3名分用意された朝食。
電と大淀を自室に招いて食事をしようと思った。
自室に招く…という、いや、「そういう意味」ではなくて。
ただ単に、あの倉庫のような『母港』で食べるより、調度品の整っている自室で食べた方が便利だと思ったからなのだ。
…なにせ、『母港』には、椅子とテーブルもないのだから。
そして、なぜか躊躇いをみせる電と、困惑ぎみの大淀と、3人で寄宿舎の自室の扉の前まで来た。
「入ってー」
自室の扉を開けて、振り返って、先頭の電を招き入れようとした。
引き入れた電の手。電は、引っ張られて。
通り抜けなかった。
バッチィィン!と、静電気のような音がして、電の手がはじかれた。
「「え!?」」
自分も、そして電もびっくりして、電はパタンと尻餅をついた。
自分の方が身長は高いので見下ろしている電の下着は見えません。がっかりはしてません。してませんよ。
「大丈夫!?電」
「だ、大丈夫、なのです…びっくりしたのです」
深雪と衝突したかのような驚きを口にして、転んだ電に手を差し伸べて立たせる。
もう一度、今度はゆっくりと手を差し出すように頼む。
電は恐る恐る手を前に出して…
バッチィィン!と、やはり敷居を境にして弾かれる。
大淀が、「艦娘は…提督の私室には、入れないようです。規則のようです」と述べた。
「知ってたの?」
「いえ…今知りました」
大淀の恐縮そうな表情からして、嘘を言っているようではなさそうだった。
新しい知識がダウンロードされたようなものなのだろうか。大淀自身もよくわかっていないようだったが。
ここでご飯が食べられないのならば…
「じゃ、母港で食べよっか」
部屋の中から外へ食事を持って3度往復し、1人1食持って状態で寄宿舎から母港へと歩く。
母港の段ボールをひっくり返して机にして、床に座って、3人で食事を囲んだ。
「いただきます」
「「いただきます」」
手を合わせて合掌した後、同じように電、大淀も自分の真似をして続けた。
えっと…パン。スクランブルエッグ。サラダ。チキンステーキ。
朝は洋食派の自分にはうれしい、まるでホテルの朝食のようなセット。味も申し分ない。
移動の間でスープが少し冷めてしまったが、そんなものより3人で食べれられる嬉しさのほうが勝った。
…と、自分は思うのだけど。
自分の思い上がりではないだろうか?という疑念は、慣れない手つきでフォークとスプーンを使って食事をする艦娘2人の様子を見て一瞬で晴れた。
「美味しい…!」
「おいしいのです!」
大淀も電も、2人で顔を合わせてニコニコと笑いながら、もぐもぐと食事を口に運んでいた。
(よかった…)
はしゃぐ電はもとより、心から嬉しそうな大淀を見て思う。
段ボールの上で食事するのも、悪くないな、と。
次回、建造。