完全に勢いです
俺は筋肉以外取り柄がない。
昔はよくある英雄章を聞いては心が踊り子供ながらに世界を救いたい、いつかはかっこいい英雄になるんだと思い描いていた。
いつ来るかもしれない、架空の戦いに備えできることをした。筋トレをし、家の仕事を手伝いながら勉強をした。家はそこまで裕福ではなかったが、父の仕事はうまく行っております食べるものにはそこまで困らなかった。毎日筋トレと手伝いと勉強は、今思えば青春というやつなのかもしれない。
かれこれ4年前になる、俺が冒険者になったのは。
冒険者とは言ってもこの頃には世界の大体は人類の支配下に置かれております主な仕事といえばときおり現れる魔物の駆除や便利屋といったものが大半で、正直割のいい仕事ではなかったがそれでも人の役に立つという実感が心満たしていた。
状況が変わったのは冒険者を始めて半年後のこと。
突如現れた魔物の集団、世界はその圧倒的な戦略に押され、まさに阿鼻叫喚の様子を呈していた。
自分にとってはチャンスだった。
空想の話がまさに現実になる、英雄になれるんだと心が踊り自慢の筋肉はいともたやすく、そして志は折れることになる。
いくら鍛えても覆せない圧倒的な力の差
理不尽な攻撃を繰り返す魔法という存在
極めつけは初めての戦場で、自分よりも小さく、そして若い女の子が束になって勝てなかった魔物をたやすく蹂躙していく様子だった。
いくら鍛えても
いくら希望を持っても
俺はただの"モブ"でしかないんだ…
涙ながらに己の無力さを知った。
気づけば、大侵攻の首魁は4人の英雄によって討伐され世界は安寧を取り戻していた。
現在・世界首都ワッケン
「おきろ、早くしないと飯がなくなっちまう。」
「ん……あぁ、朝か」
4年前の大侵攻の後、仕事が激減した俺は土木関係の仕事を新しく始めていた。
正直給料は少ないが、肉体労働しか取り柄がない俺にとっては転職だし家もあり飯も出る。
「今日は何するんだ?」
「橋の補修工事だ。早くしろよ、俺は先に行ってるからよ!」
住み込みで働くのは俺のような冒険者やならず者が多いが、少なくとも同僚はいいやつだ。筋肉は少ないが…。
「………今日も頼むぜアントワーヌ、ジョセフィーヌ。」
それぞれいつもの左右の胸筋に声をかけ支度する。
俺には彼女はいないが、筋肉があればいいと本気で思っている。何度助けられたことか。
カミソリでヒゲを剃り、軽く筋トレをしてから部屋を出る。
彼はアルノ・ヴィンチ
筋肉バカな夢見る英雄
「……誰か噂してんな…」
筋肉バカは今日も少ない給金と筋肉のために街へ行く