溢れ返っていて、食料を求める長い長い列が続いている。

その列は避難所の遥か外にまで続いておりどう見ても全員に食料が行き渡らないのは間違いなかった。

俺も、数日分として纏めて渡された携帯食料を持ってきてはいるが、家族やエレン達で分けてしまうと二日程度しか保たないだろう。切り詰めればまだ三日分はあるかもしれないが……。

 

原作でも言われているように、元々この壁の中は食料事情が良くない。

ウォール・マリアが陥落する前までは、まだ幾分かはマシではあったもののそれでも食糧不足だったのに、そこに農地の大部分を占めるウォール・マリアが陥落したとあって追い打ちなんてレベルじゃない影響が出るに決まっている。

配給の食料も到底足りていないし、この調子だとその食料もあと数日保てば良い方だろうか。

 

自前の鞄に一日分だけ自分の分を取っておいて残りの携帯食料を全部詰め込んで走る。

 

「父さん母さん!姉さん!エレン、ミカサ、アルミン!!」

 

大きな声で皆を呼びながら探す。

すると、奥の方に見知った背丈と髪色の二人組の女性がいた。

駆け寄ると、母さんと姉さんで二人はエレンとミカサ、アルミンと手を繋いでいた。

 

「ヴォルフ!大丈夫だったの!?」

 

「あぁ、俺は大丈夫だ。二人は怪我してない?エレン達は?」

 

俺を見つけた母さんと姉さんは、駆け寄ってきて抱き締められた。

子供達も見た感じ無事そうだ。

 

「私達なら大丈夫よ。この子達も無事。ただ、カルラさんが怪我をして……」

 

「あぁ、それなら知ってる。カルラさんの容態は?」

 

「足の骨折で済んだって言っていたけれど……」

 

「それなら良かった……」

 

全員が無事だった事に安堵のため息を吐く。

だが、父さんの姿が見えない。

 

「父さんは?食料を貰いに?」

 

「あの、ね……」

 

どうやら皆父さんを見ていないらしい。

仕事で離れていたのもあって、まだ合流出来ていないんだとか。

 

ただ、シガンシナ区出身の避難民はこの避難所に集められているから生きていれば会える筈だ。

 

「大丈夫だ、父さんなら生きてる。だからそんな顔しないで」

 

「そう、よね。大丈夫よね」

 

心配そうにする二人をどうにか宥め、エレン達を抱き上げる。

 

「三人とも、大丈夫だったか?怪我はしてないな?」

 

「うん、俺は大丈夫だよ。でも母さんが……」

 

「大丈夫だ、エレンの母さんは絶対助かる。ほら、そんな顔してないで良い物持って来たんだ、向こうに行こう」

 

母さん姉さん、エレンミカサアルミンを連れて避難所の端の方に行って鞄に詰めてきた数日分の携帯食料を渡す。

 

「ほら、携帯食料だけど食べてくれ。あまり美味しいとは言えないけどさ」

 

紙袋の中に入れられたパラフィン紙のようなものに個包装された携帯食料を取り出して五人に渡す。

味はあまり良くないがその分、栄養価やカロリーは普通のパンなどに比べると遥かに高い。

カロリー消費量が桁違いの作戦行動中の兵士達にとっては味に関しては不評ではあるが概ね好評なのだ。

 

「でも兄さんは食べなくていいの?まだ忙しいのに……」

 

ミカサはそう言ってくれる。

原作じゃ要らないってパンを投げたエレンの口に無理矢理突っ込んだりしていたな、と思いつつ大丈夫だから、とパラフィン紙を剥いて渡して食べさせる。

 

実の所、確かに忙しいし食料事情も厳しいが調査兵団は優先的に食料が配給されていた。

理由は、もしまた巨人に襲われたら調査兵団が主力として戦わなければならず、そうなると食料供給どころじゃない。呑気に配っている暇も無いし連戦になるだろうと予想出来る。

そうなると駐屯兵団も憲兵団も大忙しなんてもんじゃなくなって食料補給なんてしている暇があるかどうか。

そうなると食料供給が滞るかもしれない。そうなると調査兵団と言えど飢えと渇きにはどうやったって勝てない。

だからそうなっても暫くは戦えるように携帯食料が主ではあるが各人に配給されていて、兵団にも多めに配給されているので戻ればすぐにとはいかないが少しばかりなら貰える。

 

そう言う事情もあって渡してしまっても問題は無い。

ただ口には出さない。

下手に言ってしまうと周りの民間人がどうなるか分からないからだ。

 

それに最悪官給品の横流し、と取られかねないしそうなると面倒だ。

しかしながら状況が状況なだけに俺の行為に気がついても憲兵団や駐屯兵団の兵士達は、目を瞑っている、と言う面もあるかもしれない。

ただでさえ民間人に行き渡らせるだけの食料は無いのだから。

 

「子供があんまりそんな事を気にするな」

 

「ありがとう」

 

わしゃわしゃっとミカサの綺麗な黒髪を撫でてやると、少しくすぐったそうに笑う。

さっきまで暗い顔をしていたけど、これで少しは元気になってくれるといいんだが、エレンは母親が怪我をしたとあってずっと暗い顔のままだ。

 

「エレン、顔上げろ。ほら、あんまり暗い顔してるとせっかくの美人が台無しだ」

 

「でも、母さんが、怪我して……」

 

「お前が暗い顔してたらカルラさんも怪我を治すのに専念出来ないだろう?」

 

「うん……ぐすっ」

 

「泣くな泣くな」

 

エレンを励ましてやると泣き出してしまった。

今まで我慢していたからか大声で泣くような事は無いがギュッと抱き着いてきてぐすぐすえぐえぐと泣く。

モスグリーンの調査兵団のマントを掴んで離してくれないが、まだ時間はある。

一応ここに居ていい時間も決められているから、いつまでもそうしてる訳には行かないんだが、まだまだ子供で巨人に人が喰われる様子も見たんだ、相当怖かったんだろう。

泣き止む気配は無い。

 

背中を優しく叩いて頭を撫でてやり、地面に胡座をかいて手招きをしてミカサとアルミンを膝上に乗せてやる。

 

アルミンも、賢いし俺の事をさん付けで呼ぶけどこれでかなり懐かれているからすぐに乗ってくる。

 

ミカサは携帯食料をもそもそと食べ進めている。

なんだかんだ言いつつミカサはタフだからエレンよりかはまだマシらしい。

それでもショックはかなりあったのは確かでいつもの元気さは感じられ無い。

 

「ほら、水も一緒に飲め」

 

「ん、ありがとう」

 

携帯食料は乾燥させてあるからそれだけで食べると口の中がパサパサになってしまう。

だからミカサに自分の水筒を渡してあげると、ゴクゴク飲み始める。

 

「アルミン、お爺ちゃんは?」

 

「僕達の分だけでもってパンを貰いに行ってる」

 

「そうか、だけどそれじゃぁ皆で食べるには足りないだろう?ほら、全部やるから皆で分けて食べてくれ」

 

「えっ!?でも」

 

「大丈夫だから、俺の事は気にしないで食べてくれ。さっきも言ったけど自分の分は取ってあるから」

 

「……ありがとう」

 

「あぁ」

 

アルミンのお爺ちゃんはどうやら配給のパンを貰いに行っているらしいがこれだけの人だから原作通り貰えるか分からない。

だから携帯食料が入っている紙袋を丸々アルミンに渡しておく。

多分、母さんと姉さんがちゃんと均等に分けてくれる筈だから誰に渡しても一緒だ。

 

「母さんと姉さんも食べてくれ。水も好きに飲んで良いから」

 

「ありがとう、ヴォルフ。でも本当にいいの?ヴォルフの分はあるの?」

 

「大丈夫だって。ちゃんと取ってある。だから心配しなくていい」

 

上着とマントを脱いで母さんと姉さんにその上に座るように促す。

季節柄、昼間にあまり冷え込む事は無いだろうが、それでもあまり身体を冷やさない方がいい。

 

「これ下に敷いてくれ」

 

「あんた、これ大事な制服なんでしょ?」

 

「別にいい。洗えば済む話だ」

 

そう言って座らせて食べるように勧める。

昨日から何も食べれていないであろう、二人の端正な顔立ちには疲労が色濃く見て取れる。

 

多分、父さんと俺の事を心配して寝れなかったんだろう。

 

「二人とも、食べないと身体が保たない。まだまだ厳しい状況だから少しでも食べてくれ」

 

「ありがとう、ヴォルフ……」

 

「そんなに泣かないでくれって」

 

泣く二人をエレン同様宥める。

泣き止んだエレンには、携帯食料を渡して食べさせる。

 

そんな時だった。

 

「なんで他所者の為に俺達の食料をやらなきゃならないんだ」

 

一人の駐屯兵がそう言い放った。

続け様に、

 

「どうせ巨人が壁を越えたんならもっと食って減らしてくれりゃ良かったんだ」

 

そう心無い言葉を言い放った。

確かに、そう思うのも仕方が無いとは言わないが思ってしまうだろう。

だが、それを言う奴があるか?

 

家も家族も失った人が大勢いるこの中で、守るべき民間人を前にして言うか?

 

そう思って一言言おうとした時だった。

俺よりも先にエレンが立ち上がり、思いっきり俺が教えた通りに膝を外側から蹴る。

いつもアルミンを助けに入るエレンがいじめっ子に負けたくないからって言って俺に戦い方を教えてくれと頼まれた時に教えた急所の一つだ。

 

それ以外にも金的を狙え、とも教えていたが流石に届かないと分かっているのか膝を的確に狙って当てやがった。

幾ら子供の蹴りとはいえど、膝を正面や後ろからではなく本来曲がらない横から蹴られたのだ、相当痛かったんだろう。

 

顔を真っ赤にして膝を押さえながら怒鳴る。

 

「何すんだこのガキ!」

 

殴られそうになるエレンだが、俺が間に入ってその拳を掴む。

 

「貴様は、子供に手をあげるか」

 

「なぁっ!?ビッテンフェルト分隊長殿!?」

 

その兵士は、俺の顔を見て青褪める。

自分で言うのもおかしな話だが、これでも調査兵団の主力としてそれなりに顔や名前が知られている。

人手を集めるべく俺やミケさん、リヴァイが広告塔として使われる機会が多い。

新兵勧誘の時も前に出ることが多いし、そうなると必然的に兵士の中では特に顔を知っている者は多いだろう。

だからだろう、俺にそう聞かれると先程までの威勢は萎んでいく。

 

「貴様は、子供に手をあげるのか、と聞いている」

 

「い、いえ、その……」

 

「それに先程の発言も聞かせてもらった。いいか、兵士なのだから自覚ある行動をしろ。別に文句を言うなとは言わん。だがそれを民間人の前で言うな。ここには家族を失った人も大勢いるのだ。貴様がそうなって言われたらどうだ?ん?」

 

「その、申し訳ありませんでした……」

 

「分かってくれたのなら別にいい。今回は兵団が違うから不問にするが次同じような光景が見られたら誰であろうと上に報告する。いいな?」

 

兵団が違うから罰を与えると越権行為になるので注意で済ませつつ、釘を刺しておく。

こうすれば少なくともここにいる連中は下手な事はしないだろう。

 

食べ終えると泣き疲れたのかエレンは眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

ウォール・マリア陥落後の話だ。

俺の父さんは、死んだ。

原因は分からないけど、超大型巨人の扉の破壊によって生じた岩に潰されてしまったか、巨人に喰われたか。

どちらにせよ、父さんはウォール・ローゼ内で何日待っても帰って来なくて、聞いて回ったけど誰も船に乗った所を見ていないそうだ。

母さんと姉さんは、どうにかこうにか生き延びて今はエレンとミカサ、アルミンの面倒を見てくれている。

 

カルラさんは生き延びたものの、足の骨折が理由で左足を切断せざるを得なくなった。

生産者としても働けないのでそれ以外の、日本で言うところの内職のような仕事に従事。

カルラさんと同じような境遇の人は少なくない。

 

当たり前といえば当たり前であるが着の身着のまま逃げてきたから家財なんかは全部失ってしまった。

 

ウォール・マリア陥落の数日後、避難民の殆どは荒地の開拓に回され食料確保に従事することになった。

家を自分達で建てる所から始まり、特に男手の無い家庭、俺の家族やエレン達などは相当苦労したようだ。

それが終わると大急ぎで農地開拓が進められたがそれでも領土の三分の一を失った今の人類を食べせていくだけの量は到底賄えるものではなかった。

 

俺は、毎月の給料の殆どや自費で購入した毛布などを家族やエレン達に持っていき、冬を越せるように配慮した。

俺の家族とエレン、ミカサ、アルミン、カルラさんは同じ家に一緒に住むこととなった。

 

エレンのお父さんだが、ある日から行方不明になっている。

恐らく、エレンに巨人の力を継承するために喰われたと予想出来る。

確か、832年あたりに巨人の力を継承した筈だから、そこから考えると845年が丁度13年目に当たる。

細かい日付などは分からないが、少なくとも原作でエレンに引き継がれた時よりも後になっているのは確かだ。

 

どうしてそう、推測したのかと言う理由はエレンの記憶が数日欠落している時期があるからだ。

それに加えて先に説明した事柄からも、ほぼ確定していると見て間違い無いだろう。

 

 

 

 

そしてウォール・マリア陥落1年後の846年、中央政府からウォール・マリア奪還を口実にした口減らしが行われる事になり大量の避難民を作戦に投入、俺も調査兵団の一員として参加する事に。

 

その数は原作よりも10万人近く多い35万人にも上った。

人口のおおよそ3.2割ほどに相当した。

 

母さんや姉さんは、どうにかこうにか参加させないで済んだけれど、アルミンのお爺ちゃんは駄目だった。

最後まで助けようと足掻いたが、駄目だった。

 

 

 

そしてこの作戦を実施するにあたり調査兵団だけでは戦力は到底足りないから駐屯兵団と憲兵団の双方からも戦力を抽出させる事になんとか、キース団長の尽力もあって説得出来たがそれでも殆ど意味は無いだろう。

 

 

 

 

 

「これよりウォール・マリア奪還作戦を開始する!」

 

「「「「「ウォォォッ!!」」」」」

 

勇ましく、そう叫ぶのは良いがここにいる誰もがその後に自分がどんな運命を辿るか分かっていた。

35万人もの立体機動装置も着けず、馬にも乗っていない人間の長蛇の列は、巨人からすれば食べ放題バイキングも同然だ。

間違い無く、民間人は生き残れない。

 

調査兵団は、班ごとに分かれてそれぞれの持ち場を守るように、と言われたがどうやったって無理だ。

一人頭何人守らなければならないと思っているんだ?

たった一人で立体機動装置も付けていない数百人以上の人間を守らなければならないんだぞ?

 

幾ら兵士と言ってもそんな事到底出来るはずもない。

リヴァイだって確かに兵士最強たるに相応しい実力の持ち主ではあるが、不可能に近かった。

35万人の奪還軍を組織する、と聞かされた時に一番物凄い顔していたし、物凄い罵詈雑言をぶちまけていた。

 

ミケさんも首を横に振って無理だ、と言わんばかりの態度だったし俺もそんなのウォール・マリアどころか一番近くの街に到着する事さえ無理であると思ったのだから。

 

こんなの作戦なんて到底呼べるものではない。

 

そして守るべき人達を死地に追いやったクソ野郎共は安全な内地で踏ん反り返っていると来たものだから少なくとも調査兵団の兵士達に関しては古参兵だろうと新兵だろうと怒りと不信感を覚えていた。

そして同時に壁内で人類同士で争わなくて済む唯一の手段だと言う事も理解していた。

 

それでも、その中の少しでもいいから救えないかと考えたがやはり有効な手立ては何も無かった。

原作を知っているから、今の王が本当の王ではない事も知っているし誰が真の王家の血筋の人間なのかも知っているがそれを声高らかに叫んだ所で頭のおかしい奴認定されて営倉や独房に入れられるのが関の山だろう。

運が良ければ中央憲兵に目を付けられずに済むが、最悪始末される。

 

そうなったら、母さん姉さんにエレン、ミカサ、アルミンも食うに困らざるを得なくなる。

今は、行動を起こすその時じゃない。

原作キャラを救えなくなるし、何よりも皆を守らなければならないんだから死ぬ訳には行かない。

 

 

 

 

 

 

ウォール・マリア奪還作戦が始まり、長い長い列になって人々が進む。

外門を開けて少しするとすぐに巨人が群がってきた。

 

「右前方13m級2体8m級2体接近!」

 

「左前方からも12m級と6m級が1体ずつ来ます!!」

 

部下達からそう報告が来た瞬間に、指示を飛ばす。

 

「右をやるからお前達は左のをやれ!」

 

「分隊長!?」

 

指示を出して、俺は右前方から奇怪な走り方で迫ってくる13m級に対して馬を走らせ鞘に刃と共に収めていた立体機動装置のグリップを勢い良く抜いて立体機動を挑む。

平地での立体機動は圧倒的にこちらが不利だが、それでもやらざるを得ない。

 

小さな木が生えているからそれに向かってアンカーを射出、一気に巻き取り丁度進路上にいた8m級のうなじを削ぐ。

そのまま流れるように目の前の12m級を倒すべく下向きにガスを吹かせて高さを取り、丁度斜め70度ぐらいになった所でアンカーを外して巻き取り、宙に放り出されつつ体勢を整えて背後を取った12m級のうなじにアンカーを刺し巻き取り勢いがついた瞬間にアンカーを外して回転を掛けつつ削いでやると、大きな音と共に地面に倒れる巨人。

 

アンカーを射出し巻き取りつつガスを吹かせて左右上下斜めと全方向に調整し、アンカーを外して放り出されて宙を舞い、上手く背後が取れるように位地取りを行いまたアンカーを射出して巻き取りうなじを削ぐ。

 

それを繰り返し行い、気がつけば最初の報告のあった巨人だけでなく更に10体ほどの巨人を殺していた。

 

 

 

しかしながら、幾ら戦って殺しても巨人の数は減る事は無く、寧ろどんどん増えて行くばかりで

中には訳の分からない走り方をしているのにも関わらず足の速いのがいる。

アニメや漫画だと、

 

「コイツの走り方可笑しすぎんだろ」

 

「真似して走ろうぜ」

 

と言って笑って済むしそれを真似て走る事も出来る。

だけど現実になるとそんな訳には行かない。

 

10mを超える大きさの巨人が大きな足音を鳴らしながらかなりの速度でそんな走り方をしながら迫ってきて、こちらを襲ってくるのだ、まともに戦う術を持たない人間からすれば恐怖以外の何者でもない。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

「クソッ、奇行種か!」

 

巨人を討伐していくと、中には奇行種と呼ばれる通常の巨人とは全くかけ離れた行動をとるヤツもいる。

コイツは冗談抜きで行動が予測し辛く、通常の巨人ならば目の前にいる人間や大人数でいる人間を襲うのだが大抵奇行種というのは目の前の人間をスルーして特定の人間を執拗に狙ったりする。

 

それは討伐するまで続き、調査兵の中では奇行種は必ず一人で相手するな、と徹底させている。

ただし、そうでない人間、一人で奇行種を相手に出来る人間もいる。

例えばミケさんやリヴァイなんかがそうだ。

俺やハンジなんかもそうだ。

 

ハンジは変態なところに目が行きがちだが、調査兵としての実力は高い。

確かにど変態で巨人で興奮した挙句、自慰しそうになっちゃったよ、と言い始めた時は周りと一緒にドン引きしたし実戦の最中に興奮して巨人の群れの中に突っ込んでいくのはどうかと思うが。毎回俺やリヴァイ、ミケさんが駆け付けて事なきを得ているが、モブリットは本当に苦労している。

 

 

 

 

 

それで、今部下達を突破したヤツは奇行種らしく部下を完全に無視して民間人を襲い始める。

しかも15m級と超大型巨人を省けば確認されている中で最大級クラスの大きさを誇る。

それが大きな手を伸ばし、大口を開けて襲ってくるのだから、本当に恐怖でしかないだろう。

 

掴まれた民間人を助けるべく俺は大急ぎで俺に群がる巨人を殺そうと冷静に、だが急いで刃を突き立てる。

横目で見ると、足元の民間人が槍やら鉄砲やらで攻撃するが巨人には効かない。

軽く足を踏み出されるだけで数人が纏めて踏み潰され、捕まった人間は口に放り込まれ咀嚼される。

 

それを見ていますぐに助けに行きたい気持ちになるがコイツらを連れて行ったらそれ以上に被害が増える。

最後の1体を殺してすぐに愛馬に跨り走らせる。

 

馬の上で立ち上がり、身体に染み着いた立体機動を行い、高Gが掛かるのも無視をして民間人を選り好みして襲い続ける巨人のうなじにアンカーを突き刺す。

 

「コイツの周りから逃げろ!潰されるぞ!」

 

そう大声で警告すると大急ぎで巨人の足元や周りから蜘蛛の子を散らす様に逃げる民間人を尻目に、

 

「巨人の癖に選り好みなんて舐めた真似してんじゃねぇ!」

 

そう叫びながらうなじを削ぎ落とす。

大きな音と共に地面に倒れ伏す巨人の手の中から掴まれていた民間人が這い出てくる。

 

 

奇行種というのは、相手するのは物凄く厄介だが一度特定の人間を襲い始めるとそれ以外は完全に眼中に無くなり無警戒になる。

その状態の奇行種は通常種よりも相手しやすいのだが、そうなると狙われた人間は大抵喰われた後だ。

 

中には喰っている人間を恍惚とした表情で味わい咀嚼し、いつまでも口の中で噛み続けるようなヤツもいるのだ。

何度か前の壁外調査の時、そんな巨人に出くわした俺の部下の一人が巨人の口の中でミンチにされるのを見た。丁度その時別の部下の救援に行っていたから助けに入るのが遅くなってしまったのだ。

遺体を持ち帰ろうにも、ミンチにされていて家族の下へ返せるような状態では無く、その部下の家族には

 

「息子さんは私が助けるのが遅く、食べられてしまった後でした。遺品も何も無いです。本当に申し訳ありませんでした」

 

と言って頭を下げることしか出来なかった。

そいつには奥さんがいて、その奥さんから号泣しながら罵詈雑言を浴びせられたが、俺は黙って頭を下げてそれを受け入れるしかなかった。

 

本当ならば、死亡通告書というものが後日団長名で届けられるのだが俺は関係無しに死んだ部下や同期の家族に自分の口で戦死を伝えるのが義務であると思っているから、死んだ部下の家族の下へ向かって頭を下げている。

それを嫌だと思った事はない。

 

ただ、もっとやりようがあって助けることが出来たんじゃないかと思うと、悔しくて悔しくて堪らない。

 

 

 

 

 

奇行種を討伐し、押されている部下を助け、また別の方向から突っ込んでくる巨人を相手する。

必死になって戦ったが、数はどんどん増えていき次第に手が回らなくなる。

突破していく巨人の数が1体、2体と増えていき直接民間人を守るよう言った部下達もすぐに対応出来なくなった。

 

何せ、数千を軽く超え万を超えるような数の巨人が一斉に群がってくるのだから、精鋭が数多くを占める調査兵団だって自分の身を守るので精一杯、憲兵団や駐屯兵団に至っては戦うことすら出来ず戦意喪失状態となった兵士も数多かった。

 

「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!助けてくれぇぇぇ!!」

 

「クソォ!手が足りない!」

 

「分隊長!フォーゲルが!」

 

「畜生、今助けてやる!」

 

あちらこちらから、巨人に捕まった人の叫び声が響き渡る。

それでも、俺達に出来ることは殆ど無かった。

 

自分の身と部下を辛うじて守るので精一杯で民間人を守る事なんて到底出来るものではなかった。

俺達は馬があるからいいが、民間人達は馬すら無いし武器も農業用のフォークや鉈、草刈り用の鎌なんていう状況で生き延びろという方が無茶だった。

 

巨人に捕まった部下を助けだし、次の巨人に向かっていく。

俺達も、平地での立体機動というあまりにも不利な状況下で戦わなければならず、

途中小さな木などはあるがアンカーを突き刺して立体機動に耐えうる木というのは少ない。それらの使える木を見つけたら出来るだけそこで迎撃を行うのだが、それでもどうにもならない。

 

しかも徒歩移動の民間人に行軍速度を合わせなければならないから民間人もそうだが憲兵団や駐屯兵団の兵士達も巨大樹の森やどこかしらの街に入る前にその殆どが巨人の腹の中に収められてしまった。

 

 

 

 

 

 

そして、出発してから僅か数時間後の事。

35万もいた人間は僅か200名足らずという有様になっており、民間人は誰一人居なかった。

 

 

 

最終的に壁内まで生きて辿り着けたのはたったの189名で181名が調査兵団員、残りの8人が駐屯兵団3人憲兵団5人だった。

それ以外の民間人や兵士は全員、喰われたか殺された。

そして重症などにより、壁内に辿り着いても死んだ者もおり、実際に生き残ったのは176名のみ。

 

アルミンのお爺ちゃんも、その死んだ中の1人だった。

結局、俺は自分と自分の部下を守るので精一杯で殆ど何も出来なかったのだ。

 

 

 

ウォール・ローゼに帰ってくると、自分の家族を探す人で溢れ返っていたがその誰もが絶望した顔で泣いたり、理解が出来ないからか立ち尽くしていた。

 

俺の部下も、戦闘で直接死んだ奴こそ辛うじて居なかったがその殆どが重軽傷の満身創痍、ミケさんやリヴァイの部下達だって死傷者が多く出ていた。

 

調査兵団全体で見ても、先の壁外調査の影響もあってか死傷率は過去と見比べても群を抜いて高い。

ゲルガーやナナバ達は生き残れたようだが見知った顔の部下や仲の良い部下、生き残っていた同期の中にもいない奴が多かった。

 

一度、団本部に帰った後、翌日からそれぞれ三日間の休暇が全員に交代で与えられた。

 

そして俺はその日の内に身支度を済ませて、団長に一言、

 

「俺には、どうしても伝えなければならないことがある人達がいます。休暇を減らして頂いても無しにして頂いても構いません、だからどうか今すぐに出発する許可を頂けませんか」

 

そう言った。

キース団長は、悲しそうな表情を浮かべて頷いてくれた。

この人も、原作だと教官のイメージが強かったりするが部下思いで優しい人なのだ。

この人を取り巻く状況が、アニメや漫画で語られたような人格にさせてしまったのであって根はやはり優しいのだ。

 

許可を得た俺は愛馬に跨り皆のいる開拓地に向かった。

 

 

 

 

 

開拓地に到着すると、夜になっていた。

 

馬から降りて足早に家に駆け寄る。

家に入ると、母さんと姉さん、それとエレン達が出迎えてくれた。

 

 

「ヴォルフ!無事だったのね!?」

 

大泣きしながら駆け寄ってくる母さんと姉さんを抱き締めて、離す。

 

「ごめん、二人とも少し離れてくれ」

 

「どうして……」

 

「どうしても、アルミンに伝えなきゃならない事があるから……」

 

そう言った俺の、その意味を理解した二人は俺から離れてくれる。

 

「アルミン」

 

「あ、あの、お爺ちゃんは……」

 

アルミンの前に出て、しゃがんでしっかりと目を見て伝える。

胸にお爺ちゃんからもらった麦わら帽子を抱えて、俺が伝えようとしている事を察して涙目になり、震える声で聞いてくる。

 

「本当に、すまない。アルミンのお爺ちゃんは、死んだ」

 

「そ、んな……」

 

「ごめんな、俺の力不足のせいで、アルミンのお爺ちゃんを助けてあげられなかった……」

 

「うぁぁぁぁぁ……!」

 

麦わら帽子を抱き締めたまま泣き出したアルミンは、床に座り込む。

残酷だろうが、伝えなきゃならない。

 

黙っていることも出来ただろうが、アルミンは賢いからすぐに分かってしまうだろう。

それにもしかしたら生きているかも、と言う下手な希望を持たせてしまうよりも正直に伝えてあげる方が、優しさなのだ。

 

「ごめんな、ごめんな……っ!」

 

俺も、そう伝えた後ボロボロと涙が溢れてくる。

繰り返し、ごめんな、と言い続けることしか出来なくて、それがとても情けなくて苦しかった。

 

誰だって、家族を失うと言うのは辛いことだ。

父さんが死んで俺達家族も辛いけど、アルミンは唯一の肉親を亡くしたんだから俺達以上に辛いに決まっている。

泣きじゃくるアルミンの前で頭を下げて、何も言えなかった。

 

「全部、巨人のせいだ……。あいつらさえ叩き潰せば俺達の居場所だって取り戻せる……!」

 

俺の横で、エレンが言った。

 

「兄ちゃん、アルミン、俺は来年訓練兵に志願する……!巨人と戦う力を付ける!」

 

泣いていたアルミンは、エレンの言葉を聞いて嗚咽を漏らしながら、

 

「僕も……、僕も!」

 

「私も行こう」

 

ミカサまで、訓練兵団に行くと言い出したのだ。

止めようとしたが、三人の決意は固いらしく幾ら言っても聞きそうになかった。

 

そんな、子供にそんな決意をさせなければならないのがとても申し訳なくて、情けなくて謝罪の言葉すらも出てこなくなって、皆に声を掛けられるまで俺はアルミンの前で膝を地面に着けて泣きながら頭を下げていた。

 

そして俺は、今までよりもさらに強く、家族やこの子達を守らねばならないと誓った。

 

 

 

 

 

そしてこの作戦の犠牲によって残された人々の食料不足は僅かながら改善されることになる。

 

 

 

 

 

 

 

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