「一体いつから、鏡花水月を使っていないと錯覚していた?」
藍染と戦う護廷十三隊の面々、そして
――鏡花水月によって藍染のように見せかけた雛森桃へと。
「うわあああああああああああああああああああ」
大切な幼馴染を、守るべき少女を刺してしまった。
冬獅郎は絶望し、激昂し、我を見失いつつ藍染へと斬りかかる。だが、そんな単調な刃が藍染へと届くはずもなかった。
冬獅郎、京楽、砕蜂、狛村、そして平子真子、誰もが一瞬で切り伏せられた。
「情けない」
そしてようやく、山本元柳斎が出る。
藍染を倒すために広域へと炎を仕込んでいたのだ。彼の意思一つで天を焦がすほどの炎が出現し、自分や部下たちを巻き込むほどに広く囲い込む。
だが、藍染は山本元柳斎のためだけに対策を練っていた。
改造
ワンダーワイスは流刃若火の爆炎を封じ込める。
藍染はそう説明した。
「ほう」
だが、元柳斎は落ち着きを崩さない。死覇装を脱ぎ、上裸となってその肉体を見せつけた。傷だらけの肉体は恐ろしいほどに完成されており、それだけで強者を印象付ける。
山本元柳斎重國。
彼は文字通り最強の死神である。斬術、鬼道、白打、歩法のどれをとっても彼は超一流。斬魄刀を封じられたところで弱くなるわけではない。
「ふん」
打撃、一骨。
ただの打撃によってワンダーワイスの体を一部とはいえ消し飛ばす。
だが、ワンダーワイスはまだ死なない。
胴の半分を吹き飛ばされても、まだ山本元柳斎を殺すために動き続ける。
故に元柳斎は次こそ殺すべく一撃を放った。
「双骨」
両の拳に体重と霊圧を乗せる重い一撃。
それがワンダーワイスを打ち砕く。その肉体は爆散し、頭部が落下する。
「惨いことをする」
元柳斎はそんなワンダーワイスへと憐れみを向けた。個を削ぎ落され、ただ最強の死神の斬魄刀を封じるためだけに存在する虚だ。その最後も無残という他ない。
だが、藍染はただ嘲るように告げる。
「惨いのは君の方だよ山本元柳斎。その哀れな彼を打ち砕いたのは君なのだから」
「ほざけ。次はお主の番じゃ」
「そうやって私の言葉を蔑ろにするから、君は重要なことを聞き逃す」
藍染は頭部だけとなったワンダーワイスの遺体を一瞥する。
「ワンダーワイスの能力は君の炎を封じること。封じるとは、これ以上の炎が出ないようにすることを指す。だが果たして炎はそれだけか? あったはずだ。私たちを焼き尽くす炎が」
転がったワンダーワイスの頭部が徐々に膨れ上がる。
それを見た元柳斎は全てを察した。藍染を焼き尽くすために周囲一帯へと仕掛けた獄炎がそこに封じられているのだとすれば、それが炸裂した時に何が起こるか想像に難くない。特にその炎の使い手である元柳斎は誰よりも理解していた。
このままでは現世を守るために展開した転界結柱すらも消し飛ばし、元の空座町を現世へと呼び戻してしまうと。更にはその炎によって本来の空座町を蒸発させてしまうと。
だからこそ、元柳斎はその肉体によって破裂しそうなワンダーワイスの頭部を抑え込んだ。最強最古の死神がその霊圧によって抑え込む。だがそれでも圧縮された流刃若火の炎を抑え込むことができず、大爆発が広がった。
「ありがとう、山本元柳斎。君のお蔭で私の世界は守られた」
偽の空座町と、本来の空座町は守られた。
山本元柳斎が自分自身の身を挺して流刃若火の炎を受け止めることで。しかし流石の元柳斎も全身を焼き焦がして倒れる。生きてはいるが、かなりのダメージを負っていた。
そんな彼にとどめを刺すべく、藍染は鏡花水月を手に近づいた。
しかし不用意に近づく藍染を待っていたのだ。
元柳斎は焼け焦げた左手によって藍染の足を掴む。そしてニヤリと笑みを浮かべた。
――破道の九十六、一刀火葬
流刃若火に勝るとも劣らない灼熱が巻き起こる。
奇しくも、それは痣城が
◆◆◆
火傷を負いながらも藍染は一刀火葬から逃れる。
しかしその瞬間を狙って一護が月牙天衝を放った。それによって初めて藍染に明確な傷を負わせる。だが切り裂かれた衣服を引き裂き、胸に埋め込んだ崩玉を見せつけた。月牙天衝による傷が急速に治っていく瞬間を見せつけるためでもある。
そして藍染は慌てることなく、ただ一護の霊圧を確かめ、その成長を喜んだ。その理由は藍染惣右助が仕組んで黒崎一護という特異な存在を生み出したからだ。
「私は君が生まれる前から君のことを知っている」
一護に動揺が走る。
毒のように侵食する藍染の言葉は徐々に一護の戦意を奪い取っていた。だが、そこに予想外の人物が乱入する。
黒崎一心。
霊能力などないと思われていた一護の父であった。だが、彼は元死神だったのだ。そんな人物の登場に一護の動揺は加速していくが、それをそっちのけで浦原喜助や四楓院夜一も乱入する。
崩玉を取り込んだ藍染に次々と攻撃を仕掛けていく。
静観を決めていた市丸が一護へと襲いかかり、藍染は一心、浦原、夜一の三人で対処し始める。
だが、ありとあらゆる手段を以てしても藍染を倒せない。
浦原喜助の放つ破道の九十一番、
やがて藍染は崩玉と完全に適合する。
「崩玉の真の能力は死神と虚の境界を破壊することではない。周囲の意志を取り込み、それを具現化することだ。ようやく、崩玉が私の意志を理解した」
世界が凪となった。
隊長格の数倍はあるであろう藍染の霊圧が全く感じ取れなくなったのだ。
それは藍染惣右助が死神や虚を超越した別次元の存在へと至ったことを意味していた。つまり、同じ次元に立つ者にしか藍染の霊圧を感じ取ることができない。
この時点で、彼が戦う意味は無くなった。
藍染にとってこの戦いは自らが進化するための儀式に過ぎない。死神も虚も超越した今、彼が為すべきことは本物の空座町で王鍵を創造することである。
「ギン、穿界門を開くんだ」
「はい」
藍染と市丸が穿界門の奥へと消えていく。
一護たちはただ、それを見守ることしかできなかった。
「行くぞ一護。俺たちで空座町を守るんだ」
黒崎一心は我が子を励ます。
一護だけが、藍染を倒せると信じて。
ダイジェスト気味にざっくりと