このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。   作:ヒロ9673

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はい、めっちゃ端折ってます。


素晴らしいリッチーに賞賛を!

「とりあえず、装備を整えようと思ってな」

 

「いきなり呼び出されたと思ったら、一体どうしたんです?」

 

 昨日のキャベツ狩りで、レベルが7まで上がった。

 キャベツ狩りでレベルがいくつか上がった事になる。

 確か、この世界では倒した相手の魂の記憶の一部だかを吸収して強くなるらしいが、俺はキャベツを捕まえただけで倒していないのに何故レベルが上がるとか、なんでキャベツごときがカエル並みに経験値高いんだとか、キャベツの魂の記憶の一部ってなんだとか、そもそもキャベツに魂があるのかなど、ツッコミたい所が山ほどあったが、考えていると頭が痛くなるので今は考えないでおこう。

 ともかく、昨日知り合った魔法使い職の人と、剣士職の人達から、片手剣スキルと初級魔法を教えてもらった。

 魔法使いの人から、初級魔法は殺傷力はほぼないと教えられたが、俺は少し別の使い方をしようと思ったわけだ。

 例えば、水を生成する『クリエイト・ウォーター』は単純に飲み水にしたり、『クリエイト・アース』で生成した砂を『ウインドブレス』で飛ばして目潰しにしたり。

 魔法使い職はポイントを貯めていきなり中級魔法を覚える人が多いらしい。

 だから、こういった考え方をする人はほとんどいないと思う。

 

 何にしても、一応冒険者らしくなってきたわけだ。

 となると、あとは装備をどうにかしたい。

 なんせ今の格好は、日本から来た時に着ていたジャージに、ショートソードとダガーのみ。

 せめて、それらしい服が欲しい。

 そう思い、俺はめぐみんを連れて一般大衆向けの武具ショップへやってきた。

 

「なぜ私がその買い物に付き合わされるのでしょうか……」

 

「いや、だってお前、一日一回爆裂魔法をぶっぱなさないと気が済まないって言ってたじゃん。だからついでに付き合ってやろうと思ってな」

 

 そう。こいつは爆裂欲なる謎の欲求を持ち、必ず一日一回は爆裂魔法を撃たないと気が済まない、と出会った当初言っていた。

 街中で撃つのは当たり前だが駄目なので、わざわざ遠出しなければならない。

 もちろん一発撃つと動けなくなるため、誰かが付き合わなければならない。アクアやダクネスに頼むのもしのびないし、俺が付き添ってやろうってわけだ。

 

「ほう、驚きましたね。私をデートに誘う人なんて故郷にもいませんでしたよ?」

 

「で、ででででデートちゃうし!」

 

 めぐみんが挑発的な笑みを浮かべて言ってきた。

 こ、こいつマジで何言ってんだ。

 生まれてこの方、女の子と話すことはあれどもろくに手を繋いだことすらない俺。

 そんな俺が出会って1ヶ月も経ってない女の子をデートに誘うなんて土台無理に決まってる! 

 そもそも、数年前のある出来事で同年代は苦手である。

 かといって、彼女にしたいとしたら年下でも年上でもなく、同年代がいいというめんどくさい奴なのだが……。

 

「まあいいです。カズマは意外とヘタレですからね。とりあえずちゃっちゃと済ませちゃいましょうよ」

 

「誰がヘタレだコラ」

 

 俺はすました顔で店に入っていくめぐみんにツッコんだ。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「ん、見違えたじゃないか」

 

「そうね。もう一端の冒険者じゃない!」

 

 もはや溜まり場になっている冒険者ギルドにて、ダクネスとアクアが俺の格好を見て感想を言ってくる。

 ラフな格好ではあるものの、冒険者らしい服装にはなったのではないだろうか。

 めぐみんの一日一爆裂も終えたし、とりあえず今日の俺の目的は達成された。

 クリスとのスティール勝負で幾らか儲かったし、今日はとりあえず休日に……。

 

「ねぇねぇカズマ──……」

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 街から外れた丘の上。

 そこには、お金の無い人や身寄りの無い人がまとめて埋葬される共同墓地がある。

 この世界の埋葬方法は土葬。

 

 今回受けたクエストは、墓場に湧くアンデッドモンスターの退治である。

 今の時刻は夕方にさしかかろうとしている。

 俺たちは、墓場の近くで夜を待つべくキャンプをしていた。

 

 何より、珍しくアクアがやけにクエストを受けることを望んだため、俺も引き受けたわけだ。

 

 プリーストは攻撃魔法を持たない。つまり、レベル上げが難しい。

 そこで、プリーストが好んで狩るのがアンデッド。

 アンデッドは不死という神の理に反するモンスター。奴らには、神の力が全て逆に働く。回復魔法を受けると身体が崩れるのだ。

 

 そして、今回引き受けたのはゾンビメーカーと呼ばれる弱めのモンスターの討伐らしい。

 ゾンビを操る悪霊の一種で、自らは質のいい死体に乗り移り、手下代わりにゾンビを操るとか。

 駆け出しの冒険者のパーティーでも倒せるモンスターだというので、最終的に引き受けた。

 お金はあって困らないし、先日のキャベツ狩りで損傷した鎧を修理に出しているダクネスでもおそらく危険はないだろう。

 

 腹が一杯になった俺は、マグカップにコーヒーの粉末を入れ、クリエイトウォーターで水を注ぐ。そしてマグカップの下をティンダーという火の魔法で炙る。

 ティンダーはライター代わりになるので重宝している。

 

「すいません、私にもお水ください。……というかカズマ、よくそんなに初級魔法を使いこなせてますね。カズマを見てるとなんか便利そうです」

 

「初級魔法って多分こういう使い方が正しいんじゃないかな?」

 

 そもそも、俺の今の魔力量的に中級魔法以上が使えない。

 悲しい性である。

 

 ……あっ。

 いきなりだが、そういえば隣にいるめぐみんも、向こうでアクアと話しているダクネスも、素性がほとんど分からないんだよな。

 別にそれで困ることがあるわけではないが、募集を止めたのでおそらく俺のパーティーはこの四人で固まるだろうし、今のうちに知れることは知っておきたい気もする。

 

「なあ、俺が言うのもなんだけど、めぐみんはその歳で冒険者やってんだよな。親御さんとか、その辺大丈夫なのか?」

 

 そんな俺の問いに、めぐみんははぁ? みたいな顔をして俺の方を見る。

 

「急にどうしたんです? 冒険者になりたい人は、大体このくらいの歳でなりますよ。カズマだってそうでしょう? それに、我々紅魔族は魔法に秀でた一族です。モンスターに負けることなんて余程のことがない限りありえません。両親が心配する必要なんてありませんとも!」

 

「その魔法に秀でた一族の娘が、爆裂魔法しか使えず、カエルに食われちまうのに大丈夫かなって話なんだが」

 

 そんな俺の言葉に、めぐみんは思うところがあるのか目を逸らす。

 

「……まあ、その。私の実家は貧乏ですから、これ以上穀潰しになる訳にはいかないのですよ。妹もいますしね。それに、冒険者になって街に出るのは必然といっても過言ではありません。たとえ爆裂魔法しか使えなくとも、私はこのまま帰るつもりはありませんよ」

 

 そう言ってめぐみんは笑う。

 ……いや重たいな。実家貧乏なのか。

 今度からめぐみんの報酬の取り分は多めにしよう。

 じゃあダクネスはどうなのだろう。めぐみんみたいな重い話が無ければいいが……。

 

「なあダクネス、お前は……」

 

「そ、そんなことはどうでもいいじゃないか! ほら、後片付けを始めよう!」

 

 露骨に話題を逸らしたな。

 ……こいつ、絶対何かある。

 いつの日か、必ず秘密を暴いてやろう! 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「……冷えてきたわね。ねえカズマ、引き受けたクエストってゾンビメーカーの討伐よね? 私、そんな小物じゃなくて大物のアンデッドが出そうな予感がするわ」

 

 月が昇り、時刻は深夜を回った頃。

 アクアがそんなことをぽつりと呟いた。

 

「マジかよ。やめてくれよ、それがフラグになったらどうするんだよ。そんなよっぽどのモンスターが出たら俺達には太刀打ちできないぞ? とりあえず、イレギュラーな状況になったら一旦帰って他の手を考えようぜ」

 

 俺の言葉に三人が頷く。

 頃合だ。

 敵感知を持つ俺を先頭に、俺たちは墓場へと歩いていく。

 アクアが言った言葉が気になるが、何も起こらないことを願おう。

 

 そんなことを考えてると、墓場の中央で青白い光が上がった。

 ……なんだ? 

 それは、妖しくも幻想的な青い光。

 遠くからでも見えるそれは、大きな丸い魔法陣。

 その魔法陣の隣には、黒いローブの人影が。

 

 そんな時、アクアがとんでもない行動に出た。

 

「あ──────ーっ!!」

 

 突如叫んだアクアは、何を思ったのか立ち上がり、そのローブの人影に向かって走り出す。

 

「ちょ、アクア待て! クソ、ダクネス行くぞ!」

 

「わ、分かった!」

 

 俺の制止を聞かずに飛び出したアクアは、ローブの人影に駆け寄ると、ビシッと指さす。

 

「リッチーがノコノコこんな所に現れるなんて何を考えてるの! 街の人に被害が出る前に、この私が成敗してやるわっ!」

 

 リッチー。

 

 それは、有名なアンデッドモンスター、ヴァンパイアと並ぶ超有名なモンスター。

 長い時を経た人間の魔法使いが、魔道の奥義により人の身体を捨て去った、アンデッドの王。

 強い未練や恨みで自然にアンデッドになってしまったモンスターとは違い、自らの意思で自然の摂理に反し、神の敵対者になった存在。

 

 その、ラスボス級の超大物のモンスターが。

 

「や、やめやめ、やめてください────!! 誰なの!? いきなり現れて、なんで私の魔法陣を壊そうとするの!? やめて! やめてください!!」

 

「なんでも何も当たり前でしょ!? こんな妖しげな魔法陣を使って、何かよからぬ事を企んでるんでしょ!」

 

 アクアの腰に、泣きながらしがみついていた。

 

 ……えーっと。

 とりあえず、ゾンビメーカーではなさそうだが、それにしてもアクアの豹変具合が凄いな。

 普段怒ったところを見せない女神は、閻魔の如き迫力でぐりぐりと魔法陣を踏みにじる。

 よくある、普段怒らない人が怒ると怖いというものがあるが、それがよく体現されていると思う。

 

「そんなのじゃないです! 誤解です! この魔法陣は、未だ成仏できない迷える魂達を、天に還してあげる為の物です! ほら、今もこうやって魂達が天に昇っていくのが見えるでしょう!?」

 

 リッチーの言う通り、どこから集まってきたのか、青白い人魂の様な物がふよふよと魔法陣に乗り、そのまま魔法陣の青い光と共に、空へと昇っていく。

 

「リッチーめ! そんな口車には乗らないわよ! アークプリーストである私に出会った事を後悔させてあげるわ!」

 

「ええ!? ちょ……!」

 

 慌てるリッチーに向け、アクアが手を広げ、何か叫ぼうとする。

 浄化魔法を使うつもりだろうが、話を聞く限り、悪いことをしているとは思えないし、とりあえず一旦止めたほうがいいな。

 

「ヤバそうだな。おいダクネス、行け!」

 

「ん、落ち着け、アクア」

 

 俺の指示でダクネスがアクアを羽交い締めにして、なんとか浄化されるのを阻止できた。

 

「落ち着けよアクア。何考えてるか分からんけど、お前らしくもないぞ。話くらいは聞いてやれよ。えっと、リッチーでいいか?」

 

「は、はい、大丈夫です……。ありがとうございます……っ! えっと、おっしゃる通り、リッチーです。リッチーのウィズと申します」

 

 そう言って目深に被っていたフードをはねのけると、現れたのは月明かりに照らされた二十歳位にしか見えない茶髪の美女だった。

 俺の仲間たちもそうだが、この世界の女性って皆美人さんなの? 

 

「えっと……。ウィズ? あんた、こんな墓場で何してるんだ? 魂を天に還すとか言ってたけど、それってプリーストのやる事じゃないのか? リッチーのあんたがやる事とは思えないんだが……」

 

「ちょっとカズマ! そいつはさっさと退治した方が世のためになる高レベルのモンスターよ! ちょっとそいつに、浄化魔法掛けさせなさい!」

 

 俺の言葉にアクアがいきり立ち、ウィズに魔法を掛けようとする。

 ウィズが俺の背後に隠れ、怯えた様な困った様な顔をしながら。

 

「そ、その……。私は見ての通りのリッチーなんですが、そのおかげで私には、この場所で現世に縛られ苦しむ魂達の声を聞くことができるんです。それで、その成仏したくて出来ないこの子達に何か出来ないかと考えたところ、こうして魂達の救済の足がかりになればと思い、定期的にこの墓地を訪れてるんです」

 

 ……ほろりときた。

 いい人だ。

 

「それは立派な事だし褒められるべき行いなんだが……。そんな事なら、この街のプリーストとかに任せとけばいいんじゃないか?」

 

 俺の疑問に、ウィズが言いにくそうに憮然としたアクアをチラチラと気にしながら。

 

「そ、その……。この街のプリーストさん達は、拝金主義……いえその、お金が無い人達は後回し……と言いますか、その……、あの……」

 

 アークプリーストのアクアがいるので言いにくいのだろう。

 

「つまりこの街のプリーストは金儲け優先の奴がほとんどで、こんな金の無い連中が埋葬されてる共同墓地なんて、供養どころか寄り付きもしないって事か?」

 

「え……、えと、そ、そうです……」

 

 その場の、全員の無言の視線を受けたアクアが、逆に胸を張る。

 

「だからこそこのクエストを請けたの! アークプリーストである私が定期的に浄化しようと思ってたのに、あんたのようなリッチーが……」

 

「そ、そうだったんですか! 失礼しました! あの、それではこの子たちのことお願いできますか? あ、魔法陣も消しときますね」

 

 えっ、という顔になるアクア。

 どうやらアクアも気づいたようだ。

 

「……え、あんた、本当にそれだけ? そのためだけにこの墓地に?」

 

「はい、アークプリーストであるあなたに任せられるなら、私がここに来る必要もありませんね」

 

「………………」

 

 このリッチー、本当にいい人である。

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