敵勢力、
その瞬歩は誰も追うことができない。
部下の隊士たちも追うことはない。
十一番隊は目につく敵を殺す。
ただ、そう命令されているのだから。
「出たな特記戦力、更木剣八! 私は"Q"……
「邪魔」
まず一人。
悠長に自己紹介をしていた滅却師を切り殺した。見た目も霊圧も弱そうで、何より剣八が望む戦いを演じることはできそうにない。故にさっさと殺した。
次の相手を探していると、爆音と共に無数の瓦礫が剣八を襲う。
しかし剣八はそれをただの霊圧で吹き飛ばし返した。封じられても抑えきれない絶大な霊圧によってその瓦礫ごと周囲を磨り潰す。
「次はあなたですか」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
現れたのはゴリラとも見間違うほど巨漢の男。
彼は"R"の
だが、それだけ。
力押しの能力はそれ以上の力によって完封される。
「弱い」
ただの一振りでやはり真っ二つとなり、その男ジェローム・ギズバットは死亡した。あまりにも呆気なく、剣八は呆れながら次の標的を探す。
「剣ちゃん、次はあっちに行ってみようよ!」
「ええ、そうで―――いえ、新手が来ましたよ」
「わ! つるりんそっくり!」
やちるが無邪気に指を差して爆笑する。
その先には卵のようにつるりとした頭部が特徴的な男が立っていた。額にある第三の眼が不気味で、それが一瞬光る。その瞬間、彼の姿は更木剣八そのものとなっていた。
「ああ、そういうタイプですか」
姿と力を真似る能力。
それが"Y"の
だが決定的に不足しているものがある。
確かに見た目と能力は完全にコピーしているが、まるで霊圧が足りていない。剣八は瞬歩でロイド・ロイドの目の前へと移動し、左手でその首を掴んで持ち上げた。自分と同じ姿の人間を持ち上げているという不思議な状況だが、剣八は極めて冷静である。
眼前にいるのは敵。
そして不完全でみっともない汚物だ。
「次は真似る相手を選びなさい」
彼女はそう告げて握り潰す。
すると更木剣八に化けたロイド・ロイドの首が弾け飛んだ。ただの霊圧と握力によって潰されたのだ。転がった頭部と胴体が元の姿に戻る。能力が解けたのだろう。
「次があれば、の話ですが」
左手にべっとりと付いた血を払いつつ告げた。
剣八は少し不機嫌であった。自分と同じ姿でありながらあまりに脆弱であったからだ。せめてもう少し霊圧が高ければ、肩慣らし程度にはなっただろう。
「さてと、次は……」
まともな相手だといいのに。
そんな願いを秘めつつ苦手な霊圧知覚で最も強い霊圧を探り始める。しかし、そこに不意打ちが飛んできた。
不意に剣八の頬にハートのマークが浮かび上がる。
「ゲッゲッゲ」
酷く耳に障る笑い声がする。
崩れた瓦礫の陰から、酷く醜い褐色の男が現れた。肥満体質、サングラス、長い髭、処理されていない鼻毛などアウトを幾ら付けても足りない暴力的な見た目の滅却師である。
「はぁ、哀しいよネッ。戦いっていうのはいつだって哀しい。それはそこに愛があるからなんだヨネ! さぁ、ミーを愛して! ミーも君のことを愛するんだヨ!」
その気味の悪さにはやちるですら眉を顰めるほどであった。
ただ、剣八はジッと彼を見つめる。
「ミーはぺぺ・ワキャブラー。
「あなた……」
「特記戦力、更木剣八! ミーと愛し合おう!」
「ええ、やりましょう」
その瞬間、ぺぺは両断されていた。
「え……?」
「残念。
トドメとばかりに斬撃が放たれる。
"L"を与えられた滅却師ぺぺ・ワキャブラーは細切れになって消し飛んだ。
能力が消えたのか、剣八の頬からハートマークも消失した。
◆◆◆
四人の滅却師を続けざまに瞬殺した剣八の姿を遠目から眺めている者がいた。
それは"U"の
「や、やっべー。流石は特記戦力。まさかぺぺの野郎の力も効かねぇとはな」
更木剣八は特記戦力として特に注意されていた死神である。少なくともまともな戦闘で勝利することはできず、搦め手を使おうにも始解の力で喰われてしまう。慎重なナナナは
というか、どうやったらあんな化け物に勝てるのかさっぱり分からなかった。
「俺の
冷静な男、ナナナは壁を背に決意する。
そしてもう一度剣八の姿を確認するべく、そっと覗き込んだ。
「見つけましたよ」
「がっ!?」
顔面を掴まれ、そのまま持ち上げられる。
何が起こったのか理解できず、ただ混乱するばかり。
グシャリと頭蓋に響く音が彼の聞いた最後の感覚であった。
◆◆◆
視線を向けていた名も知らぬ滅却師の頭部を握り潰し、死体を投げ捨てる。弱すぎて剣を使うまでもなかったというのが残念でならない。
剣八はひとまず強い霊圧を感じ取れる場所へ向かって駆け出す。
その瞬間、松本乱菊の
『敵は卍解を奪います! 決して卍解をしないでください!』
それは日番谷冬獅郎の卍解・大紅蓮氷輪丸が奪い取られたことを告げる伝令であった。滅却師は卍解を消したり無効化するわけではない。奪い取り、自身のものとして使うことができるのだ。
霊子を収束し、力とする一族らしい技術である。
だがそれは少し遅い。
ほぼ同時に砕蜂、朽木白哉、狛村左陣も卍解し、奪われてしまったのだから。
「なるほど。それが苦戦している理由ですか」
流石の剣八も戦況が優勢なのか劣勢なのかくらいは分かる。瀞霊廷中を埋め尽くそうとする滅却師の霊圧を感じ取ることができるので、間違いなく劣勢だ。
精々、剣八が虐殺した区域が優勢となっている程度だろう。
「ならば私が大将首を獲ればすべて解決。素晴らしい案です」
「さっすが剣ちゃん!」
「ええ、大将らしき霊圧は先程から感じられます。誘っているのでしょう。これに乗らない手はありませんよ!」
「いっけー!」
「やはり最も早く来たか、更木剣八」
「ええ、あなたの首を獲りに」
更木剣八は邂逅する。
◆◆◆
同時刻、黒崎一護は虚圏で戦っていた。
その理由は虚圏が謎の勢力に襲われていると知ったからである。ネルの助けを求める声に応え、一護、織姫、チャドは急いで虚圏へと向かった。
「私は
そう名乗った眼鏡の滅却師は一護へと斬りかかる。
彼の手には剣が握られており、それで滅却師を名乗ることに一護は違和感を覚えていた。
「石田の奴が滅却師は弓しか使わねぇって言ってたけどよ。あんたは違うみてぇだ」
「ほう。石田雨竜ですか」
「あ? なんで石田のこと知ってやがんだ?」
「それは……いえ、あなたには関係のないことです。何故なら、ここであなたは死ぬのだから!」
キルゲは剣、弓を切り替えて巧みに戦う。
攻撃力を高める
このままでは負けると判断したキルゲは切り札を切った。
彼の体が輝き、霊子の翼が生える。
「
輝くキルゲの光輪へと霊子が収束されていく。
霊子結合すら破壊して強制的にそれを従える能力。それこそが
周囲から集めた霊子をそのまま攻撃に用いるため、その攻撃力は絶大だ。
キルゲの猛攻が一護を襲う。
だが、一護はそれすらも上回っていた。
「月牙天衝!」
黒き一撃がキルゲを切り伏せる。
霊子を隷属させる光輪が破壊され、その能力が一時停止した。追撃しようとした一護よりも早く、遅れて虚圏へとやってきた浦原喜助が介入する。大砲のようなものでキルゲを撃ち抜き、倒したのだ。
「申し訳ありませんが介入させて頂きました」
「浦原さん……」
「それよりも黒崎さん。現在、尸魂界が何者かに襲撃されているようです。すぐに
「なんだって!?」
「虚圏の状況から見て敵は滅却師と考えて間違いないでしょう。さぁ、ここはアタシたちに任せて早く!」
ここで初めて尸魂界の状況を聞き、焦る一護。
また同時に浦原から尸魂界と繋がっている伝令神機を受け取り、阿近と通信を開始した。また浦原は手早く
そこに一護が飛び込む。
一度は世界を救った死神が。
尸魂界の英雄、黒崎一護が駆け付けようとしていた。
「させませんよ」
倒したはずのキルゲ・オピーが立ち上がる。
腹に大穴を開け、決して立ち上がれないはずの彼がだ。滅却師に伝わる最高戦闘術、
同じ滅却師であってもごく一部の天才のみが至れる境地。
それによって彼は最後の仕事をしようとしていた。
黒崎一護を尸魂界へ辿り着かせないという任務を。
「私は"J"!
彼の放つ矢は
滅却師(を剣八)が蹂躙
ベレニケ「解せぬ」
ジェローム「解せぬ」
ロイド「解せぬ」
ペペ「解せぬ(もう愛なんて信じない)」
ナナナ「解せぬ(切実)」