綺麗な剣八   作:NANSAN

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23 卍解

 剣八は藍染へと斬りかかる。

 だが当然のように藍染は防いで切り返す。

 それをまた剣八が防いで反撃し、藍染は回避して背後から斬りつける。

 二人の戦いは一太刀で空気が裂け、大地が割れ、木々が薙ぎ倒される。

 

 

「素晴らしいぞ更木剣八。崩玉を従えたこの私とここまで打ち合えるとは。やはり君との戦いを避けたのは正解だった」

「あなたも痣城剣八と同じことを言うのですね。それほどの力を持っていながら、確実を取る。弱者の戦い方をする。私には理解できません」

「私こそ君の在り方は理解できない。戦いなど手段の一つに過ぎないのだ。確実に勝利できなければ意味がない」

「戦いとは意味を見出すものではありませんよ」

 

 

 野晒が振るわれ、大地が爆散する。

 しかし藍染は瞬間移動したかのようにその場から離れていた。

 

 

「私の戦い方は剣だけではない。破道の九十九、五龍転滅」

 

 

 大地の霊脈より霊子の龍を生み出し、対象を飲み込む禁術に近い鬼道だ。本来ならば発動することすら不可能なそれを、死神を超越した藍染は詠唱破棄で発動して見せた。

 防御など不可能。

 全方位より押し寄せる霊子の龍が剣八を飲み込もうとする。

 だが、そんなものは剣八に通用しない。

 

 

「卍解・呑晒(のざらし)

 

 

 剣八の卍解は禁忌の破道すら飲み干す。

 五龍は剣八の力となり、その全てが藍染へと返される。一瞬のうちに藍染の懐へと飛び込み、またその一瞬が終えるよりも先に大太刀を振り切っていた。

 藍染の身体に斜めの深い傷が走り、血が噴き出る。

 だがそれで終わることはない。

 瞬時に七度、斬撃が放たれた。藍染はその内の四つを防ぎ、三つを身に受ける。

 

 

「ぐっ……」

「私の本気で両断できませんか。ならば」

 

 

 激しい攻勢を止めることなく、何度も何度も藍染を切る。

 卍解によって尽きることない霊力を手に入れた剣八は、全ての攻撃が全力全開。常時全開の更木剣八を相手に一秒と肉体の原形を保てるはずがないというのに、藍染は戦いを続けることができていた。

 崩玉のお蔭で藍染は死なない。

 死神という存在を超越し、霊圧すら感じ取れないほど別次元の魂魄へと至った。今の藍染から霊圧を感じ取れるのは、彼と同じく死神や虚といった存在を超越した者だけだろう。

 

 

「調子に乗るな! 更木剣八!」

 

 

 崩玉を取り込んでも尚、更木剣八に圧倒される。

 それは許されるべきことではない。

 霊王宮へと攻め入り、零番隊を倒さなければならない藍染にとってここは通過点に過ぎないのだ。こんなところで足止めを喰らうわけにはいかない。

 そして崩玉はその意思に応え、藍染に新たな進化を与える。

 まるで羽化のように。

 藍染の背に翅のようなものが生えた。それだけではない。霊圧こそ感じ取れないが、剣八は圧のような何かを感じる。

 

 

「これは……」

 

 

 まだ強くなる。

 それに剣八は歓喜した。

 本気の力をぶつけても潰れない藍染に狂気した。

 

 

「もっと力を魅せてください! 藍染惣右介!」

「調子に乗るなと言っている。その余裕の態度。私の完全詠唱の鬼道を受けても保てるか!?」

 

 

 剣八は大太刀を両手で握り、天へと掲げた。

 全てを飲み干す彼女の卍解が周囲の霊子結合すら引き千切り、呑晒へと力を与える。

 

 

「その霊子吸収能力すら超える私の鬼道で以て潰れよ!」

 

 

 そして藍染は左手を掲げた。

 

 

 

 

 

 明滅する陽射し

 

     反転する旭

 

   地を滅し 奥底へと引きずり込む奈落

 

 理を排し 法の暁を迎えさせよ

 

      臥龍(がりょう)の目覚めを待ち望む

 

 一刻の天

 

    双対の魄

 

       三界の態

 

          四法の獣

 

             五行の龍

 

 

 ―――――いざ途絶えよ

 

        破道の九十九、五龍転滅

 

 

 

 大地が割れる。

 世界がうねる。

 莫大な霊子によって構成された五つの龍が天地一切を埋め尽くした。

 

 

「崩玉と融合した私が放つ完全詠唱の五龍転滅だ! 君如きではもはや理解すらできまい!」

 

 

 地上から天空にかけて、五匹の龍が昇っていく。

 それは竜巻のようであり、その内側に囚われたが最後、もはや魂魄は欠片となるまですり潰される。ただ一つの鬼道で環境すら変えかねない。

 それが五龍転滅だ。

 

 

 

 

 

 

 無数の斬撃が走る。

 

 

 

 

 

 

 天へと上る霊子の龍は一瞬にして砕け散った。

 そしてその内側には全身から血を流す剣八がいた。

 砕け散った霊子は卍解・呑晒によって飲み干され、剣八へと還元されていく。

 

 

「まだ生きているか……! 更木剣八!」

剣八(わたし)を殺せるのは剣八のみ。その意味が分からないあなたではないでしょう?」

「ならば私がその称号ごと奪い去ってくれる!」

「できるものなら!」

 

 

 再び二人は剣を交える。

 だが今度は藍染の剣が砕かれ、その身体すら両断した。藍染は瞬時に身体を繋げて再生するも、一度後手に回ればもう攻めに転じることなどできない。

 五龍転滅すら引き裂いた剣八の斬撃は無数に及び、その全てが藍染を追い詰めていく。

 超越した魂をただの霊圧で圧倒する。

 それが更木剣八という死神だ。

 

 

「……いいだろう」

 

 

 激しい撃ち合いの中、藍染は呟いた。

 

 

「本来ならば零番隊を相手にするまで取っておく必要があった。だが君にこそこれを使うに相応しいと認めよう!」

 

 

 不意に藍染の動きが止まる。

 剣八はその隙を見逃すことなく、藍染の心臓を刺し貫いた。

 だが藍染はゆっくりと左手で呑晒(のざらし)を掴む。

 

 

「卍解・明鏡止水鏡花水月」

 

 

 藍染は卍解を以て対抗する。

 すると藍染の姿が山本元柳斎へと変貌した。更にその元柳斎は斬魄刀を抜き、燃え上がるような霊圧を解き放った。そして一言告げる。

 

 

「卍解・残火の太刀」

 

 

 その解号によって、右手に握る刀が変貌する。焼け焦げた小さな刀へと。

 剣八も何かを感じたのか、心臓部に突き刺した大太刀を引き抜きつつ瞬歩で引き下がった。だがその元柳斎の胸元には傷一つなく、無傷で佇んでいる。

 そして元柳斎の背後から藍染が姿を見せた。

 

 

「恐ろしいか。更木剣八」

「それは一体……」

「私の鏡花水月は五感を支配する完全催眠の能力だ。そして卍解・明鏡止水鏡花水月は完全催眠下にある者の感覚を呼び起こし、現実にする。これは山本元柳斎の卍解だよ」

「他者の卍解を……?」

「その代償に一度でも卍解を使えば鏡花水月の影響は全て消えてしまう。また現実化できるのは鏡花水月にかけた者だけだ」

 

 

 藍染がそう語る間にも空気がどんどん乾いていき、肌や唇が張ったような感覚を覚える。また喉が酷く乾いた気がした。

 炎はない。

 だが、解き放たれた熱に限界はない。

 

 

「君が力と力での勝負を望むというのなら、私はそれに応えよう。この最強最古の斬魄刀で」

 

 

 元柳斎により軽く、ただの素振りのように残火の太刀が振るわれる。

 剣八は自身の魂が放つ激しい警告に従って横に跳び、回避した。すると先程まで剣八がいた場所が綺麗に裂けた。まるでバターのように地面までもが鋭利に切り裂かれ、切先の直線上にあったものが全て消滅する。

 だがこれだけではない。

 

 

「この一刀で終わらせよう」

 

 

 藍染が告げると幻の元柳斎は残火の太刀を掲げた。

 そこには炎も霊圧も感じられない。だが、剣八は明確な死を意識する。

 しかし逃げる訳にはいかない。

 何故なら彼女は剣八なのだから。

 

 

「この一刀、全てを込めましょう」

 

 

 剣八も呑晒を構えた。

 周囲の霊子を引きちぎって飲み干し、剣八に力を与える卍解。だがそれは剣八に継続戦闘能力を与えるというだけのものではない。

 

 

 

 二人は同時に動く。

 

 

 

 

 残火の太刀 北 天地灰尽

 

 

 呑晒 奥義 八千流(やちる)

 

 

 

 熱と斬撃が衝突する。

 万物を消滅させる熱は剣八へと迫り、剣八の放つ無数の斬撃がそれを押し返す。

 二つの極限に至った一撃は尸魂界の一角を丸ごと消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 




五龍転滅のオリジナル詠唱。
OSR値の高い言霊を紡ぐことのなんと難しいことか

あとは藍染様の卍解、明鏡止水鏡花水月。
なんで原作では使わなかったのかと良く議論されますが、私は零番隊との戦いでつかうつもりだったと予想。一度使えば鏡花水月の影響がリセットされてしまうなどのリスクがあるのでホイホイ使えないのではないかと。
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