タイトルが完全にホラー
BLEACHって幽霊とか死神とかいっぱい出てくるし、やっぱりホラーなんだよ(錯覚)
剣八とグレミィの激しい戦いは遠くからでも観察できた。
リルトット、キャンディス、ミニーニャ、ジゼルの四人は一所に集まり、適当に死神を処理しながら戦いを眺めていた。
「おいおい。グレミィの野郎とまともにやりあってやがる。マジでバケモンかよ」
「アレは陛下が特に危険と判断した特記戦力。更木剣八だぜ。あたりめーだが、手を出すんじゃねぇぞ」
「バッカ! いくらアタシでもあんな戦いに手を出すかっつーの!」
彼女たちの目的は漁夫の利。
適当に消耗した死神を適当に狩って手柄にしようとしているのだ。更木剣八もその候補であった。
「そういえばバンビちゃんも暴れてるねぇ」
「死神共が卍解を取り戻したみてーだからな。完聖体を使えるようになって生き生きしてやがる。見てるだけで腹が減るぜ」
規模は違えど激しく爆発するエリアを眺めつつ、リルトットは呟いた。
◆◆◆
「ふん。卍解を取り戻したから何? もう勝った気?」
完聖体を発動させたバンビエッタは鼻で笑う。
彼女の背には霊子の翼が生え、また頭部には輪が浮かんでいる。そして彼女の翼からは全方向へと霊子弾が放たれており、それに触れたものは残らず爆弾へと変えられていた。逃げ場のない爆発に巻き込まれ、平子と雛森は重傷を負う。
「あんたたちの卍解、邪魔だったのよね。完聖体も使えないし」
滅却師たちにとって卍解を奪うという行為はデメリットでしかない。完聖体を封じてまで発動する必要があり、また奪った卍解は慣れない能力だ。それならば元から持っていた聖文字の能力を拡張する完聖体を使った方が遥かに強い。
バンビエッタは例に漏れず、その力を遺憾なく使って周囲を爆撃していた。
気絶した雛森を抱える平子は歯ぎしりしながらバンビエッタを睨みつける。しかし、それで状況が変わるわけではなかった。
「じゃあバイバイ」
勢いよく霊子弾が撃ち込まれようとする。
その瞬間、何かが平子たちの前に立ちふさがり、代わりに霊子弾を受け止めた。
「そこまでだ」
凛々しく、力強い声。
バケツのような鉄笠を被った狛村左陣が現れた。決着をつけるために。
◆◆◆
同時刻、瀞霊廷の遥か天空より二つの影が降りてきた。
霊王宮へと連れ去られ、そこで治療を受けた阿散井恋次と朽木ルキアである。二人は修行を経て瀞霊廷に帰還したのだ。
「もう戦いが始まっているみてぇだな」
「ああ。少し遅れてしまったらしい」
霊圧知覚でも激しい戦いが繰り広げられていると分かる。
尤も、ある場所では目に見えて凄まじい戦いが巻き起こっていたのだが。
「取りあえず分かりやすそうなあそこに行くか?」
「馬鹿者! あそこからは更木隊長の霊圧を感じられる。行っても邪魔になるだけだ」
「お、おう」
「全く。修行を積んだ私たちでもあの方の底は見えんな」
「あー……まぁ、そうだな」
恋次は十一番隊に所属していた時期がある。そのため剣八のこともよく知っていた。普段は書類仕事もこなす落ち着いた女性に見えるが、ひとたび刀を抜けば修羅に変貌する。剣一本で災害を引き起こす圧倒的な力故に、隊長として恐れられていた。
真の卍解を習得した恋次も、遂に卍解を会得したルキアも、剣八に敵うとはとても思えなかった。
「ま、あの人は例外だ。気にすんなルキア」
「ふん。未熟をそのままにしておくつもりはないが、無いもの強請りしても仕方あるまい。まずは近場の滅却師を探すぞ……いや、その必要はないようだ」
「だな」
二人は近づく滅却師の霊圧を感知した。
そしてやってきた滅却師を見て恋次は目を見開く。
「テメェは……隊長の卍解を奪った!」
「何!? ならばこやつに兄様が?」
「ああ」
「アは。アはっ。ハはっ。怖イ? 僕ハ、淋シい。淋シい、淋シい、淋シい。淋シいヨう……僕ノ千本桜ハドこ?」
「てめぇのじゃねぇ! 隊長の千本桜だ!」
「貴様如きが兄様の千本桜を語るな! 不愉快だ!」
二人は怒りを露わにして斬魄刀を構える。
そしてエス・ノトは周囲に無数の光の棘を生み出した。
◆◆◆
バンビエッタは完聖体の翼から激しく霊子弾を放ち、狛村を爆撃し続けていた。それによって彼の纏う鎧も、鉄笠も破壊されてしまう。内側より現れた姿はバンビエッタを驚かせた。
「あれ? ワンちゃんじゃなくなっているじゃん?」
今の狛村は犬の姿ではなかった。
僅かに獣の面影が残っているものの、間違いなく人の姿だったのだ。
彼は現世で罪を犯し、畜生道へと落ちた。それでも執念によって尸魂界へと舞い戻った一族なのだ。彼は罪の証である心臓を捧げ、罪の鎖から解き放たれることで生前の姿を取り戻した。呪われた姿を捨てた彼は、一時だけ不死の力を得る。
今の狛村はバンビエッタの能力を無効化する不死能力を得ていたのだ。
「卍解……」
そして狛村は取り戻したばかりの力を発動させる。
彼の背後に鎧武者の巨人が現れた。
だがこれで終わらない。更にその巨人から鎧が弾け飛び、皮膚の剥がれた化け物が誕生する。髑髏のような頭部を持ち、ポッカリと空いた眼球の奥では青白い炎が灯っていた。
「
狛村は発動と同時に刀を振り下ろす。
すると連動した卍解が巨体を動かし、巨大な刀を叩きつける。空中へと逃れたバンビエッタは即座に霊子弾を撃ち込み、狛村の卍解を破壊しようとする。
そして狙い通り、鎧の脱ぎ捨てた巨人は爆散する。
だが、当の狛村は傷一つ付いていなかった。
「どういうこと……?」
更には卍解の明王までも、爆散された部位が再生している。確実に以前まではなかった能力で、バンビエッタは疑問を呈する。
それと同時に、狛村の胸部を見て驚愕した。
「それ、どうしたのよ」
驚くのも当然だ。
狛村の胸に、心臓のあるべき部分に大きな穴が空いていたのだ。心臓がそっくりくり抜かれていた。とても生きていけるとは思えない状態で狛村は戦っていた。
「儂の卍解、黒縄天譴明王は命を持った鎧。そして
これすなわち、
既に命がないのだから、死ぬことはない。
どんな攻撃を食らおうとも、その身が粉塵になろうとも、狛村左陣と卍解は不滅。倒すと誓った敵を滅ぼすまで止まらない。
「何なのよ! あんた命捨ててんの!? 負けたら死ぬから! 殺されるから! それが嫌だから戦ってるんでしょ!?」
「元より儂は罪人。罪も雪げず、友も救えぬ半端者。だがそんな儂を拾ってくださった元柳斎殿のため、命を賭けぬ理由があるものか!」
「ふざけるな! うわああああああああああ!」
決して止まらぬ巨体が迫る。
狛村の卍解は圧倒的な精度と速度から放たれる質量攻撃だ。それを上回る攻撃力の相手からすれば大きな的でしかないが、それも不滅の特性を得たことで解消された。狛村はただ、攻撃すれば良い。それだけで敵を粉砕できる。
「壊れろ! 死ね! 爆死しろ! 死ねええええええ!」
「哀れ。儂にはもはや死の恐怖などない! この戦いに踏み入った時に……命はとうに置いてきた!」
バンビエッタの放つ霊子弾を、黒縄天譴明王の刀が捉える。既に死んだ存在であるこの卍解は、その表面で霊子弾を受け止めていた。更に振り下ろされる一撃がバンビエッタへと叩き込まれる。
だが彼女の放った爆裂の霊子弾が、彼女自身へと叩き込まれてしまう。
「そん―――」
大爆発が起こる。
それを黒縄天譴明王が切り裂き、その勢いのまま崩れた。
「……ぐっ」
狛村は力尽き、倒れる。
彼は不死の呪縛より解き放たれ、人の性質を抜き取られ、本当の獣へと変貌した。永久に。
◆◆◆
自爆によって爆散したと思われたバンビエッタだが、辛うじて生きていた。しかし本当に辛うじて、といった状態であり、完全に虫の息である。もはや彼女は自力で立ち上がることもできない。
そこに四人の少女(+1)が現れる。
「ね……ねぇ、助けて……」
リルトット、キャンディス、ミニーニャ、そしてジゼル。
彼女たちは今にも息絶えそうなバンビエッタを前にして無表情であった。ただ、ジゼルだけが満面の笑みを浮かべている。
「かわいそうなバンビちゃん……助けてあげる。ボクたち、バンビちゃんがいないと寂しいもん。ねーーーーー!」
死体を愛するネクロフィリアのジゼルは常々思っていた。
可愛いバンビエッタを人形にしたいと。
「やだ……」
バンビエッタは懇願する。
「やめて……やめてよジジ……」
「大丈夫だよ」
「ジジ……」
「ずーーーーっと、ボクが可愛がってあげるから、ね……」
「あ、あ……ああああああああああああああ!?」
断末魔が木霊した。
バンビ「ケテ……タスケテ」
ワンちゃん、犬死なのでは? と言ってはいけない。剣ちゃんのお蔭で割と余裕とか言ってはいけない。一応、隊士が千人以上亡くなっているんや。ワンちゃんはお怒りなんやで