このすばの仲間達がほんの少しだけまともだったら……。 作:ヒロ9673
ずっと何かに耐えていたが、とうとう我慢できずにキレてしまったというようなデュラハンの叫びに、周りの冒険者達がざわついた。
というか、この場にいる全員が、一体何が起こっているのか理解出来ていない。
とりあえず、俺達が呼び出されたのは、目の前にいる怒り狂ったデュラハンが原因のようだ。
「……爆裂魔法?」
「爆裂魔法を使える奴って言ったら……」
「爆裂魔法って言ったら……」
俺の隣に立つめぐみんへ、自然と周りの視線が集まった。
……周囲の視線を寄せられためぐみんは、取り乱すこともなく、ずっとデュラハンの方へ目線を向けている。
……って、もしかして、あの廃城…………。
俺は隣をちらっと見ると、めぐみんが冷や汗を垂らしていた。
どうやらこいつも気づいたらしい。
やがて、めぐみんが覚悟を決めたような顔で前へ出た。
それに伴い、冒険者達がデュラハンへの道を空けてくれる。
街の正門前に佇むデュラハン。
そのデュラハンから十メートルほど離れた場所にめぐみんが対峙した。
もちろん俺をはじめ、ダクネスやアクアも後に付き従う。
アンデッドを嫌い、すぐに襲いかかろうとするアクアも、怒り狂うデュラハンは珍しいのか、逆に事の成り行きを見守っていた。
「お前が……! お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んでくる大馬鹿者か! 俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売ってるなら、堂々と城に攻めてくるがいい! 低レベルの冒険者しかいない街だと放置していれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みにきおって……っ!! 何が目的なのだ、貴様っ!」
連日の爆裂魔法によほど応えたのか、激しい怒りのあまりデュラハンの兜がプルプルと震える。
流石に気圧され、めぐみんは怯むも、意を決して口を開いた。
「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……」
「……めぐみんって何だ。バカにしてんのか」
「ちっ、違わい!」
名乗りを受けたデュラハンに突っ込まれるが、めぐみんは気を取り直す。
「私は紅魔族の者にして、爆裂魔法を扱うアークウィザードです。あの廃城には誰も住んでいないと思っていたので、日課として爆裂魔法を放ち続けていたのですが……。魔王軍幹部のあなたがいるとは露知らず。大変失礼致しました」
そう言ってめぐみんはペコリと頭を下げる。
……こいつ、俺が言うのもなんだけど、かなり引け腰だな。
敵である魔王軍幹部に素直に謝るのは余程だ。
めぐみんはめぐみんなりに、こいつを爆裂魔法で消し飛ばすことは難しいと理解しているのかもしれない。
冒険者ど素人の俺でさえ、この街の冒険者では歯が立たないことは簡単にわかってしまう。
デュラハンといえば、なぜか、勝手に納得したような雰囲気だ。
「ほう、紅魔の者か。なるほど、なるほど。そのいかれた名前は、別に俺をバカにしてる訳ではなかったのだな」
「おい、私の名に文句があるなら聞こうじゃないか」
デュラハンの言葉にヒートアップするめぐみんだが、当の相手は何処吹く風だ。
というから冒険者の大群を見ても、気にする素振りしかみせない。 やはり、俺達みたいなひよっ子は眼中に無いのだろう。
「……フン、まあいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来た訳では無い。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくはあの城に滞在する事になるだろうが、これからは爆裂魔法は使うんじゃないぞ。いいな?」
「それは、私に死ねと言っているも同然なのですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬのですよ」
「お、おい、聞いた事ないぞそんな事! 適当な嘘をつくな!」
「嘘をつくなというならお互い様でしょう。あなたはあの城を『俺の城』などと豪語していますが、別にあなたが所有権を持っているわけではないでしょう? さも当然のように自分の物扱いをするのはおかしいのではないでしょうか」
「………………」
めぐみんに秒で論破され、黙り込んでしまうデュラハン。
俺はといえば、笑いを堪えるのに必死だった。
よく見てみると、アクアとダクネスも肩をプルプルと震わせている。
……やべぇ、もう少しめぐみんとあのモンスターのやり取りを見守りたい気分になってきた。
デュラハンは右手の上に首を乗せ、そのまま器用に肩を竦めてみせた。
「もういい。とりあえず、爆裂魔法を撃つのを止める気は無いと? 俺は魔に身を落としたとはいえ、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味は無い。だが、これ以上迷惑行為をするのなら、こちらにも考えがあるぞ」
剣呑な気配を漂わせてきたデュラハンにめぐみんがビクリと後ずさった。
おっと、これは非常に不味い気がするぞ。
「俺は仮にも魔王軍の幹部の一人。……そうだな、ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやろうか!」
アクアもそのヤバい気配に勘づいたのか、浄化魔法を詠唱しようとする。
だが、それよりも早く、デュラハンは左手の人差し指をめぐみんへと突き出した。
そして、デュラハンはすかさず叫ぶ!
「死の宣告を! お前は一週間後に死ぬだろう!!」
デュラハンが呪いを掛けるのと、ダクネスがめぐみんの襟首を掴み、自分の後ろに隠したのは同時だった。
「なっ!? ダ、ダクネス!?」
めぐみんが叫ぶ中、ダクネスの身体がほんのりと一瞬だけ黒くなる。
くそっ、マジかよっ!
「ダクネス、大丈夫か!?」
俺が慌てて聞くも、ダクネスは体の調子を確かめるために両手をワキワキと何度か握り。
「……ふむ、何ともないのだが」
いたって平気そうに言ってのけた。
だが、デュラハンは確かに叫んだ。
一週間後に死ぬ、と。
呪いを掛けられたダクネスを、何故かアクアがぺたぺたと触る中、デュラハンは勝ち誇ったように宣言する。
「その呪いは今は何ともない。若干予定が狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が応えそうだな。……よいか、紅魔の娘よ。このままではそこのクルセイダーは一週間後に死ぬ。ククッ、お前の大切な仲間は、それまで死の恐怖に怯え、苦しむことになるのだ。……そう、貴様の行いのせいでな! 貴様のせいで苦しむ仲間を見て、自らの行いを悔いるがいい。ククク、素直俺の言う事を聞いておけば良かったのになぁ!」
デュラハンの言葉にめぐみんは青ざめる中、ダクネスが戦き叫んだ。
「な、なんて事だ! つまり貴様は、この私に死の呪いを掛け、呪いを解いて欲しくば俺の言う事を聞けと! つまりほそういう事なのか!」
「えっ」
ダクネスが何を言ったのか理解できなかったデュラハンが、素で返した。
俺も、同じく理解できない。…………理解したくない。
「くっ……! 呪いぐらいでは私は屈したりはしない! ど、どうしようカズマ! このままデュラハンに凄まじいプレイを要求されるか、それとも冒険者としてちゃんとぶちのめすか、私にとっては究極の二択だ! ど、どうすればいい!? 私はどうすればいいのだ、カズマ!」
大衆の前で、とんでもないことを言い出すダクネスに。
「……えっ」
気の毒に。
「予想外に燃えるシチュエーションだ! 行きたくはない、行きたくはないが仕方ない! ではカズマ、行ってくる!」
「ええっ!?」
「止めろ、行くな! 頼むからホントにお前は黙っててくれ!」
ノコノコと敵にについていこうとする、MなのかSなのか分からないダクネスを羽交い締めにして引き止めると、デュラハンがほっとしている姿が見えた。
……妙に人間臭いな。
「と、とにかく! これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのは止めろ! そして、紅魔族の娘よ! そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい! 俺の部屋まで来る事ができたなら、その呪いを解いてやろう! ……だが、城には俺の配下のアンデッドナイト達がひしめいている。ひよっ子冒険者のお前達に、果たして俺の所まで辿り着くことができるかな?」
デュラハンはそう宣言すると、笑いながら首の無い馬に乗り、そのまま城へと去っていった……。
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ぶっちゃけあんまりな展開に、集められた冒険者達は呆然と立ち尽くしていた。
もちろん、それは俺も同じ。
俺の隣では、めぐみんが青い顔でわなわなと震え、杖をぎゅっと握り直す。
そして、一人で街の外へ行こうとする。
「おい、どこ行く気だ。一人で何しようってんだよ」
俺がめぐみんの肩を掴むと、めぐみんは足に力を込めてていこうしながら、こちらを振り向きもせずに言ってくる。
「……今回のことは私の責任です。あそこがデュラハンのいる城だとは知らずに、爆裂魔法を撃ち続けた私の責任。ちょっと城まで行って、直接爆裂魔法ぶち込んで、ダクネスの呪いを解かせてきます」
めぐみん一人で行ったところで、どうなるもんでもないだろうに。
……と言うか。
「俺も行くに決まってるだろ。お前一人じゃ、雑魚相手に魔法使ってそれで終わりだし、誰がお前をおぶんだよ。それに、俺も毎回一緒に行きながら、幹部の城だって気づかなかったマヌケだからな」
俺の言葉にしばらく渋い表情を浮かべていためぐみんは、やがて諦めた様に肩を落とした。
「カズマにまで迷惑を掛けたくはないのですが……。それじゃあ、一緒に行きましょうか。でも相手はアンデッドナイトがひしめいているらしいですし、そうなれば武器は効きにくいですね。私の魔法の方が効果的なはず。……なので、こんな時こそ私を頼りにしてくださいね」
そう言って、めぐみんな微かに笑みを浮かべた。
アンデッドナイトって言うからには、鎧を着た相手なのだろう。
そんなのが相手では、安物の剣しかない俺は途端に無力になる。
だが、それならそれで考えはある。
「俺の敵感知で城内のモンスターを索敵しながら、潜伏スキルで隠れつつ、コソコソ行こう。毎日城に行って一階から順に、爆裂魔法で敵を倒して帰還。毎日地道に敵を削っていく。一週間の期限があるなら、そんな作戦でいってもいい」
俺の提案に少しは希望が持てたのか、めぐみんが明るい顔で頷いた。
俺とめぐみんはダクネスの方へ振り返ると。
「おいダクネス! 呪いは絶対に何とかするからな! だから安心……」
「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」
俺が声を掛ける最中。
それを遮る形でアクアが唱えた魔法を受けて、ダクネスの体が淡く光った。
そしてアクアがバツの悪そうな表情を浮かべ。
「……ごめんね? 躍起になってるところ悪いんだけど、ダクネスに掛かった呪いはもう解いちゃったわ」
「「……えっ」」
……勝手に盛り上がっていた、俺とめぐみんのやる気を返してくれ。