このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。   作:ヒロ9673

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クルセイダーもまともなよう……?

 帰り道。

 粘液まみれのアクアが泣きながらついてくる。

 さすがに酷だよなぁ……。

 なんというか、庇護欲が掻き立てられるような。

 

「カエルの体内って、いい感じに温いんですね。知りたくもない知識が増えました……」

 

 本当に知りたくもない知識を教えてくれながら、めぐみんは俺の背中におぶさっていた。

 

 それにしても、一発で行動できなくなるのは危険だな。

 今回はなんとか助けられたものの、結局カエル相手に命懸けなのは変わらないわけで……。

 

「今後、爆裂魔法は緊急の時以外は禁止な。これからは、他の魔法で頑張ってくれよ」

 

 そんな俺の言葉に、背中におぶさっためぐみんが、肩を掴む手に力を込めた。

 

「………………使えません」

「………………使えません?」

 

 めぐみんの言葉に、思わず俺はオウム返しで聞き返してしまう。

 めぐみんが、俺に摑まる手に更に力を込め、年相応……ではなく少しだけ薄い胸が俺の背中に押し付けられた。

 

「…………私は、爆裂魔法しか使えないです。他には、一切の魔法が使えません」

 

「…………マジか」

 

「…………マジです」

 

 衝撃の事実が発覚した瞬間である。

 俺とめぐみんが静まり返る中、今まで鼻をぐすぐす鳴らしていたアクアが話に参加する。

 

「爆裂魔法以外使えないってどういうこと? 爆裂魔法を習得できるほどのスキルポイントがあるなら、他の魔法を習得できないわけじゃないでしょう?」

 

 スキルポイントか。そういやギルドのお姉さんがそんなこと言ってたっけ。

 アクアは最初からたくさんのポイントを持っていて、アークプリーストの全魔法と宴会芸の全スキルを習得したとかなんとか。

 ……宴会芸スキルは何に使うものなのか聞いてもなぜか教えてくれなかったが。

 

「爆裂魔法なんて上位の魔法使えるんだから、下位の他の魔法が使えないわけがないってか。……一応聞くが、なんでだ?」

 

 俺の背中で、めぐみんがぽつりと呟いた。

 

「ちゃんと理由があるのですよ。幼い頃、爆裂魔法を教えてくれた師匠のような人に、私の成長した姿を見てもらいたいのです。その為にアークウィザードになったと言っても過言ではありません! たとえ今の私の魔力では一日一発が限界でも、上級魔法を覚えるつもりはありません! これだけは譲るつもりはないのです!」

 

 そんなめぐみんの言葉に俺は。

 

 …………やべぇ、めっちゃいい話じゃん。

 え、なに。もっとふざけた理由だと思ったのに感動するじゃん。

 

「素晴らしい! 素晴らしいわ! 非効率ながらも師を追い求めるその姿! 私は感動したわ!」

 

 ふむ。

 同調しているところを見るに、アクアはめぐみんを仲間に引き込もうとしているな。

 確かに一発使えば行動不能になる魔法しか使えないのだが、性格面は今のところ厄介ではない。

 これで性格が最悪だったり、ただただ爆裂魔法をぶっぱなしたいテロリストじみた奴だったら流石に考えたが。

 そもそも俺たちが仲間を募集したのだし、それでもどうにかしようとは思ってはいたから、その分楽であるのだろう。

 それに、爆裂魔法だってえげつない威力なのだから、ゆくゆく出会うかもしれない強敵相手だったら頼りになるだろう。

 ……よし、決めた。

 

「そっか。大変かもしれないけど頑張れよ。お、そろそろ街が見えてきたな。それじゃ、ギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。今日のところはこれで解散な。それじゃ……」

 

 また明日からよろしくな。

 そう言おうとしたのだが、俺を掴んでいるめぐみんの手に力が込められた。

 

「ふ……。我が望みは爆裂魔法を放つこと。報酬などオマケに過ぎず、食事とお風呂とその他雑費を出して貰えるなら、無報酬でもいいと考えている。そう、アークウィザードである我が力が今なら食費とちょっとだけ! これはもう、長期契約を交わすしかないのではないだろうか!」

 

「ちょっと待てお前は勘違いしている。頼むから一旦手を緩めてくれ。俺の肩がギシギシ言ってるから。なんかヤバい音出てるから!」

 

「見捨てないでください! もうどこのパーティーも拾ってくれないのです! 爆裂魔法が使い勝手が悪いのは私だって充分に理解しています! 魔法が使えない場面では、荷物持ちでも何でもしますから! こんないたいけな女の子ですよ? なんなら何とは言いませんが差し上げますから! お願いです、捨てないでください!」

 

 こ、こいつ! 

 

「その何かは聞きたくないけど差し上げるとか、街中でそういうことを軽々しく大声で言うな! 分かった! 分かったから! そもそも見捨てるつもりなんて元々ないからアクアに治療を頼むような状況に陥らせないでくれ!」

 

 そう言うと、めぐみんの掴む手が緩められた。

 同年代の女の子に抱きつかれているというなんとも美味しい話のはずなのだが、そのめぐみん自体のせいで素直に喜べない。

 こいつ、魔法使い職のくせになんちゅー握力なんだ……。

 

「…………え? 本当ですか?」

 

「本当だって。こんな弱小パーティーにわざわざ来てくれたんだし、めぐみんだって食事に困るくらい困窮してるんだろ? ここで見捨てるほど俺はクズなつもりはないよ。それに、爆裂魔法だって使い所を考えればどうとだってなると思うし。なんなら、お前の方こそ嫌になったら抜けてくれたって構わないぞ」

 

 とは言ったものの、また二人になってカエル討伐に苦労するのも困るので、魔法使いの性能に関わらず抜けて欲しくはないというのが本音だが。

 

「……あ、ありがとう、ございます…………」

 

 ………………。

 そこで照れられてもこっちが困るんですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐。クエストの完了を確認致しました。ご苦労さまでした」

 

 とりあえず汚れていたアクアとめぐみんには大衆浴場に入ってもらい、俺は受付に報告を終える。

 俺のカードとめぐみんから預かったカードを見せると、受付はカウンターにある妙な箱を操作するだけでチェックを終えていた。

 地球では科学が発展していたけど、この世界の技術も捨てたもんじゃないな。

 

「はい、ではクエスト報酬として、十一万エリスとなります。ご確認ください」

 

 十一万か。

 アクアの話では、クエストは四人から六人でパーティーを組んで行うものらしい。

 今回は三人での討伐。加えて初日は参加しなかっためぐみんの分はちょっと安くするとして、俺とアクアは四万ずつ、めぐみんは三万で合計して十一万だ。

 

 …………割に合わねー。

 

 命懸けでこなしたクエストの報酬が、土木工事のバイトとほとんど変わらない。

 

 うん、やっぱり平和な日本に比べたら、人生ハードモードです。

 冒険者生活二日目にして、もう帰りたくなってきた。

 ……いやいや、わざわざアクアに来てもらって、めぐみんという仲間だって巡り会えたわけだ。

 日本ではニートだった俺だけど、この世界でも自堕落な生活を送る訳には……。うーん……。

 …………せめて、もっと真っ当な冒険者生活を送れるような仲間がいないとなぁ。

 こう、前衛に立てて弱っちい俺とかの盾になってくれるような。いないかぁ……。

 

「すまない、ちょっといいだろうか……?」

 

 近くの椅子に座り、俺が軽いホームシックに陥っていると、背後から声がかけられた。

 どう生きていくか悩んでいた俺は虚ろな目で振り向いた。

 

「なんでしょ…………うか…………」

 

 そして、俺は声の主を見て絶句した。

 女騎士。

 それも、とびきり美人の。

 頑丈そうな金属鎧に身を包んだ、金髪碧眼の美女だった。

 俺よりも一つか二つ年上だろうか。

 なんだろう、すっげぇ色気がある。

 

「あ、えーっと、何でしょう?」

 

 同い年みたいな扱いのアクアや同年代とはいえ年下のめぐみんと違い、年上の美人相手なもんだから緊張して上擦った声になってしまう。

 

「この募集は、あなたのパーティーの募集だろう? もう人の募集はしてないのだろうか」

 

 その女騎士が見せてきたのは一枚の紙。

 そういやまだ剥がしてなかったな。

 

「あー、一応まだ募集はしてますけど、あまりオススメしませんよ……」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「いやー、その、色々と問題があるパーティーですし。俺なんか最弱職だし、あなたが入るようなパーティーじゃないといいますか」

 

 そうやんわりと断ろうとした俺の手を、突然女騎士がガっと掴んだ。

 

 ……えっ。

 

「むしろその方が私にとっては都合がいい! 私はクルセイダーという上級職だ。守ることに関しては他の職の追随を許さない。失礼な物言いかもしれないが、弱者を守ってこその騎士。私があなた達の盾となろう! だからどうか、私をパーティーに入れてほしい!」

 

「いや弱者なのは事実だから構わないけど……」

 

 なんだろう。なんとなく嫌な予感がする。

 言ってることは真っ当な騎士なのだ。

 確かに先ほどの俺の戯言に見事に当てはまるのだ。

 だが、俺の第六感が告げている。

 爆裂魔法以外の魔法が使えないめぐみんのように、この女騎士には致命的な何かが欠けていると。

 

「その、こういうこと聞くのは物凄い失礼な気もするんですけど、何か致命的な欠点とかあったりします? 例えば不器用すぎて攻撃が当たらないとか」

 

 もし仮にそうだとしたら一目散に追い出すところだが。

 

「……ふむ。確かに私は他の人に比べて不器用だが、それはスキルで補っている。体力も防御力も自信はあるぞ。欠点がどうか分からないが、強いて言うなら、受け側ということだろうか……」

 

 なんだ、俺の心配は杞憂だったようだ。結構優秀そうなクルセイダーのよう今なんつった? 

 

「…………受け?」

 

「ああ、そうだ」

 

「…………その、それってつまり、Mってこと?」

 

「そういうことになるな」

 

 ……………………。

 

 性格も性能も問題なさそうだ。おまけに凄い美人さんだし。

 でも、最後の言葉が無けりゃなぁ……。

 

「お、おい、なんて顔をしてるんだ! 確かに私は受け側だが、闘いの時はちゃんとやるべき事はやるぞ! だから、そのしかめっ面をやめてくれ!」

 

「あー……、そこら辺はともかく、俺だけじゃ決めづらいし、他の仲間にも一応意見を聞きたい。だからまた明日来てくれません?」

 

 残念ながら、今の俺にできることと言えば、問題を先延ばしにするくらいだ。




まともじゃないかもしれない。
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