超銀河間帝国軍、辺境の惑星にて   作:御代川辰

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序幕之弐・後 災厄、その名は“無限大„

 パーパルディア皇国領トーパにある、科学文明種族“リント„の遺跡。

 トーパの住民たちの伝承にも現れる地上絵に遺された文字を調査しているのは、本国から派遣された調査員の一人、シュアという言語学者だった。

 

「《星と共に降り天より来たりし災厄。創造神とその眷属を喰らい、世界を滅ぼさんとする破壊の申し子。その龍の名を【ムゲンダイナ】》……天から来たってどういうことだ…………?」

「そのムゲンダイナってのは、邪神龍の(たぐ)いか?」

 

 地上絵の所々に刻まれているリント文字を解読するシュアの脇から、別の調査隊員が話しかけてくる。

 

「どうもそうらしい。《その爪には毒を宿し、その口からは炎を吹き、邪悪なる龍の力をその身に込めて全てを破壊しつくす者。邪悪なる龍が目覚めし時、神氣の力をその身に蓄え、無限の巨体をもって世界を喰らい尽くさん》と続いている。だから邪神ティアマトか邪神エンキ、どちらかの眷属であることは間違いないだろう」

 

 この中つ国では、神話の時代からエンリル、エンキ、ティアマト、エンキドゥ、ギルガメシュ、そしてイシュタルの計六柱の邪神が共謀し、世界の破滅を狙っていると信じられている。

 エンリルは破壊と死を、エンキは人災と怨恨を、ティアマトは天災と狂気を、エンキドゥは苦痛と混沌を、ギルガメシュは復讐と略奪を、そしてイシュタルは人の悪意そのものをそれぞれ司るとされており、今日(こんにち)に至るまで多くの人々に恐れられている。

 リントとトーパを魔王との争いという形で襲ったムゲンダイナは、間違いなく邪神の眷属として創られた存在であるとシュアは確信していた。

 

「本当に邪神龍が封印されているってぇなら、リントの文明は神話にもある古の魔法帝国以上の超文明ってのは確実だな」

「ああ、本当に気に入らない。だが、このリントたちがいなければ、世界は終わってたのも確かだ」

 

 シュアは言葉を切り、作業を再開する。発掘調査は着々と進行していた。

 

 

 

 時は進み、中央暦1645年8月末。

 パーパルディア皇国が旧トーパ王国の遺跡を調査している間、ヤノトレスと名付けられた新しい地球型惑星上の国家、クワ・トイネ公国、クイラ王国、そしてフェン王国の三国は、天和神國をはじめ真秦國、統一トーミド帝國、バルムンク超帝國などの銀河系国家と国交を結び、本格的な交易を開始。

 その結果天和と関係を持つ以前とは比べ物にならない程に生活・技術の水準が向上していた。

 クワ・トイネ公国では、今まで煮沸滅菌しなければとても飲めないものであった生水(なまみず)は、水質浄化施設を設置することで水道から(じか)に飲んでも飲みすぎることさえなければ腹をくだすことすら無いし、ほとんど舗装されていなかった道はコンクリートで整地され、更にサスペンションが馬車や牛車(ぎっしゃ)に標準装備されたことで、車輪や車軸が破損する事故が激減した。

 また各国の経済力・軍事力も急激に上昇しており、特にクイラ王国は旧式でこそあるがパーパルディア皇国製の七〇門級戦列艦八隻と六〇門級戦列艦五隻、計十三隻を海軍に配備している他、フェン王国はトーミド製の銃を二千丁以上保有し、大幅に強化を図っている。

 

 

「この国もたった半年の間で、随分様変わりしたな」

 マールパティマがクワ・トイネ公国海軍初の小飛竜騎母艦(ワイバーン・キャリアー)、「エボニー(黒檀)」の甲板で同僚のアシにこぼす。

「ああ、何十年も未来(さき)の技術がいっぱい入って来たからな。彼らにとっちゃゴミクズみたいな物なんだろうけどさ、俺たちにとっては十分脅威だぜ」

 マールパティマはアシの言葉に「違いない」と笑い、哨戒任務のため小飛竜(ワイバーン)の背に乗る。

 アシはマールパティマを見送り、しばしの間まだ見ぬ未来(じだい)に思いを馳せていた。




ムゲンダイナ
ポケットモンスターソード・シールドに登場するキャラクター。
数万年前に中つ国に飛来し、魔王ノスグーラと激戦を繰り広げて世界各地にガラル粒子(劇中では神氣と呼称)をばらまき、同じ頃に存在したリントたちが民族ごと人柱になったことにより、ノスグーラ共々封印される。
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