綺麗な剣八   作:NANSAN

55 / 68
あっぶね。
ゆるるんバードを出すの忘れてた



55 神の姿

 無数の破片へと切り刻まれて飛び散ったリジェ……だったもの。

 それらはここに再生し、光り輝く半人半鳥の奇妙な天使へと変貌した。その姿はフラミンゴのようであるが、この一つ一つがリジェとして復活している。

 

 

『たかが……たかが死神の卍解如きで神の使いを殺せると思ったかァァァ!』

 

 

 輪唱するかのように、それらは一斉に言葉を発する。

 

 

『ゆるん。ゆるるるるるん。ゆるるるるるん。許さないぞ更木剣八! 君を甚振り、踏み躙り、魂の欠片となるまで蹂躙してやるぅぅぅぅ!』

 

 

 無数に分裂したリジェは、真世界城(ヴァ―ルヴェルト)へと昇っていった剣八を追いかけようとして浮かび上がる。だが、それは阻まれた。

 

 

「卍解、白霞罸(はっかのとがめ)

 

 

 世界が白に包まれた。

 まるで罪を洗い流すかのように、世界が一色に染まる。これによって全てのリジェが停止させられ、霜に覆われた。絶対零度を強制され、活動停止したのだ。

 

 

「素晴らしい卍解だルキア。よくやった」

「兄様……」

「落ち着いてゆっくりと解け。強力だが、一歩間違えれば命に係わる危険な卍解だ」

「はい」

 

 

 白哉はルキアを諭しつつ、千本桜景義を操って完全に凍結したリジェを磨り潰していく。塵になるまで刻まれたリジェが甦ることは二度とないだろう。

 今度こそ、リジェを完全に消滅させることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、そ……ちく……しょう」

 

 

 バズビー、リルトット、キャンディス、ミニーニャ、ジゼル、バンビエッタは地に伏していた。彼ら彼女らは等しく一撃で斬り捨てられており、それを為したハッシュヴァルトは血を払って剣を鞘へと納めている。

 まさに圧倒的であった。

 一方的な蹂躙であった。

 

 

「引けといったはずだが……こうなっては仕方あるまい」

「俺は、ユーハバッハに」

「お前たち如きが陛下に届くことはない。だからこそ幸運だ。その答えを目の当たりにするまでもなくここで潰えるのだから。お前たちは絶望せずに済んだ」

「くそ……くそぉ……」

 

 

 呻くバズビーに対し、ハッシュヴァルトは背を向ける。

 そしてある事実に気づいた。

 

 

(石田雨竜……いない? 陛下のところか? いや、違う。どこに消えた……)

 

 

 彼は雨竜から目を離してしまった。

 そして彼を見失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 滅却師の影空間で戦闘を続ける夜一だが、かなり追い詰められていた。彼女の戦うアスキンは致死量を操作することで自在に耐性を獲得する。夜一の霊圧そのものに耐性を獲得することで、彼女の攻撃ではダメージを負わなくなってしまったのだ。

 

 

「くっ……厄介な奴じゃな」

 

 

 一方でネリエルとグリムジョーに関してはまだマシだ。この二人は死神に近づいた破面であるとはいえ、元は虚だ。そして滅却師は虚の霊圧に弱い。その関係から、アスキンはこの二人に対してそれほど高い耐性を獲得できずにいた。

 これについてはチャドも同じである。

 彼の能力は虚に近いもの。

 故にアスキンも無傷とはいかない。

 

 

「おいおい。俺にとって苦手な奴ばっかり集めやがって。狙ったのか?」

 

 

 一対多数ということもあり、彼は苦しい戦いを強いられていた。とはいえ、アスキンの能力は対多数を相手にするうえで非常に役立つ。

 夜一、チャド、グリムジョー、ネリエルは突如として膝をつき、苦しみ始めた。

 

 

毒入りプール(ギフト・バート)。このプールに踏み込んだ奴らを霊子中毒にしたのさ。破面がいて厄介だったけど、これで終わりさ」

「ぐぅ……厄介はこちらのセリフじゃ」

「それは光栄だね」

 

 

 絶え間ない攻撃に晒され、それでも領域を完成させたことでアスキンの勝利は確定的となる。こうなってしまえば誰もまともに動けない。

 このまま待つだけでもアスキンの勝利は揺るがないだろう。

 援軍がいなければ。

 

 

「ありゃりゃ。やられちゃったんですか夜一さん」

「喜助か。早う助けんか!」

「はいはい。仕方ないですねぇ」

 

 

 特記戦力、未知数の手段。

 そのように称される浦原喜助が到着する。

 

 

「双天帰盾、私は拒絶する」

 

 

 更には織姫も現れ、耐性低下でダメージを受けた全員を回復し始める。また彼女は浦原から受け取っていた薬品を与え、投与し始める。

 

 

「これ、浦原さんが抗体だって」

「おお、助かったぞ織姫」

「感謝する」

「ありがとう」

「ちっ……礼は言っておく」

 

 

 浦原は傘の柄を思わせる仕込み杖を振り回し、ぴたりと止めて地面を突く。

 

 

「さて、ここからッスよ」

 

 

 斬魄刀、紅姫を抜いた彼はそのまま斬りかかる。アスキンはあっさりと受け止めるが、これで浦原の攻撃が終わるはずもない。網目状の赤い流体が刀身より噴き出てアスキンを縛ろうとする。しかしこれをアスキンは手刀で引き裂いた。

 

 

「こりゃヤバイな」

 

 

 今の手応えから、何度も拘束されるのは不味いと判断する。

 霊圧を採取してその霊圧に対する致死量を下げ、耐性を付けるというのがアスキンの戦い方だ。しかし浦原は攻撃の度に霊圧を調整して波長変更しており、上手く耐性を付けることができない。

 だが、彼もそんな弱点を克服する方法を持っていた。

 アスキンの身体が光り輝き、その背から機械じみた翼が生える。

 

 

「それは……」

「こいつは神の毒見(ハスハイン)ってんだ。冴えない姿だろう? だが、これでアンタたちはもう終わりだぜ」

 

 

 浦原は首を狙って紅姫を叩きつける。

 だがその刃はアスキンの表面で軽く弾かれてしまった。

 

 

「無駄さ。アンタの霊圧に強く馴染んじまった斬魄刀で俺を傷つけることなんかできやしない。霊圧を変化させたって無駄だぜ。ベースが同じなら、今の俺なら瞬時に適合できるのさ。勿論、虚を除くそこにいる奴ら全員分な」

「……ご親切にどーも」

「アンタの考えていることは分かるぜ。だったら滅却師の弱点。虚の霊圧で攻めればいいってな。けど、そいつは俺だって予測していることだ」

 

 

 アスキンは腕から輪のような形状の霊圧を外し、ネリエルとグリムジョーに向かって投げつける。抗体によって中毒状態から回復していた二人は回避しようとするも、その腕輪はすぐに消えてしまった。訝しむ二人は次の瞬間、ダメージを受けた。

 ネリエルは腕が引き千切れ、グリムジョーは右目が壊れる。

 

 

「きゃっ!?」

「ぐおおお……ぉぉ」

「ネリエルさん! グリムジョーさん! すぐに治します!」

 

 

 慌てて織姫が治癒を開始する。

 二人の傷口には小さな輪が嵌められており、それがダメージのもとになっていた。

 アスキンは得意げに説明する。

 

 

「そいつはヤバイ奴らを相手にする時の技さ。俺の能力を小さくまとめ、飛ばす。そしてピアッシングした部分は全ての耐性を失って即死する。誇ってもいいぜ? 俺にこれを使わせたんだから」

 

 

 聞けば聞くほど危険な能力である。

 アスキンの致死量(The Deathdealing)は分かりやすく説明すると防御力を操るということに他ならない。彼にかかれば九十番台の鬼道ですら無傷で乗り切ることを可能とし、また空気で致命傷を与えることもできる。

 片目を潰されたグリムジョーは苛立ちのためか、単騎で飛び出した。

 

 

「軋れ、豹王(パンテラ)!」

「おおっと! こいつは危険……だ……?」

 

 

 アスキンはあっさりと回避しようとした。

 そして問題なくグリムジョーの攻撃を避けることができたはずだった。だが突如として全身から力が抜けてしまい、膝から崩れ落ちる。この決定的な隙が見逃されるはずもなく、アスキンは容易く心臓を貫かれてしまう。

 薄れゆく意識の中、彼はある人物を発見した。

 

 

「アンタは次期皇帝サマじゃねぇの」

 

 

 そこにいたのは石田雨竜。

 滅却師として騎士団の一員となり、ユーハバッハに次期皇帝を指名された男でもある。尤も、それは騎士団内部に軋轢を生み、裏切り者を炙り出すための策に過ぎなかったが。

 

 

「この、タイミングで……裏切りかよ……そりゃないぜ」

「僕は裏切ってなどいない。初めからあなたたちを仲間だとは思っていない」

 

 

 雨竜はユーハバッハから聖文字(シュリフト)として”A”を授かっている。

 その能力は完全反立(The Antithesis)。指定した二点の間で既に起こった事象を逆転させるという能力だ。あるいは入れ替えるといってもいい。これによって雨竜自身とアスキンの保有する耐性を入れ替え、猛毒領域(ギフト・ベライヒ)の効果をアスキンに及ばせたのである。

 アスキンは霊子中毒によって力が抜け、グリムジョーの攻撃を避けきれなかったのだ。

 

 

「まずは黒崎の家族を安全な場所に。僕は戦場に戻ります。これで残りは騎士団最高位(グランドマスター)とユーハバッハだけです」

「それならアタシに任せてください。一心サンたちはアタシが責任をもって現世に送り届けます」

「良かったぁ。これで黒崎君も……ありがとう石田君!」

「ああ、そうだな。石田も俺たちや一護のことを助けてくれたんだな。ありがとう」

「か、勘違いしてもらっては困る。僕は僕の目的のために動いたに過ぎない。井上さんも茶渡君も変な詮索はやめてくれ」

 

 

 何かを誤魔化すかのように、雨竜は眼鏡を直した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 来たか、とその男は考えた。

 世界の頂点で待ち構える、新たなる万物の王ユーハバッハである。

 

 

「一護、よくぞその死神を抑え込んだものだ。お蔭で私の力も馴染んだ」

 

 

 今のユーハバッハはまるで人外である。

 見た目こそ人間だが、その顔には黒い何かが覆い、無数の眼玉が蠢いていた。全身に黒い霊圧のような何かがタールのようにこびりついている。

 

 

「随分と変わった姿ですね」

「そういうお前もだ。更木剣八よ」

 

 

 確かに呑曝(のざらし)を解放した剣八の姿は異質だ。全身から蒸気のように霊圧が立ち昇り、不可思議な紋様すら浮かび上がる。体温が上昇しているからか、肌の色も赤みが強い。額には角のようなものすらあった。

 何よりも凄まじいのは、剣八が存在しているだけで周囲の物質が蒸発していることである。剣八を中心として空間すら歪み、物質が霊子単位で磨り潰されている。

 

 

「私はもはや霊王の右腕、左腕すら吸収した。これにより私の力は完全となった」

 

 

 霊王の代わりとしてその身を犠牲にしていた浮竹から右腕を、そして流刃若火により消滅した左腕ことペルニダも吸収している。

 これによりユーハバッハの全知全能(The Almighty)は完成したのだ。

 

 

「更木剣八、恐ろしい卍解だ。故に完全となった私ですら確実ではない」

 

 

 ユーハバッハは万物を見通し、未来すら見る。それもあらゆる並行世界を同時に観測できるのだ。そして望む未来へと着地し、好きなように未来を捻じ曲げることができる。

 だが、更木剣八を観測しようとした途端、それが罅割れて壊れるのだ。全ての未来において更木剣八を見ることはできない。つまり剣八とは正面から、まともに戦わなければならない。

 

 

「侮ることはするまい。私の持ちうる全てによって貴様と戦おう」

 

 

 そう告げた瞬間、ユーハバッハの頭上に星型の円盤が浮かび上がった。更には背中から無数の光が束となって溢れ、黒い霊圧と混じってコートのようになびく。周囲には大量の大聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)が浮かび上がり、更には彼の手に光り輝く剣が宿った。

 

 

「私の完聖体(フォルシュテンディッヒ)神の姿(Y・H・V・H)だ」

「滅却師の始祖。やはりそれも使えますか」

「言ったはずだ。侮るつもりはないとな。卍解・残火の太刀」

 

 

 またユーハバッハは元柳斎より奪い取った卍解すら発動する。全身が太陽の如き熱に覆われ、また刃には万物を焼き焦がす熱が宿った。

 自然と周囲の気温が上昇していく。

 ユーハバッハは剣八の後ろで気まずそうにしている一護に目を向け、告げた。

 

 

「一護よ。もはやお前に用はない。この私に歯向かうもよし。好きにするがいい」

「何……?」

「もはやお前は不要。私は全てを手に入れたのだから」

 

 

 そうして彼は右手を天に掲げた。

 すると光が集まり、ユーハバッハを中心に光の柱が立ち昇る。これは全ての滅却師から力を奪い取り、自身へと集める始祖の能力、聖別(アウスヴェーレン)。この場で逃れることができるのはその力から外れた存在、黒崎一護と石田雨竜の二人だけ。

 

 

「そして私には騎士団すら不要! 世界は私の統治のもと、一つとなるのだ!」

 

 

 ユーハバッハは残るすべての力を回収した。

 更木剣八という最強を打ち倒すために。

 

 

 

 

 

 




ユーハバッハ全力モード


あと雨竜の能力も相当インチキですよね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。