綺麗な剣八   作:NANSAN

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剣ちゃんが強すぎて緊張感がないとの感想多数
「シリアスは叩き斬った」のタグを追加したったw

本作は剣ちゃん無双以外に価値はない(真顔)




42 侵影薬

 侵略された瀞霊廷を歩む剣八は、適当に霊圧知覚で見つけた滅却師を追い詰めていた。その滅却師は激しく破れたスーツを身にまとい、拳銃を手にした眼鏡の老紳士である。星十字騎士団(シュテルンリッター)”N”のロバート・アキュトロン。先の侵攻では京楽春水から片目を奪った彼も、更木剣八という化け物を前にしては逃げることしかできない。

 

 

「く、来るな! 来るなああああああ!」

 

 

 滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)神の歩み(グリマニエル)を発動して銃弾を連射する。この銃弾こそが彼の神聖滅矢(ハイリッヒ・ブファイル)だ。速度に特化した彼の攻撃は剣八へと殺到し、それを剣八は全て弾き返す。

 銃弾を刀一本で破壊し、全て防ぐなど埒外だ。

 まして完聖体となり、圧倒的強化を受けた攻撃と速度に対抗するなど想像もつかない。この完聖体は死神で言うところの卍解のようなもので、本当の切り札だ。それを斬魄刀の解放もしていない剣八に圧倒されてしまうのだから、恐怖して当然であった。

 

 

「逃げるばかりですか?」

「何なのだ! 何なのだ貴様はああああ!」

「その攻撃にも()()()()()()()

 

 

 剣八は霊圧を高める。

 眼帯で封じられている状態ながら、周囲が焼き尽くされるほどの絶大な霊圧が漏れ出した。戦場へと出る前に新しく支給された封も、一応といった程度しか役に立っていない。

 

 

「逃げるだけなら、そろそろ終わりにしましょう」

 

 

 ロバートは恐怖する。

 特記戦力の中でも特に警戒するべきとされていた更木剣八だが、情報(ダーテン)などほとんど当てにならなかった。言うなればこれは理不尽。あらゆる特殊な攻撃を無効化する上に、通常攻撃もほぼ全て防がれ、更に剣八の攻撃はその全てが一撃必殺。このような理不尽を相手にどう戦えば良いというのか。

 完聖体を披露してもなお縮まらない力の差を感じ、絶望した。

 

 

「さようなら。あなたはあまり楽しめませんね。死になさい」

 

 

 最後の最後に理不尽な言葉を残し、ロバートは意識が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)に侵食された瀞霊廷だが、最も大きな被害を受けたのは技術開発局だろう。様々な機器が設置されていたにもかかわらず、この侵食によってそのほぼ全てが失われた。広域観測用機器だけはタブレット端末であるため生き残っていたが、今の十二番隊にできることは少ない。

 

 

「あ、更木隊長が敵幹部を討伐したようです」

「ふん。あの戦闘馬鹿に任せておけば問題はないヨ。アレの力だけは私ですら計測できんのだ。忌々しいことだがネ。それと新しい封だが、ちゃんと渡しておいたんだろうネ?」

「あ、勿論です。それと日番谷隊長も幹部を一人討伐したと思われます」

「ほう。やるじゃあないか。卍解なしで戦えるのは私か更木隊長くらいなものと思っていたが……ふむ」

「しかし日番谷隊長の元に新たな敵が現れ……おそらく押されているものかと」

 

 

 どちらにせよ、卍解を取り戻さなければ状況の逆転はない。

 前回の侵攻で更木剣八が敵幹部の三分の一を殺害した成果もあり、今のところは拮抗している。だがいつまでも維持できるものではないとマユリは知っていた。

 その理由は彼の知る滅却師、石田雨竜である。かつてマユリは雨竜と戦い、敗れた。滅却師最終形態(クインシー・レットシュティール)という奥義によってだ。そうである以上、今回の滅却師も似たような能力を使えるはずだと確信していたのだ。

 何としてでも卍解を取り戻す手段を手に入れなければならない。

 全身から発光する珍妙な衣装に身を包んだマユリは渋い表情を浮かべていた。

 

 

「ふむ。瀞霊廷も随分と変わったようじゃの。迷ってしもうたわい」

 

 

 そんなマユリは更に表情を歪めた。

 ここにいるはずのない死神の声が聞こえた気がしたからだ。それは彼にとって非常に不愉快な男と親交が深く、少なくとも技術開発局に入れたい人物ではない。

 猫のように、するりと入ってきた女へと振り向いてマユリは問いかける。

 

 

「何の用だネ。四楓院夜一」

「そう苛々するな。儂はとっておきのものを持ってきたのじゃぞ? ほれ、滅却師が卍解を奪う仕組みに関するデータじゃ」

「貴様……まさかあの忌々しい男の使いかネ?」

「うむ。お主に届けるように言われてな。全く人使いの荒い男じゃ。ほれ、受け取れ」

 

 

 あまりの忌々しさにマユリはそれを拒否しようかと考えてしまう。しかし解析機器が失われてしまった今、一からデータを採取して解析していたのでは間に合わない。仕方なく、本当に不本意だがそれを受け取ることにする。

 せめてものプライドからか、彼は部下たちに怒鳴り散らした。

 

 

「卍解を取り戻す方法を完成させるヨ! 一秒すら惜しい。さっさと動けウスノロめ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「あなた、星十字騎士団(シュテルンリッター)ですか?」

 

 

 ロバートを消し飛ばした剣八は、直後に背後で霊圧と気配を感じた。

 振り返ると醜い老人が瓦礫の上に立っている。眼鏡によって強調された両目はギョロギョロと不自然に動き、実に不気味だ。剣八目線ではとても強そうには見えなかった。

 老人は気持ち悪い笑みを浮かべながら名乗る。

 

 

「そうじゃそうじゃ。わしは星十字騎士団(シュテルンリッター)”V”。消失点(Vanishing point)のグエナエル・リー」

「突然私の後ろに現れましたね。あなたの能力ですか?」

「その通り。お前はこのわしの存在を見ることも、感じることも、そして――」

 

 

 すっとグエナエルの姿が消えていく。

 

 

「――記憶することもできん」

 

 

 剣八は即座に動いて斬った。

 だがその時にはグエナエルの姿はなく、斬った手応えもない。

 

 

「空間転移? いえ、違いますね」

 

 

 これこそがグエナエルの能力、消失点(Vanishing point)だ。

 彼の能力には三つの状態が存在する。まず第一段階が姿を消す透明化能力だ。光を完全に透過し、目視で存在を知覚することは不可能になる。しかし、物理的には存在している。そして第二段階として存在そのものを消すことができる。この状態になれば空間中からも消え去り、攻撃すら通らなくなるのだ。

 

 

(惑っておる。惑っておる……)

 

 

 完全に透明化したグエナエルはほくそ笑む。

 こうして物理攻撃を無効化してしまえば、たとえ特記戦力であろうと怖くはない。警戒する剣八を眺めて優越感に浸っていた。

 

 

(そしてこのまま第一段階へと戻せば……)

 

 

 先程のように気配もなく突然現れ、一方的に攻撃できるのだ。反撃しようとすれば、また第二段階へと戻すことで攻撃を透過できる。

 これこそがグエナエルの必殺戦術。

 実に卑怯だが、嵌れば格上だろうと殺せる能力だった。

 

 

(貴様に対して様子見はすまい。終わりじゃ!)

 

 

 彼は背後に迫り、実体を取り戻してナイフを突き立てようとする。その切っ先が剣八の背中の、丁度心臓の辺りへと迫り、死覇装を突き破った。

 その瞬間、グエナエルは視界がずれた。

 

 

「は?」

 

 

 今の一瞬まで背を向けていた剣八がこちらを向いていた。

 そして斬魄刀を振り抜いていた。

 

 

「折角の能力ですが、全体的に遅いですね。あなたの刃が触れた瞬間に反応すれば、この通りです」

 

 

 その言葉を聞きながら、彼の頭部がズレ落ちていく。

 そんな馬鹿な話があるか。

 グエナエルは最期に理不尽を呪い、()()する。彼の持つ第三段階の能力……他者の記憶からも存在を消す力を披露することもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 滅却師とは特別な人間だ。

 霊体でないにもかかわらず虚を滅するほどの力を持った一族である。かつてはその力によって人々を守ってきた。だが、それは彼らが人間の味方だからというわけではない。彼らはある致命的な欠陥を抱えた一族なのだ。

 それは虚に対する耐性が全くないということである。

 虚に襲われてその霊圧が体内に侵入した場合、彼らは魂魄の形質を保てず魂魄自殺をしてしまう。例えば死神ならば、無理やり魂魄の境界を破壊する虚化でもされないかぎりは魂魄自殺に至らない。しかし滅却師は虚化の道も残されず、魂の滅びを待つのみとなってしまう。

 彼らは恐れているのだ。

 生命が危機に晒されているからこそ、虚を滅却するということを止めなかった。故に死神と戦争になってでも戦い続けた。

 

 

『聞こえているかネ? これは隊長格の皆に通信している。君たちの手元に届いた黒い丸薬……そうだネ、侵影薬とでも呼ぼう。それに手でも足でも刀でもいいので触れるんだヨ。そうすれば触れたところから吸収され、丸薬は魂魄の内側にまで浸透する。それによって卍解を一瞬だけ虚化させることが可能なのだヨ。まだ臨床実験をしていない薬だが、君たちにその第一号となる栄誉を与えようじゃないか』

 

 

 卍解以前に、斬魄刀とは死神が自身の魂を写し取ることで形質を得る。そうなる前は浅打という無名の刀でしかない。つまり斬魄刀は死神の魂魄と密接な繋がりがあり、まして卍解ともなれば強い結びつきがある。死神本人が変質すれば、卍解にもそれが伝わるほどに。

 

 

「隊長! 大丈夫ですか?」

 

 

 妹を避難させた希千代は、自分の隊長を支援するために戻ってきた。砕蜂を倒してデータ収集に勤しんでいたBG9は不意を突かれてしまう。希千代は一見すると鈍重だが、これでも隠密機動の二番手だ。意外と速く動けるのである。

 だがBG9は即座に反応し、爆撃を以て希千代を吹き飛ばした。しかし爆撃を身に受けながらも砕蜂を奪い返すという仕事だけはこなしてみせた。

 そして彼はぐったりとしたままの砕蜂に呼びかける。

 

 

「隊長、大丈夫ですか? これで卍解が使えるようになるはずです。ちょっと説明はややこしくて理解できなかったんですが……」

 

 

 辛うじて意識を失っていなかった砕蜂の手に転送されてきた侵影薬を触れさせ、吸収させる。すると砕蜂の魂魄を通じて虚化現象が卍解にも伝わり、奪われた雀蜂雷光鞭に虚の力が流れるのだ。

 これにより、虚の霊圧に耐性を持たない滅却師にとって卍解は毒となった。

 

 

「これは……伝達系に異常……」

 

 

 すぐにBG9は異常を察知した。

 魂魄に受ける直接的ダメージを察知し、即座に解析を開始した。だが攻撃を受けた形跡はなく、BG9は激しく混乱する。

 

 

「何をした?」

「さぁな? 自分で食らって解析してみろ」 

 

 

 卍解、雀蜂雷公鞭。

 巨大なミサイルによる一撃必殺が装填される。あまりに巨大な卍解であるためまともに動くこともできず、発射時の反動も凄まじいことから狙いを定めるだけでも一苦労の扱いにくい卍解だ。だが、その威力だけは最強クラスである。

 希千代は動けない砕蜂の身体を抱え、体全体で反動を受け止める準備をした。

 

 

「前言を撤回しよう滅却師。貴様らは卍解なしには倒せなかったとな」

 

 

 虚化の影響でまともに動けないBG9に回避の手段はない。

 雀蜂雷公鞭は直撃し、激しい光とともに大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、卍解を取り戻した冬獅郎はバズビーと激しい戦いを繰り広げていた。片や最強の氷雪系斬魄刀を扱い、片や流刃若火にも匹敵する爆炎を操る。相反する能力がぶつかり合うことで周囲の環境すら次々と塗り替わる。

 

 

「はっはっはァ! 俺たちは相性が良いみたいだなァ! バーナーフィンガー(スリー)!」

 

 

 バズビーは三本の指を立て、それを大きく振るう。すると巨大な炎が波打ち、着弾地点をマグマへと変えた。想像を絶する熱量であることから、直撃すれば即死は免れない。

 それに対して冬獅郎は大紅蓮氷輪丸によって冷やし、対抗していた。

 

 

(卍解を取り戻せなかったら不味かったな)

 

 

 戦いが始まった直後、浦原喜助から侵影薬が転送されてきた。それによって卍解を取り戻し、早速とばかりに発動したのである。

 また剣八との修行で真の卍解にまで至った冬獅郎だが、安易に使うことはできない。発動と同時に成長し、青年の姿となってしまうのはそれだけ負担が大きいからだ。まだ斬魄刀の力の大きさに対し、冬獅郎自身が追い付けていない。だからこそ無理やり体を成長させている。

 先に蒼都と戦った時に始解状態で披露し、まだそれほど時間が経っていないのだ。連続して使えばどうなるか、それは氷輪丸が教えてくれた。

 

 

『冬獅郎、今は逃げることを優先するのだ。お前の魂魄が回復すれば、またあの状態になれる』

「分かっている」

「ああ? なにぶつぶつ言ってやがるんだよォ!」

「ちっ!」

 

 

 撤退しなければならないと分かっているが、どうにもその隙がない。

 もしも卍解がなければ一瞬で敗北していたことだろう。時間を稼いで天候を支配し、冬獅郎にとって最高の環境を準備してから一気に反撃する。そして逃げる。これが今の冬獅郎にできる最善策であった。

 

 

「ちょろちょろと逃げやがってよ! そんなに俺を怒らせて……四本目を使わせてぇのか?」

 

 

 バズビーは親指を除く四つの指を立て、手刀を作った。そこに恐ろしいほどの霊圧を注ぎ込む。それを見た瞬間、冬獅郎は刀を掲げ、大量の氷を生み出した。

 

 

「バーナーフィンガー……(フォー)!」

 

 

 上から下へ。

 巨大な炎の斬撃が振り下ろされた。

 

 

 

 

 




カーネル、いい奴だったよ


あとグエナエルさん憐れ。
攻撃が触れてから回避して余裕でしたは酷い。
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