このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。   作:ヒロ9673

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やはりカズマはカズマです。

「この人が、昨日カズマが言ってた女性の騎士さん?」

 

「ああ。一応お前らの意見も聞こうと思ってな」

 

 翌日。

 約束通りやってきた女騎士と、仲間の初の顔合わせというわけだ。

 

「では改めて。名はダクネスという。職業はクルセイダーだ。防御力については自信があるから、皆の盾として頑張りたいと思う。どうかよろしく頼む」

 

「クルセイダーですか。確かに今の我々は色々と偏ってますし、断る理由なんてないのではないのですか?」

 

「確かにそうね。私は回復魔法が主だし、めぐみんは一発限り。カズマは冒険者だからスキル補正も無いし……」

 

 女性陣は盛り上がっているな。中々いい感じに話が進んでいる。

 いいんだよ? タンク役が入ってくれるなら俺としても万々歳だ。

 でもそれ以上に聞いちゃいけなかった性癖があるんだよなぁ……。

 

 いやいや、Mって言ったってどの程度かにもよるしな。

 それに、仲間は何人いようと構わないしな。

 

「まあいいや。ダクネス、とりあえずこれからよろしく頼むよ。お前の性癖を俺たちに押しつけなけりゃそれでいいから」

 

「お、おい! まるで私が変態みたいな発言はやめてくれ!」

 

 変態じゃないの。Mってことは。

 まあ、何か問題があっても有用性を見出せればそれでいいしな。

 

「ところでさ、スキルってどうやって取得すんの?」

 

 昨日俺のカードを確認すると、レベルが上がり、スキルポイントが貯まっていた。

 カエルを倒したおかげで、少しだけではあるがレベルが上がったようだ。

 今あるポイントでどのくらいスキルが習得できるか分からないが、覚えられるものは早く覚えておいたほうがいいと思う。

 

「カズマは冒険者ですよね? 冒険者だったら、誰かにスキルを見せてもらって、使い方を教えてもらえれば覚えられるようになってますよ。カードに『習得可能』と出たら、ポイントを消費してそれを選択すれば完了です」

 

 ほーん。結構簡単なんだな。

 そういや、冒険者は全てのスキルが習得可能だって言っていたな。

 

「……もしめぐみんに教えてもらえば、俺でも爆裂魔法が使えるようになるってことか?」

 

「そうですね。冒険者はアークウィザードを除いて唯一爆裂魔法を使えるクラスです。ですが、カズマは圧倒的に魔力量が足りませんし、無理に使おうとすれば生命の危険にも関わります。とりあえず今は止めておいた方がいいですよ」

 

「なるほどな。やっぱり冒険者って欠点だらけだな」

 

 出来ることなら早くクラスチェンジしたい。

 ……っと、話が逸れたな。

 一応アクアとダクネスの冒険者カードを見せてもらう。

 気になるスキルは随時教えてもらおうって訳だ。

 ……『ヒール』、『リザレクション』、『ターンアンデッド』。アクアのスキルは大体回復魔法と浄化魔法だな。ダクネスは主に防御力に関するスキルが大半を占めている。

 目移りするようなものが色々あるが、上級職のスキルなだけに消費ポイントもバカにならない。

 このままじゃほとんどスキル習得はできないし、とりあえずしばらくはレベル上げが第一目標だな。

 ……と、そこに。

 

「君がダクネスとパーティーを組んだ子? ねぇねぇ、スキルを覚えたいんでしょ? お姉さんの盗賊スキルなんてどうかな?」

 

 それは、横からの突然の声。

 俺に声をかけてきたのは、銀髪の女の子。右頬に小さな刀傷があり、スレた感じだが明るい雰囲気を醸し出している。

 お姉さんと自称してはいるものの、歳はめぐみんくらいだろうか。

 というか、ダクネスのことを知ってるってことは。

 

「なんだクリス、来ていたのか。それならそうと言ってくれれば良かったのに」

 

「ダクネスを引き込んだ子の顔を見てみたくてね。それで、どう? あたしの盗賊スキルは消費ポイントも少ないしオススメだよ?」

 

 やはり知り合いだったようだ。それも話しぶりからするにかなり仲良さげだな。

 

 ……あれ? クリスと呼ばれたその人は、なぜかアクアを見た瞬間驚いたな。

 ……なぜだか分からないけど、まあいいか。

 それにしても、盗賊スキルか。盗賊ってそのまんまの意味で捉えてしまいそうだが、実際はどうなのだろうか。

 

「えっと、盗賊スキルってどんなのが?」

 

「盗賊スキルは使えるよー。罠解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。どう? 今ならクリムゾンビア一杯でいいよ?」

 

 安いな! 

 と思ったが、良く考えればスキルを教えたところでこの子にはなんのデメリットもないわけで。

 聞いただけでも魅力的なスキルがたくさんだ。

 

「よし、すんませーん、こっちの人にクリムゾンビア一杯!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは自己紹介といこうか。あたしはクリス。見ての通り盗賊だよ」

 

「うす! 俺はカズマっていいます。よろしくお願いしやっす!」

 

 冒険者ギルドの裏手の広場。

 俺とクリス、付き添いのダクネスの三人は、今は誰もいない広場に立っていた。

 ちなみに、めぐみんとアクアはわざわざ来る必要もないので、ギルドに待機してもらっている。

 

「それじゃ、まずは敵感知と潜伏をいってみようか…………」

 

 それはもう、コントといえるようなものだった……。

 樽の中に入って上半身だけ出したクリスが、ダクネスに向かって小石を投げ、そのまま隠れる。

 石をぶつけられたダクネスが、無言のまま樽へと向かい、そのまま横に倒し、ゴロゴロと転がす。

 

 やめてぇぇぇぇぇぇ! なんて悲鳴を上げていたクリスに、ちょっとだけ頭の心配をしたのは内緒である。

 

 ……これで本当にスキルを覚えられるのだろうか。

 半信半疑の俺は自分のカードを見てみると、確かに習得可能欄に潜伏と敵感知が記されていた。

 

 何とも言えない気持ちになっていると、樽ごと転がされ目を回していたクリスが、パンパンと手で服の埃をはらう。

 

「さ、さて。それじゃあたしのイチオシのスキル、窃盗をやってみようか。これは、対象の持ち物を何でも一つ奪うスキル。スキルの成功確率はステータスの幸運に依存するよ。モンスターの武器を奪ったり、もしくは大事に取っといたお宝だけかっさらって後は逃げたり。色々と使い勝手のいいスキルだよ」

 

 窃盗スキルは、確かになかなか使えそうだ。

 とくに、成功率が幸運依存ということは、俺の唯一といっていい長所が活かせるってわけだ。

 

「じゃあ、キミに使ってみるよ? 『スティール』!」

 

 クリスが手を前に突き出し叫ぶと同時に、その手には小さい物が握られていた。

 それは……。

 

「あっ! 俺の財布!」

 

 俺のなけなしの金が入った薄い財布。

 

「おっ、当たりだね! まあ、こういう感じで使うわけさ。それじゃ、財布をかえ……」

 

 クリスは、俺に財布を返そうとして、にんまりと笑みを浮かべた。

 

「ねぇ、あたしと勝負してみない? 早速窃盗スキルを覚えてみなよ。それで、あたしから何か一つ、スティールでなんでも奪っていいよ。奪ったものは、それがたとえ何だとしてもキミの物。あたしの財布でも武器でも、キミの財布の中身より価値のあるものばっかだよ。どう? 勝負してみない?」

 

 ほう、いきなり面白いことを言いだすな。

 俺は未成年だし、ギャンブルの類はしたことがなかったが、なんというか、こういった賭け事はいかにも荒くれた冒険者同士のやり取りって感じで憧れる! 

 俺は早速教わったスキルである潜伏、敵感知、窃盗を習得する。

 体感何か変わった訳では無いが、きちんと習得欄に書かれているあたり、これでいいのだろう。

 

「よっしゃ、その勝負乗った! 何盗られても泣くんじゃねーぞ?」

 

 そう言って右手を突き出した俺に、クリスは不敵に笑ってみせた。

 

「いいね! さて、何が盗れるかな? 当たりはこのダガー! こいつは四十万エリスは下らないよ! そして、残念賞はさっきダクネスにぶつける為に多目に拾っておいた石だよ!」

 

「ああっ! きったねぇ!」

 

 くそ、自信満々だったのはこういう事か! 

 確かにゴミを多く持っておけば、その分大事なものが盗られる確率も減り、スティール対策になるだろう。

 

「これは授業料だよ。どんなスキルも万能じゃない。こういう感じで、対抗策は必ずあるものなんだ。一つ勉強になったね! さあ、いってみよう!」

 

 畜生、確かにいい勉強になったぜ! 

 ここは弱肉強食の世界。日本とは違う。今の俺みたいに騙されるあまっちょろい方が悪いのだ。

 それに、分が悪くなっただけで、失敗するわけじゃない。

 

「よし、やってやる! 喰らえ、『スティール』っ!」

 

 そう俺が叫ぶと同時に、俺の右手には何かがしっかり握られていた。

 もちろん感触的に石ではない。

 俺の幸運が高いってのは本当らしい。

 一発で成功しやがった。

 手にしたものを広げ、マジマジと見ると……。

 

「……なんだこれ?」

 

 それは、一枚の黒い布切れ。

 俺はそれを両手で広げると……。

 

「ヒャッハー! 当たりも当たり! 大当たりだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「いやあああああああああ!!!! ぱ、ぱんつ返してええええええええええ!!!!!!!!」

 

 クリスは下半身を抑えながら、涙目で絶叫した。

 そんな俺を、ダクネスは心底恐ろしい目で見ているのだった……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、カズマさんお帰りなさい。……どうしたの、その子?」

 

 俺の隣で涙目で落ち込んでいるクリスにアクアが興味を抱く。

 俺が説明するよりも早く、ダクネスが口を開く。

 

「クリスは、カズマにぱんつ剥がされた上に有り金毟られて落ち込んでるだけだ」

 

「おいなんて事口走ってんだ。間違ってはないけど語弊があるぞ。双方合意の上での行為だ」

 

 俺は、クリスが幾らでも払うからぱんつ返してと泣いて頼んできたので、自分のぱんつの値段は自分で決めろと言っただけだ。

 そして、提示する値段に満足しなかったら、もれなくクリスのぱんつは我が家の家宝として奉られる事になる、と。

 泣きながら自分のサイフと俺のサイフを差し出したから交換に応じたまでで、ダクネスの言い方だとなんだか語弊がある。

 ダクネスの言葉に軽く引いてるアクアとめぐみんの視線が気になるが、やがてクリスが落ち込んでいたその顔を上げた。

 

「うん、いつまでもメソメソしても仕方ないよね! よし、臨時で稼ぎのいいダンジョン探索に参加してくるよ! 下着を人質にされて有り金全部失っちゃったしね!」

 

「ちょっと待って他所の女性冒険者からも冷たい目で見られてるから!頼むから誤解を解いて!」

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