綺麗な剣八   作:NANSAN

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開幕フラグ建築


41 危機

 

 ()った。

 拳西とローズはそう確信した。強大な力を使う滅却師の討伐に成功したのだと思い、油断した。

 

 

「やるじゃないか。僕を一度でも殺すなんて」

「何!?」

「どうなってやがる……」

 

 

 グレミィは瓦礫の上で笑っていた。

 慌てて二人は殺したはずのグレミィへと目を向ける。だが、金紗羅舞踏団により仕留めたはずの、地面に転がっていなければならないはずの死体は消えていた。理解できないこの事象を前にして二人は明らかな動揺を見せてしまう。

 だが、その隙を突くような真似をグレミィはしない。

 代わりに忘れていた、とでも言わんばかりに告げた。

 

 

「ああ、ごめんごめん。耳の聞こえない僕を想像していたんだった。で、何か言った?」

 

 

 それすなわち、ローズの卍解が通じていなかったということ。

 ならば先程までのグレミィは何だったというのか。その答えを彼は言い放つ。

 

 

「僕にとってこの体すら想像の産物さ。だからこんなこともできる」

 

 

 そういった瞬間、グレミィは二人になった。

 いや、その二人が更に分裂して四人、また分裂して八人、更に分裂して十六人になる。十六人のグレミィは同時に口を開いた。

 

 

『こうすれば想像力は単純に十六倍。特にそこの死神は僕にとって面倒な能力を持っているみたいだからね。切り札で仕留めさせて貰うよ』

 

 

 空が渦巻き、暗く染まる。

 真っ黒な雷雲が急速に生まれ、その間で幾つもの光が閃いた。十六倍の想像力を得たグレミィは天候すら操ってみせた。いや、書き換えたというべきか。

 

 

「こう思ったことはないかい?」

 

 

 嗜虐的な笑みを浮かべたグレミィは語る。

 

 

「もしもあの雲の貯えた雷が一気に落ちてきたらどうなるんだろうってね」

 

 

 雷とは上空で蓄積された静電エネルギーが強烈な負電荷となり、地上との電位差が空気の絶縁を破った瞬間に引き起こされる。つまり物理現象に伴っているのだ。

 しかしグレミィが想像すれば、その静電エネルギーを一斉に、一瞬にして撃ち下ろすことができる。

 

 

「僕は僕の想像で死なない。君たちは逃げ場のない落雷に耐えられるかな?」

 

 

 その瞬間、瀞霊廷の一角が激しい光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 機械人形の滅却師、BG9(べー・ゲー・ノイン)と戦う砕蜂は猛攻を続けていた。卍解を奪われた彼女は特にめげることもなく瞬閧の修行を続けていた。元から隠密機動として卍解をあまり使わなかった彼女だ。持ち味である速度を極限まで鍛え、それを武器として戦うことにした。

 

 

「貴様の瞬閧は未完成だったはず。データと一致しない」

「馬鹿め。私がいつまでも未完成のまま放置するはずがなかろう」

 

 

 瞬閧とは鬼道を練り込んだ体術だ。そして砕蜂は風の鬼道を組み込んでいる。何度も風を循環させることで常に纏い、継続戦闘能力を引き上げた。また纏う風を収束させれば強烈な一撃にもなる。

 甚振るつもりはない。

 最速で最大威力を叩き込む。

 砕蜂は風を操り、一瞬で背後に回り込んだ。

 

 

「終わりだ」

 

 

 無窮瞬閧(むきゅうしゅんこう)

 それは渦巻く風の鬼道を圧縮し、白打に乗せて放つ必殺技だ。それによって九十番台の鬼道に匹敵する一撃を生み出すことになり、余波は空すら裂いた。

 これほどの威力なら耐えられまい。

 砕蜂はそう確信した。

 しかしBG9は彼女の一撃を受け止めていた。確実な手ごたえを感じていた砕蜂は驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「データの収集と再調整を完了した。次のデータを所望する」

「くっ!」

 

 

 この瞬間、攻守が交代した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 バンビエッタと戦う平子真子と雛森桃は苦戦を強いられていた。

 爆撃(The Explode)の能力は霊子を放ち、それに触れた物質を爆弾にするというものだ。彼女の手にかかれば瓦礫すら爆弾になってしまう。

 

 

「ふぅん。そっちの副隊長ちゃんもあたしと似た能力なのね。でも!」

 

 

 激しく霊子弾が放たれ、雛森の周りが爆発する。

 咄嗟に彼女の斬魄刀、飛梅の爆発で相殺したがダメージは免れられない。バンビエッタは得意げに笑う。

 

 

「あたしの能力とは天と地の差よ!」

 

 

 次々と爆発が引き起こされ、遂に雛森は逃げ場所を失った。

 そして雨のように霊子弾が叩き込まれ、雛森のいる場所で火柱が昇った。間違いなく直撃させ、爆裂しただろう。

 バンビエッタは鼻を鳴らしながら周囲を見渡す。

 

 

「ふん。後は胡散臭い隊長死神だけね。それにしても不幸よね~。いつの間にかあの隊長もいなくなっているし、見捨てられたのかしら? あーあ、奪った卍解で死神を殺せって命令だからワンちゃんを探してたのに。あいつらもどっかに行っちゃうし」

 

 

 彼女の不満は同じ星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも女子幹部(+1)たちに置いて行かれてしまったことだ。一応はバンビーズと名乗り、彼女はそのリーダー役である。集団行動しようと言い出したバンビエッタの命令に従わないことが不満だった。

 

 

「全く。こんな時に化け物(更木剣八)と遭遇したらどうするのよ。情報(ダーテン)を読んだ限りじゃあたしの能力も効かないっぽいし。はぁ~面倒くさ」

 

 

 いつの間にかいなくなった平子真子を探して殺し、また更木剣八に遭遇しないように気を付けながら狛村左陣を奪った卍解で殺す。それがバンビエッタに必要とされている動きだ。面倒ごとを嫌う彼女は、ちょっとした癇癪を起こしつつその場を去ろうとする。

 だが、突如として背後に強い霊圧を感じ、その場から飛びのいた。一瞬遅れてその場所は大爆発を引き起こし、紅蓮が飛び散る。

 

 

「すみません隊長。外しました」

「かまへんかまへん。次や」

 

 

 そこには爆散したはずの雛森と、どこかに消えていなくなっていた平子がいた。そして雛森は斬魄刀、飛梅に火球を宿らせる。

 これにはバンビエッタも眉を顰めた。

 

 

「どういうこと?」

「はっ! 言うわけないやろボケ」

 

 

 そう言い捨てる平子の手には見慣れない形の斬魄刀があった。刀身に幾つかの穴が空き、更には柄の尻にも巨大な輪が付いている。刀としては非常に扱いにくい形状であることは明白だった。

 バンビエッタは死神たちの情報(ダーテン)に載っていた平子の能力を思い出す。

 

 

「そういえばあんた、ケチな幻覚能力持ちだったわね」

 

 

 面倒臭そうに霊子弾を放ち、また二人を爆散させようとする。再び瓦礫が爆弾となり、平子と雛森は爆風に飲み込まれる。

 

 

「阿呆、そっちちゃうわ」

「ちっ! 面倒ね!」

 

 

 しかし二人とも無事である。

 平子の斬魄刀、逆撫(さかなで)は広域に五感を狂わせる。上下左右、さらに前後、見えている向きまでも全てが逆だ。特別な香りを散布するという工程が必要なので効果が現れるまで時間がかかるものの、一度決まればほぼ勝ちが確定する。このために平子は隠れて斬魄刀の能力を発動させていたのだ。

 だが、バンビエッタとは相性が悪かった。

 

 

「ふん。どこにいるのか分からないなら、全方向に攻撃すればいいのよ!」

 

 

 かつて藍染には瞬間的に適合されてしまい、あっさりと攻略された。だが、バンビエッタは脳筋戦法により全方向へと霊子弾を解き放つ。

 侵略された瀞霊廷の一角で大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 冬獅郎は自身の卍解を奪った蒼都(ツァン・トゥ)を相手に圧倒していた。その理由は覚醒した氷輪丸である。始解、氷輪丸の真の能力により、大紅蓮氷輪丸を発動した蒼都(ツァン・トゥ)すら凍結させていた。

 

 

「くっ! 馬鹿な!」

「幾ら硬くとも、それで動けないだろうぜ」

「何なのだ貴様! その姿は!」

「これを使うと少し老けるんだ。厄介なことにな」

 

 

 彼自身は老けると語っているが、実際は青年のような姿だ。鋼鉄(The Iron)聖文字(シュリフト)により破格の防御力を有する蒼都も、今の氷輪丸の攻撃は厄介と評価せざるを得ない。

 

 

「くっ!」

 

 

 蒼都は大紅蓮氷輪丸により大量の氷と水を放つ。津波のように押し寄せるそれは、巻き込まれれば一巻の終わりだろう。それだけ冬獅郎の卍解は凄まじい。本来の力でなくともだ。

 だが、氷輪丸の本質はそうではない。

 この世の元素を支配し、凍結すること。

 基本能力である天相従臨もその一種だ。

 押し寄せる莫大な氷は瞬時に凍結し、冬獅郎の目の前で停止した。

 

 

「帰ってこい、氷輪丸!」

 

 

 冬獅郎は瞬歩で回り込み、蒼都へと斬りつける。鋼鉄(The Iron)の能力に加えて静血装(ブルート・ヴェーネ)を発動して防ぎ、冬獅郎の斬撃を腕で受け止めた。シンプルに硬いという能力は強く、隊長格である冬獅郎の斬魄刀すら容易く受け止める。

 だが氷輪丸の凍結能力まで防げるわけではなかった。

 蒼都の腕が内側から弾け、血が飛び散る。

 

 

「何だと!?」

「隙だらけだぜ」

「ぐああああああああ!」

 

 

 続く斬撃で蒼都の脇腹を凍結させた。直後に破裂し、彼は倒れてしまう。絶対防御であると自負していた蒼都は混乱するばかりだ。血の池に沈む彼は虚空を眺め、力なく呟いた。

 

 

「なぜだ。なぜ……始解で卍解を。そして私に傷を……」

「……俺はテメェの防御を突破したわけじゃねぇ。ただ、テメェの血管を凍らせた」

「血管、だと?」

「俺の能力で血ごと血管を凍らせた。だからテメェ自身の血圧で内側から壊れたんだ」

「そ、んな方法で」

 

 

 また冬獅郎は知らなかったが、滅却師には血中に霊子を流して攻撃力や防御力を底上げする血装(ブルート)という能力が存在する。非常に危険だが、霊子の扱いに長けた滅却師ならば問題なく扱える能力だ。しかし繊細であることに変わりはなく、血管ごと凍らされた蒼都は自爆に近い形でダメージを受けた。

 

 

「返してもらうぜ」

 

 

 徐々に力を失っていく蒼都から、メダリオンを奪い取る。

 だが、そこから卍解を取り戻す方法までは分からない。

 やはり技術開発局に持っていくべきだろうか、などと考えている間に新たな霊圧を知覚した。

 

 

「なんだぁ!? やられちまったのかよ蒼都(ツァン・トゥ)! なっさけねぇな!」

「ちっ……」

 

 

 灼熱(The Heat)バズビー。

 冬獅郎は新たな敵と対面する。

 

 

 

 

 

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