勘違いしてらっしゃる方も散見するので、一応説明。
野晒の状態異常無効は解放してないと意味がないので、鏡花水月も効きます。解放している間だけ無効化します。
阿散井恋次は血の海に沈んだ。
卍解を習得し、朽木白哉に届くと思った。
(死んだ、か?)
しかし恋次の卍解はあまりにも未熟。
白哉の卍解、千本桜景厳に敗れたのだ。数えることも不可能な文字通り無数の刃。それが恋次を切り刻んだ。肉体の原型が残っているだけましというものだ。
(くそ……)
届かなかった。
その悔しさが彼の魂を繋ぎとめる。
「俺は……」
恋次は死ななかった。
生き残った。
死ぬはずだった彼は双極の丘へ向かう卯ノ花によって生き永らえた。
◆◆◆
双極が起動する。
ルキアの処刑が始まったのだ。
斬魄刀百万本に匹敵する瞬間火力が双極に秘められている。その絶大な力によって瞬時に死刑囚の魂を蒸発させ、処刑を完了させる。
だが、それを邪魔する者が現れた。
「よぉ、ルキア」
その者はただ一本の巨大な斬魄刀で双極を受け止めた。百万本分の攻撃力を完全に受け止めた。
髪の色、オレンジ。
特技、幽霊が見える。
「助けに来たぜ」
職業、死神。
「なぜ……」
ルキアは動悸する。
激しく動揺する。
「来るなと言っただろう……一護」
それは拒絶の言葉。
しかし彼女の顔は、泣いたような、笑ったような表情であった。
◆◆◆
一護が助けに来た瞬間、一気に状況が動いた。
まずはルキアの上司であった十三番隊隊長、浮竹十四郎がやってきたのである。そして京楽と共に双極を破壊してしまった。
この常軌を逸した行動に怒りを顕わにした山本元柳斎は二人を問い詰める。
浮竹と京楽は即座にその場を離れた。
逃げるためではない。
最強最古の死神との戦いに周りを巻き込まぬためだ。
「恋次、受け取れ!」
そして一護は処刑台からルキアを解放し、遅れてやってきた恋次へと託す。
朽木白哉と決着をつけるために。
一方で砕蜂は刑軍の総司令官として反逆者を始末し始める。裏切り者の副隊長たちを始末しようとする。だがそれを乱入した夜一が止め、そのままどこかへと連れ去ってしまった。
「俺は、ルキアを助けるぜ」
「ならば貴様を斬り、私の手でルキアを処刑するまで」
矜持と誓い。
それを胸に朽木白哉が立ち塞がる。
戦いが始まる中、卯ノ花だけは怪我をした副隊長を確保して四番隊隊舎へと急ぐ。自らの斬魄刀、
浮竹十四郎は愛する部下のために。
京楽春水は疑念を解き明かすために。
山本元柳斎は護廷十三隊の長としての役目によって。
砕蜂は裏切り者を処断するために。
朽木白哉は己に課した誓いを固く守って。
黒崎一護は全てを打ち砕き、ルキアを助けるため。
そして卯ノ花烈は浮かび上がった疑念を確かめるために。
混線する思惑の中、戦いは最終局面を迎えつつあった。
◆◆◆
「これは! 元柳斎殿!」
剣八を抑え込むべく戦う狛村は敬愛する山本元柳斎の霊圧を感じた。最強最古の死神が、最強最古の斬魄刀を解放する瞬間を感じ取ったのだ。
流刃若火。
天地を焦がし、万象を灰燼に帰す斬魄刀である。
そして山本元柳斎がその力を解放した意味が分からぬ狛村ではない。
「今、参ります!」
忠義により参上しなければ。
総隊長が戦わなければならない事態に陥っている。狛村は剣八のことを置き、駆けだした。
一人残された剣八は再び刀を鞘に納める。
「……どうやら事態が動いたようですね。私たちも行きましょう、やちる」
「はーい」
やちるが具象化し、剣八の背に乗る。
もう迷うことはない。
綺麗な剣八は双極の丘を目指して消えた。
◆◆◆
卍解、千本桜景厳
卍解、天鎖斬月
二つの卍解がぶつかり合う。
無数の刃が一護へと襲いかかる。一方で一護の卍解はその戦闘能力を凝縮するというもの。卍解によって得られる絶大な力を小さくまとめ、継続戦闘能力と速度を限界まで高めた。
絶対的な全体攻撃と、究極の個。
対局する二つの卍解が激突する。
「終景・白帝剣」
「月牙天衝」
白哉の放つ無限の刃を固めた攻防一体の一撃。
一護の放つ漆黒の霊圧を巨大化した刃。
互いに最後の霊力を一撃に込めた。
決着する。
勝者は……ルキアのため、瀞霊廷と戦うことすら決意した少年であった。
◆◆◆
縛道の七十七、
虎徹勇音が発動したその鬼道によって全ての真実が明らかとなった。
事件の発端。
全ての黒幕は……藍染惣右介である。
瀞霊廷の最高意思たる中央四十六室を暗殺し、その命令を偽装していたこと。藍染自身は死を装っていたこと。朽木ルキアに対する理不尽な処刑命令や、その日程の異常な短縮化までも。一連の事件を調査していた日番谷冬獅郎を斬ったこと。
最後に藍染惣右介には仲間がいたことも。
三番隊隊長、市丸ギン。
九番隊隊長、東仙要。
彼らは初めから藍染の協力者であった。
また護廷十三隊全てが欺かれることになった原因、藍染惣右介の本当の能力についても語られる。
彼の斬魄刀は鏡花水月。
水や霧の乱反射によって敵味方を誤認させ、同士討ちさせる能力だと思われていた。しかし真実は大きく異なる。その絶大な異能とは完全催眠。一度でも彼の始解を眼にした者は催眠状態に置かれ、藍染が望むままに感覚を支配される。
沼地を花畑に、蠅を竜に。
視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚、そして霊圧知覚。ありとあらゆる感覚が鏡花水月によって支配される。
この真実は混乱していた護廷十三隊を正気に戻す。
「ねぇ、こんなことしている場合じゃないよ。山爺」
京楽はそう問いかける。
その相手は獄炎を纏う山本元柳斎重國であった。彼は真実を知り、怒りを劫火として燃やす。
「……」
彼は力を向けるべき相手を、本当の敵を知った。
◆◆◆
裏切り者、藍染と市丸は双極の丘に転移する。
そして東仙も逃げる恋次とルキアを誰よりも早く発見し、転移布によって双極へと移動していた。
「これは……」
突然転移させられた恋次とルキアは戸惑うばかりだ。
そしてせっかく距離を取ったにもかかわらず、また双極に戻されてしまったというショックもある。
「阿散井君」
藍染はかつての部下である恋次に問いかける。
部下だった時のように。
「朽木ルキアを置いて下がりたまえ」
「……できません」
「ならば構わない。君の腕ごと斬り落とすまでだ。君は彼女を抱いたまま下がることができる」
「っ!」
藍染は敵。
渡して堪るかという意志によって剣を振るう。しかし恋次の蛇尾丸は一瞬で破壊された。何をされたのかもわからないまま彼は倒れた。
「オ、オオオオオオオオオ!」
そこに一護も乱入する。
しかし天鎖斬月から繰り出す神速の斬撃は藍染によって止められる。指一本で。そして反撃の一撃により一護は倒された。
ルキアはいとも容易く奪い返されたのだ。
「藍染! 貴様ああああああああああああ!」
山本元柳斎のために駆け付けようとしていた狛村が一番に到着する。鉄傘が壊れ、犬の素顔が露わになった彼は
しかしそれは容易く弾かれた。
「東仙! 貴公もだ! 何故裏切った!」
狛村は吼える。
彼は許せなかった。親友たる東仙が裏切り者であったことを。そしてそれを見抜けなかった自分を。
怒り猛る狛村は語り続ける。
「何か弁明でもあるなら言ってみろ」
しかし東仙は何も語らない。
「ないのか……残念だ」
卍解。
黒縄天譴明王が発動されようとする。
しかしその瞬間、藍染は狛村の目の前にいた。
「なっ……」
「破道の九十、黒棺」
狛村は全身から血を流し、倒れた。
「やはり先走りましたか。狛村隊長」
一歩遅れて、更木剣八が到着した。
狛村、先走って卍解してあっさりやられがち。
そのせいか弱い印象ありますけど、普通に考えたらめちゃつよですよね。