……死神代行消失篇?
剣八が活躍する余地がなかったからカットよカット。全ての活躍の場を”あの人”に持ってかれちゃったからなぁ。仕方ないネ。
??さん「挟んでおいたよ」
28 滅却師
死神代行、黒崎一護の活躍もあり藍染の乱は収束した。
彼の死神の力全てと引き換えに―――。
そしてしばらく。
初代死神代行にして尸魂界を裏切った男、銀城空悟が一護に接触した。それは一護に宿る
銀城にとって裏切ったのは死神の方。
それがある貴族による謀略だったとしても、彼の死神に対する憎悪は薄れることがない。ただ復讐のために一護を利用したのだ。
だが、尸魂界も消息を絶った銀城をずっと警戒していた。
二代目死神代行となった黒崎一護に必ず接触すると考えていたからだ。そして一護の死神の力を取り戻させることを考えていた浦原喜助と黒崎一心の利害と一致したことで、護廷十三隊総隊長はある決断を下す。
――隊長、副隊長は斬魄刀に霊力を注げ
浦原喜助が用意した特別な斬魄刀に隊長格の霊力が注がれ、その斬魄刀によって一護の心臓を貫く。
すなわち死神の力の譲渡を行い、その刺激によって彼の力を復活させるのだ。最後の月牙天衝によって全ての霊力を失った一護だが、死神としての起源が全て消失した訳ではない。失われたがそれは彼の奥底に眠る本来の力の残滓でしかなかった。つまり、一護から死神の力はすべて失われたわけではなかった。霊力を注ぎ、その力を刺激してやれば復活するのは道理。
だが、霊力を注ぐ隊長の中には調子に乗ってふざけたことをする者がいた。
綺麗な剣八こと、更木剣八である。
彼女は自身の保有する膨大過ぎる霊力を存分に注ぎ込み、一護の強化復活を願ったのだ。
幸か不幸か、浦原喜助の用意した斬魄刀はそれに耐えてしまった。
そして一護には膨大過ぎる霊力を受け止める器があった。
だからこそ、彼は復活したのだ。
正史よりも遥かに膨大な霊圧を保有する黒崎一護として。
◆◆◆
十二番隊。
そこは死神が所属する護廷十三隊の中でも特殊な部隊だ。戦闘力はそこまで重視されず、研究成果を上げた者が取り立てられる。筆頭である涅マユリも卍解こそ使えるが、純粋な戦闘能力は副隊長にすら劣る場合もある。
ここは技術屋が多く所属しているのだ。
「虚が次々と消滅!」
「魂魄境界傾斜、修正します!」
「だめです! 追いつきません!」
モニター室で状況を観察していた彼らは悲鳴のような報告を繰り返す。
それは死神として見過ごせないデータが表示されていたからだ。
本来、この世とあの世では魂魄の数や質量がバランス良く配置されていなければならない。そうしなければ世界が片方に寄りかかり、いずれは崩れてしまう。死神は現世を彷徨う
しかし今、それが著しく狂わされていた。
無数の虚が消滅させられているからだ。
「隊長、これは……」
阿近は冷や汗を流しつつマユリへと尋ねる。
まるで答え合わせを求めるかのように。
「こんな芸当ができるのは奴らしかない……」
マユリも阿近と同じ結論に至っていた。
いや、虚を完全消滅させることができる存在など一択しかない。誰でもその結論に至るのは道理であった。
「
それは新たな戦いの始まりであった。
◆◆◆
更木剣八の朝は早い。
日の出と共に起床し、まずは水浴びをする。男ばかりの十一番隊だが、彼女の水浴びを覗く
時間のある時は自身の修行もしているが、基本は真面目に仕事をする。
「やちる。そこの書類を取ってください」
「はいはーい。これなに?」
「道場の修繕費に関する書類ですよ。うちの隊士たちはよく壊しますからね。あと喧嘩も多いですから四番隊に支払う治療費もかなりのものです」
戦闘部隊と称されるだけあって、十一番隊の隊士たちからは生傷が絶えない。ここで傷一つなく過ごせるのはいつも逃げている臆病者か、圧倒的な強者だけだ。
朝稽古を終えて隊首室で仕事をしていた剣八の元へ、裏廷隊の者が現れた。彼は障子の表で膝をつき、その陰だけが部屋に差し込む。
「更木隊長、緊急の伝令でございます」
ただの報告で裏廷隊が動くことはない。
剣八は筆を止め、問い返す。
「何事ですか?」
「一番隊副隊長、雀部長次郎殿が亡くなられました。隊葬です」
「どういうことですか? あの方が病死ということはないでしょうし。侵入者が現れたという話も聞きません。まさか内部犯ですか?」
「いえ、下手人は賊ということが判明しております」
「賊……?」
それには首を傾げざるを得ない。
瀞霊廷は侵入者を感知すると殺気石という材質の壁が天から降ってくる。これはあらゆる霊的存在を分解する波動を放っており、侵入を試みることは死を意味する。よほど絶大な霊子密度を誇る霊体であれば生きて通れるかもしれないが、大ダメージは免れない。
そんな状態で雀部長次郎を殺せるとはとても思えず、そもそも侵入者がいるならば警報がなるはずだ。
おかしい、ということは剣八にもすぐわかった。
「詳しい事情は分かっていますか? 賊の正体は?」
「申し訳ございません。私には知らされておらず……」
「分かりました。隊葬はいつですか?」
山本元柳斎重國の右腕、雀部長次郎の戦死。
それは瀞霊廷中に驚愕をもたらした。
◆◆◆
賊軍、
彼らは完璧な防備が敷かれた一番隊隊舎へと現れた。山本元柳斎重國へと宣戦布告するためである。その道中で雀部が立ち塞がった。だが彼はあっさりと殺害されてしまった。
卍解を会得していながらも元柳斎の副官であり続けた彼は、初めて実戦で卍解を使い、敗れた。
賊はこう言い残した。
五日後、侵攻する……と。
「賊の正体は……
隊首会にてマユリはそう述べた。
しかしどのようにして瀞霊廷へと侵入したのかは不明。敵勢力の全貌も不明だ。だが、このどこからともなく現れた侵入者によって雀部だけでなく一番隊の隊士も何十人と一方的に殺される。
そして何よりも雀部の遺言が不気味であった。
――奴らは卍解を……
死神にとっては切り札であり、会得すれば必ず歴史に名を刻まれるとも言われる斬魄刀戦術。それが卍解である。始解と卍解では五倍から十倍の戦闘力増加が見込めるとされており、隊長ならば全員が習得しているものだ。
副隊長で習得している雀部は間違いなく強者であった。
千年以上も元柳斎に仕え続けた彼が最期に残した言葉。
それによって、賊が卍解を消すか封じるかの手段を手にしているという可能性が浮かび上がった。
「涅隊長」
予想外の敵に隊長たちが黙る中、元柳斎は重々しくその名を呼んだ。
いや、彼が炭火の如く沸々と熱のような霊圧を発していたからこそ、誰もが黙っていた。忠臣の死で誰よりも心を痛め、報復に燃えている元柳斎は僅かでも敵の情報を求めていた。
しかしマユリは目を逸らす。
「現在判明しているのは以上だヨ」
「ならば探し出せ。よいな」
薄っすらと目を開き、元柳斎は告げた。
敵が宣告した日まで待つ気はない。
だが無情にも、時は待ってくれない。護廷十三隊はほとんど準備を整えることができず、ただ厳戒態勢のままその日を迎えることになる。
◆◆◆
宣戦布告の日。
剣八は背にやちるを乗せ、腰に頑丈な剣を下げて佇んでいた。左目には眼帯、首にはチョーカー、そして斬魄刀は使えない。中央四十六室に始解すら禁じられているのだから。
彼女が立つのは十一番隊隊舎の中庭。
そこに隊士たちを集め、戦闘態勢を整えていた。いつでも戦えるように。
「隊長」
「一角ですか。準備のほどは?」
「野郎どもはいつでも行けます。勿論、俺も」
「分かりました」
剣八は振り返る。
静かに佇む彼女はやはり静謐さを湛えており、封じられながらも底知れぬ霊圧を感じられる。それはすなわち、更木剣八は力を封じられても隊長として相応しい力を秘めていることの証明であった。隊士たちは息を飲み、瞬きすらせず彼女の言葉を待つ。
「強敵が来ます」
雀部の他、多数の一番隊隊士が殺害されたことは既に知れ渡っている。
これだけで敵勢力、
改めて剣八が告げたことで、流石の彼らも緊張を隠せない。
「強大な敵。実に結構です。良い斬り合いができることでしょう。私たちの戦いに連携など不要。ただ強敵を見つけ、挑みなさい。それがこの更木剣八の部下であるあなたがたに許されたことです。一死を以て大悪を誅す。それが護廷十三隊の意気と知りなさい」
それは山本元柳斎重國の言葉だ。
この尸魂界に仇為す者は死しても食らいつき、仕留める。それが死神の役目だ。そして十一番隊に与えられた使命である。
―――青白い火柱が天を衝く。
――そこから現れたのは
――――千年前、護廷十三隊に敗れた残党と侮ることなかれ。
――ほぼ不意打ちで瀞霊廷内に出現した
「悪いな。皆殺しって命令なんだわ」
―――侵略を開始した。