瀞霊廷が塗り替わった直後から、護廷の死神たちは劣勢を強いられていた。地の利を奪われてしまったという一点だけでも防戦を強いられる要因となり、攻めることができずにいた。
「君たち程度じゃ僕に触れることすらできないよ。だって僕、
「僕が望むのは更木剣八だけだよ。君たち程度の雑魚死神じゃ、相手にならない」
彼の能力は想像の具現化。
思えばそれが現実となるその能力を前にして戦う術を持つ者は滅多にいない。挑む死神はグレミィに近づくことすらできず、その場で倒れ伏していた。彼らは激痛に呻くも、起き上がることすらできない。
「じゃあね。バイバイ」
グレミィは柔らかな笑みを浮かべつつ手を振る。
すると地面が暗くなった。
「ここに隕石が落ちてきて、君たちは死ぬ。今、そう決めたよ」
あっさりとそう告げるグレミィに対し、倒れ伏す死神たちは声を上げることもできない。彼らはグレミィの想像によって全身の骨がクッキーのように脆く変えられており、話すことはおろか呼吸すら困難な状態なのだ。
そんな死神たちの上空からは巨大な岩石が赤熱して落ちてきている。
彼らの未来は確定的であった。
助けが来なければ。
「卍解、
そんな声と共に、隕石へと誰かが殴りかかる。
九番隊隊長、
「ぶっ飛べ!」
彼の卍解は衝撃を無限に叩き込み続けるという単純明快なものだ。彼の一撃に耐えうる力がなければ、その一発で勝負が決する可能性もある。巨大な隕石もそれによって粉砕され、小さな岩となって降り注いだ。
「全く、君は大雑把だね。
そして降り注ぐ無数の岩を三番隊隊長、
こうして死神を守り切ったことに驚いたのか、あるいは隕石を破壊したことに驚いたのか、グレミィは一瞬だけ真顔になる。しかしすぐに笑顔へと戻った。
「へぇ、君たち何者だい?」
「九番隊隊長、六車拳西だ。援護しろローズ」
自己紹介と同時に、拳西が殴りかかった。
◆◆◆
一番隊隊舎……いや、隊舎だった場所で山本元柳斎重國は唸っていた。それは瀞霊廷がすっかり侵食されてしまったことに対してである。侵攻に備えて仕掛けなどもしていたのだが、すっかり無駄となってしまった。
「これほどか……」
元柳斎は斬魄刀を強く握りしめる。
各地で激しい戦いが始まっており、思い通りに戦いを進めることができない。本来ならば足止めと戦力の集中運用で各個撃破を狙うべきだが、地の利を奪われた以上はそうもいかなかった。
そんな彼の背後に卯ノ花がやってくる。
「卯ノ花隊長、首尾はどうじゃ?」
「無事に日番谷隊長も修行を終えられました。勿論、更木隊長も」
「そうか。お主は」
「私は救護に回ります。戦力は充分でしょう」
「頼むぞ卯ノ花隊長」
短い会話であったが、それだけで充分だった。
二人は初代から続く護廷隊長であり、最も付き合いが長い。元柳斎がどのような思いでそう頼むのか、卯ノ花には深く理解できていた。
「総隊長はここに」
卯ノ花は短くそう告げて出ていく。
今、この厳しい戦いで元柳斎が戦線に出るわけにはいかない。
なぜならば四十六室により守護を厳命されているからだ。彼は瀞霊廷で最も神聖な場所を守るため、この場を動くことができない。
戦いを託すことしかできず、彼は悔しさを胸に秘めていた。
◆◆◆
無間より脱した冬獅郎は瀞霊廷の現状を目の当たりにして焦っていた。彼は急ぎ十番隊隊舎へと赴き、彼の部下と合流を試みる。だが、その途中で出くわしてしまった。冬獅郎の卍解を奪った滅却師、
「テメェは」
「陛下は奪った卍解で仕留めよと命じられた。だからこそ、君を待っていた」
「それはこっちのセリフだぜ」
早速とばかりに冬獅郎は斬魄刀を抜く。始解しかできないが、今はそれでも頼もしかった。氷輪丸が力を貸してくれるという信頼があった。
一方で蒼都も鉤爪を装備し、更にはメダリオンを発動する。そこに封じられた大紅蓮氷輪丸が蒼都を覆う。氷の、竜の翼と尾が巻き付いた。それを見た冬獅郎は一瞬だけ表情を歪めるも、すぐに剣を構える。
「すぐに取り戻してやるからな。氷輪丸」
放たれる冷気により、辺りを霧が包み始めた。
◆◆◆
グレミィと戦う拳西とローズは苦戦を強いられていた。その理由は最強最悪の能力である。グレミィにとって戦いとは片手間のようなものだ。ただ想像するだけで攻撃も防御もできるというのはあまりにも強い。
「クソ。インチキみてぇな再生能力しやがって」
拳西は忌々しそうに呟く。
事実、鐵拳断風を何度かグレミィへと叩き込んだにもかかわらず、当人は無傷なのだ。どれだけ深い傷を負っても一瞬に再生してしまう。それが不気味で仕方なかった。
「僕は想像を現実にする。
そう言った瞬間、周囲の建物が崩れた。見えざる帝国の真っ白な建造物は一瞬で瓦礫となり、拳西とローズの上に降り注ぐ。それをローズは金紗羅を振り回して防いだ。また攻めることも忘れない。拳西はここぞとばかりに虚化した。
かつては
「おおおおおおおおっ!」
霊圧を込めて殴る。
だがそんな拳西の足元が突如として崩れ、彼はバランスを崩した。そればかりか地面の亀裂から大量のマグマが噴き出す。これには流石の拳西も下がり、一度態勢を立て直すしかない。
「近づいて殴ることしか能のない君には勝てないよ」
グレミィの追撃は止まらない。
嵐が巻き起こり、雷が降り、間欠泉のように水が噴き出たと思ったら氷河になる。怒涛の攻撃に拳西は逃げることすらできず、猛威に晒されていく。
だが、拳西はただやられるだけではない。矢面に立つことで時間を稼いでいた。
「ローズ! 早くしろ!」
「分かったよ。卍解、金紗羅舞踏団」
様子見と援護に徹していたローズが斬魄刀を開放する。
彼の斬魄刀は鞭のような形状であり、卍解になるとそれが編み込まれて独立する。形成されるのは十三体の踊り子のような人型に加え、巨大な両手。
「君は想像を現実にすると言ったね? なら、僕の卍解はきっと天敵になる。僕の奏でる音楽は君のインスピレーションを刺激し……そして君自身を殺す」
ローズは両腕を激しく動かし、体全体で表現する。
彼の卍解は音楽だ。ローズが指揮者となり、斬魄刀が奏でる。気味の悪い踊り子がグレミィを囲み、華麗に回転し始める。
「さぁ、第一演目は『
壮大かつ優雅な曲が流れる。
それは生命を育む豊かな土地を彷彿とさせる。途端に罅割れ、地獄のようであった溶岩が消えて緑が生い茂る。そればかりか蔦や樹木がグレミィを捕らえるほどだ。
「くっ」
慌てたグレミィはそれらを枯れさせようとするが、金紗羅舞踏団がそれを邪魔する。音楽は共感覚によってイメージを強制させる。そして想像を武器にするグレミィにとってこの能力は恐ろしく相性が悪かった。何せ自分自身の能力によって金紗羅舞踏団を強化してしまうのだから。
「第二演目『
木々は紅葉し、世界が豊かな麦畑となる。そして踊り子たちはそれぞれが鎌を手に取り、次々と黄金を刈り取り始めた。そしてグレミィも今や大地と一体化した麦畑で収穫を始める。グレミィの首が刈られるのも時間の問題だろう。
「この……考えるな僕。僕は無敵だ。僕は……」
「そうだ。君は考えれば考えるほど金紗羅舞踏団の術中に嵌る。所詮、僕の能力はまやかし。音楽が提供する幻想に過ぎない。だが、強すぎる幻想は本当の影響を与える。そして君は僕が生み出すハーモニーから逃れることはできない。君は君自身の力に押し潰される!」
「こんな程度でえええええええ!」
「最終演目だ。『
鎌を持つ十三体の踊り子たち。
それがグレミィを囲み、その鎌を振り上げる。
刈り取られた魂は神へと捧げられるだろう。グレミィは金紗羅舞踏団によりイメージさせられ、それを自分自身の能力で強化して死ぬ。
首が宙を舞った。
ごめんグレミィ。こんなつもりじゃなかったんだ。
剣八が無双して騎士団減らしちゃったし、展開変えないとなー
↓
よし、拳西とローズはグレミィにころころされたし戦わせよ
↓
あれ? もしかしてローズってグレミィの天敵?
↓
あばばばば!? て、展開がああああああああ
↓
ま、まぁ、何とかなる。いけるいける
↓
いけなかったよ(敗北)