綺麗な剣八   作:NANSAN

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17 藍染、動く

 卍解を解く剣八は倒れる一護を見つめる。

 すると超速再生が始まり、胸の穴も全身の切り傷も全てが修復された。剣八の勝利である。

 だが無傷というわけではない。最後の攻撃の際、一度だけ反撃を受けてしまっていた。

 

 

「うっ……」

「目が覚めましたか?」

「俺は……そうだ! ウルキオラは!?」

「あら、覚えていらっしゃらないのですね」

「剣八! 腹から血が!」

 

 

 何が起こったのか分からない一護は混乱する。

 しかし取りあえずは剣八の脇腹にある深い切り傷が問題であった。

 

 

「これはあなたが付けた傷ですよ」

「お、俺が……?」

「虚の力を暴走させていたのです。覚えていませんか?」

 

 

 一護はそう言われて必死に思い出そうとしたが、どうやら無理だったらしい。申し訳なさそうに、そして辛そうに頭を下げる。

 

 

「わりぃ、剣八」

「謝ることはありません。あなたは井上さんを守りました。それでいいではありませんか」

「井上は無事なのか!?」

「はい。まずは彼女の元に戻りましょう」

「ああ」

 

 

 二人はその場を後にする。

 災厄にも匹敵する存在が暴れた跡地は、白い砂だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 虚圏での戦いはひとまず勝利し、十刃(エスパーダ)も打ち倒した。

 織姫や雨竜の元に戻った一護は、どこかぎくしゃくとした雰囲気を見せる。虚に飲み込まれたという事実が彼を蝕んでいるのだ。

 

 

「涅隊長のところに行きましょう」

 

 

 剣八がそう提案する。

 一護は「え?」と呆けたような顔をして、雨竜はあからさまに嫌そうな態度を取った。

 

 

「あの方なら閉じられた黒腔(ガルガンダ)を開けてくださるでしょうから」

「どういうことだ?」

「空座町に行きましょう。藍染が襲撃を仕掛けているはずです」

「あ、ああ。分かった」

 

 

 その提案は一護の気を引き締めさせた。

 彼は空座町の死神代行。あの街を守るために死神となった。天鎖斬月を握り、剣八と共に天蓋の下へと戻ろうとした一護を織姫が止める。

 

 

「黒崎君!」

「井上……」

「黒崎君、私」

「大丈夫だ井上。ちょっと空座町を救ってくる。だから待っていてくれ」

 

 

 一護は戦いの無情と無意味さを知った。

 なぜ、戦わなければならないのかと思ってしまった。

 だが彼は戦いを止めることができない。何故なら、彼の守りたいものを守らなければならないのだから。藍染によって空座町が破壊され、十万を超える人々を犠牲にさせないために。

 剣八と共に、空座町へ戻ることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 涅マユリにとって虚圏は最高の実験場である。

 また長い期間に渡ってザエルアポロが集めた実験試料を検分したことで大満足。非常に機嫌が良かった。それこそ、戦いに快楽を見出す野蛮人の言うことを聞いてしまうほどに。

 

 

「君たちに私の実験体となる栄誉をあげようじゃないか。私の開発した安定的に黒腔(ガルガンダ)を維持する装置があれば、君たちは空座町へいくことができるのだヨ」

 

 

 一護と共に向かうのは更木剣八、そして回復役として卯ノ花烈。

 黒腔(ガルガンダ)の内部では霊圧で足場を形成しつつ、空座町を目指す。また戦いで消耗した一護の霊圧を回復していた。

 藍染との戦いで鍵となるのは、鏡花水月を無効化する更木剣八。そしてまだ鏡花水月にかかっていない黒崎一護である。

 

 

 

 

 死神代行、黒崎一護。

 四番隊隊長、卯ノ花烈。

 十一番隊隊長、更木剣八。

 

 

 三人はマユリの開いた黒腔を進み続けた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 偽の空座町で藍染惣右介を迎え撃つ。

 その作戦はピタリとはまった。

 山本元柳斎、砕蜂、狛村左陣、京楽春水、日番谷冬獅郎、浮竹十四郎、また副隊長を始めとする実力者が裏切った四人の死神を迎え撃つ。だが藍染もそれを予測していなかったわけではない。

 

 

「来るんだ。スターク、バラガン、ハリベル」

 

 

 十刃(エスパーダ)のトップスリーを呼び寄せる。

 故に山本元柳斎は分断戦術を取った。流刃若火の炎によって藍染惣右助を含む四人の死神を囲む。そして総隊長が封じ込めている間に、他の隊長格たちが破面(アランカル)を始末する。

 しかし藍染も手札を隠していた。

 流刃若火を封じるためだけに生み出した改造破面、ワンダーワイスが無数の大虚を連れて登場する。極度に肥大化した大虚フーラーの絶叫はありとあらゆる斬魄刀の効力を打ち消し、藍染たちを封じ込める炎の壁も、ハリベルを閉じ込めていた氷の墓標も砕け散った。

 

 分断は失敗したかに思われた。

 

 だがここで護廷側にも運が味方する。

 仮面の軍勢(ヴァイザード)が現れたのだ。彼らは百十年前、藍染の策略によって尸魂界を追放された元隊長たちだ。虚化を使いこなし、現れた大量の大虚を次々と滅していく。

 彼らの目的はただ一つ。

 藍染への復讐。

 決して、護廷十三隊への義理を果たすためでも、味方をするためでもない。敵の敵は味方というだけの関係だ。

 とはいえ、この加勢によって一気に逆転する。

 

 

「卍解・雀蜂雷公鞭。本来は三日に一度が限界なのだがな!」

 

 

 元鬼道衆の副総長、有昭田鉢弦が結界で封じ込め、砕蜂の卍解によりバラガンへと大ダメージを与える。怒り狂ったバラガンは四方八方に「老い」を放ち、その一部が鉢弦の腕を掠めた。

 だがそれは策略。

 老いに侵された腕を切り離し、バラガンの体内へと転送する。

 虚圏の神を自称した虚は、自身の絶対的能力によって滅び去った。

 ほぼ同時刻に京楽によってスタークまでもが破れる。

 残りはハリベルだけとなった。

 

 

「あらら。やられてしもうた」

 

 

 味方が撃破されたというのに、気味の悪い笑みを崩さない市丸。しかし一方で藍染は無表情である。そして目にも留まらぬ瞬歩によりハリベルのすぐ側へと現れた。

 

 

「藍染様?」

 

 

 冬獅郎や仮面の軍団(ヴァイザード)を相手にしていた彼女は疑念の目を向けた。だがそれも束の間。何の躊躇いもなく、藍染はハリベルを切り捨てる。

 これには衝撃が走った。

 ハリベルは目を見開いた。

 

 

「驚いたよ。苦労して集めた十刃(エスパーダ)が、よもや私一人に劣るとは」

 

 

 藍染にとって、十刃(エスパーダ)は護廷十三隊を倒すための戦力であった。大部分は護廷戦力の一部を幽閉するために使い捨てたが、最上位たる三名とその従属官は連れてきた。しかしそれらは壊滅し、残るはハリベル一人。

 落胆するのも当然だった。

 

 

 故に動き出す。

 

 

 藍染惣右助。

 

 市丸ギン。

 

 東仙要。

 

 痣城双也。

 

 

 遂に死神と死神の決戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

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