剣八の到着には、切り伏せられ倒れた一護が驚きを示す。
「あ、あんた!」
「黒崎さん。どうやら卍解を会得したようですね。また戦いましょう」
「え、あ、ああ……じゃなくて!」
「分かっていますよ。敵は藍染惣右介。心得ています」
解放した野晒を突き付ける。
一方で藍染は怪しい笑みを浮かべたまま消える。剣八は即座に反応し、振り向きながら剣を振るった。そして見事に藍染の一撃を止める。
「なるほど。それが君の能力か」
「東仙隊長……いえ東仙要から私の能力を聞いたようですね」
「まさかこんなところに僕の天敵が隠れているとは思わなかったよ。しかしまさか鏡花水月まで無効化してしまうとは。おそれいる」
今、既に剣八は眼帯を外している。
すなわちそれは潜在能力を最大限に発揮できる状態であるということだ。しかしそれでも尚、藍染惣右介という男に底知れなさを感じていた。
(霊圧は私以下。しかし制御は私を遥かに凌ぐようですね)
剣八は瞬歩で一度距離を取り、そのまま即座に距離を詰める。フェイントを交ぜ込んだ攻撃にすら藍染は対応し、小さな刀一本で剣八の野晒を受け流す。
剣技、歩法の面においては少なくとも剣八を上回る。
「流石だ更木剣八。歴代最強の剣八と言われるだけはある」
「その剣八と正面から打ち合うあなたは何者でしょうね」
「君とはもう少し打ち合っていたいが、私にも予定があるのでね。ギン」
藍染が呼びかけると同時に市丸が神鎗を放つ。
しかし剣八は一撃で神鎗を叩き折る。
「あら、こらあかんわ」
隊長格の斬魄刀を一撃で破壊するという所業を前に市丸は本音でお手上げとなる。彼女が理性によって抑え込む霊圧は絶大。それをさらに眼帯によって抑え込み、ようやく一般隊士が耐えきれる程度に落ち着く。
しかし今、更木剣八という死神はそのリミッターを外していた。
この場は隊長格以外、立っていることすら許されない。
彼女が少し霊圧を強めるだけで周囲の霊子が焼き切れ、霊子結合すら崩壊する。ただの霊圧で世界を焼き尽くす勢いであった。
「これは予想以上だ」
霊圧の強さだけであれば他の追随を許さない。
ただそれだけによって藍染は剣八を山本元柳斎以上に警戒していた。そして先程判明した始解の能力によって警戒度を最大限にまで引き上げた。
しかしただ警戒するだけが藍染という男ではない。
警戒には対策が存在する。
「もう少し出番は後のつもりだったんだけどね」
圧倒的な剣八の力を目撃しても笑みを崩さない。
その理由がこれであった。
「さぁ、君が戦うべき相手だ。
藍染の目の前に霧のような何かが集まっていく。
やがてそれは形を成し、人型となって具現化した。
八代目剣八、痣城双也が現れた。
「破道の八十八、
痣城は具現化と同時に卍解・雨露柘榴を発動する。
自身を周囲の霊子と同化することで自由自在に操るという圧倒的性能の卍解だ。それによって彼は空間中に無数の口を生成し、その一つ一つから言霊を生成することで無数の飛竜撃賊震天雷砲を放った。
これによって剣八は吹き飛ばされ、双極の丘から消え去る。
「後は任せるよ。痣城剣八」
「いいだろう。今代の剣八を名乗るあの女は私が始末する」
再び痣城は霧のように消えた。
吹き飛ばした綺麗な剣八を追いかけたのだ。
そして残された藍染は改めてルキアを含めた全員に演説を始める。どうしてこのような回りくどい方法によってルキアを処刑しようとしたのか。そしてなぜ護廷十三隊を裏切ったのかを。
その答え――崩玉をルキアの魂魄内より取り出し、見せつけるという形で。
◆◆◆
無数の飛竜撃賊震天雷砲を受けた剣八だが、意外にも無傷であった。いや、意外というわけでもない。絶大な霊圧によって守られた彼女に傷をつけられる存在の方が稀有というものだ。
起き上がり、隊長羽織の土埃を払う彼女のすぐ側に痣城は具現化する。
「私の相手はあなたというわけですか」
「その通りだ。今代の剣八」
「……藍染が言っていましたね。あなたは以前の剣八とか。殺し合いで継承される剣八に過去の遺物が残っていようとは思いませんでしたよ」
「……」
八代目、痣城剣八は特異かつ危険な思想を持つとして投獄された。それによって例外的に当時の副隊長が九代目が決まったという経緯がある。
「藍染に協力して、何が目的なのでしょう?」
「……私は私の思う使命を成す。ただそれだけだ」
「説明になっていませんね」
剣八は呆れ、困ったような表情を浮かべる。
しかし痣城は無表情のまま告げた。
「簡単なことだ。剣八はこの世に一人だけ。それは私だ」
「なるほど。それは簡単です。しかし訂正していただきましょう。私が剣八です」
戦いは唐突に始まった。
まずは痣城が卍解・雨露柘榴によって霊子を集め、固めていく。剣八を相手に生半可な攻撃は通用しないと分かったばかりだ。故に力を一点に集め、集中攻撃によって殺すしかない。
一方で更木剣八の考えることはシンプルである。
斬ればいい。
「隙だらけですね」
佇む痣城を斬った。
野晒は彼の体を両断し、そのまま奥の建物すら両断する。
しかし、痣城は無傷であった。ただ霞を切り裂いたかのように手応えすらなかった。
「無駄だ」
「そのようですね」
今度は痣城が攻撃する。
集めた霊子を解き放ち、剣八を焼き滅ぼそうとしたのだ。しかしそんなものに屈する剣八ではない。両手持ちの野晒によってそれを切り裂き、破壊する。
ただ痣城もそれは予想していたのか、続いて空間中に口を具現化した。再び鬼道を使おうというのである。しかし今回は先程と異なり、腕も同時に具現化された。その腕は具現化すると同時に炎系鬼道で焼かれ、黒焦げとなる。
だがこれでよい。
焼け焦げた肉体の一部を触媒として放つ禁忌の鬼道。
犠牲破道と呼ばれるものを発動する条件が整った。
「破道の九十六、一刀火葬」
通常鬼道ではあり得ない膨大な熱が収束し、巻き起こる。それは遠目から見れば大地から突き出る刀のようであった。熱によって空間が歪み、近づくものを焼き尽くす。内部に取り込まれれば一瞬で消失し、灰も残らない。
だがこれでも痣城は満足していなかった。
先程破壊されたばかりの処刑道具、双極を再現する。卍解・雨露柘榴によって同化した物質はいつでも再現可能であり、それに制限はない。斬魄刀百万本とも言われる絶対的攻撃力を、ただ更木剣八を殺すためにだけに用意した。
それも三つ。
「行け」
獄炎の如き霊力を纏った三つの双極が、一刀火葬に閉じ込められた更木剣八へと殺到する。死神を何千人と滅ぼしてお釣りがくる攻撃が炸裂した。
大爆発は起こらない。
ただ、周囲一帯が消滅するだけである。
剣八を除いて。
「卍解――」
「っ!?
「――
爆発的に剣八の霊圧が上昇する。
始解・野晒は剣八に影響を与える特殊な霊圧を全て飲み干す。ならば卍解はどういったものか。剣八は劫火すら飲み干し、自らの力とする。
周囲は静かになった。
まるで彼女の静寂を表すかのように。
「この私に卍解を使わせたのはあなたが初めてです」
物質が崩壊し、霊子と化して剣八へと集まっていく。
卍解・
そしてこの能力は痣城の天敵であった。
(ぐっ……私の苦手とする霊子吸収系の能力か)
卍解・
しかし無敵ではない。
自身を霊子として最小単位まで操る存在に変換するこの卍解は霊子吸収系能力により致命的なダメージを負ってしまう。
(これが今の剣八。流石に調査不足か)
かつて七代目・
(藍染などという者の甘言に乗ったのは良いが、やはり時期尚早であったか。私らしくもない)
霊子吸収による攻撃のダメージを考慮し、痣城はその場から文字通り消える。
相性の悪い更木剣八を相手にするなど無駄なこと。そう断じた彼は逃げの一手を選択した。
小説版のキャラ、痣城剣八。
もうまじむりあの剣八だれがたおせんの?
藍染様が苦肉の策で昔の剣八を呼んできた。
しれっと出した剣八の卍解
原作からは情報が取りきれなかったので、色々考察して改変も含めて今の形にしました。ちなみにまだ第一形態なんやで。(鬼形態が残ってる)