マッチョが世界を救うまで   作:くいあらためよ

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一日は鐘の音ともに始まる。

町外れの一角が俺の働き場だ。

木を削り、運搬し、建築する。

 

文明的かどうかはさておき、この街では未だに需要のある仕事だ。

というのも、大侵攻の爪痕が強く残る各街では未だに修復できていないところや、街の拡大に合わせた都市整備などの恩恵があるからだ。

なので、国からは補助金と住居が与えられる。肉体労働がきついのであんまり人の集まることはないが、俺みたいな男にはピッタリの仕事場だったりする。

やはり筋肉は偉大だ。

 

「アル、今夜一杯どうだ?」

「あー、今日は昼過ぎまでだったな。わりぃ、依頼があるからよ。」

「まだ冒険者してたのか?そろそろ身の振り方も考えたほうがいいかもしれんぞ。」

「はは、そうかもな。そっちの柱持ち上げるぞ。」

 

他愛のない同僚との会話に花を咲かせつつ仕事をこなす。

今日は橋の修復なのでそこまで時間はかからない。

こういう日には冒険者組合で張り出されている依頼をこなすのが日課となっていた。

今の時期、モンスターはめったに出ることはないため、下級冒険者たちはもっぱら、探し物や薬草採取、はては家庭教師といったことまでこなしていた。

 

最上級冒険者--4英雄--と呼ばれている人物が大陸中のモンスターを焼き払ったことが今につながっている。

正直、えげつないことをすると何度か思ったものだ。

街ではモンスターと共存する小説が流行るぐらい、今では何もない。

 

「お、アル見てみろよ。お嬢様だぜ」

「おぉ…元気に飛び回ってるな。」

 

お嬢様と呼ばれた人物は、民家の屋根を軽々とびこえて宙を舞っていた。

このお嬢こそ、4英雄の一人『爆裂の賢者』と呼ばれる人物だ。 

大陸のモンスターを全て焼き払ったと言われる人でもある。

 

「あんな子がモンスターをねぇ……」

「…戦場では俺よりも小柄な少女たちが蹂躙していた。」

「あぁ…そういや…すまんな。」

「いやいいんだ、俺の筋肉が非力だったまでだ。」

 

そう、自分に言い聞かせてきた。

初めて見た彼我との戦力差、才能による格差

埋めようのない、埋めることすら最初から不可能な実力…

 

「それに、今の俺の筋肉なら…イケると思わないか!?」

「おまえ……いや、何も言うまい。」

「ふぅむ…もう少し食事バランスを考えてみるのもありか。」

「ほんとに、筋肉に関することは誰にも負けないな。」

「もちろんさ!じゃあ、この調子で片付けるぞ!!」

 

 

 

 

「本日の依頼、これをこなしたいのだが…」

「下級冒険者依頼ですね、かしこまりました。」

 

仕事が終わり、そのままの足で組合へ訪れた。

組合に張り出される依頼は朝に更新されるため、昼をすぎるあたりには比較的稼ぎのいい物は残っていなかった。

 

「薬草採取、では行ってきます。」

「お気をつけて、モンスターはいないと思いますが万が一があります。」

「はっはっは、その時はこの自慢の筋肉でなんとかしよう!」

 

自前の筋肉ならばある程度のモンスターは対処できる。

否、今ならば…

 

「ん、いかんいかん。いつもの悪い癖だ、慢心は良く無い…」

 

一人ぶつぶつつぶやきながら、目的地へ歩いていく。

一応は警戒しているが特にモンスターの気配はない。むしろ、警戒すべきは野党などの人間相手だ。

森などに生息していたモンスターに代わり、今や野盗達がはびこっていた。自分たちの命が脅かされる心配が減り、森などの道を行き来するようになった商人たちが増えたことにほかならない。

 

「もんすたーから守る仕事が、人から守る仕事になるとは…まったく、筋肉がないてしまう。」

 

ここで、彼の動きは止まる。

戦場を経験してるがゆえの戦士としての感が告げた。

 

「……やれやれ。噂をすればなんとやら、だな。」

 

そう遠くのない位置で、鳥たちが一斉に羽ばたいていった。

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