具象化した斬魄刀、天鎖斬月は一護の肩を引き前に出る。そして一護を庇うかのようにユーハバッハの前へと立った。そんな天鎖斬月を見てユーハバッハは笑みを浮かべる。
「懐かしい顔だ」
「……」
「やはり一護。お前は私の元にいるべきなのだ」
「耳を貸すな一護!」
ユーハバッハの言葉を遮り、天鎖斬月は叫ぶ。
一護も精神世界で彼と会ったことはあったが、こうして具象化した天鎖斬月と会うのは初めてだ。そしてこうして見比べたことで余計に言葉を詰まらせる。
「斬月、アンタは……」
「私が……
「っ!」
一護は天鎖斬月の背後に斬月の姿を幻視する。
斬月の姿はあまりにもユーハバッハと似ていた。どう頑張っても否定できないほどに。
心を揺らし、思わず天鎖斬月の切先を下げた一護にユーハバッハが問いかける。
「一護よ。お前の父は確かに死神だ。だが、お前の母は何者だ? 黒崎真咲は何者か知っているか?」
「まさか……」
「そうだ。お前の母は我が子孫……
「嘘だ! 俺は一度だって滅却師の力なんか!」
「それはお前の勘違いだ。現にお前は藍染惣右介を滅却師の力で倒したのではないか。滅却師の力をたった一瞬で使い尽くす、
「なん……だと……」
それに動揺したのは一護だけではなかった。
すぐ側で頭を垂れていた雨竜ですら心を揺らし、思わず顔を上げる。
かつて一護たちが旅禍と呼ばれ瀞霊廷に侵入した時、石田雨竜はその力を使った。滅却師としての霊子収束能力を限界を超えて高め、解放することによって僅かな間だけ圧倒的な力を得る手法。それが
これによって雨竜は力を失い、後に父である
「嘘だ! あれは斬月の、最後の……なぁ、そう言ってくれよ斬月!」
「……一護」
「斬月」
「すまない、一護」
縋るように見つめる一護に対し、天鎖斬月はただ目を伏せて謝った。
天鎖斬月が一護に嘘を吐く理由はない。
彼の謝罪がどういう意味を持つのか、それが分からない一護ではなかった。ただ、理解するのと受け入れるのとでは話が別である。
「本当、なのか……」
「私は斬月ではない。お前に眠る
虚化。
その力は破面との戦いで一護を大きく成長させ、助けてくれた。またウルキオラとの戦いで死に瀕した時も魂の内に眠る虚が一護を助けた。
斬月が斬魄刀として教えてくれたのは月牙天衝ただ一つのみ。
また斬月の使い方ですら斬月ではなく、内なる虚が……真っ白な死覇装の白一護が教えてくれた。
「だが一護」
天鎖斬月は優しく、悲痛な表情で語りかける。
「私が最後の月牙天衝を教えた時に語った言葉に嘘偽りはない。私はただ、お前を護りたかった。傷つきながらも戦いに身を投じていくお前を案じていた。だからこそ、過ぎたる力を持たぬように、戦いへと突き進まぬようにした」
「アンタ……それで」
「軽蔑してくれてもいい。私はお前を騙していたのだから」
「だったらなんで今更!」
「お前は力の多くを封じられ、限られた力で戦い抜いた。どれだけ打ちのめされても、弱くとも、最後まで戦うことを選んだ。戦いから遠ざけたいと願うほどにお前は戦いへと進んでいった。護るために」
一つのものを護り通せるように。
そんな願いを込めて付けられた一護という名に恥じない生き様であった。そんな一護の魂を写し取られた斬月もまた、一つのものを護りたかったのだ。
黒崎一護というかけがえのない存在を。
「一護。私は葛藤し続けていた。滅却師の力で霊子を収束し、浅打という斬魄刀の器をなくして斬魄刀のようなものを具現化し続けた。私はお前に力を貸していたわけではない。お前から力を奪い続けていただけなのだ」
天鎖斬月はコートの前を開き、その内側を見せつける。
そこには燃え上がるほどの霊力が形作った剣のようなものがあった。一護には何となく、その剣の正体を理解した。
「そうだ。これこそお前の持つ本来の力。自分自身のことを何も知らなかったお前が持つには大きすぎた諸刃の剣だ」
この事実を斬月は教えるつもりがなかった。
死神、虚、そして滅却師の力を内包した一護は本来から超越者となる素質を有している。目の前で見せられた一護もそれを実感した。
「黒崎一護、この
ユーハバッハが特徴的な滅却師のシンボルを取り出す。
「そして私に仕えよ」
「……俺に何をさせる気だ」
「待て! 奴の言葉に耳を貸すな一護!」
天鎖斬月はユーハバッハと一護の間で両手を広げ、一護を護るために立ち塞がる。決して一護に何も見せないように。
だが、一護は天鎖斬月の肩を掴んで前に進み出た。
そして目を見開く。
「テメッ……!」
一護が眼にしたのはユーハバッハから伸びる影である。
その影はまるで扉のような形となり、その奥には白い衣服に身を包んだ長身の男がいた。だが、一護にとってそんな男はどうでもいい。その男の足元に倒れている髭面の男と二人の少女が問題であった。
「親父! 夏梨! 遊子!」
倒れている三人はここにいるはずのない人物。父と双子の妹たちであった。
すぐに一護は動こうとするが、三人の側にいる長身の男がそっと両手を妹たちの首に当てる。それによって一護は動くことができなくなった。
「悪ぃな。皇帝陛下の命令なんだわ。俺もホントはこんなことやりたくないよ。でも仕方ないんだ。だから頼むぜ。動かねェでくれよ」
「先に俺の能力を言っておくぜ。俺は対象の致死量を正確に読み取り、自由自在に変えることができる。俺の手にかかれば血液すら毒になるのさ。だから逆らわないでくれよ。こんないたいけな少女を殺すのは俺だって心が痛い」
「テメェ……ッ!」
「大人しく陛下に従ってくれよ。致命的なことになる前にさ」
動けぬ一護は歯を食いしばり、その場で留まる。
人質という弱点を作られた一護はいつもの威勢すら失っていた。
そんな時、倒れている黒崎一心の指がピクリと動く。今の一心は死覇装を纏っており、死神としての姿になっていた。彼は全身から冷や汗を流しつつ顔を上げ、一護を見つけて口を開く。
「よ、よぉ……一護」
「親父!」
「情けねぇ姿を見せちまったな。そ、それに夏梨と遊子を護れなく……ぐっ」
荒い息を吐く一心を見せつけられ、一護に焦燥が募っていく。
だが、一護は再び天鎖斬月の方を見た。すると天鎖斬月はそのコートの中に隠し持つ、一護の本当の力を差し出した。ただ、天鎖斬月の表情は酷く曇っていた。
「……アンタは俺に何をさせたいんだ。ユーハバッハ」
「一護。お前は滅却師となり私と共に尸魂界へと侵攻せよ。お前に選択肢はないはずだ」
家族か、仲間か。
酷な選択であった。
一心もまた、息子にそのような選択を強いてしまった自身の弱さを嘆いた。必ず守らなければならない存在を苦しませている自身に絶望しかけた。
「分かった。アンタに協力する。だから……」
一護の答えは初めから決まっているようなものだった。
天鎖斬月の持つ力を受け取り、ユーハバッハへと近づく。すると差し出された
同時に一護の本当の力、真の斬月が体へと吸い込まれていく。
溢れる力は
「……だから絶対に親父たちには手ェ出すんじゃねぇぞ」
それは天鎖斬月と同じフード付きの黒いコートであった。まるで夜を思わせるそのコートの下には白いシャツのようなものも見えており、死覇装とは程遠い。
何より一護の右手には黒い刀ではなく、黒い三日月を思わせる弓が握られていた。
一護、滅却師ルート
今までこのルートの二次は見たことないので取り入れました。賛否両論あるかもですけどね。
参考はブレソルのアレです
知らない人は「滅却師 一護 ブレソル」で画像検索して…