私は未読なのでwikiを参考にしています。
剣八は痣城に案内され、貴族街を走っていた。上級貴族の住まう区画であり、今は滅却師の襲撃もあって人っ子一人いない。痣城はこの区画を通り過ぎ、外れにある森の方へと移動していた。
また道中で脅威について説明する。
「綱彌代時灘、ですか。それが新たな霊王を生み出し、三界を支配しようとしていると……陳腐な物語の悪役のような目的ですね」
「だが奴は本気だ。それも面白そうという極めて危険な思想によりそれを実行している」
一通りの話を聞いた剣八は自然と舌なめずりしていた。激しい戦いになることは間違いないだろう。あのグレミィすらも材料に使っているというのだから期待できる。
痣城は雨露柘榴の能力によって瀞霊廷と融合し、その全てを認識している。
時灘が行おうとしていたことも知っていた。
情報収集という意味では隠密機動すら涙目である。
そうして彼が集めた情報を元に案内されるがままついて行くと、目的地の森に辿り着いた。すると木の陰から卯ノ花が現れる。どうやら先に待っていたらしい。
「あなたも来たのですね更木隊長。ユーハバッハを追うものだと思っていました」
「藍染に任せました。どうやら藍染は無間から出るつもりがないようです」
「そうですか」
一瞬眉を顰めるも、卯ノ花はそれで納得する。
また同時に視線を一番隊隊舎の方へと向けた。
「それに総隊長たちも戻ってきたようですね」
どのような手段を用いたのかは不明だが、山本元柳斎重國を含む隊長格も霊王宮から戻ってきたらしい。霊圧を感知すればそれが分かった。
そして彼女は痣城を見つめ、問いかける。
「綱彌代時灘はここにいるのですか?」
「正確にはここから繋がる断界にいる。私はそれを見ていた。今は断界の中で新たな霊王を作っている。私たちはそれを止める。放置すればユーハバッハに並んで厄介なことになりかねない。奴は現世に死神の存在を知らしめ、魂魄バランスすら崩壊させるつもりだ。空座町に新たなる霊王宮を浮かべ、尸魂界の霊王宮と虚圏の
「なるほど。ユーハバッハを藍染に任せてでも止める必要があるということですか。ならば私たちで早急に解決いたしましょう。宜しいですね更木隊長」
「ここにいる時点で異論はありませんよ」
納得が得られたと考えたのか、痣城は手を翳す。
彼は雨露柘榴によって
だがそこは三界を繋ぐ通路ではなく、断界の隙間とも呼べる
痣城はまず初めにそこへと足を踏み入れる。
続いて、剣八、卯ノ花も彼に続いて時灘の用意した断界へと侵入した。
「かなり広いですね」
断界に踏み込む前から広さは何となくわかっていたが、入ってみるとそれがより実感できる。それこそ、街一つ分ほどあるのではないだろうか。
また空中に浮かぶ楼閣も巨大であり、霊王宮の零番隊離殿を思わせる。
その物見より、一目で高級と分かる着物で身を包んだ男が現れた。その左右には無表情な女と、薄ら笑いを浮かべる長身の男を伴っている。道羽根アウラと山田清之介だった。
「良くこの場所を見つけた。だが少し遅かったな」
中央の男、時灘は侵入者たちを見回す。
初代剣八にして現四番隊隊長、卯ノ花烈。
八代目剣八にして現在は罪人、痣城双也。
そして最強の死神であり、十一代目剣八となった更木剣八。
見事なまでに歴代の剣八が揃っている。
「ならばこの斬魄刀こそお前たちの相手に相応しいだろう」
時灘はそう告げて、綱彌代家に伝わる宝剣を抜く。
このために本家より盗み出した斬魄刀だ。存分に使わねばならない。
「
彼の持つ剣から刃が消失し、柄だけとなる。
しかし侮ることなかれ。
この斬魄刀は四大貴族、綱彌代家に伝わる宝剣だ。ありとあらゆる斬魄刀を写し取り、その能力を完全に再現することができる。尸魂界を監視し、ありとあらゆる過去を記録する綱彌代家には全ての死神の始解が記録されているのだ。これを利用すれば、
そして時灘がその中から選んだのは、伝説にも残る始解であった。
「
その名が呼ばれた瞬間、時灘の周囲に十体ほどの白い球体が召喚される。大型動物ほどもあるそれは浮遊して時灘を守るように配置していた。何よりも特徴的なのは無数の牙を生やした巨大な口である。白い球体は化け物のような顎を開き、威嚇していた。
そして時灘は悍ましい笑みを浮かべ、痣城へと語りかける。
「懐かしいか? 痣城双也。この七代目剣八の始解は」
「……」
「クク。そうだ。お前が不意打ちで殺した剣八の斬魄刀だ。どうだ? もう一度戦ってみるのも悪くないだろう? それとも不意打ちで私を殺すか?」
あまり感情を露わにしない痣城が僅かに表情を険しくする。
彼にとって七代目剣八、
今でも
いつか剣八の名を懸けて戦え。
その通り、断界の中で更木剣八とその名を懸けて本気で勝負をした。結果として敗北を認めることになったが、自分を見つめ直すきっかけになった。
時灘はそれを知って煽っているのだ。
「望むなら」
痣城の姿が揺らいだ。
雨露柘榴の能力により空気と融合したのだ。
「殺してやろう」
そして時灘の背後に現れ、無防備な首に刃を向ける。だがそこに白い化け物が割り込み、牙で刃を受け止めた。更に時灘は新しい斬魄刀を解放する。
「瑠璃色孔雀」
その柄より瑠璃色に輝く蔦のようなものが伸び、痣城へ絡みつこうとした。その斬魄刀について痣城はよく知っている。自分の天敵になりうる能力であるとして警戒していたからだ。
十一番隊第五席、綾瀬川弓親が保有する斬魄刀である。彼はこの能力をひた隠しにしているようだが、瀞霊廷の全てを知る痣城は知っていた。そして勿論、瀞霊廷の全ての過去を記録する綱彌代家も弓親の斬魄刀を認識していた。
雨露柘榴は自身とあらゆる物質を融合させ、霊子単位で操るというものである。空気と融合すれば痣城を物理攻撃で殺すことは(一部の化け物を除いて)不可能となり、地形と融合すれば容易く地殻変動を引き起こす。ロカ・パラミアの能力を奪うことで万物を操る万能の能力ととなっていた。
そのただ一つの弱点が、霊子吸収系の能力である。
霊子吸収能力は痣城の魂魄を削り取る攻撃にも等しく、致命的なダメージを負ってしまう。
そして瑠璃色孔雀こそ、その能力に該当するのだ。
だが痣城に迫るその攻撃は一瞬で断ち切られた。その間に割り込んだ卯ノ花によって。
「先走りすぎですよ。この男の斬魄刀は危険です。迂闊に近づいてはいけません」
彼女はそう語る間にも刃を振るい、餓樂廻廊を断ち切る。白い化け物は次々と両断され、消滅していた。かつて最強と呼ばれた刳屋敷剣八の扱う、本来の餓樂廻廊には遠く及ばない。
それを見て卯ノ花は確信する。
「どうやら斬魄刀の能力は模倣できても、霊圧はあなた自身のもののようですね」
「だからどうしたというのだ? 千本桜! 氷輪丸!」
時灘は新しい斬魄刀を解放し、無数の刃と絶対零度を以てして反撃する。楼閣の一部が破壊され、卯ノ花と痣城は引き下がることを強制された。
だがここで剣八が時灘の背後より迫る。
もはや気付いたところで防ぐこともできないほど霊圧を込め、彼女は剣を振り下ろした。
しかしここに小さな影が割り込み、剣八の斬撃を
「よくやったぞ。
それは少年とも少女ともとれる子供であった。純粋無垢な笑みを浮かべつつも無機質な瞳が剣八を貫く。そして彼女の剣を受け止めるだけに留まらず、押し返してみせた。
歴代最強と名高い彼女すら押し返す膂力には驚かざるを得ない。
剣八はふわりと楼閣の屋根に着地し、構えた。
「卯ノ花隊長、痣城双也、そちらは任せます」
そう告げて彦禰へと斬りかかった。
剣八は始解こそしていないが、本気の霊圧で攻撃する。しかし彦禰は表情一つ変えず、無機質な笑みを浮かべたまま攻撃を受け止め続けた。その力、動体視力、反射神経は見た目相応ではない。更に言えば彦禰には剣術の欠片もない。ただの身体能力によって更木剣八と対等に戦っているのだ。
これは恐るべきことであった。
そうして剣八と彦禰が打ち合っている間、時灘は千本桜と氷輪丸、餓樂廻廊を操りつつ命じる。
「道羽根アウラ、お前は私を手伝え。山田清之介、お前は邪魔だ。どこにでも消えてろ」
「分かりました」
「いいでしょう。私の目的も果たせた。
あくまでも医者である清之介はソウルチケットを使って門を開き、瀞霊廷へと戻っていく。一方で完現術師のアウラは極めし魂の使役能力により、虚空から大量の水流を生み出した。
これに対抗したのは痣城である。
痣城とアウラは似通った能力を持っている。前者は雨露柘榴という斬魄刀の能力により、霊子単位であらゆる物質と融合し、自在に操ることを可能とする。後者は完現術の基礎能力である魂の使役を極限まで高めることで森羅万象を操るまでに至った。
アウラが人間でありながらここまでの力を持っているのには理由がある。
それは彼女が霊王の鎖結を宿しているからだ。霊力のブースターである鎖結という重要機関を魂に宿すお蔭で、彼女は死神の隊長格にも匹敵する能力を手に入れていた。
竜のように水流がうねり、痣城はその制御を奪い取ろうとする。
この隙を突いて時灘が痣城を襲おうとしたが、それを卯ノ花が防いだ。彼女はそのまま時灘の首を刎ね飛ばしてしまう。しかしそれは鏡花水月の幻影でしかない。揺らぎ、消えてしまう。本物の時灘は十歩以上も離れた場所にいた。
「流刃若火」
爆炎が卯ノ花を襲う。
しかしそれは本来の使い手である元柳斎のものと比べれば小さな灯のように貧弱である。霊圧は時灘のものに左右されるという卯ノ花の予測は間違っていないのだろう。
しかしそんなことは時灘も承知の上。
この炎は目くらましでしかなかった。
「逆撫」
甘い香りが周囲に散布される。
吸い込めば五感を狂わされ、上下左右前後を全て反転させられてしまう。鏡花水月と組み合わせれば凶悪な性能を発揮することだろう。卯ノ花は香りを吸い込まないよう、鬼道で吹き飛ばそうとする。
「破道の五十八・
「甘いぞ。双魚理」
斬魄刀を回転させて放つ暴風は、時灘が解放した双魚理によって吸収され、卯ノ花へと跳ね返される。更には千本桜と氷輪丸の水氷までもが巻き込まれ、卯ノ花を襲った。
しかし初代剣八、卯ノ花もこの程度で怯むことはない。
目にも留まらぬ剣戟を放ち、処理してみせた。しかしその間に千本桜の刃が彼女の三つ編みに触れ、その髪を解いてしまう。幽鬼のような女死神がその刃を振り上げた。
次の瞬間、時灘は斬られていた。
「くっ……
続いて治療可能な斬魄刀を解放して自身の傷を癒しつつ、鏡花水月で認識をずらした。更には疋殺地蔵を発動し、背後から卯ノ花を斬ろうとする。
しかしどういうわけか振り向かれ、横凪に刃が振るわれた。
慌てて千本桜を寄せ集め、氷輪丸の氷壁で強化して防ぐ。
「私が見えているのか?」
「殺気を感じ取り、斬っただけです」
「……化け物め」
更木剣八が規格外すぎて忘れがちだが、歴代の剣八はそのどれもが強い。なぜならば剣八とは先代を殺すことで手に入れる称号である。つまり代を重ねるごとに強くなるのは当然であり、その仕組みを作った初代剣八が弱いはずがない。
今でこそ四番隊にいるが、卯ノ花烈という死神は史上最大の罪人とまで言われた殺人鬼なのだ。
「紅姫」
時灘は血のように赤い流体を操り、卯ノ花を縛り上げようとする。
「
更には雀部長次郎の始解より雷撃を放ち、千本桜に帯電させることで電撃の網を生み出した。
ともかく動きを鈍らせ、直接戦わない。
それが時灘の考える卯ノ花への対処法である。
だが、剣八という存在はその浅はかな考えすら凌駕する。
「小賢しいですよ」
その一言と共に放たれた斬撃が全てを切断した。
彼女の斬魄刀は時灘では追うことすらできない。ただ気付けば斬られている。その結果だけが彼の眼に映っている。
またこうして戦っている間にも痣城とアウラの戦いも激しさを増し、竜巻、流水、爆炎、雷撃の他、近代兵器までもが飛び交う。それらは空中楼閣を削り取り、崩落させていた。計画の為にこの楼閣を破壊するのは好ましいことではなく、時灘は内心で舌打ちする。
そして何よりも厄介なのが、産絹彦禰と対等に戦う更木剣八であった。
「力、速度、硬さ……なかなかですね」
剣八はたった一人で彦禰を抑え込んでいた。
霊王の器として生み出された彦禰は死神、虚、滅却師、完現術師の力を全て備えている。まごう事なき超越者の魂なのだ。その表皮には
極めつけは時灘が与えた斬魄刀、
古の虚を封じた斬魄刀として霊王宮で管理されていた禁忌の兵器だ。
簡単には剣八を倒せないと判断した彦禰は、初めて口を開く。その解号を唱えるために。
「星を巡れ、
刀が変形し、巨大な白い腕となる。
それは自我を持ち、彦禰から独立して剣八へと襲いかかった。
歴代剣八VS時灘、アウラ、彦禰
ここが叫谷じゃなかったら恐ろしい被害ですね