このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。   作:ヒロ9673

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サブタイトル全然思いつきません。
結構短め。


苦悩

「そういえば、カズマは無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

 周囲の女性陣からの冷たい目に怯える俺に、めぐみんが話しかけてくる。

 そんなめぐみんに、俺は不敵に笑った。

 

「ふふ、まあ見てろよ? 行くぜ、『スティール』!」

 

 俺は叫び、めぐみんに右手を突き出すと、その手にはしっかりと黒いものが握られていた。

 

 そう、ぱんつである。

 

「……なんです? レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか? ……あの、スースーするのでぱんつ返してください…………」

 

「あ、あれ!? おかしいなこんなはずじゃ……。ランダムで何か奪い取るスキルのはずなのにっ!」

 

 慌ててめぐみんにぱんつを返し、いよいよ周囲の視線に耐えられなくなってきた中、それは突然起こった。

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 それは、街中に響く大音量のアナウンス。

 地球のマイクのように、魔法的な何かで音を拡大しているのだろう。

 そんなことより。

 

「おい、緊急クエストってなんぞ? モンスターが街に襲撃に来たのか?」

 

 ちょっと不安気な俺とは対称的に、ダクネスとめぐみんはどことなく嬉しそうな表情だ。

 

「おそらくキャベツの収穫だろう。そろそろ収穫の時期だしな」

 

 …………。

 

「は? キャベツ? あの緑の野菜のことか? そういう名前のモンスターとかじゃなくて?」

 

「ええ、その通りです。とても美味しいんですよ」

 

「え、なんでキャベツの収穫で冒険者が出動するんだ? 農家の手伝いでもするのか?」

 

 最近まで土木工事をしていた俺が言うのもなんだが、俺は農業をしに来たわけじゃない。

 冒険をしに来たのだ。

 

「あー……。ごめんね? カズマは知らなかったわよね。その、この世界のキャベツは…………」

 

 アクアは何故か謝りながら俺に何か言いかけるが、それを遮るように、ギルドの職員が冒険者たちに大声で。

 

「皆さん、突然のお呼び出しすいません! もうすでに気付いている方もいるとは思いますが、キャベツです! 今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました! キャベツ一玉の収穫につき一万エリスです! すでに街中の住民は家に避難して頂いております。では皆さん、できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください! くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしないようお気をつけて!」

 

 ………………今この職員はなんつった? 

 

 その時、冒険者ギルドの外で歓声が巻き起こった。

 何事かと、人混みに混ざり様子を見に行く俺の目に、街中を悠々と飛び回る緑色の物体の姿が飛び込んでくる。

 

 呆然と信じられない光景に立ち尽くしていると、いつの間にか隣に来ていたアクアが呟く。

 

「カズマ、この世界のキャベツは飛ぶわ。収穫の時期が近づくと、食べられてたまるかと言わんばかりに逃げ回るの。最終的には人知れぬ秘境の奥で誰にも食べられず、ひっそりと息を引き取るとか。それならば、私たちが彼らを一玉でも多く食べてあげようってわけ」

 

「もう馬小屋に戻って寝てもいいかな」

 

 バナナが川で採れたり、数ある魚の中で秋刀魚だけ畑で育ったり。

 もう何も言えねぇ……。

 俺が思ってた異世界じゃない。

 魔王うんぬん言ってたけど、今は凄く、日本に帰りたい。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 俺はギルドの中で出されたキャベツ炒めをかじりながら、呟いた。

 

「何故たかがキャベツの野菜炒めがこんなにクソ美味いんだ。納得いかねえ、ホントに納得いかねえ」

 

 無事キャベツ狩りが終わった街中では、あちこちで収穫されたキャベツを使った料理が振舞われていた。

 物凄くやりきれなかったが、一応金にはなるのでキャベツ狩りに参加した俺だったが、何だか軽く後悔している。

 俺はキャベツと戦う為に異世界に来た訳じゃないのに……。

 

 いやまあ、相手はアレだったが、パーティーとしては中々に良かったのではないだろうか。

 ダクネスが主となってキャベツを斬り倒し、めぐみんの爆裂魔法によってたくさん吹き飛ばし、アクアは沢山の冒険者グループに強力な回復魔法を飛ばす。

 俺自身がやれることは少ないが、袋叩きにされかけたダクネスに襲いかかるキャベツを収穫し、爆裂魔法を使って動けなくなっためぐみんを素早く背負って安全なところまで戻る。あとは他の冒険者を注意深く見てアクアに回復魔法の指示を飛ばす。

 他人だよりではあったものの、傍から見ても結構な大活躍だったのではないだろうか。

 

「ねぇねぇ、やっぱりカズマってリーダーの素質があるんじゃない? 私、いつも一人じゃ何をどうすればいいか迷っちゃうけど、カズマの指示通りやったらあっさり上手くいくんですもの!」

 

「そうですね。私の爆裂魔法の使い時も指示してくれましたし、動けなくなった私を担いでいってくれました。……ふふ、今までのパーティーでは有り得ない事でしたよ」

 

「うむ。恥ずかしながら、本来盾であるべき私に襲いかかったキャベツを見事に収穫してくれた。カズマ、改めて礼を言うよ」

 

 いや、ダクネスは性癖だろ。役割より衝動みたいなもんでわざと袋叩きにされたんだろ、とものすごくツッコミたい。

 だって顔赤くして興奮してたじゃん……。

 

 というか、なんでこんなに持ち上げられるんだよ。

 別に異世界転生モノによくある俺TUEEEE! みたいなタイプじゃないし、俺ができる精一杯の事をやっただけなんだが。……キャベツ相手に。

 

「それにしても、結構豪華な顔ぶれになってきたんじゃない? アークウィザードにアークプリースト、クルセイダー。四人中三人も上級職なんて、そうそうない事よ?」

 

「いや改めて言われると冒険者である俺の存在意義が危ぶまれるから……。もうお前らだけで魔王退治にでもいっちゃえよ。ぶっちゃけ俺なんか、替えなんていくらでもきくしさ」

 

 そう言われた三人娘は顔を見合わせ。

 何故か同時に吹き出した。

 

「プークスクス! バカねぇカズマ。今回のキャベツ収穫、あなたがいなかった場合の私たちを考えてごらんなさいな」

 

「まずはダクネスが袋叩きにされっぱなしになりますね。そして私は爆裂魔法を撃たないで終わるか、撃って動けなくなったところをキャベツに袋叩きに。アクアも指示無しでは自分で動こうとしませんから、結局袋叩きに……」

 

「……言われてみれば、そうだな。我々だけだったら確かにそうなっていたかもしれない」

 

 えー……。

 ホントにそうなるものなのか……と、今になって思い出す。

 めぐみんは、三日間何も食べられないほど食事に困っていた。それはつまり、爆裂魔法の使い勝手の悪さからか、パーティーでの貰い手がいないというわけで。

 ダクネスだって見てくれはいいし、今日の彼女を見る限り、普通に戦力となるはずだ。

 だったら、なぜ今まで誰ともパーティーを組まなかったのか。

 

 ……性癖か。ドMだからか。

 戦闘の時に発揮されてメンバーから引かれるのか。

 多分、やんわりと断られたんだろうな。

 

 

 

 

 そっか。

 こいつら、意外とポンコツだ。

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