このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。 作:ヒロ9673
雲ひとつ無い晴れやかな青空の下。
「ぎゃああああああ!!! ア、アクア、助けてくれえええええええ!!!」
「が、頑張ってカズマ! 大丈夫、貴方ならきっと倒せるわ!」
「いや無理無理!! 俺の第二の人生、土木工事のバイトやってカエルに食われて終わっちまう!!」
俺が異世界にやってきて二週間。
俺たちは食費だったり泊まる場所だったり、クエストで必要な装備だったりのためにひたすら土木工事のバイトを行っていた。
生きるために必要とはいえ、異世界に来て初めてやることがバイトだった時は、何ともいえない気持ちになったのは言うまでもない。
一応、アクアはこの世界にやってくる時にお金は持ってきたらしい。
だが、俺が無理言って来てもらった手前、そういうのに頼るのは申し訳なさが勝り、せめて自分の分は自分で稼ごうと思ったわけだ。
だが、何とか装備を整えたものの、今はこうやってデカいカエルに追いかけられているのだが。
……なんで最初から命懸けなのだろう。
ゲーマーとしての知識がある俺としては、最初はゲームに出てくるような、簡単な薬草採取だの、初心者がやるようなモンスター討伐などのクエストがあるものだと思っていたのだが、現実は非情であった。
モンスターを適当に倒してお金が湧いて出てくる訳じゃないのだ。
街の近くのそういったモンスターはとっくの昔に軒並み駆除された。
そりゃそうだ、街の外には子供だって普通に出るのだから。
いちいち街の門番が、子どもたちへ外に出ないように注意するより、そこらのモンスターを駆除するほうが労力的にもはるかにマシだ。
よくよく考えれば当たり前のことであるが、そんな現実的なことは聞きたくなかった。
素人に毛が生えた程度の冒険者でも簡単に見分けが付く様な薬草だのを、森に入って半日ほど採取しただけでお金が稼げるなら、アルバイトなんて存在しない。
何度も言うが、現実は非情である。
最低賃金? 労組? 労基? ナニソレオイシイノ?
そういった理由もあり、初心者の俺たちでも出来そうなクエストを選んだのだが……。
「でけぇんだよこのカエル!! この世界の両生類は全部こうなのかよ!?」
ジャイアントトード。巨大なカエル型モンスター。
字面だけ見れば弱そうだが、こいつらはたかがカエルと侮れない。
その体軀は牛を超える巨大さで、繁殖の時期になると、産卵のための体力を付けるため、エサの多い人里にまで現れ、農家の飼っている山羊を丸吞みにするらしい。
山羊を丸吞みと言うのだから、俺やアクアもひとたまりもない。
見た目はただの巨大なカエル。
その実態は街の近隣で駆除された、弱っちいモンスターとは比較にならない程に危険視されているモンスター。
だが、金属を嫌うため、装備さえしっかりと調っていれば捕食される事もなく、そこそこの冒険者にとっては余裕の相手となるらしい。
なので、腕のいい冒険者は、こいつらを好んで狩るというのだが……。
「ぐすっ……、うっ、うええええええええっ……、あぐうっ……!」
俺の前には、地面に膝を抱えてうずくまり、カエルの粘液でねちょねちょになって泣くアクアの姿。
その隣には、俺に頭を砕かれたカエルが横たわっていた。
「ううっ……ぐずっ……あ、ありがど……、カズマ、あ、ありがどうね……っ! うわああああああああああんっ…………!」
カエルの口から引っ張り出されたアクアは先ほどから泣きじゃくっている。
冒険者には幸運は必要ないと言われていたが、やっぱり必要なんじゃないだろうか……。
俺が逃げ回っているうちにカエルはアクアを標的にし、結果逃げ回るアクアを追いかけるカエルを追いかける俺、という構図になった。
アクアの幸運が最低レベルなのが関係しているような気がしてならない。
「大丈夫かアクア、しっかりしろ……。今日はもう帰ろう。やっぱり、もっと装備を整えてからにしよう。このままじゃ、三日の内にカエル五匹の駆除なんて無理だよ」
正直言って、ド素人の俺がカエルを仕留められたのも、アクアを捕食したカエルが獲物を飲み込もうと、その動きを止めていた事が大きかった。
一瞬、アクアを囮にすれば楽に討伐出来るかもしれないと思ったが、目の前で泣きじゃくる彼女を見て、流石にそんな酷なことはさせられない。
「で、でも……」
「俺の装備はショートソード一本で、防具すらなくてジャージのままだ。それに、カエルには打撃系の攻撃は効かないらしいし、返り討ちに遭うのがオチだって」
そこまで言われたことでなんとか引き下がってくれるアクア。
正直、アークプリーストなんてどのパーティーも欲しがる職業だし、わざわざ俺に付き合う必要も無いのだが……。
アクア曰く、俺の特典としてやってきたのだから俺に付き添うのは当たり前だとか。
……流石に良心が痛むなぁ…………。
「アレだ。二人じゃ無理だ。仲間を募集しようぜ」
街に戻った俺たちは、真っ先に大衆浴場へ向かって汚れを落とし、冒険者ギルドでカエルもも肉の唐揚げを食いながら作戦会議をしていた。
討伐したカエルの分は換金したのだが、ハッキリ言って、土木作業のバイトの給料と稼ぎがあまり変わらない。
しかし、カエルの唐揚げが意外とイケるのが分かったのでまだ良しとしよう。
「賛成ね。私たち二人じゃあのカエルに苦戦してしまうもの。火力が必要よね」
貧弱なロクな装備もない最弱職と、回復魔法に特化したアークプリースト。
アークプリーストという職業は非常に稀な存在で、普通だったらどのパーティーも欲しがるのだが。
いかんせん俺という付属がなぁ……。
一抹の不安を覚えながらも、求人用の張り紙を受付に貰いに行った。
翌日の冒険者ギルドにて。
「……………………来ないわね……」
アクアが寂しそうに呟いた。
半日近く未来の英雄候補様を待ち続けているのだが、誰一人としてやってくる気配がない。
どうやら、張り紙が他の冒険者に見てもらえていない訳じゃない。
剣士系か魔法使い系、今の俺たちに必要な火力のある職業をターゲットにしており、出来れば上級職が良いとは書いてあるものの、そう無理難題を課したつもりはないのだが。
…………来ない理由は俺が一番分かっているのだが。
「お前と組みたい冒険者は沢山いても、俺がなぁ……」
「でも、少なくとも私は離れるつもりはないわよ? じゃないと、私がこの世界にやってきた意味がいよいよ分からなくなってしまうもの」
いやまぁ、そうなんですが。
アクアは、魔王を倒すための特典として来たわけで。
そんな俺と離れるのは納得いかないのも何となく分かる。
でもぶっちゃけ、俺が魔王なんて大層なモン倒せるとは思わないし、だったらもっと強そうなパーティーの方がアクアにとっては良いだろうし……。
俺がん──、と悩みこんでいると。
「冒険者募集を見てきたのですが、ここで良いのでしょうか?」
どことなく気だるげな、眠そうな赤い瞳。
そして、黒くしっとりとした質感の、肩ぐらいまでかかった女性らしい髪。
俺たちに声をかけてきたのは、黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、典型的な魔法使いの少女。
人間離れした綺麗な顔をした、俺より一個か二個下くらいと思われる女の子である。
そんな少女は突然バサッとマントを翻し、名乗りを上げた。
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」
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俺たちの前に現れた少女。
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」
そんな自己紹介を受けて。
「…………冷やかしにきたのか?」
「ち、ちがわい!」
こんな反応になるのも無理はないと信じたい。
本人は慌てて否定しているが。
「……その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」
アクアの問いにその子はこくりと頷くと、アクアに自分の冒険者カードを手渡した。
「いかにも、我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん! 我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く……! ……という訳で、魔法使いはいりませんか? ……そして図々しいお願いなのですが、もう三日も何も食べていないのです。できれば、何か食べさせては頂けませんか……」
めぐみんは、そう言って悲しげな瞳でじっと見てきた。
それと同時に、めぐみんの腹の辺りからキューと切ない音が鳴る。
「……大丈夫か? 飯を奢るくらい構わないけどさ」
俺が手渡したメニュー表を、めぐみんは無言で受け取る。
「……ええと。カズマに説明すると、彼女達紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ。紅魔族は、名前の由来となっている特徴的な紅い瞳と……。そして、それぞれが変な名前を持っているの」
ほーん、名前といい名乗り方といい、からかってるわけじゃなかったのか。
「変な名前とは失礼な。私から言わせれば、街の人達の方が変な名前をしていると思うのです」
「……ちなみに、両親の名前を聞いてもいいか?」
「母はゆいゆい。父はひょいざぶろー」
「「…………」」
思わず沈黙してしまう俺とアクア。
「…………とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな? 仲間にしてもいいか?」
「おい、私の両親の名前について言いたい事があるなら聞こうじゃないか」
俺に顔を近付けてくるめぐみんを後目に、アクアが俺に冒険者カードを渡す。
……いや近いんだけど。
「いいと思うわよ? 冒険者カードは偽造出来ないし、この子は紛れもないアークウィザードよ。カードにも高い魔力値が記されてるし、期待できると思うわ。それに、爆裂魔法は習得が極めて難しい、爆発系の最上級の魔法だもの」
そうアクアに言われながら、めぐみんの冒険者カードに目を通す。
一応確認したのだが、歳は15歳らしい。
……同年代は昔のこともあって少し苦手だなぁ。
まあそれは置いといて、確かに習得スキルの欄に、爆裂魔法と書かれている。
アクアの言う通りなら、確かに期待できる。
出来れば上級職がいいとは書いていたが、まさかこうも早く巡り会えるとは。
非常に美味い話である。
……美味しすぎる。怪しいくらいに。
そんな実力を持っていて、ぶっちゃけ美少女なのに、三日の空腹で倒せそうになりながら、ど素人パーティーの俺たちに声をかけてくる。
…………こいつ、まさか厄持ちか?
ふと彼女を見やる。
注文した料理をとにかく食べまくるめぐみん。
同年代の女の子は確かに苦手だが、わざわざ来てくれた以上、あっさり切り捨てるほどクズなつもりはないし、落ちぶれてもいない。
仮になんかあったとしても、待ちに待った仲間だ。パーティーに居座ってもらえるように、どうにか有用性を見出してみようか。
────────
「爆裂魔法は最強の魔法。その名にに恥じない真髄をお見せしましょう!」
俺たちは満腹になっためぐみんと共に、宿敵ジャイアントトードの元へやってきた。
平原の離れた場所には、二匹のカエルが俺たちに気づいたようで、こちらに向かってきている。
これだけ離れていたら足止めをする必要はないだろう。
……と、めぐみんの周囲の空気がビリビリと震えだした。
めぐみんが使おうとしているのがとんでもない魔法だということは、魔法に縁の無かった世界にいた俺でも分かった。
「これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。……これこそが、究極の攻撃魔法です!」
めぐみんの持つ杖の先に光が灯る。
膨大な光を凝縮したような、とても眩しいが小さな光。
めぐみんが、赤い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと見開く。
「『エクスプロージョン』ッ!」
目も眩むような強烈な光。そして辺りの空気を震わせる轟音と共に、カエルは見事に爆裂四散した。
凄まじい爆風に吹き飛ばされそうになりながら、俺はなんとか足を踏ん張る。
爆煙が晴れると、カエルのいた場所には二十メートル以上のクレーターができており、その爆発の凄まじさを物語っていた。
「……すっげー。これが魔法か……」
初めて魔法らしい魔法を見て感動していたその時。
衝撃と音で目が覚めたのか、二匹のカエルが地中から這い出てきた。
水もない場所で、どうやって生きてるのだろうかと思ったが、まさか地中で生きていたとは。
「わああああ!! カ、カズマさ──ん!!」
そのカエルはアクアとめぐみんの近くに這い出ようとているが、起きたばかりなのかその動作は遅い。
この隙にめぐみんと共に距離をとり、また先ほどの爆裂魔法で吹き飛ばしてもらえばいいだろう。
「めぐみん! 一旦離れて、距離をとってから……」
そこまで言いかけて、めぐみんの方を向くと同時。
俺はそのまま動きを止める。
そこにはめぐみんが倒れていた。
「ふ……。爆裂魔法はその絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。……要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。……やばいです。食われます。すいません、ちょ、助け……ひあっ……!?」
「カズマ──!! なんか私も狙われてるんだけど!! た、助けわぷっ!?」
動けないめぐみんはともかく、アクアは身体能力を強化する魔法を自分にかければよかったのでは……。
そういや、受付のお姉さんが、知能が少し低いとか言っていたな。……アホの子?
まぁどっちにしろ、切羽詰まった場面だから焦るのは仕方ないが。
……って、そんな場合じゃねぇ!
俺は、アクアとめぐみんが身を呈して動きを止めたカエル二匹にトドメを刺し。
なんとか、三日以内にジャイアントトード五匹討伐のクエストを完了させた。
めぐみんの同じセリフが続いているのは、元々別話として投稿しようと思ったからなんですが、それだと文字数が短すぎたので合わせました。
色々な二次創作を参考にしているので結構似ている部分もあるかもしれません。ごめんなさい。