―――極囚、朽木ルキアの処刑日程は二十九時間後です。
――これは最終決定です。
――――以降の変更はありません。
通達がされてすぐ、それぞれの勢力が動き始めた。
そして卍解の修行をする一護の元に、阿散井恋次が訪れる。
「そいつがてめぇの斬魄刀の本体か?」
秘密の修行場所へと無理矢理入り込んできた彼は、敵意を見せることなく告げる。
「少々時間が無くなったんでな。俺も集中して修行できる場所が欲しい」
「どういうことだ?」
「てめぇにも言っておいてやる。さっき瀞霊廷全体に通達があったんだ。朽木ルキアの最終処刑日程は……明日の正午だ」
夜一は目を見開く。
三日で卍解を習得させる。そのための修行を行っていた。しかしこのままでは時間が足りない。絶望的な未来が目に浮かぶ。
だが一護は諦めていなかった。
「あんたが諦めんのかよ。夜一さん」
「だが、一護……」
「簡単な話だ。今日中に卍解を習得すればいいだけの話だぜ」
決意は力となる。
具象化した斬月もその決意に密かな笑みを浮かべた。
それがきっかけのようになり、一護の霊圧が一際大きくなった。
◆◆◆
朽木ルキアの処刑日。そして処刑まで残り数時間。
更木剣八は動き出した。やちるに一角に弓親、そして織姫を伴って。(ついでに荒巻も)
「ひとまずはあなたの仲間を探しましょう。目指すは四番隊の隊舎地下牢です」
やちるを背中に乗せ、織姫を横抱きにして剣八は走り続ける。
自身の霊圧が高すぎるせいで探知能力が致命的な剣八に代わり、織姫が感知して案内し続けた。そして無謀にも雨竜、チャド、岩鷲が閉じ込められている牢に突撃する。
「ざ、更木隊長!?」
「お止めください。我々は仲間です!」
「そ、そんな。うあああああああ」
「御乱心! 更木隊長が御乱心だああああああああああ!」
そんな悲鳴はさておいて、剣八は霊力を拳に込める。
一撃で地下までぶち抜き、捕まっている三人の元へと現れた。
また一方で捕まっていた雨竜、チャド、岩鷲は何事かと慌てる。そして岩鷲は剣八の姿を目撃して大混乱に陥った。
「ぎ、ぎえええええええええ!? 更木剣八いいいいいいい!?」
雨竜は一瞬だけ石のように固まるも、すぐに抱えられた織姫に気付いた。
「井上さん!? これは、一体……」
「うむ」
チャドこと茶渡泰虎も同意する。
「あ、石田君にチャド君。あと……岩鷲君?」
大怪我によって全身包帯姿の岩鷲を見て首を傾げるも、ひとまず織姫は霊圧から岩鷲だと理解する。そしてすぐに彼女の異能により治療を始めた。
「あのね、皆――」
その時間を使って織姫は説明し始める。
更木剣八という最高戦力が協力してくれることに、男三人は戦慄したのであった。
◆◆◆
旅禍を連れ出した剣八は再び走り始める。
目的地は朽木ルキアの処刑場所、双極であった。しかしそこに向かうために走り続けるも、残念ながら案内役は草鹿やちる。剣八の斬魄刀だけあって霊圧感知が苦手らしく、案内は勘にも等しかった。
勘による移動を複雑な瀞霊廷で行った結果は火を見るより明らかである。
行きついた先は行き止まりの広場であった。
「……あの、うん。ほら、道案内って運みたいなものだしさ」
織姫がフォローになってないフォローをする。
「ほーれみたことか。だから副隊長の道案内は嫌だって言ったんですよー」
一角は呆れた物言いで、ついでに溜息を吐く。
見た目が幼いやちるはそれでキレたのか、一角の頭に噛みついていた。彼の悲鳴をバックグラウンドに、雨竜たちは元来た道を戻ろうとし始める。
しかし、剣八だけは微動だにしない。
微かな風が彼女の髪と羽織を揺らすも、その身体は動かない。
不審に思った弓親が問いかける。
「どうしたんです隊長?」
「……」
「たいちょ……これは!」
「気付きましたか?」
遅れて気付いた弓親はその手を斬魄刀にかける。
ここはただの行き止まりではない。
待ち伏せされていた。
「出てきたらどうですか? 霊圧を消しても、その気配までは消せませんよ」
剣八がそう告げた途端、辺り一帯に重圧がのしかかる。
それによって皆が異常に気付いた。
同時に、四人の人影が現れる。
「あ、あれは!」
荒巻が叫んだ。
「射場副隊長、檜佐木副隊長……それに狛村隊長と東仙隊長おおおおお!?」
自分明らかに場違いなんですけど、とでも言いたげである。
隊長と副隊長が二人ずつ。一般隊士である荒巻からすれば絶望的戦力差に思えることだろう。だが、剣八はただ静かにやちるの肩を叩いた。彼女の背に乗っていたやちるは理解したとばかりに具象化を解く。
剣八の手に斬魄刀が握られた。
その異常性に気付いたのか、射場と檜佐木の間に動揺が走る。
斬魄刀を右手に握り、そっと鞘から抜く。その瞬間、剣八の霊圧が大きく上昇した。まるで深い海の中にでもいるかのような、そんな重たさが場を支配する。
「ぅ、おお。何じゃ」
「くっ……」
思わず射場と檜佐木は膝をつく。
副隊長ですら剣八の霊圧を前に屈服した。戦ってもいない。ただ霊圧に当てられただけで敗北を確信してしまったのだ。
だが流石に狛村と東仙は平静を保っている。
「更木剣八。貴様……旅禍を連れてどこへ行くつもりだ」
「どこでもいいでしょう。邪魔をするつもりですか東仙隊長?」
「元柳斎殿に仇成すというなら斬るまで」
「相変わらずですね狛村隊長」
剣八、狛村、東仙は互いに霊圧を高めていく。
呼吸すら儘ならなくなった射場と檜佐木を見て、剣八は呟いた。
「一角、弓親……分かっていますね?」
「了解っす隊長!」
「一角、僕は檜佐木副隊長を貰って行くよ」
意図を理解した一角と弓親は、瞬歩で二人の副隊長を回収する。そしてどこかへと消えていった。この戦場に雑魚はいらないという剣八の可愛い我儘である。それを叶えない部下ではない。
「それと荒巻。そちらの四人を双極までお連れするように。お願いしますね」
「は、はい! この不肖荒巻にお任せください! ほれ、行くぞ! 行くぞ! 今すぐ逃げるぞオオオオ!」
「え? あ、ちょっと!」
「井上さん、早くいこう!」
「うむ」
荒巻を先頭にして織姫、雨竜、チャド、岩鷲もこの場から去っていく。
そして一人となった剣八は斬魄刀の切先を二人の隊長へと向けた。
「呑め――」
解号を口にする。
「――
その手に、身丈を超えるほどの大太刀が握られていた。