DIGIMON @DVENTURE CINDERELLA CHRONICLE   作:心技休

1 / 3
導かれた世界へ

 

 

 デジタルワールド。

 それはネットワーク上に構築された疑似電脳空間。

 その様相は現実世界に酷似しており、大気や広大な海、大陸や島々などが存在している。

 人間たちがネットワークを発展させていくのにあわせて、デジタルワールドもまた拡大を続けている。

 

 そして、この世界に危機が訪れる度に、現実世界から救世主を呼び寄せる。

 純粋な心を持つ“選ばれし少女たち”を。

 

 

 

「私、たち……だけで、は………もう、無理だ……新しい………少女(こども)たちを……」

 

 

 

 黄金の翼を持つ天使がそう零した時、今また新たな世界の危機と、少女たちの冒険の旅が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は打って変わって現実世界、某大手アイドル事務所のプロジェクトルーム。

 大型の液晶テレビに大きなテーブル、それを囲うように団欒用のソファーがあり、既に集まっているアイドル3人が腰掛け楽しそうに談笑している。

 よく見るとテーブルの上にはトレーディングカードが広がっており、対戦の最中のようだ。

 

 

 

「メタルガルルモンで攻撃だぁ!」

 

 

 

名前
神谷奈緒
レベル17歳
タイプクール
属性
ツンデレ
必殺技アニメの知識

傘の配達

 

 

 

「あぁ゛~また負けたぁ~! 奈緒ちゃん、少しは手加減してくださいよ~」

 

 

 

名前
日野茜
レベル17歳
タイプパッション
属性
熱血
必殺技気合いです!

根性!!

 

 

 

「これで茜ちゃんの3連敗ですね」

 

 

 

名前
小日向美穂
レベル17歳
タイプキュート
属性
照れ屋
必殺技うたた寝

熊本弁の解読

 

 

 

「そんなにハッキリ言わないでくださいよ美穂ちゃん! 言うならせめて奈緒ちゃんの3連勝って言ってください!」

 

 

「あ、ごめんなさい、つい……」

 

 

「茜はいつもパワー押しで来るからなぁ、分かりやすくて助かるよ」

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 

 あわあわしたりニヤニヤしたりと、3人は個性豊かな表情を見せている。

 同じ相手との連戦連勝で飽きが来たのか、奈緒が美穂に誘いをかける。

 

 

 

「なぁ、美穂はデジモンカードやらないのか?」

 

 

「え、わたしですか!? その……デジモンって怖い見た目の子が多くて、ちょっと……」

 

 

「あぁ確かに、あたしも茜もかっこいい系やゴツい系のばかり使ってるからなぁ……そうだ!」

 

 

 

 奈緒は何か思い付いたように言うと、カバンの中からカードファイルを取り出し、更にその中から1枚のカードを引き抜いて美穂に差し出した。

 

 

 

「美穂、熊のぬいぐるみ好きだったよな? 熊をモチーフにしたデジモンで“ベアモン”って言うんだけど」

 

 

「わぁ! 可愛い熊さんですね!」

 

 

「こいつなら怖くないだろ?」

 

 

「はい!」

 

 

「そのカード、美穂にあげるよ」

 

 

「え、いいんですか?」

 

 

「カードテイマーからしたらぶっちゃけノーマルカードだし、家にも沢山あるから全然OKだよ」

 

 

「ありがとう奈緒ちゃん! 大事にしますね!」

 

 

「大げさだって。それより、他にも可愛いデジモンとか綺麗なデジモンもいるんだ。見るか?」

 

 

「ぜひ!」

 

 

 

 先ほどのカードファイルを開きペラペラと数ページめくっていけば、ゴマモン、テイルモン、リリモンといった愛らしいデジモンで埋め尽くされたページに辿り着く。2人でそれを見て盛り上がっていると、連敗から立ち直った茜が間に割って入る。

 

 

 

「もっと熱くなってボンバー! するデジモンはいないんですか!?」

 

 

「茜のヴォルクドラモンより暑苦しいのなんて、あたしは持ってないよ」

 

 

 

 3人固まってワイワイしていると、プロジェクトルームの扉が開き、スーツ姿の細身の男性とウサ耳を付けた小柄なアイドルと思しき女性が入ってきた。

 

 

 

「おはようございます! 今日も元気にナナ登場! キャハッ」

 

 

 

名前
安部菜々
レベル永遠の17歳
タイプキュート
属性
ウサミン星人
必殺技ハートウェーブ!

メルヘンチェンジ!

 

 

 

「おはよう菜々さん」

「おはようございます、菜々ちゃん」

「おはようございます菜々ちゃん! 元気なら負けませんよ!」

 

 

「事務所の中でくらいそのキャラ辞めたらどうだ?」

 

 

「余計なお世話ですよ!」

 

 

 

 うわキツ な菜々のキャラコテコテの挨拶に、細身の男性は溜め息混じりに苦言を呈した。

 当のウサミン星人は不満げな様子だ。

 

 

 

「みんなおはよう。ちゃんと揃ってるな」

 

 

「おはようプロデューサー」

「おはようございます、プロデューサーさん」

「おはようございますプロデューサー! ご飯ちゃんと食べてますか!?」

 

 

「ちゃんと食ってるから安心してくれ。んじゃ早速今回の仕事の話を……」

 

 

 

 そう言ってプロデューサーと呼ばれた男性はカバンから資料を取り出すが、机の上を見て身体ごと硬直した。

 

 

 

「メタルガルルモン……しかもこれ、この前出たばかりのウルトラレアのやつじゃないか!」

 

 

「ふっふーん、いいだろー? あたしくらいになるとカードの方から当たりに来るからなぁ♪ あ、トレードはしないからな」

 

 

「そこを何とか!」

 

 

「仕事の話してくださいよプロデューサー」

 

 

 

 恐らく奈緒とプロデューサーはカードテイマー仲間なのだろう。メタルガルルモンのカードを見た途端、仕事スイッチが切れてしまい興奮気味に交渉を始めた。逸れた話を戻す為、今度は菜々が苦言を呈した。

 

 

 

「と、とりあえず机の上片付けてくれるか?」

 

 

 

 苦笑いを浮かべながら、奈緒と茜は机のカードを片付ける。コホンッと1つ咳払いして、プロデューサーは机に資料を並べた。

 

 

 

「今回の仕事はズバリ、新作デジモン映画だ。これの主題歌をユモレスク・ユニティの3人に歌ってもらおうと思ってる。ちなみに菜々はこの映画のメインヒロインの役だ。3人にも端役だけど声を当ててもらうから、そのつもりでな」

 

 

 

 映画の主題歌。その作品のイメージに大きく影響する要素の1つで、それを任されるのだから結構なプレッシャーになる。しかし、デジモンが好きな奈緒はそれよりも楽しみな気持ちが勝っているようだ。

 

 

 

「菜々さん、メインヒロイン役かぁ。念願叶うんだな」

 

 

「はい! もう嬉しくて嬉しくて……ぐずっ」

 

 

 

「あの、プロデューサーさん。どうしてわたしたちに主題歌を? アニメ映画の主題歌なら、他にもっと相応しいユニットがあったと思うんですが……」

 

 

「ユモレスク・ユニティは相互関係にあるユニット、ニュージェネレーションズや……えっと……」

 

 

「トロマグロスティックのジュレですね!!」

 

 

「スティックなのかジュレなのかどっちだよ、て言うかマズそうな名前だな」

 

 

「トリクロマティック・ナチュレ、ですね」

 

 

「そうそれだ。その2つのユニットと比べると知名度が低い。ニュージェネとの差は特にな。そこで大きい仕事を1つこなしてドッと売り出していこうって訳だ。奈緒がデジモン好きなのは知ってたから心配ないと思って迷わず取ってきたよ。茜がデジモンカードやってたってのは初めて知ったけど」

 

 

「奈緒ちゃんと未央ちゃんに勧められて、最近始めたんです!」

 

 

「そりゃ心強いな。美穂は気負わず2人に頼っていけばいいよ」

 

 

「はい、わかりました」

 

 

 

 そして資料を開き、細かい部分のすり合わせをしようとしたその時、プロジェクトルームの扉が勢いよく開いた。若い女性が息を切らしてそこに立っていた。

 

 

 

「あれ、凛のマネージャーさんじゃん」

 

 

「皆さん、無事でしたか……」

 

 

「何かあったんですか?」

 

 

 

 プロデューサーが訪ねると、マネージャーは血相を変えて話し出した。

 

 

 

「たた、たい、大変なんです!! 急に、急に化け物がステージに現れて! 渋谷さんを攫って……消えたんです!!」

 

 

「凛が、攫われた!?」

 

 

 

 友人の危機に表情を一変させる奈緒。プロジェクトルームの空気も一気に凍り付く。

 

 

 

「他にもあちこちで同じような事件が起こってて、島村さん、本田さん、北条さん、あと何人かが!」

 

 

「卯月ちゃん!?」

「未央ちゃんが!?」

 

 

「嘘だろ……加蓮まで……」

 

 

「これって、もしかして……」

 

 

「みんな落ち着いて、マネージャーさんも。一旦活動は休止、アイドルみんなにはスタッフを1人……いや2人ずつ付けよう。出来るだけ固まって集団行動を……」

 

 

 

 動揺するアイドルと混乱しっぱなしのマネージャーを落ち着かせる為、冷静に物事を把握し指揮を執るプロデューサー。1人考えを巡らせるアイドルがいる中、突如プロジェクトルームの液晶テレビが輝きだした。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 奈緒が驚きの声を上げて間もなく、光はプロジェクトルーム全体を飲み込んだ。

 

 そして光が晴れた時、ユモレスク・ユニティの3人の姿は無かった。

 

 

 

「何が……起こったんだ……?」

 

 

「……どうしてナナだけ……置いてきぼりなんでしょうか……」

 

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

 

 

 目の前に広がる大自然、後方には広大な海、燦々(さんさん)と降り注ぐ太陽の光。先ほどまでいたプロジェクトルームとは似ても似つかない外の景色。

 

 

 

「2人とも、あれを見てください!」

 

 

 

 茜は荒野を駆ける馬のような生物を指差した。

 

 

 

「あれは……シマウマ?」

 

 

「マジかよ……あれ、シマユニモンじゃないか……!」

 

 

「えぇっ!? それって……」

 

 

「ああ、本物の“デジモン”だ」

 

 

 

 驚愕していた3人の前に1体の小型デジモンが声をかけてきた。

 

 

 

「そう、ここはオレたちデジタルモンスターの世界。ようこそ、デジタルワールドへ!」

 

 

 

 赤い2本の角と小さな翼、青とも緑ともとれる体色が特徴的な小型竜デジモンは、そう言ってユモレスク・ユニティの3人を迎えた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。