そして、ついにSL人吉は鳥栖駅に到着した。到着しても千歌をはじめとする機関士たちはお客様のために石炭をボイラーに投げ入れては煙をもくもくあげていた。
一方、あの子の言葉の真意をしるために曜たちは鳥栖駅構内にあるものを探していた。それは・・・、
「SLに必要なもの・・・、SLに必要なもの・・・」(曜)
そう、SLに必要なものだった。それが「鳥栖駅にはない」その一言が気になって仕方がなかったのだ。
であるが・・・、
「What!!それ、どこにあるんだよ~」(ミア)
とそれがなにかわからないものだった。
そこで、南がそれについてあるヒントをだす。
「普通の列車ならどの方向でも動かすことができるのだけど、SLにはちゃんと前と後ろがある。じゃ、どうやって前と後ろを転換させる?」
その言葉に栞子はあることを思い出したのかこう答えた。
「あっ、もしかして、SLの前後を転換させる施設・・・、例えば、転車台・・・、じゃないでしょうか?」
これには、高山、こう答えた。
「栞子ちゃん、正解!!この鳥栖駅には転車台がないんだ」
そう、鳥栖駅にはSLを転換させるための施設、転車台がなかったのだ。SLはバックすることもできる。だけど、テンダー、石炭をいれるための車両が後ろに連結しているため、バック走行は危険なのである。そのため、SLの前後を転換させるための施設、転車台を必要とする。その転車台が鳥栖駅にはなかったのだ。
と、ここで1つの疑問が生じる。それは・・・、
「でも、どうやって熊本駅までSL人吉は行くの?」
そう、どうやって熊本まで戻るのか、である。これについて、南、
「それは帰りの便のときにわかるよ」
と答えを教えてくれなかった。
そして、帰りのSL人吉に乗ることに。すると・・・、
「あれっ、なんかSLの音が聞こえてこないね」(ルビィ)
そう、SLの音が聞こえてこなくなったのである。普通ならSLの走行音が聞こえてくるのだがそれが全然なかったのである。これには、みんなびっくり。そんなみんなに対し高山があるヒントを出す。
「よく思い出してくれ。このSL人吉にはもう一台ある車両を連結しているでしょ。それってなにかな?」
これには、曜、思い出したかのようにこう答えた。
「あっ、ディーゼル車が連結されていた!!」
そう、SL人吉には後方にディーゼル車であるDE10を連結していたのである。その言葉を聞いて、ルビィ、ある答えを導き出した。それは・・・、
「あっ、もしかして、今の、帰りはそのディーゼル車に引っ張ってもらっていくんだ!!」
このルビィの答えに南はすぐに反応する。
「ルビィちゃん、正解!!実は鳥栖駅に転車台がないためにわざわざディーゼル車を使って引っ張ってもらいながら帰るんだ」
そう、SL人吉は、帰り、ディーゼル車DE10を使って熊本まで戻るのである。
ただ、これについてランジュが文句を言う。
「それってSLじゃない!!」
この言葉に高山はこう発言する。
「たしかにある人からみたらこれはSLの旅じゃなくてディーゼル車の旅とみられてもしかたない。そう考えるとあの子がそう言ったといってもおかしくはない」
そう、あの子が「SLじゃない」と言った理由はそこにあった。普通の人ならSLに乗れるのでそれはSLの旅だといえるかもしれなかった。だた、SL人吉の帰りの運行は直接SLを使った運行ではなくディーゼル車を使っての運行であるとみればそれを「SLの旅じゃない」
と言う人もいるかもしれない。その子はその考えがゆえに「SLじゃない」と言ったのである。
そして、案の定、その通りになった・・・。ディーゼル車での運行のために行きのときみたいに9分間などといった長い停車時間なんてなく塔ちゃうしたらすぐに出発といったことが起きていただけでなく、玉名から乗ってきたその子も、終始、
「こんなの楽しめない!!」
とだだをこねるような仕草や言動が大きくなった。
その後、熊本駅に到着したとたん、その子、
「もうこれだけなの・・・。なんか嬉しくない・・・」
と暗い表情をしていた。
そんなときだった。突然、南がその子に駈け寄るとある切符をその子に渡した。その切符とは・・・、
「はい、明日の帰りの切符!!」
そう、それは南がその子のために用意した明日のSL人吉の帰りの切符だった。これにはその子の両親も、
「あっ、ありがとうございます!!」
とお礼を言うもその子はただ、
「それって今日と同じだよ!!だから、ヤダ!!」
とまただだをこねては泣き出してしまった。
だが、南はあることをその子に言った。
「大丈夫!!!明日は今日と同じじゃないから!!」
それを聞いたのか、その子、すぐに泣き止むとすぐに南に対し、
「それ、本当なの?」
と尋ねると南は、
「本当!!」
と答えてくれたのである。そんな南の姿に、曜、
「それって大丈夫なの?」
と問うと、南、
「大丈夫!!」
と元気よく答えたのである。
翌日の3月23日、その日は熊本駅の出発が7時40分だったため、新幹線で熊本に行った曜とルビィ、南たち、そして、なぜかR3BIRTHの3人。だが、今日は昨日とは状況が変わっていた。というのも・・・、
「あれっ、SLの向きが昨日と逆じゃない!!」(ランジュ)
そう、普通なら鳥栖にSLが連結されているのに今日はその逆、八代側にSLが連結されていたのである。
そんなわけで・・・、
「今日は行きがディーゼル車での運行なんだなんだ・・・」(曜)
そう、今日の運行、特別運行は通常の逆、行きがディーゼル車での運行、帰りはSLでの運行となっていたのである。というのも、これがSL人吉での通常運行最後ということもあり、運行区間も博多~熊本間に延ばしただけではなく、博多駅では記念出発式典を行う力のいれようだったのである。
そんなわけで、行きはディーゼル車での運行を楽しんだあと、帰りは・・・、
「うわ~、人、人、人、だらけです」
と栞子が驚くぐらい博多駅のホームでは人でいっぱいであった。みんなSL人吉にお別れを言いに来ていたのである。
そして、出発式典のあと、SL人吉は・・・、最後の通常運行に向けて出発した。これには、ルビィ、
「なんか最後って本当に悲しくなるね!!」
と涙を流していた。
その後、曜たちを感動させたのは、昨日とは違う風景、車窓から見えるSL人吉に向けたみんなからのラストメッセージであった。どの盤面においてもSL人吉に向けてお別れのために手を振る人々、そして、
「SL人吉、長い間ありがとう」
「さよなら SL人吉」
といった横断幕であった。これには、ミア、
「す、すごい!!みんな、SL人吉LOVEなんだね!!」
と感動するくらいであった。それこそSL人吉がみんなから愛されている証拠なのかもしれない・・・。
そして、玉名に到着した。ここではあの子が親を連れてやってきていた。その子の両親は南に対し、
「あとはお願いします」
と言ってその子をSL人吉に乗せるとともに、
「もしかして、僕、このSL人吉に乗れるってことなの?」
と言うと南も、
「ああ、そうだよ」
と元気よく答えたのである。
その後、その子は元気よくこう答えてくれた。
「うわ~、これがSLの旅なんだね!!SLって力強いんだね。大きんだね!!」
とはしゃいでいた。ここは1号車の展望室。ここからSL人吉である8620形が見えていた。今現在、千歌たち機関士たちは前の方で一生懸命石炭をボイラーに向けて投げ入れていた。それによりこのSL人吉は最後の旅の終着駅に向けて一生懸命走っていた。ただそれだけかもしれない。だけど、SL人吉は1人の子の夢を、SLという夢を大きくなるくらい前に向けて・・・、
「僕、絶対にSLの運転手になってみせる、絶対に!!」
というその子の夢を大きくさせるかのように前へと進んでいた・・・。
こうして、
「熊本~、熊本~」
というホームからの声とともにSL人吉の通常運行が終わった。ただ、それでもその子は、
「僕、将来、SLの運転手になるんだ~」
という自分の夢を大きくしていた。これには、曜、ルビィともに、
「君なら絶対になれると思うよ」(曜)
「ルビィもそう思う!!」(ルビィ)
とその子の夢の後押しをしていた。また、R3BIRTHの3人も、
「将来、君の運転するSLに乗りたいわ~」(ランジュ)
「このときは絶対に呼んでよ!!」(ミア)
「千歌さんがなれるのですから絶対に大丈夫です」(栞子)
とその子の夢の後押しを続けていた。
そして、最後にSL人吉を運転していた千歌がその子に近づき、
「君なら絶対になれる!!千歌がそのお墨付きだよ!!」
と言うとその子は元気よく、
「ありがとう。僕、絶対にSLの運転手になる!!」
と自分の夢を確信へと昇華させようとしていた・・・。
そんなみんなの風景をみていたのか、南、少し涙ぐんでいた。それを、高山、南に対して、
「南さん、なんで感慨ふけっているのですか?」
と尋ねると南はこう答えた。
「これこそが日本の明るい未来だと思わないかね」
これには、高山、
「たしかにそうですね」
と南の言葉に同意していた。
こうして、曜とルビィはSL人吉での最後の・・・、いや、南たちとの最後の旅は終わった・・・。それは曜とルビィにとって人として大きく成長させるものだったかもしれない。ただ、それでもついに長かった旅ももうじき終わる、そのことを2人が自覚するのは、このあとの、南たちとの最後のとき、だったのかもしれない・・・。