艦これ、復帰しました   作:something1945

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ここまで前置きです。主人公が自分を受け入れるまでの話。


TSに気が付きました

「あの…おはようございます」

扉の向こうから聞こえる、電の声。

 

はじかれるように立ち上がり、扉の鍵を外して、恐る恐る数センチ開いた。

一瞬、誰もいない…と思い、きょろきょろと扉の外を見渡す。そこは見覚えのない廊下。例えるなら、学校のような雰囲気だ。

そして、「あの…」という声が、下方から聞こえた。

つられて目を向ければ、自分の目線より20cmくらい下に、薄茶色の髪、そして、見覚えのあるセーラー服に身を包んだ、

『電』が、そこにいた。

 

「おはようございます、提督。母港への移動準備は…」

言いかけて、電は口を噤んだ。

 

「…あ、新しい提督さんでしたか。ご着任、ありがとうございます。」

ぺこり、と頭を下げる電。

 

「何か分からないことはありますか?」

何もかも分かんないよ!ここはどこ!?自分は誰!?

いや、『自分』は分かってるんだけど、さ…。

それ以外のことは、全く分からない。

 

ここがどこなのかも。どうして、ゲームのキャラクターであるはずの少女が、目の前にいるのかも。

 

言葉を失う自分に、電は困った顔をする。

「えっと…提督さん?」

「き、君は…」

今日初めて声を出した。

 

女性の声だった。

 

ん…?おかしい。喉の調子でも狂ってるのかな。

そういえば、目線の位置もなにかおかしい。常に若干かがんでいるかのような…、ありえないが、身長が低くなったような感覚。

 

「えっと…」

困惑から、勝手に発せられた自分の声は、やっぱり女性で。

電を見下ろしている自分の身長は、やっぱり低くなっていて。

自動的に目に入った、胸の膨らみ。

そして、股間の違和感。

 

ん…!?なんだ…!?なんだこれは…!?!?!?

 

そうか、自分は女性になったのか。

 

視覚、聴覚、触覚から返ってくる反応は否応なしに事実を突きつけてくるが、頭がついていかない。

理解できない現象に、立ち尽くす。

 

すると、電が困惑した顔をさらに困らせて、泣き顔になっていた。

「あ…の…電に…何か…」

電は、自分が何か粗相をしたのではないかと恐れている様子で、もじもじと顔の下で指を合わせている。

 

小さくて可愛い。

 

じゃなくて!

「ここはどこ?」

「タウイタウイ泊地です」

淀みなく電から返ってくる答え。

艦これのサーバーの1つだ。脳内で知識が自動的に閃く。知っている、知っているぞその地名は。フィリピンの島の1つだ。なんとも僻地だ。せめて漢字鯖…、日本が良かった。

 

「提督さん、母港へ行きましょう」

小さく、けれどハッキリした声。電は、それこそが自分の使命、いや死命だと言わんばかりに、畏れの表情を浮かべながらもそう言った。

 

「は、はい…」

言われるがままに扉から出ていこうとする自分を、電が困惑ぎみに手で制した。

「あの…寝巻のままなのです…」

つまり、着替えて出てこいということ。

「す、すみません…」

「い、いえ…」

 

反射的に謝った自分に、恐縮そうな電。

…これ以上この子を困らすのは、あまりにも可哀そうだ。

 

今自分に何が起きているのかは分からないが、これ以上この子をここに立ち尽くさせるのは、人道的ではない気がする。客観的に見たら、大の大人が小学生くらいの少女を困らせ切っているのだ。そう考えると、申し訳なくなってきた。

 

「じゃあ、ちょっと待ってて」

ぱたんと扉を閉じ、息を大きく吐いた。扉の向こうにも聞こえていたかもしれない…と思ったのは、ため息をつき切った後だった。そうだ、電は、自分を『母港』に連れていくために待っているのだ。

 

とりあえず着替えて出ていかなければ。

決心し、改めて自分の「部屋」を見渡す。見覚えのないワンルーム。先ほどまで光っていた画面は、すでに消失して、ただの壁に戻っていた。

 

海のさざめきが聞こえる。

 

音につられて窓辺に近寄ると、クローゼットがあった。扉を開けると、そこには旧日本海軍の白い制服が数着掛かっていた。いや、本当に海軍の制服なのかは定かではないが、漫画や映画で見たそれと酷似している。

…とりあえず、コレに着替えれば良さそうだ。

慣れない自分の肢体にはなるべく目を瞑って、着替えを完了する。

 

着替えの出来をチェックしようとして、鏡を探す。

窓辺と反対側に洗面台があった。起きた時はノックをされた扉にばかり目を向けていたが、そこには洗面台が置いてあったのだ。

 

鏡の前に立ち…声を失う。

知らない顔がそこにあった。

物凄く、美人の、女性。

黒い髪を肩くらいまで伸ばし、キリリとした眉と、意志の強そうな瞳。

思わず鏡に手を伸ばす。鏡の中の自分も、同じように手を上げている。

 

これが、自分。

受け入れるまでに、数分を要した。

 

顔を洗い、掛けてあったタオルで拭い…もう、悩むのは終わりにしよう、と鏡の中の自分に向かい決意した。

 

分からないことだらけだが、少なくとも今、扉の外で少女を待たせているのは事実なのだ。

自分は、「提督」なのだ…きっと。

 

どうして、とか、なぜ、とかは置いておいて。

受け入れて、進まなければ。

 

「開けるよ」

一応声を掛けて、扉を開く。

 

先ほどまでと同じように…いや、それ以上に直立不動で、指を体側にぴしっと沿わせた電がそこにいた。

 

「では、行きましょうか。提督さん」

「うん。行こう」

 

少なくとも、自分はひとりではない。

それが、とても心強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




性格はイケメンのようです。でも打たれ弱い。
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